ガルヴォルスZEROrevenge 第22話「魔性の幸福」

 

 

 ココロになすすべなく連れ去られてしまったミライとアテナ。ミライとともに意識を失っていたアテナは、意識を取り戻した。

「私・・・あのガルヴォルスに連れていかれて・・・」

 アテナは体を起して、記憶を巡らせていく。彼女がいたのは明かりのない部屋だったが、夜目が利いて広い部屋の真ん中にいることだけは把握できた。

「出てこい!ここはどこなの!?

 アテナが周囲を見回して、ココロを探して呼びかける。彼女の大声を耳にして、ミライが目を覚ます。

「アテナちゃん・・・ここは・・・?」

「ミライさん・・目が覚めたんですね・・・」

 体を起こすミライに気付いて、アテナが声をかける。

「私も今目が覚めて、どこなのか分かりません・・」

「ここは私の屋敷の1室・・」

 説明するアテナに声をかけてきたのはミライではなかった。その瞬間、暗闇に満ちていた部屋に明かりが灯った。

 部屋の中の光景に、ミライとアテナは息をのんだ。部屋の中には多くの全裸の美女の石像が立ち並んでいた。その全員が呆然とした表情をして立ち尽くしていた。

「ちょっと・・・もしかして、ここにいるのは・・・!?

 ミライは一気に不安を膨らませていく。彼女は全裸の石像にされる石化を体感していたため、不安を感じていたのである。

「元々は人・・人間だけでなく、ガルヴォルスも含まれているわ・・・」

「また・・人を裸の石にする人が出てくるなんて・・・!」

「怖がることはないわ・・なぜなら、単に石化しているだけではないから・・・」

 ココロが語りかけてきたことに、ミライだけでなくアテナも当惑していた。

「私の石化を受けるとどんどん気持ちよくなっていく。結果、辛いことや苦しいことを考えることがなくなる・・ここにいる誰もが、私が与えた幸せで満ちているのよ・・」

「そんな・・石にされて、気持ちよくなるなんて・・・!」

 ココロの言葉が信じられず、アテナが声を荒げる。

「なら誰かに触れて確かめてみるといいわ。能力の高いガルヴォルスであるあなたなら、感じ取れるはずよ。みんなの幸せを・・」

 ココロに促される形で、アテナが石化された美女の1人に近づき、石の裸身に手を当てた。

(アハァ・・気持ちいい・・・もっと・・もっと触って・・・)

 その瞬間に伝わってきた声に、アテナは驚愕を覚える。彼女はその声が、自分が触れている女性の心の声であると痛感した。

「何で・・こんなことになっているのに、何で喜んでいるの・・・!?

「私が与えた幸せを感じているのよ・・・」

 愕然となるアテナに、ココロが妖しく微笑みかけてくる。

「現にみんな喜んでいる・・イヤなこと、辛いことを感じなくなっている・・これが本当の幸せよ・・・」

「こんなの・・こんなの幸せであるはずがない!これは喜んでいるんじゃなくて、おかしくなってるのよ!」

 笑みを強めるココロに、アテナが怒号を放つ。

「あなたが幸せというおかしさを押しつけた!お前はみんなをおかしくして、自己満足しているだけよ!」

「いいえ。これが本当の幸せの形。これこそが不幸を消す最高の方法よ・・」

 怒りのままに叫ぶアテナだが、ココロは妖しい笑みを消さない。

「私の力があれば、誰もが幸せになれる・・・あなたも本当の意味で幸せになれるのよ・・・」

「そんなことで・・私が幸せになるなんて・・・!」

 手を差し伸べてくるココロに対し、アテナが困惑を浮かべる。するとミライがココロの前に立ちはだかり、アテナを庇おうとする。

「アテナちゃんには指一本触れさせないよ!ダイゴとマリちゃんが来るまで、あたしがアテナちゃんを守るんだから!」

「あなたは人間のようだから私の力に感化されることはないようね・・」

 叫ぶミライを見つめて、ココロが淡々と言いかける。

「それに、ダイゴとマリは私の部屋にいるわ・・」

「ダイゴとマリちゃんが・・・まさか、2人とも!?

 手招きをしてくるココロに、ミライが愕然となる。

「ついてきなさい。見せてあげるわ。2人が辛さと苦しみから解き放たれた姿を・・」

 歩き出すココロに、ミライもアテナも困惑するばかりだった。2人はダイゴとマリを追い求めようと、ココロを追いかけるのだった。

 ココロの私室に通されたミライとアテナ。そこで2人は、抱き合って立ち尽くしたまま石化したダイゴとマリを目の当たりにする。

「ダイゴ・・マリちゃん・・・そんな・・・!?

「2人まで・・こんな姿に・・・!?

 変わり果てたダイゴとマリに目を疑うミライとアテナ。たまらなくなったアテナが、首を大きく横に振る。

「でも、石化されたって、この2人がおかしくなるなんてこと・・・!」

「確かめてみればいいわ。2人は今まで体感してきた辛さや苦しみから解放されて、2人だけの時間を楽しんでいるから・・・」

 不安を否定しようと声を振り絞るアテナに、ココロが微笑みかける。不安をかき消そうと、アテナは恐る恐るダイゴとマリに近づき、石の裸身に触れる。

 アテナの脳裏に、ダイゴとマリの意識が入りこんでくる。2人もココロがもたらした快楽に完全に浸っていた。

「ウソ・・・!?

 アテナの中で絶望が膨らんでいく。ダイゴとマリの意識は、互いに触れ合って心地よさを感じ合っていた。

「あなたに負けず劣らずの不幸を抱えていたダイゴとマリも、私の力で幸せになれた・・あなたも私に全てを委ねれば、不幸を感じることがなくなる・・・」

「不幸がなくなる・・・これが、不幸が消えることになるわけ・・・!」

 再び手招きするココロに反論しようとするアテナだが、困惑の色を隠せなくなっていた。

「アテナちゃんは逃げて!」

 そこへミライがアテナに呼びかけ、ココロをじっと見据えてきた。

「アテナちゃんをこんな人の好きにはさせられない!あたしが何とか食い止めるから、そのうちに逃げて!」

「ミライさん・・でも、それだとミライさんが・・・!」

「あたし、アテナちゃんにちゃんと幸せになってほしい・・あんなおかしなことじゃなくて、ホントの意味で幸せになってほしい・・・」

 庇おうとしてくれるミライに、アテナがさらに困惑する。するとミライがアテナに微笑みかけて、自分の気持ちを伝えてきた。

「そんなに嫌がることはないわ・・気持ちが楽になれるのは、あなたたちも分かってもらえているはずよ・・」

 微笑んでいくココロの頬に紋様が走る。

「ガルヴォルスになる・・・アテナちゃん、急いで!」

 ミライに呼びかけられてミライが部屋から飛び出そうとする。だがココロがヴィーナスガルヴォルスとなり、彼女がもたらす恍惚に襲われて、アテナが部屋の出入り口の前でうずくまる。

「アテナちゃん!」

「また・・このおかしな感じ・・・!」

 叫ぶミライと、苦悶を浮かべるアテナ。そのアテナの頬に紋様が走った。

「でも、石にされたら、この感じをずっと味わうことになる・・・!」

 サキュバスガルヴォルスに変身し、さらに一気に刺々しい姿へと変貌していく。恍惚に耐えながら、アテナはココロに歩を進めていく。

「お前の偽物の幸せにはすがらない・・私はお前の思い通りにはならない!」

 アテナが言い放ち、ココロに向けて爪を突き付ける。だがココロは軽々とアテナの爪をかわした。

「前にも言ったでしょう?私は思い通りに急所を動かせることができると・・それに同じ手を何度も受ける気もないわ・・」

「速い・・・!」

 淡々と言いかけるココロに、アテナが目を見開く。

「あなたが抱えている不幸、私が消してあげる・・あなたに最高の、永遠の幸せが生まれることを・・・」

「アテナちゃん!」

 アテナに手を伸ばそうとするココロに、ミライが飛び込む。彼女はミライを横から突き飛ばすと、ココロの手に捕まってしまう。

「順番が変わってしまったみたいだけど・・まずはあなたから楽にしてあげる・・・」

 妖しく微笑むココロが、ミライをつかんでいる手から閃光を放つ。光に包まれたミライが、着ていた服を引き裂かれて体を蝕まれていく。

「ミライさん!」

 目を見開いて叫ぶアテナ。光から現れたミライは裸身をさらけ出し、体も石化と快楽に蝕まれていた。

「これであなたも、私のもたらす幸せを感じることができる・・・」

「何・・この感じ・・・気持ちを、抑えられない・・・」

 微笑みかけるココロの前で、ミライが押し寄せてくる恍惚を覚えてうめく。

「ダメ・・ヘンになりそう・・ダイゴやアテナちゃんたちは・・こんな気分を感じてたの・・・?」

「ミライさん・・しっかりして、ミライさん!」

 息を荒くしていくミライに、アテナが駆け寄っていく。しかしミライはココロのもたらす快楽にさいなまれて、自分を保てなくなっていた。

「ミライさん、あんなヤツの思い通りにされないで!」

「もう・・我慢・・できない・・・」

 アテナが呼びかけるが、ミライが快楽のあまりに秘所から愛液をあふれさせる。彼女が快楽に犯されたと痛感して、アテナが愕然となる。

 棒立ちのまま身動きが取れないまま、ミライの体がさらに石へと変質していく。目からも涙をあふれさせながら、ミライがアテナに向けて声を振り絞る。

「アテナちゃん・・逃げて・・・アテナちゃんは・・幸せになって・・・」

「ミライさん・・・!」

「願っているよ・・アテナちゃんが・・幸せになれるのを・・・」

 困惑するアテナに願いを託すミライ。彼女から生の輝きが完全に失われた。

「これで彼女も、不幸から解放された・・・」

 一糸まとわぬ石像となったミライを見つめて、ココロが妖しく微笑む。するとアテナが彼女に振り返り、怒りを見せつけてくる。

「彼女も幸せで満たされているわ。あなたなら彼女の喜びの声が聞こえているはずよ・・」

 笑みを絶やさないココロの言葉を聞いて、アテナが不安を覚える。彼女の耳に、快楽に喜びを感じているミライの声が入りこんできていた。

「あなたにもこの幸せを堪能させてあげる・・強く不幸から抜け出したいと願っていたあなたにとって、これほど満たされることはないわ・・」

「どこまでも勝手なことを・・その勝手が不幸を呼び込んでいることに、どうして気付かないの!?

 手招きしてくるココロに、アテナが飛びかかって爪を突き立てる。だが彼女が伸ばした右手はココロの左手に止められ、爪は届いていなかった。

「気付いていないのは、分かっていないのはあなたのほう・・不幸がイヤだということを、あなたのほうが分かっているはずだけど・・・」

 ココロは低く告げると、アテナを引き寄せて抱きしめてきた。耐えていた恍惚が強く感じるようになり、アテナが苦悶を覚える。

「これだけ密着していたら、どんなガルヴォルスでも感じずにはいられなくなる・・」

「放して・・私は・・お前の思い通りには・・・!」

 妖しく微笑んでくるココロの腕の中で、アテナが声を荒げる。しかしココロの腕の力と押し寄せる快楽で、アテナは脱出することができなくなっていた。

 やがて快楽の耐えられなくなり、アテナが人間の姿に戻る。

「肩の力を抜いて、もっと楽になって・・私があなたの不幸を消してあげるから・・・」

「やめて・・私をおかしくしないで・・・不幸にしないで・・・!」

 誘惑していくココロに抗おうとするも、アテナは快楽に耐えられずに脱力していく。

「これでいい・・このまま楽になっていけばいいのよ・・辛いことを考えなくていいのよ・・・」

 肩を落としていくアテナに、ココロが優しく囁いていく。アテナの両肩を手にかけて支えると、ココロは彼女の上着を縦に上から引き裂いた。

「恍惚、快楽、安らぎ・・これらを感じているときが、不幸を忘れられるとき、感じなくなるとき・・それこそが幸せ・・・」

 ココロはアテナを仰向けに寝かせると、人間の姿に戻る。彼女はアテナの胸に手をかけて、感触を確かめる。

「ちょっと・・不幸をまく手で、私の体に・・・!」

 ココロの両手を振り払おうとするアテナだが、さらに強まる快楽に力を入れられず抵抗できなくなる。

「あなたが求めていたのは、本当の幸せと、押し寄せてくる不幸からの解放・・でもそれは、あなたが幸せだけを強く願えば、本当の意味で幸せになれる・・・」

「やめて・・ガルヴォルスのくせに・・自分勝手なガルヴォルスのくせに・・・!」

「私はあなたが幸せを手にする手伝いをしてあげられる・・私の力が、あなたの中から不幸を消すことができる・・・」

 ココロに心に胸をもまれて、さらに体を撫でまわされて、アテナは言葉を返すことがままならなくなる。

「全てを解放しなさい・・そうすればあなたは、本当の意味で幸せになれる・・・」

「イヤ・・イヤ・・・」

 ただ拒絶の言葉を発するだけとなったアテナを、ココロが抱き寄せた。快楽にさいなまれて、アテナは抗うこともできなくなり、いつしか涙を流していた。

「これ以上強引なやり方をすると、かえって幸せになれなくなる・・そろそろ楽にさせてあげないと・・・」

 ココロはアテナを持ち上げて、両手に力を込める。快楽に打ちひしがれたアテナには、心から逃れる力を出せなくなっていた。

 ココロの両手から光があふれ出す。光に包まれたアテナが、衣服を引き裂かれて素肌をさらけ出す。

 快楽の石化に体を蝕まれていくアテナ。妖しく微笑むココロの前で、彼女は棒立ちのまま動くことができなくなっていた。

「これであなたも幸せになれる・・辛いことを考えることはなく、体を駆け巡る喜びを感じていく毎日を過ごしていけるのだから・・・」

「ダメ・・このままじゃ、私は完全に不幸になってしまう・・こんなのに負けていられない・・動いて・・アイツを倒さないと・・・」

 笑みをこぼしていくココロを倒そうと、アテナが力を振り絞る。だが石へと変質し、さらに恍惚を膨らませていくアテナの体は、彼女の意思を受け付けなくなっていた。

「動いて・・このまま石になんてなりたくないの・・こんなおかしな気分を感じていきたくないの・・・」

 必死に声と力を振り絞るアテナだが、手の指をわずかに動かすのが精一杯だった。石化と同時に強まっていく快楽に耐えられなくなり、アテナは秘所から愛液をあふれさせていく。

「やめて・・・出ないで・・・こんなことを・・喜びたくないよ・・・」

 辛さを感じて目から涙を流すアテナ。身動きの取れない彼女の頬に、ココロが手を差し伸べてくる。

「気にしなくていいの・・私がそばにいるから・・誰もあなたをとがめることはないわ・・・」

「触らないで・・汚い手で触らないで・・・」

「ダイゴくんもマリさんもみんな、今のあなたのように幸せになっているから・・・あなたもこの幸せを、永遠に感じていきなさい・・・」

 絶望するアテナの頬を撫でていくココロ。彼女はアテナの頬の質感が石になっていくのを感じ取っていた。

「イヤ・・・イヤ・・・」

 言葉を発することができなくなり、完全に絶望するアテナ。呆然と立ち尽くしたまま、彼女は完全に石へと変質した。

「これで、あなたも幸せになることができた・・・」

 アテナが幸福に満たされたと確信して満足するココロ。アテナも彼女の手にかかり、物言わぬ石像と化した。

 

 

次回

第22話「幸せの在処」

 

「目の前の幸福を守りたいだけだった・・・」

「小さな幸せも守れない自分が、不幸に感じていた・・」

「だからどんなことをしてでも、幸せを与える・・・」

「あなたの不幸、絶対に消し去ってみせる・・・!」

 

 

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