ガルヴォルスZERO 第22話「ツキアカリノミチシルベ」
ダイゴとマリの前に、マリアに石化されたはずのミライが現れた。彼女の出現にマリは驚きを感じていた。
「ミライ、さん・・・!?」
「マリちゃん・・・会えてよかったよ・・・」
声を荒げるマリに、ミライが安堵を浮かべる。
「ミライさん、マリアに石にされたはずでは・・・!?」
「もう、ホントに参っちゃったよ・・体が石になって、同時に服が破れて裸にされて・・あのまま外にいたらどうしようって思っちゃったよ・・・」
困惑するマリの前で、ミライが不安を口にする。
「でもダイゴとマリちゃんが助けてくれたから、ホントによかった・・・」
「でも元に戻せなかった・・それどころか、私とダイゴも・・・」
笑みをこぼすミライだが、マリは沈痛の面持ちを見せる。彼女もダイゴもマリアによって石化され、手も足も出なくなってしまった。
「あたし、手も足も出なかった・・ダイゴとマリちゃん、お姉ちゃんが石にされてるのに、何もできなかったなんて・・・」
「ミソラさんまで!?・・・マリアが、ここまで・・・」
ミライの言葉を聞いて、マリが愕然となる。
「でも、もうどうすることもできない・・全然動けないのに・・・」
「大丈夫だよ・・マリちゃんとダイゴなら、きっと何とかできる・・あたしはそう信じてるよ・・・」
「ありがとう、ミライさん・・・でももうダメ・・もう、このままでもいいかもしれない・・・」
信頼の言葉を寄せるミライだが、マリは諦めてしまっていた。
「ダイゴもそばにいる・・私たちが邪魔されることもない・・このまま時間を過ごしてもいいかもしれない・・・」
「・・・マリちゃんは本当は何を求めているの・・・?」
物悲しい笑みを浮かべるマリに、ミライが問いかけてきた。彼女の言葉にマリが戸惑いを覚える。
「確かにこのままなら、ずっとダイゴと一緒にいられる・・でもそれがホントに、ダイゴやマリちゃんの平穏な時間なの・・・?」
「それは・・・」
ミライの言葉に返事ができず、マリが口ごもる。
「ダイゴだったら、きっと最後まで諦めない・・100%ムリだって決まっていても、絶対に反抗するよ・・・」
「でも、そのダイゴももう・・・」
ミライの言葉を聞くマリが、ダイゴに目を向ける。心を壊されたダイゴは、マリにすがりつくことしかできなくなっていた。
「ダイゴは弱い・・そのことはあたしは分かってたし、マリももう分かってるんじゃないかな・・?」
「ミライさん・・・」
「許せないものに対していつも突っかかってたダイゴ・・あたしたちから見たら、すごく勇気があるって思える・・でもダイゴはホントはすごく弱い・・何かにすがっていないと自分を保っていられない・・・」
ミライのこの言葉を聞いて、マリが困惑する。彼女はダイゴの本当の姿に気付いていた。
「マリちゃんならダイゴの支えになれる・・あたしも、そのことは分かってるから・・・」
「ミライさん・・・ダイゴ・・・」
ミライに勇気づけられて、マリは戸惑いを募らせる。2人の目からは涙があふれてきていた。
「頑張って、マリちゃん・・・マリちゃんとダイゴなら、どんなことだって乗り越えられるはずだよ・・あたしは信じてる・・・」
ミライに言われてマリが頷く。彼女は寄り添ってくるダイゴを強く抱きしめた。
「ダイゴ・・戻ってきて・・みんなとずっと一緒にいよう・・・」
マリがダイゴに向けて呼びかける。
「私・・このままではいたくない・・・このまま自由のない暗い場所にはいたくない・・・ダイゴだってそう思ってるはずだよ・・・」
「・・・マリ・・・」
「ダイゴと一緒にいたい・・・一緒に平穏な時間を過ごしたい・・・!」
声をもらすダイゴを、マリはさらに強く抱きしめた。彼女は自分の想いをひたすらダイゴに傾けていた。
「お願い、ダイゴ!戻ってきて!私たちの大切なものを取り戻そう!」
「マリ・・・!」
マリの呼び声に突き動かされて、ダイゴが目を見開いた。彼もマリを強く抱きしめていた。
「マリ・・・オレ・・オレは・・・」
「ダイゴ・・よかった・・目が覚めたのね・・・」
当惑を見せるダイゴに、マリが喜びを浮かべる。
「マリ・・・なっ!?ミライ!?おめぇ、何でここに・・!?」
ダイゴがミライの姿に驚く。するとミライがダイゴに笑顔を見せてきた。
「ダイゴも元気になってよかった・・これで安心できる・・・」
「ミライ・・おめぇもマリアに石にされたはず・・何でオレたちの前に・・・!?」
「あたしもどうなってるのか分かんないよ・・でもダイゴとマリちゃんとこうして会えたことは、あたしは嬉しい・・・」
疑問を投げかけるダイゴに、ミライが笑顔を崩さずに答える。ミライはダイゴとマリが元気になったことを快く思っていた。
「ダイゴ、マリちゃん・・あのマリアって悪者をやっつけて・・2人なら絶対に何とかしてくれる・・すごい力も持ってるし・・」
「ミライ・・・アイツの力はオレたち以上にバケモンだ・・けどこのまま何もしねぇ・・何もできねぇなんて、我慢がならねぇ・・・」
信頼を寄せるミライに、ダイゴが決意を口にする。
「こうなったら無理矢理にでも元に戻ってやる・・この体と魂がバラバラにならねぇ限り、オレはどこまでも逆らってやるんだ・・・!」
「私もこのままじっとなんてしていられない・・マリアに奪われたものを取り戻すために・・・」
ダイゴに続いてマリも決意を口にする。
「2人が完璧にそのつもりなら、あたしにはもう言うことがないかな・・」
2人の決心を察して、ミライが肩を落とす。だがミライはすぐに真剣な面持ちを見せた。
「マリちゃん・・ひとつだけ、お願いしたいことがあるんだけど・・・」
ミライの告げた言葉に、マリが当惑を見せる。
「もしも元に戻ったら、ダイゴを犯して・・・」
「えっ!?・・ミライちゃん、それではダイゴとミライさんが・・・!」
ミライの申し出にマリだけでなく、ダイゴも困惑を覚えていた。
「お願い・・そうでもしないと、あたし、諦めきれない気がするから・・・」
「ミライさん・・・」
思いつめるミライに、マリが戸惑いを膨らませる。
「そうしてダイゴとマリちゃんが結ばれれば、あたしも諦めが付ける・・だから・・・」
「ミライ・・・ミライはそれでいいのか?・・後悔はしねぇのか・・・?」
ダイゴが問いかけると、ミライは小さく頷いた。
「ダイゴとマリちゃんが納得してくれるなら・・幸せになれるなら・・・あたしは平気だよ・・・」
「ミライ・・・すまねぇ・・ホントにすまねぇ・・・」
「そこで謝られたら、それこそ諦めきれなくなっちゃうよ・・だから何度も言うけど、あたしのことは気にしないで・・ダイゴとマリちゃんは自分たちの信じている道を進んで・・・」
うつむくダイゴに呼びかけるミライ。彼女は2人を見つめながら、ゆっくりと離れていく。
「ミライ・・どこへ行く気だよ・・・!?」
「信じてるからね・・・ホントに・・信じてるから・・・」
手を伸ばすダイゴから、ミライは遠ざかり、姿を消していった。
「ミライさん・・・私たちに何もかも託して・・・」
「ホントにバカだ、アイツは・・・オレなんかのために、そこまで・・・」
戸惑いを募らせるマリと、歯がゆさを膨らませるダイゴ。
「・・こうなったらやるしかねぇ・・ミライやミソラ、みんなの信頼を裏切ることなんて、オレにはできねぇ・・・!」
「戻りたい・・ダイゴと一緒に・・あの安らげる本当の時間に・・・!」
一途な願いと決心を募らせるダイゴとマリ。抱きしめ合う2人の体から光があふれ出し、一気に強まっていった。
マリアによって石化されていたダイゴとマリ。だが2人の強い決心が、自身にかけられていた石化を打ち破った。
ヒビの入った石の体がさらにひび割れ、弾けるように2人の生身の体が解き放たれた。解放された彼らは、脱力してその場に倒れ込む。
「ハァ・・ハァ・・・元に、戻れたのか・・・?」
「本当の私たちの体・・・石化が解けている・・・」
元に戻れたことを実感して、ダイゴとマリが安堵を覚える。だが2人は互いの顔を見つめて、戸惑いを見せる。
「本当の体で、私たち、触れ合っているんですね・・・?」
「マリアの石化で、着ていたものを全部引き剥がされちまったしな・・・」
微笑みかけるマリに、ダイゴが憮然とした態度を見せる。するとマリが思いつめた表情を見せてきた。
「ダイゴ・・・このまま私を犯して・・ダイゴとひとつになりたい・・・」
「マリ・・・オレでホントにいいのか・・・オレみたいなヤツに・・・」
「いいよ・・ダイゴだったら・・全てを預けられる・・そう思ったから・・・」
戸惑いを見せるダイゴに、マリが笑顔を見せる。彼女は彼にさらに寄り添っていく。
「もう私は・・ダイゴしか愛せない・・・ごめんなさい・・ダイゴ・・・」
「マリ・・・」
想いを強めていくマリとダイゴが口づけを交わす。ダイゴは唐突にではなく、自分の意思でマリとの口づけを交わした。
2人はこのまま抱擁に身を委ねた。込み上げてくる衝動に駆り立てられるまま、ダイゴはマリの体に触れていった。
(オレは弱いヤツだった・・けど弱いからって思い上がってるヤツの言いなりになるのが我慢ならなかった・・・)
ダイゴが心の中で呟いていく。
(周りからは勇気があるとかムチャばかりとか言われるけど・・ホントはすごく弱い・・なんか支えがねぇと、すぐにでも折れちまいそうなくらい・・・)
自分の弱さを痛感し、込み上げてくる感情を膨らませていくダイゴ。彼は完全にマリに甘えていた。
(それを知られたら、オレは強くなれねぇと思ってた・・けどマリは、そんな弱いオレも全部受け止めてくれた・・・)
ダイゴはマリを強く抱きしめ、再び口づけを交わす。強まる快楽にさいなまれて、マリは秘所から愛液をあふれさせていた。
(だからオレは迷わねぇ・・マリの全部を受け止めてやる・・・!)
ダイゴはひたすらマリにすがりついた。互いが安らげる相手であると確信したまま抱きしめ合い、2人は夜を過ごした。
ダイゴとマリにかけられた石化が打ち破られた。そのことに、少女の1人を石化していたマリアはすぐに気付いた。
(ダイゴとマリが、活動した!?・・・バカな・・・!?)
目を見開いたマリアが思考を巡らせる。絶対的な支配の象徴といえる自分の石化が打ち破られたことに、彼女は疑念を抱いていた。
「バカな!?私の永遠の不自由が、私以外に解かれるなど、絶対にあり得ない!」
石化を破られたことが信じられず、マリアが声を荒げる。苛立ちを抑えきれず、彼女は敵意を石化されていく少女に向ける。
「お前たちのように、愚かな女は私の力にひれ伏すことになる・・それは絶対に変わらないことなのよ・・・!」
ピキッ パキッ パキッ
少女にかけられた石化が進行し、裸身をさらけ出して動きを封じていく。恐怖や助けをあらわにする彼女だが、マリアは全く意に介さない。
「お前もここで永遠の不自由を体感していなさい・・ダイゴもマリも、私から逃れることはできないのだから・・・」
ピキッ ピキキッ
さらに石に変わっていく少女を背にして、マリアは部屋から出ていった。
フッ
絶望感に満たされたまま、少女は完全に石化に包まれた。彼女もまた、マリアの力に屈服することとなった。
部屋を出たマリアの憤慨ぶりに、ショウも緊張を覚えていた。
「いかがなされましたか、マリア様・・・?」
「ダイゴとマリが、永遠の不自由から抜け出した・・・!」
ショウが声をかけると、マリアが声を振り絞る。彼女の答えを聞いて、ショウがさらに緊迫する。
「バカな!?・・マリア様の力を打ち破れる者など存在しません・・現にダイゴは、体を石にされただけでなく、心まで壊されたはずです・・・!」
「そうよ!私の力を破ることなんで絶対にない!それなのになぜ2人が・・!」
声を荒げるショウとマリア。受け入れられない現実が、マリアにダイゴとマリへの憎悪を膨らませていた。
「このままにはしておかない・・せっかく私の力を受けたというのに・・・!」
「マリア様・・・」
「そこまで拒絶するというなら、もう許さない・・・もう永遠の不自由を与えない・・完全に命を打ち砕いてやる・・・!」
「それならばマリア様の手を煩わせることはありません。私が2人の息の根を止めてきます・・」
怒りを抑えきれずにいるマリアに、ショウが声をかけてきた。
「ダイゴはお前の弟でしょう?大丈夫なの?」
「その心配は無用です。もはやダイゴのことは弟とは思っていません・・マリア様に敵意を見せた、その瞬間から・・」
マリアが疑問を投げかけると、ショウは不敵な笑みを見せて答える。それを聞いて、マリアが笑みを浮かべた。
「いいわ・・そこまでいうならやってみなさい・・お前は私の最高のしもべなのだから・・・」
「身に余るお言葉です・・・この宿命、私が終わらせてまいりましょう・・・」
マリアの言葉を受け止めて、ショウは動き出した。
(マリア様が得た現実が間違いであるとは思わない・・だがダイゴとマリが永遠の不自由から抜け出せたことが、私にも信じられない・・・)
考えを巡らせるショウが、緊迫を押さえこんでいく。
(何にしても、万が一にもダイゴたちが蘇っていたのなら、私が今度こそ葬ってやる・・世界を導くのは、マリア様でなければならないのだ・・・)
ダイゴとマリへの敵意を募らせて、ショウは行動を開始するのだった。
石化から逃れた後、抱擁を交わしたダイゴとマリ。2人は寄り添い合ったまま、互いを見つめ合っていた。
「マリ、すまねぇ・・オレ、ホントはこういうのはよくねぇと思ってた・・・」
ダイゴがマリに向けて謝意を見せる。
「こういうのは相手を傷つける行為だ・・体だけじゃなく、心も・・だから自己満足なことだから、オレとしちゃやりたくなかった・・・」
「ダイゴ・・・」
「けどマリ、おめぇはオレを受け止めてくれた・・弱く甘ったれたオレを受け入れてくれた・・・こんなオレに、何もかも預けてくれた・・・」
戸惑いを見せるマリの前で、ダイゴが感情をあらわにして涙する。
「ありがとう・・ホントにありがとう・・マリ・・・」
「気にしないで、ダイゴ・・私も、ダイゴを支えたいと思っているから・・・」
感謝するダイゴに、マリが優しく答える。
「ダイゴがいなかったら、私は本当に弱い自分のままだった・・ダイゴが私を強くしてくれた・・そんな気がしている・・・」
「マリ・・・」
「もう迷わない・・怯えたりしない・・自分の気持ちを打ち明けていく・・・私も・・・」
マリの心境を知って、ダイゴも戸惑いを募らせる。
「取り戻すんだ・・マリアが奪っていったもの全部・・・そして終わらせるんだ・・オレたちの過去も宿命も・・・」
ダイゴの決心にマリも頷く。2人は互いに心を預けるように、横たわったまま、抱きしめ合ったまま眠りについていった
次回
「お前たちは、決して犯してはならない禁忌を犯した・・」
「この至福を拒絶するというなら、破滅以外に道はない・・」
「もうおめぇは、オレのアニキじゃねぇ・・・」
「帰るんだ・・オレたちの安らげる場所へ・・・」