ガルヴォルスZERO 第13話「逃避への拒絶」
ダイゴを追って通りに飛び出したマリ。彼女はスパイダーガルヴォルスと対峙するダイゴを発見する。
「ダイゴ・・・!」
深刻さを募らせて、ダイゴに歩み寄ろうとしたマリ。そのとき、ダイゴの姿が異形の怪物へと変貌を遂げた。
「えっ・・・!?」
この変化に目を疑うマリ。彼女の目の前で、デーモンガルヴォルスとなったダイゴがスパイダーガルヴォルスを打ち倒した。
再び人間の姿に戻り、振り返ってきたダイゴ。彼に視線を向けられて、マリが恐怖を募らせる。
「ダ・・・ダイゴが・・・!?」
ダイゴが怪物であったことを知り、マリが後ずさりをする。ダイゴもマリに自分のことを知られて、驚愕を隠せなくなる。
「マリ・・・見てたのか、今の・・・!?」
声を振り絞って問いかけるダイゴだが、マリは恐怖に駆られて、震えるばかりだった。
「来ないで・・近寄らないで・・・!」
「待ってくれ・・オレの話を聞いてくれって・・・!」
「やめて!来ないで!」
近寄ろうとしたダイゴを、マリは悲鳴を上げて拒絶する。
「怪物・・・怪物・・・!」
マリはダイゴを拒絶して、たまらず駆け出していった。
「おいっ!」
呼び止めようとするダイゴだが、その声はマリに届くことはなかった。
「マリちゃん!?」
そのとき、マリと入れ違いでミライが駆けつけてきた。
「ダイゴ・・・マリちゃん、どうしたの・・・!?」
ミライが声をかけるが、困惑に駆られていたダイゴは答えない。どう呼びかけたらいいのか分からなくなり、ミライも言葉を失ってしまった。
ダイゴが怪物であったことに恐怖し、たまらず逃げ出してしまったマリ。怪物の凶暴性に恐れを感じ、彼女はその恐れを払拭することができなくなっていた。
(ダイゴが怪物!?・・そんなことって・・そんなことって!)
変わり果てたダイゴの姿に、マリは絶望感を感じていた。
(ダイゴは怪物になって、人を襲っているっていうの!?・・そんな、信じられない・・・!)
徐々にダイゴを拒絶していくようになるマリ。そのとき、彼女の脳裏にひとつのビジョンが浮かび上がってきた。
(あれ・・・!?)
その光景にマリは当惑する。
(あの姿・・前に、見たような気が・・・あれも、ダイゴ・・・!?)
頭の中を駆け巡っていく映像に、マリは頭に痛みを感じて顔を歪める。
(もしかして、私、どこかでダイゴに会ったことが・・・!?)
膨らんでいく疑念に押しつぶされそうになり、マリは冷静さを保てなくなっていた。
それからダイゴは家に戻ってきた。しかしマリは帰ってきていなかった。
ミライもダイゴについてきていた。しかしダイゴは何も打ち明けず、彼女は困惑していた。
(やっぱ、帰ってきてねぇのか・・・バケモンと一緒にいるなんてできねぇよな・・・)
この非常の事態に、ダイゴは思わず苦笑を浮かべる。
「ダイゴ、ホントにマリちゃんと何があったの・・・?」
ミライが声をかけるが、ダイゴはまたも答えようとしない。
「あのマリちゃんの様子は普通じゃなかった・・何かなくちゃ、あんなふうにはならないよ・・・ホントに何があったの?・・ねぇ、ダイゴ!」
ミライが悲痛さをあらわにして、ダイゴに詰め寄ってくる。それでもダイゴはその答えを正直に打ち明けようとしない。
「アイツは、オレのことを心から怖がってる・・・」
ダイゴはミライにそれだけを告げると、再び家を飛び出した。
(ダイゴ・・・ホントに・・ホントにどうしたっていうの・・・!?)
何も打ち明けないダイゴに対して、ミライは心配を膨らませる一方だった。
それからもマリの行方を追ったダイゴだが、彼女を見つけることができなかった。
家にも帰らず、マーロンにも立ち寄っていないマリ。彼女のことを気にかけながら、ダイゴは仕事をしていた。
マリのことが気がかりになり、ミソラがダイゴに声をかけてきた。
「ダイゴくん、マリちゃん、どうしちゃったの・・・?」
「知らねぇよ・・昨日から家に帰ってこねぇんだ・・・」
憮然とした態度で答えるダイゴに、ミソラが目を吊り上げる。
「ちょっと待ちなさいよ。マリちゃんがどこに行ったのか分からないで、あなたは心配じゃないの?」
「思い当たる場所は全部探した・・それでも見つからねぇんだよ・・・」
「それで諦めるの?簡単に諦めるなんて、ダイゴくんらしくないじゃない・・」
「簡単じゃねぇんだよ・・簡単に済むなら、苦労なんてねぇんだよ・・・!」
発破をかけようとするミソラだが、ダイゴは思いつめたまま奮い立つことはなかった。
「もしもアイツがどこにいるか分かってるなら、すぐにでも飛びつきてぇくれぇだ・・・」
ダイゴは愚痴をこぼして、ミソラの前から立ち去っていった。彼の後ろ姿を見て、ミソラは肩を落とす。
「今回は相当重症なみたいね・・マリちゃんもどうしたのかどうか・・・」
「昨日も今日もダイゴに話を聞こうとしたけど、全然答えてくれないんだよ・・マリちゃんとも連絡取れないし・・・」
ミソラに歩み寄ってきたミライも、困り顔を浮かべてきた。
「とりあえず、ジョージさんに連絡を入れてみる。ジョージさんなら、ダイゴくんからうまく聞きだしてくれるかも・・」
「あたし、ダイゴのそばについてる・・・ダイゴ、何か隠してることがあるような気がしてならない・・・」
呼びかけるミソラに、ミライが真剣な面持ちを見せて言いかける。ため息をつくミソラだが、ミライの申し出を受け入れる。
「本当だったらダメだって言いたいんだけど・・マリちゃんやダイゴくんがこの調子じゃ、私も参っちゃうからね・・・」
「ありがとうね、お姉ちゃん・・・」
了承するミソラに、ミライが笑顔で感謝する。
「それじゃ、早速行ってくるね♪」
「あっ!ちょっと、ミライ!・・もう・・」
上機嫌に外に飛び出していったミライに呆れて、ミソラが不満を覚える。彼女は気持ちを切り替えて、ジョージへの連絡を入れた。
感情のままにマーロンを飛び出したダイゴ。マリのことを気にしながらも、ダイゴは彼女に合わせる顔が見つからずにいた。
(マリは、完全にオレを拒絶している・・・オレがガルヴォルスだから、バケモノだから、オレを怖がってるんだ・・・)
マリの心境に対して、ダイゴが苦悩する。
(またアイツに会っても、さらに怖がらせるだけ・・・オレは、いったいどうしたらいいってんだ・・・!?)
苦悩を深めて顔を歪めるダイゴ。彼はこれからどうしていけばいいのか、道を見つけることもできずにいた。
そのとき、ダイゴの耳に重量感のある音が入ってきた。
「何だ、この音は?・・大きな動物が歩くような・・・」
この音に警戒を強めていくダイゴ。やがて彼の前に、サイの姿をした怪物が出現した。
「ガルヴォルス・・こんなところにまで・・・!」
苛立ちを覚えるダイゴが、デーモンガルヴォルスに変身する。彼は大きく飛び上がり、リノガルヴォルスの突進をかわす。
リノガルヴォルスが立ち止まり、着地したダイゴに振り返る。
「何でよけるんだよ・・大人しく突き飛ばされてりゃ楽になれるのに・・・」
「ふざけんな!突き飛ばされて嬉しがるヤツがいるか!」
不満を口にするリノガルヴォルスに、ダイゴも不満を言い放つ。
「いいから大人しく突き飛ばされろよ!そんでもって、激しく転がっていけよ!」
いきり立ったリノガルヴォルスがダイゴに再び突進を仕掛ける。ダイゴはとっさにリノガルヴォルスの横に回りこんで突進を回避し、反撃に転じる。
ダイゴの放つ重い攻撃に、リノガルヴォルスが追い込まれていく。ダイゴが具現化した剣で、リノガルヴォルスに斬りかかろうとした。
そのとき、ダイゴの脳裏にマリの恐怖する姿がよぎってきた。彼女の怯える姿から、ダイゴは攻撃に躊躇を抱いてしまった。
剣を振りかざすことができずにいるダイゴ。その隙を狙って、リノガルヴォルスが突進を仕掛けてきた。
「ぐっ!」
重い圧力をかけられて、ダイゴが押されていく。そのまま壁に叩きつけられて、彼は痛烈なダメージを受ける。
「がはっ!」
激痛にさいなまれて吐血するダイゴ。さらにリノガルヴォルスに突き飛ばされた彼は、激しく横転する。
押し寄せる痛みに耐えかねて、ダイゴの姿が人間に戻る。彼を突き飛ばせたことに、リノガルヴォルスが歓喜を覚える。
「いい感じだ・・やっぱりこういう快感がないとつまらない・・・」
ダイゴに向かって迫っていくリノガルヴォルス。力を振り絞るダイゴだが、思うように体が動かない。
「くそっ!・・こんなところで、オレはやられるわけにはいかねぇんだよ・・・!」
「ダイゴ!」
ダイゴがうめいたところで、別の声が飛び込んできた。彼を追いかけて、ミライが駆けつけてきた。
「ミライ!?・・逃げろ!あんなヤツに関わると、命がないぞ!」
ミライに向けて必死に呼びかけるダイゴ。彼女に気付いたリノガルヴォルスが、狙いを変えて歩を進めてきた。
「女を突き飛ばすのも、気分がいいんだよな・・」
「冗談じゃないって!アンタみたいなのに突き飛ばされたら、バラバラになっちゃうじゃない!」
妖しい笑みを浮かべるリノガルヴォルスに、ミライが不満を口にする。
「やめろ・・ミライに手を出すんじゃねぇ・・・!」
ダイゴがようやく立ち上がり、リノガルヴォルスに呼びかける。
「悪いけど、もうお前には飽きてるんだよ・・ボロボロなヤツを突き飛ばしても、面白くないんだよ・・」
リノガルヴォルスはダイゴを意に介さず、ミライに狙いを絞る。自分勝手なこの行動に、ダイゴは怒りを膨らませる。
「ふざけんな・・おめぇみてぇなヤツに、オレの知り合いを傷つけさせてたまるか!」
感情の奮い立つままに、ダイゴがデーモンガルヴォルスに変身する。その変貌にミライが目を疑った。
「ダイゴ!?・・その姿・・・!?」
「まだそんな力が残ってたのか・・でも邪魔すんなよ・・この女を突き飛ばすんだから・・・」
愕然となるミライと、不満を口にするリノガルヴォルス。
「ミライから離れろ・・さもねぇと容赦しねぇぞ・・・!」
「生意気な・・そんなに邪魔したいっていうのかよ・・・!?」
鋭く言い放つダイゴに、リノガルヴォルスが苛立ちを浮かべる。狙いをダイゴに戻して、リノガルヴォルスが突進を仕掛ける。
だがダイゴに突進を受け止められ、リノガルヴォルスが押し止められる。
「負けられねぇ・・おめぇなんかに、負けるわけにはいかねぇんだよ!」
声と力を振り絞るダイゴが、リノガルヴォルスを押し切っていく。彼の底力にリノガルヴォルスが焦りを覚える。
「ぐっ!どんどん力が上がってる!オレが力で競り負けるなんてこと!」
毒づいたリノガルヴォルスがとっさにダイゴの攻めを逃れる。力を振り絞って疲弊しながらも、ダイゴがリノガルヴォルスに振り返り、鋭い視線を向ける。
「ちくしょう!次はこうはいかないからな!」
リノガルヴォルスは捨て台詞を吐くと、ダイゴたちの前から逃げ出していった。追いかけようとしたダイゴだが、力を使い果たして人間の姿に戻ってしまう。
「ダイゴ!」
その場に倒れたダイゴに、ミライが駆け寄る。力を使い果たしたダイゴは、ついに意識を失ってしまった。
そんな彼らを遠くから見つめる、1人の人物の存在があった。
ガルヴォルスの姿を目の当たりにして、マリはダイゴを拒絶していた。家に帰らず、彼女は知り合いの家に泊まり歩いていた。
しかしダイゴへの恐怖を拭うことはできず、彼女は実質途方に暮れていた。
(私、どうしたらいいの・・怪物だったダイゴと、これからどう向き合っていけばいいの・・・?)
自分に問いかけるもその答えが出ず、マリは困惑を膨らませていた。
(もう、ダイゴと会わないほうがいいのかもしれない・・もしも会って、ダイゴに・・・)
込み上げてくる不安にさいなまれて、マリは体を震わせる。
そのとき、マリの脳裏にある光景がよぎってきた。それは夜の森を逃げ惑う自分自身だった。
(これって、私・・・!?)
その光景に困惑するマリ。逃げる自分を追いかけてくる影。それはガルヴォルスとなっているダイゴだった。
(ダイゴ!?・・どうしてダイゴが私を・・・!?)
さらに困惑するマリ。なぜダイゴが自分を追ってきているのか、彼女は把握できないでいた。
そこで脳裏によぎってきた光景が途切れ、マリは現実に引き戻された。
「今のはいったい!?・・あの姿・・前に、見たような気が・・・私とダイゴに、何があるの・・・!?」
息を荒げながら声を発するマリ。だが彼女が投げかけた疑問に答えるものはなかった。
リノガルヴォルスとの戦いで力を使い果たし、意識を失っていたダイゴ。ミライが心配の声をかける中、彼は意識を取り戻した。
「ダイゴ・・目が覚めたんだね・・・」
「ミライ・・・オレは・・・」
安堵を浮かべるミライに、ダイゴが当惑を見せる。記憶を思い返した彼は、未来に対して気まずさを見せる。
「おめぇも見ただろ・・オレのあの姿・・・」
ダイゴが投げかけた言葉を聞いて、ミライが息を呑む。彼女もダイゴの異形の姿を思い返していた。
「あんな姿を見て、ビビらねぇヤツは少ねぇ・・おめぇだって、オレのことを・・・」
「そんなことないよ・・・」
不安の言葉を口にするダイゴに対し、ミライが微笑みかける。
「何言ってんだよ・・下手したら、オレはミライや他のヤツまで・・・」
「たとえ人間じゃなくたって、怪物だって、ダイゴであることに変わりないじゃない・・だって、怪物の姿になっても、ダイゴの心はそこにあった・・・」
困惑を見せるダイゴに、ミライが笑顔を見せる。彼女の言葉にダイゴの心が揺らぐ。
「許せないものに対して、体を張って飛びかかっていく・・いつものダイゴだよ・・・」
「いつものオレ・・・ガルヴォルスになっても、オレはオレか・・・」
ミライに励まされて、ダイゴが苦笑を浮かべる。ガルヴォルスになっても自分がここにいることに変わりがないことを、彼は改めて思い知らされていた。
「けど、マリはオレのあの姿に完全にビビってる・・おめぇみてぇに割り切れてねぇんだ・・・」
「マリちゃんが・・・マリちゃんがダイゴを拒絶するなんてこと・・・」
再び深刻さを浮かべるダイゴに、マリが困惑する。
「そんなことない・・マリちゃんがダイゴを拒絶するなんてないって!度胸のあるダイゴを拒絶するなんて・・・!」
「ミライ・・・」
「探そう、マリちゃんを!もう1度話をすれば、きっと分かってくれるから!」
戸惑いを見せるダイゴに、ミライが呼びかける。彼女の呼びかけにダイゴは奮い立とうとした。
「久しぶりだね・・ダイゴ・・・」
そのとき、ダイゴは突然声をかけられて振り返る。その先にいたのは長身と首ほどまである黒髪をした青年だった。
その青年を目にして、ダイゴが息を呑む。
「ア・・・アニキ・・・!」
「ここで会えるとは、正直驚きだったよ、ダイゴ・・・」
声を荒げるダイゴに、青年が微笑みかける。彼はダイゴの兄、佐々木ショウだった。
次回
「ダイゴのことは耳にしていたよ・・・」
「私は、もうあなたのそばにはいられない・・・」
「私も覚醒を果たしていたんだ・・・」
「世界は塗り替えられなければならない・・人間以上にためらいを捨てなければならない・・・」