ガルヴォルスZEROrevenge 第16話「死神と悪魔」
ダイゴとマリに撃退され、怒りと悔しさを噛みしめるアテナ。その彼女の前にショウが現れた。
「佐々木・・・もしかして、ダイゴの・・・!?」
「ダイゴを知っているのか・・そうだ。ダイゴは私の弟だ。もっとも、兄弟の絆など既にないものだが・・」
疑問を投げかけるアテナに、ショウが淡々と答える。
「よければ話を聞かせてくれないか?今のダイゴの様子、気にはなっていた・・」
「お前に教えるつもりはない・・お前も私の敵・・私はお前に従うつもりはない・・・!」
問い返してくるショウだが、アテナは答えようとしない。彼女に敵意を向けられても、ショウは悠然としていた。
「別に私は君を従わせるつもりはない・・君は君の志のままに戦えばいい・・」
「・・お前は何を企んでいる・・私をどうするつもりなの・・・!?」
「言っただろう・・私はこの愚かしき世界を憎む者だと・・君も今の世界を憎んでいるなら、君と私の目的は同じということになる・・・」
「・・・そんな甘いことを言って、お前も私を騙そうと・・・!」
「そう思いたいならそれでいい・・君が世界を憎むなら、君の意思は私と同じということ・・それで私は満足だ・・」
「お前も・・そんな勝手を・・・!」
ショウの言葉に苛立ちを覚えるも、アテナは反論できなくなってうめくばかりとなる。
「まだ君の事情を完全に把握したわけではないが、君の戦いはまだ終わってはいないのだろう?」
ショウのこの言葉を聞いて、アテナが先ほどのダイゴたちとの戦いを思い返していく。
アテナの怒りと力はダイゴとマリを追い詰めていた。だが2人が融合したルシファーガルヴォルスには全く通用しなかった。
だがこのまま諦めてしまえば、幸せは戻らなくなってしまう。その気持ちがアテナを突き動かしていた。
「私は諦めていない・・・私は、まだ戦える・・・!」
「ひとまず私はダイゴに会いに行ってくる・・ヤツには因縁があるから・・・」
アテナの決心を聞いて、ショウが不敵な笑みを浮かべる。
「今の私にとって、ダイゴが越えなければならない壁となっている・・だが今の私は昔とは違う・・・」
ショウが呟きながら、アテナの前から歩き出していく。
「お前たちは今度こそ、自分の愚かさを痛感することになるだろう・・ダイゴ、そして清水マリ、たとえお前たちが1人のガルヴォルスになろうとも・・・」
ひとつの意思を胸に秘めるショウ。ダイゴ打倒も、彼のやろうとしていることのひとつになっていた。
「私も、まだ止まるわけにはいかない・・・」
傷ついた体に鞭を入れて、アテナも怒りを秘めたまま歩き出す。自分の意思で戦うことを決意していた彼女だが、ショウに心理を弄ばれていることに気付いていなかった。
アテナを撃退したルシファーガルヴォルス。融合が解けて、ダイゴとマリに分かれる。
「ダイゴ!マリちゃん!」
ミライがふらつく2人に駆け寄っていく。
「ダイゴ、マリちゃん、大丈夫!?」
「ミライさん・・私たちは大丈夫です・・でも、アテナさんが・・・」
心配の声をかけるミライに微笑みかけるも、マリはアテナの心配をする。
「あれだけの攻撃でも死んじゃいねぇと思うが・・・また何かするかもしれねぇ・・・」
ダイゴがアテナが飛ばされたほうに振り向く。
「2人とも休みながら探したほうがいいよ・・アテナちゃんと戦って、2人とも相当ムリしてたみたいだったから・・・」
「大丈夫だ、このくれぇ・・こんなもん、アテナの抱えてるもんに比べたら・・・!」
ミライの言葉を受け入れつつ、ダイゴはアテナを追いかけようとする。
「3人で行こう・・本当は危ないからミライさんは来ないほうがいいんですけど・・・」
「ありがとうね、マリちゃん・・でも疲れてるダイゴとマリちゃんだけを行かせるなんて、それこそ危険だよ・・」
声をかけ合うマリとミライ。
「ここでぐだぐだ言っててもしょうがねぇ・・急ぐぞ・・・!」
ダイゴは呼びかけて、マリ、ミライとともにアテナの捜索に出た。
同じ頃、ジョージもアテナの捜索を行っていた。同時に彼は最近多発している殺人事件についても調べていた。
そして彼は、事件現場のひとつの中にある監視カメラの映像を見ていた。その映像には、通り過ぎている1人の男の姿が映し出されていた。
(コイツ・・どっかで見たことが・・・)
眉をひそめたジョージが、データベースを洗いなおしていく。そこで彼は男の正体がショウであることに気付く。
「佐々木ショウ・・・ダイゴの兄じゃねぇかよ・・・!?」
驚愕のあまりに声を荒げるジョージ。彼もダイゴからショウがガルヴォルスであることを聞かされていた。
「ダイゴの話じゃ、ショウは死んだって・・まだ生きてたってことか・・・!?」
声を荒げるジョージが部屋から外に出て、携帯電話を取り出した。
「これはアイツに知らせたほうがいいってことだな・・・!」
ショウが気がかりになり、ジョージはダイゴと連絡を取るのだった。
ダイゴやマリ、ミライやアテナのことを心配しながらも、ミソラはマーロンの営業を営んでいた。そのマーロンの電話が突然鳴りだした。
「はい、もしもし。こちら・・ジョージさん・・?」
“ミソラちゃん、ダイゴたちは帰ってきてないか!?”
電話の相手、ジョージの慌ただしい声がミソラの耳に飛び込んできた。
「まだ4人とも帰ってきてない・・連絡も来ていないですよ・・」
“そうか・・すぐにダイゴに伝えなきゃいけねぇことがあるんだ!”
「ダイゴくんに・・何か、あったんですか・・・!?」
“・・ダイゴの兄、佐々木ショウが生きてたんだ・・・!”
ジョージが告げてきた言葉に、ミソラが緊迫を覚える。
“だがアイツが、お偉いさんを殺害している犯人かもしれねぇんだ・・”
「ショウさんが・・・ショウさんが犯人だとしても、おかしくないかもしれない・・・」
“ミソラちゃんまで驚かねぇとは・・ダイゴのアニキも評判悪くなったもんだな・・”
「・・・ダイゴくんなら自分の考えを変えることはないと思うけど、知らせたほうがいいよね・・・」
“あぁ・・オレも連絡を取ってみるけど、ミソラちゃんからも連絡を取っていてくれねぇか?・・それじゃ、頼む・・・”
ジョージにダイゴへの伝達を任されて、ミソラは連絡を終えた。
(ショウさんが、生きていた・・・ダイゴくんたちに会ったら・・・!)
一抹の不安を感じながら、ミソラもダイゴたちへの連絡を試みた。
アテナの行方を追うダイゴ、マリ、ミライ。その途中、ダイゴは自分の携帯電話が鳴っていることに気付く。
「ったく、こんなときに・・・ミソラから・・・?」
電話の相手にダイゴが眉をひそめ、マリとミライが当惑を覚える。
「何だよ・・こっちは忙しいってのに・・」
“ゴメン、ダイゴくん・・でも、念のために知らせておいたほうがいいって、ジョージさんが・・”
憮然とした態度を浮かべるダイゴに、ミソラが答えてきた。
「おっちゃんが、オレに何なんだよ・・・?」
ダイゴがミソラの話を聞こうとしたときだった。彼もマリもミライも、視線の先の光景を見て驚愕を覚える。
3人の前に現れたのはショウだった。3人とも彼の出現に目を疑っていた。
「久しいな、ダイゴ・・・こうも早く会えるとは、私も正直驚いているよ・・」
「アニキ・・・!?」
笑みを見せてくるショウに、ダイゴが緊迫を募らせる。マリもミライも緊迫のために言葉を口にすることもできなくなっていた。
「アニキ・・生きてたのかよ・・・!?」
「私もあのときは正直死んだかと思った・・死しかないと痛感して諦めた・・だが私は生き延び、こうしてお前たちの前に現れることができた・・・」
「マジかよ・・・で、オレに何の用だ・・オレへの仕返しに来たってのか!?」
「仕返し?そんな低俗な行為をする気はない。が、私の行動において、お前たちが障害になっているのも確かだ・・」
声を荒げるダイゴに、ショウが淡々と語りかけていく。
「私はあの方を失ってからも、愚か者の断罪を続けてきた・・世界は力と知能のある者が動かすべきなのに、無知で無力、愚かな人間が未だに全てを決めている・・この愚かさを消し去らなければ、世界は決して正しくならない・・」
「結局自分たちが正しいと思い込んでる・・何を言っても分かんねぇのかよ、おめぇは!?」
「何を言っても分からないのは、愚か者たちのほうだ。もはや死をもってでしか、理解させることはできない・・死しても理解することがないのかもしれないが・・」
憤りを膨らませていくダイゴだが、ショウは悠然とした態度を崩さない。
「もちろんダイゴ、お前も世界を荒廃させていく愚か者の1人となってしまった・・非常に残念なことだ・・」
「アニキ・・・どこまで行っても、おめぇは変わらねぇっていうのかよ・・・!?」
あざ笑ってくるショウに、ダイゴがつかみかかろうと足を前に出す。
「待って、ダイゴ・・今はここで立ち止まっている場合じゃないよ・・」
そこでマリに呼びとめられて、ダイゴは思いとどまろうとする。
「もしかして、先ほど会った彼女のことを気にしているのかな?」
そこへショウが言葉を投げかけ、ダイゴたちが緊迫を覚える。
「何でアテナのことを!?・・アイツに何かしたのか!?」
「会っただけだ。会って少し話をしただけ・・彼女は私と同じく、世界への憎悪を宿している。ああいう者の存在が、世界から愚かさを払拭する・・」
「ふざけたことをぬかすな!アテナがおめぇの思い通りにはならねぇよ!」
「どうかな?彼女がどの道を進むのかは、彼女自身にしか選ぶことができない。お前たちにも私にも、その選択だけは阻害できない・・」
憤慨するダイゴに対し、ショウは悠然と答えていく。
「仮に彼女が私に敵対する決断を下したとしても、私のすべきことに何の変わりもない。あの方がいない今、世界を正しい道へと進ませることができるのは、私しかいないのだ。」
「どこまでも勝手なことを・・・アニキ!」
ショウの考えに怒りを爆発させたダイゴが、デーモンガルヴォルスに変身する。
「オレもアニキが考えてるようなふざけたヤツをいいように思っちゃいねぇ・・けどアニキも、自分のためなら他のヤツを平気で手にかける思い上がったヤツだ!」
「相変わらず滑稽だな、ダイゴは・・言っただろう・・愚か者は、死をもってでしか理解しないとな・・」
言い放つダイゴをあざ笑うショウの頬に、異様な紋様が浮かび上がる。彼の姿が死神を思わせる異形の姿、デッドガルヴォルスに変化する。
「お前も死を体感しなければ理解できない愚か者となってしまった・・その命、今度こそ切り裂いてやる・・・!」
ショウが素早く飛びかかり、ダイゴに向けて鎌を振りかざす。ダイゴは即座に鎌の柄をつかんで、ショウの攻撃を止める。
「マリ、ミライ、おめぇらはアテナを探しに行け!」
「でも、ダイゴ1人だけじゃ・・!」
呼びかけるダイゴに、マリが不安を浮かべる。ミライもダイゴを置いていくことが不安になっていた。
「アイツをあのままほっといたら、何をするか分かんねぇぞ・・その前にアイツを止めなくちゃいけねぇだろうが・・・!」
「ダイゴ・・・危なくなったらすぐに逃げて・・絶対にムリはしないで・・・」
ダイゴの呼びかけを受け入れて、マリは小さく頷いた。
「行きましょう、ミライ・・アテナさんを探さないと・・・」
「でも、ダイゴを置いていくわけには・・・!」
「アテナさんが何かしていたら、ダイゴも辛くなる・・ダイゴを思うからこそ、今は私たちでアテナさんを探さないと・・」
「マリちゃん・・・うん、行こう!」
マリに促されて、ミライもアテナを探すことに決意を固めた。
「このまま逃げられると思っているのか?」
アテナを探しに駆け出していくマリとミライを、ショウが狙う。だがそこへダイゴが飛びかかってきた。
「おめぇの相手はオレだ!」
「いいのかな?お前は清水マリとの融合を果たさなければ、私に勝つ可能性は皆無だ。」
言い放つダイゴをあざ笑いながら、ショウが鎌を振りかざす。ダイゴも具現化した剣を振りかざして、ショウの鎌を防いでいく。
「軽く攻めているつもりなのだが、お前は防ぐだけで精一杯のようだ。それで私を止めることすらできない。」
ショウが淡々とした口調で言いかけ、鎌を振り上げる。この一閃がダイゴの体に傷を付ける。
「ぐっ!」
体から血をあふれさせて、ダイゴが怯む。ショウが続けて振りかざしてきた鎌を、ダイゴは剣を掲げて受け止める。
だがショウが繰り出してきた左の拳を体に叩きこまれ、ダイゴが突き飛ばされる。
「不様なことだ。その程度で私の相手をするなど、実に滑稽だ・・」
息を絶え絶えにするダイゴをさらにあざ笑うショウ。彼が振り上げた右足の一蹴で、ダイゴがさらに吹き飛ばされる。
激しく横転するダイゴが、草原の先の崖まで追い込まれた。
(くそっ!・・やっぱ1人じゃムリがあったか・・アテナ以上だ・・・!)
心の中で危機感を覚えるダイゴの前に、ショウが立ちはだかる。
「お前は昔も今も強さは変わっていない。1人では私の域に達しない。そればかりか愚か者と化してしまった・・」
冷淡に告げるショウが、高らかに鎌を振り上げる。
「まさに、愚の骨頂だ・・」
目つきを鋭くしたショウに、ダイゴがとっさに剣を突き出す。だがショウの放った一閃は、ダイゴの剣の刀身を叩き折った。
ショウの攻撃の衝撃で、ダイゴが吹き飛ばされて崖から落下してしまった。ショウが崖下を見下ろしたときには、ダイゴの姿は消えていた。
「うまく逃げたものだ・・次にダイゴに会うまでに、清水マリを始末しておくとするか・・」
ショウはダイゴを追わず、マリに狙いを変える。彼はきびすを返して崖から立ち去っていった。
ショウの言葉に突き動かされる形で、アテナは敵と認識した者を葬ろうとしていた。彼女は草原から街に向かって歩いていた。
(このままにはしておかない・・このままダイゴたちを野放しにしていたら、私の幸せは戻ってこない・・・!)
必死に自分に言い聞かせていくアテナ。世界への憎悪に駆り立てられている彼女の頭は、ダイゴとマリを倒すことでいっぱいになっていた。
(2人が合わさった力は本当にすごい・・あのときは私は手も足も出なかった・・・それでも・・それでも私は止まるわけにはいかない・・・!)
怒りのあまり、アテナは思わず右手を強く握りしめていた。
街に足を踏み入れて、アテナはさらに進んでいく。しばらく歩いた彼女が足を止めたのは、マーロンの前だった。
(ここよ・・ここを壊せば、ダイゴたちは、幸せの大切さと不幸を思い知ることになる・・・)
マーロンにも敵意を向けるアテナ。ダイゴたちを絶望に追い込もうと、彼女はマーロンを襲おうとしていた。
次回
「大事に至らなくてよかったわ・・・」
「傷ついたり辛くなっている人を放っておけないだけよ・・」
「どうして・・どうして!?」
「何だ、こりゃ・・・!?」
「全ての不幸を消し去るために、私は存在している・・・」