ガルヴォルスZEROrevenge 第23話「幸せの在処」
ココロの手にかかり、アテナまでも完全に石化していった。石化と快楽に包まれた彼女を見つめて、ココロは喜びを感じていた。
「あなたの不幸はとても深かった・・でも私に全てを委ねたことで、あなたも最高の幸せを手に入れることができた・・・」
笑みをこぼしていくココロが、アテナの石の裸身を見つめていく。
「完全に石になれば、あなたも体も心も快楽で満たされる・・もう辛いことや苦しいことを考えていないわ・・」
アテナが幸せで満たされていると確信して、ココロがアテナの胸に手を当てる。彼女はアテナの心の内を探り、幸せを感じ取ろうとした。
「あなたを不幸にするものは何もない・・このまま終わりのない最高の幸せを・・・」
そのとき、ココロが当然笑みを消し、緊張の色を浮かべた。
ココロの石化にかかった人は、人間、ガルヴォルス問わず、快楽に満たされて喜びにあふれる。だがアテナは違った。
完全に石化されているにもかかわらず、アテナの心は苦悶が残っていた。不幸への憎悪、ガルヴォルスがもたらすものが不幸でしかないという気持ちが、ココロのもたらす快楽を無意識に拒絶しようとしていた。
「どうして!?・・・完全に石化しているのにまだ辛くなっているなんて・・・今までなかった・・・!」
予想だにしない事態に、ココロはたまらず声を荒げる。アテナが未だに抱えている辛さが、彼女の心をも締め付けていた。
「なぜそこまで不幸を感じているの?・・なぜ幸せになれないの・・・?」
困惑のあまりに、アテナに向けて声をかけるココロ。しかし体が石になり、心も快楽と苦悩にさいなまれているアテナからは、彼女の声を受けての反応はなかった。
「私が幸せにしてあげないと・・このまま永遠の不幸になってしまったら、私のしたことは逆効果になってしまう・・・」
焦りを感じたココロがアテナに意識を傾ける。
「癒してあげないと・・幸せにしてあげないと・・直接、彼女の心に触れて・・・」
ココロはアテナの心の中に入り込み、自分の考える幸せを与えようとしていた。
ココロによって石化され、快楽に満たされたはずのアテナ。だが包んできている快楽が不幸と考えていたアテナは、未だに辛さを抱えていた。
「私は・・こんなものを幸せだなんて思わない・・本当の幸せは、もっと他の何か・・・」
必死に自分に言い聞かせようとするアテナ。彼女が快楽だけに気持ちが傾かないようになっていたのは、本当の幸せを求めていたからである。
そんなアテナは、無意識に自分が関わってきた人を思い浮かべるようになっていた。
「ダイゴ・・マリさん・・ミライさん・・ミソラさん・・・みんな・・・」
ダイゴたちを思うようになってきたアテナ。快楽に打ちひしがれていく彼女には、ダイゴたちにすがるしか自我を保てなかった。
「まだ、不幸を抱えているようね・・・」
そこへ声が響き渡り、アテナが当惑する。心の世界に現れたのは、アテナと同じく一糸まとわぬ姿をしたココロだった。
「ココロ・・どうして、私の前に・・・!?」
「私は心の中に自分の意識を忍び込ませることができるのよ。もっとも、些細なことでも、何かあれば無事では済まなくなるけど・・」
声を荒げるアテナに、ココロが妖しく微笑みながら答える。
「あなたは私の石化を受けて、快楽を感じて辛いことを忘れて幸せになっているはずだった・・でもあなたにはまだ不幸が残っている・・・」
「当然じゃない・・お前が私に与えたのは幸せなんかじゃない・・不幸よ・・・!」
「私の与える幸せを不幸だと思い込んでいる・・その気持ちが、あなたの中に不幸を留まらせている・・それは辛いだけなのに・・・」
「違う・・私はお前の思い通りになりたくないのよ・・私が求めている幸せは、お前では作れない・・・」
近寄ってくるココロをアテナが拒絶しようとする。だがアテナはなすすべなくココロに抱きしめられる。
「私はみんなを幸せにしたい・・それは自己満足ではない・・・ガルヴォルスになる前の私が、大切な人を不幸に追い込んでしまったから・・・」
震えるアテナのぬくもりを感じながら、ココロは囁くように語り始めた。
私は幼い頃、とある施設にいた。表向きは親のいない子供を保護する保育施設だったけど、設立した組織への雑用をそこの子供たちはさせられていた。
私もその施設に入れられて、組織の人間にこき使われていた。感情を失くしていた私は、されるがままに雑用をしていた。
このときの私は感情も知識もなかった。何が正しくて何が間違いなのか、判断することもできなかった。
でも雑用をしていく中、私の耳に他の子供たちの話が入ってきた。
「本当にこれで、私たち幸せになれるのかな・・・?」
「いつもいつも掃除や荷物運びをやらされてばかり・・・」
「こんなの全然楽しくない・・もうこんなところにいたくないよ・・・」
不安と涙を浮かべる子供たち。だが組織の人間は、そんな子供たちの気持ちなど知ろうともしなかった。
情け容赦なく子供たちを従わせていく大人。だがそんな組織に反旗を翻した子供がいた。
「もういい加減にして!こんなの全然幸せじゃない!操り人形にされているのと変わんないよ!」
組織の大人に怒る子供。でも大人の怒りを買うことになり、今まで以上の暴力を振るわれることになった。
体格や力の差は明らかだった。一方的にいたぶられ、子供は傷だらけになった。
「こんなのの・・こんなののどこに幸せがあるの・・・!?」
しかし子供は屈服せず、まだ大人に抵抗しようとして起き上がろうとする。
「小さな幸せぐらいいいじゃない・・私たちだって、自由に生きたっていいじゃない!」
小さな願いをひたすら訴える子供。しかし組織の暴力が、その子供の命を無慈悲に奪うことになった。
しかもその死は組織に隠ぺいされた。施設にいた人しかこの事実は知らず、子供たちは口外する術も気力もなかった。
でもこの出来事をきっかけにして、私の中になかったはずの感情が芽生えてきていた。
(幸せって何?・・ここにいるみんなは、今は幸せなのかな・・・?)
作業をする中、私は心の中で疑問を投げかけるようになっていた。
(こうして無理矢理仕事をさせられて、ちゃんとやらないと暴力を振るわれ、最悪殺される・・どうして私たち、こんな辛いところにいつまでもいるのかな・・・?)
本当の幸せと、終わりを迎えない不幸。私はそれらの意味を考えるようになっていった。
次第にその気持ちは、不幸の払拭と幸せへの渇望につながっていった。
自分が幸せになるだけではいけない。不幸を抱えている人がみんな幸せであってほしい。その気持ちが、私の中で日に日に強くなっていった。
膨らんでいった幸せへの願いは、私に力を与えることになった。ガルヴォルスの、女神の力を。
不幸を抱えている人に幸せを、幸せを壊す人に天罰を。
女神のガルヴォルスとなった私は、組織の大人を断罪した。これで施設にいた子供たちが笑顔を取り戻すはずだった。
でも子供たちが負った心の傷は深すぎた。組織の大人はいなくなっても、大人から暴力を振るわれる恐怖が、子供たちの心に刻み込まれていた。
これがトラウマというものだと痛感した。危害を加えるつもりが全くなくても、ただ手を伸ばしただけで暴力を振るわれると反射的に思い込み、拒絶してしまう。
ガルヴォルスになっても、私はまだ無力だと思い知った。みんなの幸せを守るには、力を手にするのが遅すぎた。
私はもっと求めるようになっていた。力と幸せを。幸せを守り、幸せを与え、不幸を消すことのできる力を。
私は大人へと成長していくうちに、本当の幸せがどういうものなのかを理解するようになっていった。そしてその本質を私の中で確立させるに至った。
体も心も気持ちよくさせて、辛いことや苦しいことを考えられないようにすればいい。そのための力を、私は生み出すことができた。
実際に試したところ、その人は辛さや苦しみを消し去ることができた。体を包む快楽が、その人を喜びで満たすことになった。
これが快楽をもたらす石化。決して不幸になることのない、終わりのない最高の幸せ。
その幸せを与えるのが私。強く幸せを望み、みんなを幸せにしたいと願っている私の役目。
抱えている不幸が大きいほど、その不幸を消し去りたい気持ちが強くなる。
その気持ちを心の中に宿して、私はたくさんの不幸を消し、たくさんの人を幸せに導いた。
誰だって不幸でいたくない。不幸のままでいたいとは思っていない。
私は不幸になって絶望している人に幸せを与える。私の力で、誰もが幸せになることができる。
みんなを幸せにすることが、私の1番の望みであり、役目になっていた。
アテナに向けて自分の過去と決意を打ち明けたココロ。しかしアテナは聞き入れようとしていなかった。
「最初は小さな幸せを守りたかった・・目の前の幸福を守りたいだけだった・・・」
語りかけていくココロが悩ましい表情を浮かべる。
「ガルヴォルスになっても、力を手に入れても、そばにいた人を幸せにすることができなかった・・小さな幸せも守れない自分が、不幸に感じていた・・」
再びアテナを抱き寄せるココロ。悲観を見せるココロだが、アテナはそんな彼女の心境をも不幸の対象として認識していた。
「誰だって辛いのはイヤ、幸せになりたいと思っている・・いつまでも不幸になっている人が幸せになれないのは、私には耐えられなかった・・・」
「やめて・・私は、お前にいいようにはされたくない・・・」
「それはあなたに対しても気持ちは同じ・・あなたが深い不幸を抱えているのを、私は見て見ないふりなんてしたくない・・・」
拒絶しようとするアテナに、ココロが顔を近づけてくる。
「だからどんなことをしてでも、幸せを与える・・・あなたには心から幸せを感じてほしい・・・あなたの不幸、絶対に消し去ってみせる・・・!」
ココロがアテナに口づけを交わす。振り払おうとするアテナだが、ココロに抗う力を出せなかった。
さらにココロはアテナの胸に手を当てて、撫でまわしてきた。この接触が押し寄せてくる快楽を強めて、アテナが苦悶を募らせる。
「本当の幸せは、不幸が考えられなくなること・・こうして不幸を吹き飛ばすほどの刺激と快感を感じていれば、不幸は感じなくなる・・」
「違う・・お前のそんな自己満足が、不幸を生み出しているのよ・・・!」
「それさえも忘れてしまえばいい・・忘れることができれば、あなたは幸せになれる・・・」
抵抗を見せるアテナを、ココロはさらに撫でまわしていく。快楽に耐えられなくなり、アテナが息を絶え絶えにしていく。
「私が忘れさせてあげる・・あなたが心から望んでいた幸せにために・・・」
ココロは妖しく微笑むと、アテナの下腹部に手を伸ばした。ココロに秘所を触られて、アテナは呼吸をさらに荒くする。
「やめて・・おかしくなっちゃう・・おかしくなっちゃうよ・・・!」
呼びかけるアテナだが、ココロは彼女にさらに密着していく。抵抗する力も理性も失い、アテナはココロにされるがままになっていた。
「これからは私があなたを守る・・もうあなたに、辛い思いは絶対にさせない・・・」
「ダメ・・・私は不幸になりたくない・・・ダイゴ・・マリさん・・・助けて・・・」
ココロに弄ばれて、辛さのあまりに涙を流すアテナ。彼女は無意識にダイゴたちに助けを求めていた。
ココロによって石化され、完全に快感に溺れていたダイゴとマリ。2人は互いに触れ合って、快楽を堪能していた。
マリに胸を当てられることにダイゴが心地よさを感じ、ダイゴに胸を撫でられてマリがあえいでいく。
2人ともココロのもたらす快楽に犯されていた。アテナやミライ、自分たちが心を寄せている人や場所のことを、2人は忘れてしまっていた。
自分たちの信じる道を進み、自分たちが安らげる場所を守るために戦ってきた。その2人の心さえも、ココロの力は快楽の虜にしてしまっていた。
長く安らかな抱擁を堪能していくダイゴとマリ。だが2人の目からはうっすらと涙があふれてきていた。
それは抱擁と快楽の喜びの表れなのか、ココロのもたらす快楽を不快に感じてのものなのか。問いかけようとしても、快楽に支配されている2人に答えることはできなかった。
「ダイゴ・・・マリさん・・・」
ダイゴとマリの心の中に声が響き渡る。しかし耳に入っても、2人には伝わっていない。
「ダイゴ・・マリさん・・・助けて・・・」
ダイゴとマリに向けて繰り返される呼び声。それはココロに心を犯されようとしているアテナの声だった。
「イヤ・・やめて・・・私・・このままじゃ・・おかしくなってしまう・・不幸になってしまう・・・」
アテナの声がさらに響き渡る。それでもダイゴとマリは抱擁を続けていく。
「もう・・あなたたちに頼るしかない・・・」
そのとき、ダイゴとマリの前にアテナが姿を現した。流れるように現れたアテナは、そのまま2人に寄り添った。
「ダイゴ・・マリさん・・あなたたちが貫いていた気持ちは、こんなことで壊れてしまうものなの?・・こんな簡単に捻じ曲がってしまうの・・・?」
アテナが囁くように言いかけるが、ダイゴとマリは抱擁の堪能を続けていく。
「そんな気持ちに私が負けたなんて・・信じたくない・・あなたたちが求めている幸せは・・こんなものではないでしょう・・・?」
弱々しくも必死に呼びかけていくアテナ。彼女はダイゴとマリが心の中で快楽に溺れていることが我慢ならなかった。
「お願い・・2人ともしっかりして・・・このままじゃ・・私までおかしくなってしまう・・・」
辛さを募らせていくアテナが、ダイゴとマリへの信頼を強めていく。
そのとき、ダイゴとマリが快楽の赴くままに、アテナの裸身に触れてきた。
「ち、ちょっと・・2人とも・・・やめ・・・」
2人に詰め寄られて、アテナがうめき声を上げる。しかし抵抗するだけの力を出せず、アテナは快楽に駆り立てられるダイゴとマリにされるがままになる。
「ダイゴは、心から許せない人には、いつも突っかかってたじゃない・・それなのに、アイツのいいようにされて、こんなことをしていて・・・」
アテナは快楽に耐えようとしながら、ダイゴとマリにひたすら呼びかけていく。
「マリさんも、自分勝手な人に振り回されてきたから、その運命から逃れようと必死だったでしょう!?・・それなのに、このままこのおかしい気分に包まれていていいんですか・・・!?」
ダイゴとマリに触れられて快感に襲われながら、アテナはさらに声をかけていく。
「だから、不幸を消して・・・自分たちに、幸せをもたらして・・・!」
自分の願いを託し、アテナはダイゴとマリの体を強く抱きしめた。彼女は2人に自分の思いを込めるのだった。
「ダイゴ・・・マリさん・・・助けて・・・」
次回
「裏切られたと思って憎んできた人・・・」
「でも、そんなみんなが、私が信じるべき人たちだった・・・」
「信じたい・・・信じてるから・・・」
「あなたたちの居場所が、私の幸せになっているから・・・」