ガルヴォルスZEROrevenge 第13話「復讐の果てに」

 

 

「もう騙されない・・・あなたも、ダイゴもみんな、私の敵!」

 再びサキュバスガルヴォルスに変身したアテナ。迫ってきた彼女に対し、マリもたまらずエンジェルガルヴォルスに変身する。

「やめて、アテナさん!そうして誰彼構わず攻撃しても、何にもならない!」

「ガルヴォルスの言葉に耳は貸さない!それに、私がどうするかは私が決める!」

 呼びかけるマリだが、アテナは聞き入れようとせず、攻撃を続けてくる。

「家族を殺した敵が許せないのは分かる!でもそれ以外の人は関係ない!誰もあなたに何もしていないのに!」

「これからやろうとしている!親切にしてきて、心を許させて利用しようとしてくる!ガルヴォルスだけじゃない!人間も!」

「そうやって怒りや疑心暗鬼のままで戦って傷つけて・・これではあなたが憎み続けてきた人に自分がなってしまう!」

「私が、ランやカンナのように・・・そんなことはない!絶対にありえない!」

 マリの言葉にさらなる怒りを見せるアテナ。彼女の姿が刺々しいものへと変化していった。

「これって!?

 目を見開いた直後に、マリが飛び込んできたアテナが振り下ろした両手を受けて、地上に叩きつけられる。痛烈な衝撃で彼女はうめき、さらに吐血する。

 降り立ったアテナの前で、マリが力を振り絞って立ち上がろうとする。だが彼女は倒れ、すぐに人間の姿に戻ってしまう。

「力が入らない・・アテナさんの力が、ここまで上がっているなんて・・・!」

 アテナの力に驚愕するマリ。動けないでいる彼女を、アテナが目つきを鋭くして見下ろす。

「お前も私の敵・・・ここで叩き潰してやる・・・!」

「アテナさん!」

 とどめを刺そうとするアテナに対し、マリがたまらず声を張り上げる。

 その声を耳にした途端、アテナが目を見開いて動きを止める。彼女はこれ以上のマリへの攻撃に踏み切れなくなった。

「どうしたの!?・・・頭が・・頭が・・・!」

 頭を押さえて後ずさりするアテナ。集中力を乱された彼女も、人間の姿に戻る。

「私は敵を倒す・・それだけなのに・・それは間違っていないのに・・・!」

「アテナさん・・・!」

 苦悩するアテナにマリが困惑する。駆け寄って支えたいと思っていたマリだが、立ち上がることもままならなくなっていた。

「敵は倒さないといけない・・でないと、父さんと母さんは・・・!」

 苦悩、葛藤から生じる迷いを振り払うことができず、アテナは駆け出していく。

「アテナさん!」

 必死に呼びかけるマリだが、アテナは立ち止まることなく彼女から離れていってしまった。

 

 ダイゴに憤慨したカンナが、銃の引き金を引く。放たれた弾丸がダイゴに向けて飛んでいく。

 ダイゴは具現化した剣を振りかざし、弾丸を真っ二つに切り裂いた。

「バカな!?・・弾を切り裂くなど・・・!?

 驚異的な戦闘力を見せつけてくるダイゴに、カンナが息をのむ。だが彼女はすぐに憤りを見せる。

「認めない!こんなことも、お前たちガルヴォルスの存在も!」

 カンナが再び発砲しようとした。だがそばにいた兵士が彼女に打撃を加えて気絶させる。

「捜査官を連れて撤退しろ!ここはオレが食い止める!」

 その兵士が他の兵士たちに呼びかけ、カンナを任せる。

「私に構うな!捜査官を頼むぞ!」

「り・・了解しました!」

 兵士たちが撤退し、カンナを連れて引き下がっていく。残った兵士が銃を構えて、ダイゴの出方をうかがう。

 だがダイゴは兵士へ攻撃を仕掛けようとしない。

(どういうことだ?・・攻撃してこない・・・!?

 ダイゴの態度に疑念を抱く兵士。銃を構えたままの彼の前で、ダイゴは手にしていた剣を消失させる。

「オレは人殺しがしてぇわけじゃねぇ・・アテナを連れ戻してぇだけだ・・・」

 ダイゴは低く告げると、人間の姿に戻って、カンナが去ったほうへと歩き出していく。彼から凶暴性を感じ取ることができず、兵士は呆然と立ち尽くすだけだった。

 

 街外れの草原まで後退した兵士たち。彼らに起こされて、カンナが目を覚ました。

「ここは・・・?」

「街外れです・・危険と判断して撤退しました・・・」

 疑問を投げかけるカンナに兵士が答える。それを聞いたカンナが、憤慨しながら立ち上がる。

「まだ街にはガルヴォルスがいるはずよ!すぐに向かいなさい!」

「しかし、あのガルヴォルスは我々の武器を破壊しただけで、誰もヤツによる死者は確認されていません!」

 命令を下すカンナだが、兵士たちは従うことを躊躇する。

「ガルヴォルスとはいえ、何の害もない相手を射殺することは・・・!」

 反論してきた兵士に、カンナが突然発砲してきた。撃たれた兵士が昏倒し、動かなくなる。

「捜査官・・・!?

「ガルヴォルスに味方する者は全て敵よ・・ガルヴォルスに心を許すという禁忌を、お前たちは犯すつもりなのか!?

 困惑する兵士たちに、カンナが怒号を上げながら銃口を向ける。

「ガルヴォルスを憎み、世界を守ろうという意思があるなら、すぐに戻って戦いなさい!」

 声を張り上げるカンナに、兵士たちはやむなく街に向かおうとした。

 そのとき、カンナたちに近づいてくる足音が響いてきた。草原に足を踏み入れてきたのはダイゴだった。

「佐々木ダイゴ・・・!」

 ダイゴの出現にカンナが緊迫を募らせていく。彼女に対する敵意を膨らませて、ダイゴは目つきを鋭くしていた。

 

 マリにとどめを刺すことができないまま、立ち去っていったアテナ。気持ちを落ち着けようとする彼女だが、冷静さを取り戻すことができないでいた。

「どうして・・・アイツもガルヴォルスで、私の敵なのに・・・!」

 込み上げてくる憤りを抑え切れず、アテナが地団太を踏む。彼女はいつしか廃工場近くの道を通りがかっていた。

「敵は倒さないといけない・・それなのに、どうしてこんなに辛くなるの・・・!?

「あらあら、ガルヴォルスだけじゃなく、人間まで手にかけちゃったのね・・・」

 聞き覚えのある声の嘲笑を耳にして、アテナが目を見開く。彼女の前にランが現れ、妖しい笑みを浮かべてきていた。

「平野ラン・・・!」

「ここには誰もいない・・周辺にも誰もいない・・・お互い、思う存分やれるわね・・・」

 憤りを見せてくるアテナに笑みをこぼすラン。彼女の頬に異様な文様が浮かび上がる。

「そろそろあなたの血と力、いただかせてもらうわ・・・!」

 ヒルガルヴォルスに変身するラン。妖しい笑みを見せてくる彼女に、アテナは激しい怒りを見せた。

「お前が全ての始まりだった・・・私たちは幸せに暮らしていたのに、お前が壊した・・私の全てを・・・」

 両手を強く握りしめるアテナ。彼女の頬にも紋様が走る。

「お前がいなかったら、私は幸せでいられたのに・・・だからお前を逃がさない・・・!」

 サキュバスガルヴォルスに変身したアテナが、全身から衝撃波を放出する。

「お前は私がここで、絶対に息の根を止めてやる!」

 憤慨したアテナがランに飛びかかる。アテナが突き出していく爪を、ランは軽い身のこなしでかわしていく。

「殺気はすごいわね・・でもあなたの力はこんなもんじゃないでしょう?・・見せてみなさいよ!」

 ランが言い放ち、アテナの顔面をつかんで地面に叩きつける。

「あの刺々しく憎悪に満ちあふれた姿・・そのお前を倒すためにも、私はこの短時間でも生き血を吸い取ってきたんだから!」

 ランが叫ぶ前で、アテナが目を見開いた。刺々しい姿へと変化したアテナが、ランを蹴り飛ばした。

「許さない・・・お前だけは、絶対に許さない!」

 禍々しいエネルギーを発しながら、アテナがランに向かっていった。

 

 追い込まれていたカンナと兵士たちの前に、ダイゴが姿を現した。ダイゴは鋭い視線をカンナに向けてきていた。

「おめぇか、カンナ・・・アテナを利用して、その後に切り捨てたのは・・・!?

「佐々木ダイゴ・・ガルヴォルスのくせに戯言を・・・!」

 鋭く言いかけるダイゴに、カンナが苛立ちを見せる。

「自分の目的のためなら手段を選ばず・・他のヤツのことにも耳を貸さず、邪魔するヤツは誰だろうと叩き潰していく・・それがおめぇのやり方なのかよ!?

「黙れ!自分のためなら人間を平気で手にかけるガルヴォルスの分際で!」

 ダイゴの怒りに逆に憤慨するカンナ。彼女は構えた銃を撃ち、ダイゴを狙う。

 ダイゴはデーモンガルヴォルスに変身して、飛んできた弾丸をかわした。

「自分のためなら平気で手をかけてんのはおめぇだろうが・・・!」

「ぐっ・・・!」

 声を振り絞るダイゴに、カンナがうめく。

「自分のしていることを棚に上げて、他のヤツを敵だとかで悪いと決めつける・・どこまで思い上がってるんだ、おめぇは!?

「撃て!このガルヴォルスの息の根を止めろ!」

 向かってくるダイゴと、声を張り上げて兵士たちに命令を下すカンナ。兵士が撃った弾丸をかわして、ダイゴはカンナに接近していく。

 だが兵士の1人が飛び込み、ダイゴを押さえ込んできた。

「これ以上、捜査官に近づけさせはしない!」

 言い放つ兵士が、強引にダイゴを押さえ込もうとする。ダイゴは苦にすることなく、カンナに近づこうとする。

「捜査官、離れていてください!」

 兵士はカンナに呼びかけると、ダイゴをつかんだまま手榴弾を取り出した。

「おい、待て・・!」

 ダイゴが呼び止めるのも聞かずに、兵士が手榴弾の栓を引き抜いた。2人を巻き込んで手榴弾が爆発を引き起こした。

「やったわ・・あれだけの至近距離・・死なないまでも、かなりの手傷を負ったはず・・・!」

 形勢を逆転できたと思い、カンナが哄笑を上げる。兵士たちは緊張を解かず、銃を構えたままである。

 次第に煙が治まり、手榴弾の爆発に巻き込まれて血まみれで倒れている兵士の姿が見えてきた。そして憤りで体を震わせているダイゴの姿も。

「まだ、生きていたというの!?・・・命を捨てても倒せないなんて・・・!」

 さらに苛立ちを募らせるカンナ。彼女のこの言葉が、ダイゴの怒りをさらに逆撫でする。

「仲間がこんなことになったってのに・・おめぇは心が痛まねぇのかよ・・・!?

 さらに怒りを膨らませて、ダイゴが両手を強く握りしめる。

「撃て!今度こそヤツの息の根を止めろ!」

「いつまでもこんなヤツに従ってて、恥ずかしくねぇのかよ!?

 カンナが指示を出した途端、ダイゴが銃を構えた兵士たちに怒鳴りかかった。彼の怒号を目の当たりにして、兵士たちが畏怖を覚える。

「何だ、この感じ・・・こっちの感情を揺さぶってくる・・・!」

「ダメだ・・戦う意思をかき乱された・・・!」

 戦意を失った兵士たちが、ダイゴの前から逃げ出していく。

「逃げるな!それでもお前たちは世界を守る兵なのか!?

 カンナが怒鳴っても、兵士たちの逃亡が止まることはなかった。苛立ちを一気に膨らませたカンナは、改めてダイゴに銃を向けた。

「ガルヴォルスは排除しなければならない!それがこの世界のため・・!」

 カンナが声を振り絞って言い放ったとき、ダイゴが右足に力を込めた。右足を中心に地面が沈み、衝撃が周囲に広がっていった。

「世界のためとか大層なことはよく分かんねぇが、結局は自分のためじゃねぇかよ・・ガルヴォルスを滅ぼしてぇっていう自己満足のために、仲間や関係ねぇヤツまで平気に切り捨てて・・・!」

「自分のために動いているのはガルヴォルス、お前たちのほうだ!」

 憤りを募らせていくダイゴに、カンナが怒号とともに銃の引き金を引いて弾丸を放つ。ダイゴが射撃され、カンナは笑みを強める。

 だがダイゴは一瞬怯んだだけで、すぐまたカンナに敵意を向けてきた。

「そんな・・お前もこの弾丸が通用しなくなっているとは・・・!?

 対ガルヴォルス用の弾丸が通じないことに、カンナがさらに緊迫を募らせていく。

「確かにオレはガルヴォルスだ・・人間として生きようとしても、それは否定できねぇのかもしれねぇ・・けど、おめぇのように、自分が満足するためだったら他のヤツを平気で傷つけることには、我慢がなんねぇんだよ!」

 自分の考えを口にするダイゴに、カンナがさらに発砲していく。だがダイゴに全ての射撃をかわされ、さらに銃を蹴り飛ばされる。

「おめぇは最低だ・・ガルヴォルスよりも腐ってやがる・・・!」

「ガルヴォルスが勝手なことをほざくな!」

 カンナがダイゴに怒号を放ち、上着にしまっていた銃を手にした。だがそのとき、ダイゴの繰り出した右の拳がカンナに叩き込まれた。

「ぐっ!」

 痛烈な一撃を体に叩きこまれて、カンナが吐血する。体中に押し寄せる激痛にさいなまれて、彼女は昏倒する。

「いてぇかよ・・けどな、おめぇに利用されたアテナや、おめぇの勝手で痛めつけられたヤツの苦しみは、こんなもんじゃねぇんだよ!」

 さらなる怒りを込めて、ダイゴがカンナを踏みつける。体を痛めつけられて、カンナが絶叫を上げる。

「きれいごとを口にしたところで、お前のやっていることは人殺しになる・・人間として生きようなどと戯言を口にしているなら、人殺しをしたら罪になるのよ・・・」

 口から血をあふれさせながら、カンナが笑みを見せてくる。

「私を殺せば殺人・・まさに犯罪者ね・・・そうなれば、それこそお前の居場所なんて・・・」

「それがどうした・・・!?

 嘲笑してくるカンナに、ダイゴが鋭く言い返す。

「オレは許せねぇヤツにはいつも突っかかってきた・・どいつもこいつも自分のしてきたことが全然ワリィと思ってねぇヤツばっかだった・・・」

「そんな屁理屈で、自分の罪が軽くなるとでも・・・!」

「オレが正しいことをしてるとは思っちゃいねぇ・・・けどな、絶対に間違ってることを正しいと思い込んで、他のヤツの言葉に耳を貸さねぇヤツを見逃してやるほど、オレはお人好しじゃねぇんだよ!」

 怒りと考えを込めて、ダイゴがカンナを強く踏みつけた。吐血したカンナがついに動かなくなる。

「・・こんなことになる前に、考えを直せばいいってのに・・・!」

 歯がゆさを胸に秘めたまま、ダイゴはゆっくりと歩き出す。だが、まだ意識が残っていたカンナが、銃を手にして体を起してきた。

「ガルヴォルスは滅びなければならない・・お前も、滅びなければならない・・・!」

 カンナがダイゴに向けて発砲する。だがダイゴは振り向きざまに剣を振りかざし、弾丸を切り裂いた。

「マジで・・死ななきゃ分かんねぇのかよ・・・!?

 憤りを噛みしめるダイゴ。力を使い果たしたカンナが倒れ、命を落とした。

 

 ランに対する怒りを膨らませていくアテナ。刺々しい姿となった彼女は、ランを圧倒していた。

「バカな!?・・何で、こうも私を上回って・・・!?

 自分を上回っていくアテナの力に、ランは愕然となっていく。

「お前の息の根を止めることでしか、私の幸せは戻ってこない・・・お前がいなくならないと、私の心は晴れない・・・!」

 アテナがランに向けて低い声音で言いかける。

「お父さんとお母さんのいる天国には行かせない・・絶対に地獄に叩き落とす!」

「冗談じゃないわ!私はもっともっと強くなる!人間が大きな顔ができなくなるほどにね!」

 怒号を放つアテナに、ランも声を張り上げる。

「巨大な力を持つ私を見せつければ、誰も私に逆らえなくなる!餌でしかない人間が、生意気になることもなくなるのよ!」

「確かに人間もイヤになった・・でも1番憎いのは、お父さんとお母さんを殺したお前だ!」

 目を見開いて哄笑を上げるランに、アテナが爪を突き出す。彼女の爪は、ランの軟体をも突き刺していた。

 鮮血をまき散らしながら昏倒するラン。鋭い視線を向けるアテナだが、ランは苦痛だけでなく笑みも浮かべてきた。

「ずい分と殺気を高めたものね・・私を殺して、他のヤツも皆殺しにして、あなたはどうしようというの・・・?」

 あざ笑ってくるランに、アテナが苛立ちを膨らませていく。

「結局あなたも、自分が満足するために動いている・・私と同じ自己満足でしかないのよ!」

「黙れ、クズが!」

 哄笑を上げるランに向けて、アテナが爪を振り下ろした。この一閃を受けて、ランが鮮血をまき散らして命を落とした。

「・・私はお前とは違う・・心を弄ぶヤツらとは違う・・・!」

 低い声音で呟きかけるアテナ。だが彼女はすぐに哄笑を上げてきた。

「やった・・・やっと、平野ランをこの手で・・・」

 家族の仇を討てたことに、アテナは喜びを隠せなくなっていた。

「これでやっと・・お父さんとお母さんが、ゆっくりと眠れる・・・」

 喜びを膨らませて笑みをこぼすアテナ。彼女の目から流れている涙が、喜びとも悲しみともつかなかった。

 

 

次回

第14話「迷走」

 

「やっぱり、全部を叩き潰さないといけないのかな・・・?」

「アイツの苦しみが、オレの中に流れ込んでくる・・・!」

「私は信じることにする・・アテナさんのことを、ずっと・・・」

「ダイゴとは、決着をつけないといけないかもしれない・・・」

 

 

作品集

 

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