ガルヴォルスZEROrevenge 第12話「壊れていく心」
ダイゴはデーモンガルヴォルス、アテナはサキュバスガルヴォルスだった。互いの正体を目の当たりにして、ダイゴもアテナも愕然となっていた。
「そんな・・・ダイゴが・・・!?」
「アテナ・・・アテナも、ガルヴォルスだったのか・・・!?」
完全に気持ちの整理がつかなくなるアテナとダイゴ。そんな2人に向けて、カンナが銃を向けてきた。
「もうおしまいね・・ガルヴォルスの力を発揮できなくなったなら、お前たちを始末するのは簡単ね!」
カンナがアテナに向けて発砲してきた。そこへダイゴが力を振り絞って飛び込み、アテナを抱えて逃げ出した。
「逃がすな!回り込め!」
カンナの指示を受けて、兵士たちがダイゴたちの前に回り込もうとした。
そのとき、一条の光が差し込んで兵士の行く手を遮った。エンジェルガルヴォルスとなったマリが、ダイゴとアテナを助けるために駆けつけてきたのだった。
「おい、こっちだ!」
当惑を見せるダイゴに呼びかけてきたのは、ミライを連れたジョージだった。ダイゴはアテナを抱えたまま、ジョージたちとともにこの場を離れた。
「おのれ・・こんなところで邪魔が入るなんて・・・!」
マリの妨害に憤るカンナ。光が弱まったときには、既にダイゴたちだけでなくマリの姿も消えていた。
「こ、こんなこと・・・追え!まだ近くにいるはずよ!」
「はっ!」
憤慨するカンナの命令を受けて、兵士たちが駆け出していく。
「ガルヴォルスは1人も生かしてはおかない・・ガルヴォルスの始末の邪魔をする者は、たとえ人間だろうと容赦しない!」
カンナもダイゴたちを追って駆け出していった。
「フフフフ、何だか面白いことになってきたわね・・・」
この光景を病院の屋上から見下ろしていたラン。新たな期待と楽しみに胸を躍らせながら、彼女も姿を消した。
マリたちの助けを受けて、辛くもカンナたちの攻撃から脱することができたダイゴとアテナ。だが互いがガルヴォルスであることを知って、2人は困惑を隠せなくなっていた。
「大丈夫、ダイゴ、アテナちゃん・・・!?」
「オレは大丈夫だ・・・けど・・・」
心配の声をかけるミライに答えると、ダイゴが沈痛の面持ちを見せてアテナに目を向ける。彼女はダイゴに疑いの眼差しを向けてきていた。
そこへ人間の姿に戻ったマリが戻ってきた。
「ダイゴ、無事に逃げられたのね・・・アテナさんも見つかって、よかった・・・」
ダイゴとアテナの無事に安心の笑みをこぼすマリ。そのとき、アテナがダイゴを振り切って、後ずさりする。
「アテナ・・・」
「まさかあなたも、ガルヴォルスだったなんて・・・私を騙していたなんて・・・!?」
困惑を募らせるダイゴに、アテナが声を振り絞る。
「違う、アテナさん・・ダイゴは悪くは・・・」
マリが弁解しようとすると、アテナが彼女にも鋭い視線を向けてきた。
「マリさん、知っていたんですね・・・ダイゴがガルヴォルスだったってこと・・・!?」
「それは・・・」
「みんなそうよ!ガルヴォルスだけじゃなかった!人間も私を騙して、利用しようとしてきた!」
困惑するマリに、アテナがついに怒りを爆発させた。
「オレはそんなつもりはねぇ・・そんなくだらねぇことできるかよ・・・」
「ウソ言わないで!もう騙されない!また信じて利用されて・・そんな自分も許せない・・・!」
ダイゴの言葉をさえぎって、アテナが怒りをあらわにする。彼女は自分自身にも怒りをぶつけていた。
「あなたたちも私の敵・・世界の全てが私の敵よ!」
アテナは悲痛の叫びをあげると、サキュバスガルヴォルスに変身して飛翔していった。
「アテナちゃん!」
ミライが呼びかけるが、アテナが戻ってくることはなかった。
「アテナちゃん・・・アテナちゃんがガルヴォルスになって・・ダイゴやマリちゃんたちから・・・」
ダイゴたちに敵意をむき出しにしてきたアテナに、ミライは困惑を膨らませる。
「アイツは・・アテナは今までガルヴォルスを憎んでいた・・ガルヴォルスと戦ってこれたのも、アイツ自身もガルヴォルスになってたからなんだ・・・」
アテナの心境を察して、ダイゴが歯がゆさを浮かべる。
「アイツは人間だったカンナにも利用されて裏切られて、ガルヴォルスだけじゃなく、人間にも疑問を感じるようになっちまった・・・最悪、見境なしに襲いかかるかもしれねぇぞ・・・!」
ダイゴが口にしたこの言葉を聞いて、マリたちが緊迫を覚える。
「いけない・・何とかしてアテナさんを連れ戻さないと・・・取り返しのつかないことになる・・・!」
アテナが気がかりになって、マリは不安に駆り立てられる。だがダイゴに腕をつかまれて止められる。
「待て!今のアテナは見境がなくなってるかもしれねぇって言っただろ!いくらおめぇだって、アイツに襲われねぇ保障はどこにもねぇんだぞ!」
「分かっている!でもこのままじゃアテナさんが・・取り返しのつかないことになってしまう・・・!」
呼び止めてくるダイゴだが、マリはアテナの心配に収まりがつかなくなっていた。
「落ち着け、2人とも。あのお嬢さんの居場所ならオレが探してやる。」
そこへジョージが呼びかけ、ダイゴとマリを落ち着かせる。
「でも大丈夫なの、ジョージさん?・・ケガもまだ治ってないし、すごい力があるわけでもないし・・・」
そのジョージにミライが心配の声をかけた。
「ホントは一般人であるお前さんたちにこんな物騒なことをさせたくはねぇ・・けどお嬢さんを連れ戻して、さらにカンナを何とかできるのは、オレよりもお前さんたちのほうが可能性が高い・・」
自分の心境を口にするジョージが体を震わせる。
「オレ、自分が情けねぇ・・お前さんたちが命がけで戦ってるってのに、オレは代わりに戦ってやることも、まともに助けることもできねぇ・・みっともねぇったらありゃしねぇ・・・」
「気にすんな、おっちゃん・・情けねぇのはオレのほうだ・・おっちゃんに手を焼かせてばっかでよ・・・」
自分を責めるジョージに、ダイゴが弁解を入れる。
「むしろ、オレにできるのはこのくれぇしかねぇからな・・今もアテナをどうにもできなくなってる・・・」
「ダイゴ・・・まさかおめぇに励まされるとはな・・・」
歯がゆさを募らせるダイゴに、ジョージがため息をつく。
「こんなとこでしゃべってねぇで、早くお嬢さんを探しに行け。オレも居場所が分かったら、真っ先にお前さんたちに知らせてやる・・」
「おっちゃん・・ワリィな・・・そっちは任せたぜ!」
ジョージに後押しされる形で、ダイゴがアテナを探しに走り出していった。
「ミライさんはジョージさんの手伝いをしてあげてください・・まだケガが治っていないから・・・」
マリもミライに呼びかけてから、アテナを探しに飛び出していった。
ダイゴがガルヴォルスであることを知って、アテナは絶望感とさらに強まった怒りに打ちひしがれていた。
(また騙された・・人間だと信じていたのに・・口は悪いけど根はいい人だと思っていた・・・)
ダイゴと過ごした時間を思い返し、アテナが歯がゆさを募らせていく。
(誰を信じても、結局は騙されていいようにされてしまう・・・私は、これから何を信じていけばいいの・・・!?)
徐々に疑心暗鬼に駆られていくアテナ。ガルヴォルスに日常を壊され、カンナにも利用されたことで、彼女はガルヴォルスだけでなく、全てが信じられなくなっていた。
「もう何も信じられない・・もう騙されない・・・」
怒りと憎しみを膨らませて、アテナが目つきを鋭くする。
「ガルヴォルスだけじゃない・・全てが、私の敵・・・私に近づいてくる人は、みんな私の敵・・・!」
怒りをさらに膨らませて、両手を強く握りしめるアテナ。彼女の右手に爪が突き刺さり、血があふれてきていた。
街外れの裏路地に差し掛かった彼女の前に、数人の男が現れた。
「おやおやぁ?かわい子ちゃんがこんなところを通ってくるなんてなぁ・・」
「ちょっとちょっと、オレたちと遊んでくれないかな〜?損はさせないぜ〜♪」
アテナを誘い込もうとする男たち。喜びを振りまいてくる男たちに、アテナは敵意を向けてきていた。
「そうやって、私を騙して利用しようというのね・・・」
「は?何言ってるんだ?」
アテナが口にした言葉に、男たちが眉をひそめる。
「もう騙されない・・・私の前に現れるものは・・全て私の敵・・・!」
怒りをあらわにするアテナの頬に、異様な文様が浮かび上がる。その変貌に男たちが緊迫を覚える。
「お前たちも、私の敵よ・・・!」
怒りのままにサキュバスガルヴォルスに変身するアテナ。異形の怪物へと変貌した彼女に、男たちが恐怖におののく。
「バ、バケモノ!」
「マジでこんなのがいるなんて!」
たまらず逃げ出していく男たち。だがアテナは目つきを鋭くして飛びかかり、男たちを追い抜くと同時に爪を振りかざす。
アテナに回り込まれて思わず立ち止まる男たち。次の瞬間、男たちの体が砂のように崩れだし、霧散していった。
「全てが私の敵・・優しい人のふりをしていて、私の油断を狙ってくる敵もいるのだから・・・」
人間の姿に戻ったアテナが、再びゆっくりと歩いていった。
アテナを追い求めて街の中を駆け回っていくダイゴとマリ。2人はアテナが発するガルヴォルスの力を探知するしかなかった。
「くそっ!・・これじゃ何か起こってからじゃねぇと居場所が分かんねぇ・・・!」
すぐにアテナを見つけられないことに、ダイゴが憤りを浮かべる。
「どうして・・どうしてアテナさんがこんなことになってしまったの・・・!?」
マリが唐突に悲痛さを浮かべてきた。
「ガルヴォルスに家族を殺されて、そのためにガルヴォルスを憎んで・・それが、その憎しみを利用されて、それでガルヴォルスだけじゃなく、何もかも信じられなくなって・・・!」
「マリ、あんまり考えるな!」
悲痛さにさいなまれるマリを、ダイゴが抱きしめる。突然の抱擁に、マリは戸惑いを覚える。
「オレだって辛ぇんだよ・・自分の怒りを利用されて、自分を見失って・・その原因がオレにもあると思うと、気分が悪くなってくる・・・!」
「ダイゴ・・・」
「何としてでもアテナを連れ戻す・・それがダメなら、オレは覚悟を決める・・・!」
自分の気持ちを口にするダイゴ。困惑を募らせながら、マリはダイゴに言葉を返すことができなかった。
「動くな、ガルヴォルス!」
そこへ声がかかり、ダイゴとマリが振り返る。2人を兵士たちが取り囲み、銃を構えてきていた。
「もうこれまでよ。観念することね・・」
その兵士たちの前にカンナが姿を見せてきた。
「カンナ、おめぇ・・・!」
「あなたのことは分かっているのよ、佐々木ダイゴ・・そして・・」
怒りを見せるダイゴから、カンナが視線をマリに向ける。
「清水マリ・・お前もガルヴォルスだということは既に調査済みよ・・・!」
「えっ・・・!?」
カンナが口にした言葉に、マリが緊迫を覚える。カンナは警察の情報網を駆使して、マリの正体も暴いていた。
「ガルヴォルスは決して逃さない・・ここであなたたち2人を処罰する!」
敵意をむき出しにするカンナ。そして兵士たちがダイゴとマリに狙いを定めていた。
「ちょっと!何なんだ、アンタたちは!?」
そこへ1人の男がカンナと兵士たちに声をかけてきた。
「この2人、何かの犯罪者か!?それにしちゃいきなりこれはやりすぎじゃ・・!?」
「下がっていてください。この2人は怪物。今は人の姿をしていますが、自分の野心のために凶暴性を発揮して襲いかかってきます。まだ人の姿でいるうちに射殺するべきなのです。」
声を荒げる男に、カンナが低い声音で言いかける。
「何を言っているのか分からないが、こんな大勢で取り囲んで銃を向けるのはどうかしている!相手も暴れてこないし、逮捕のほうが・・!」
批判を口にしてくる男に向けて、カンナが銃の銃口を向けてきた。敵意を向けられた男が、思わず後ずさりする。
「これ以上の妨害は許さないわよ・・すぐにここから離れなさい!でなければ命がいくつあっても足りないわよ!」
「そんな、横暴だ!ここまで脅しをかけるなんて、とても警察のやることじゃない!」
語気を強めるカンナだが、男が憤慨をしてくる。苛立ちを募らせたカンナがついに発砲し、男の右足を撃った。
倒れた男が撃たれた足を押さえてうめき、周りにいた人々が悲鳴を上げる。敵意をむき出しにしていたカンナだが、それを隠そうとしない。
「分からない人ね・・ガルヴォルスは全滅させる・・ガルヴォルスを庇い立てするなら、たとえ純粋な人間であっても容赦はしない・・・!」
「おめぇ・・何やってやがるんだ!?」
冷淡に告げるカンナに激高し、ダイゴがデーモンガルヴォルスに変身する。異形の怪物の姿となった彼に対し、人々がさらに悲鳴を上げた。
「攻撃をさせるな!全員撃て!」
カンナの指示を受けて、兵士たちがダイゴに向けて発砲する。同時にダイゴが地面を殴りつけ、爆風で弾丸をさえぎった。
「コイツ、爆風で弾丸を!」
「立て続けに撃っていけば、いつかは当てられるようになる!」
兵士が再び銃の引き金を引こうとした。だがそこへダイゴが飛びかかり、兵士が持っていた銃を次々と叩き折っていった。
「こっちの武器を狙ってきた!」
「怯むな!至近距離ででも狙い撃て!」
声を荒げる兵士たちがすぐさま銃を構えるが、ダイゴに次々と破壊されていく。
「マリ、おめぇはアテナを探してくれ!オレがコイツらを食い止める!」
ダイゴが困惑しているマリに呼びかけてきた。
「ダイゴ・・・殺さないようにして・・・」
気持ちを落ち着けて答えるマリがエンジェルガルヴォルスに変身し、アテナを探しに飛翔していった。
「清水マリを逃がすな!撃ち落とせ!」
「させるかよ!」
兵士たちに呼びかけるカンナだが、ダイゴが銃のみに攻撃を絞って飛びかかっていく。
「橋本捜査官、このままでは我々は全滅です!ここは撤退し、増援を!」
「ふざけたことを言うな!ここで逃げれば、ヤツらは街の人を襲う!」
撤退を提案する兵士だが、カンナは聞き入れようとしない。
「命を捨てても退くな!逃げるなら無様に死ぬことになるぞ!」
憤慨するカンナが、兵士に向けて銃を向けてきた。その2人の前にダイゴが降り立ってきた。
「佐々木ダイゴ・・・!」
「おめぇ・・それでも人間かよ・・人の命を何とも思わねぇのかよ・・・!?」
苛立ちを見せるカンナに、ダイゴが怒りの声を上げる。
「ガルヴォルスの分際で、勝手なことを言うな!」
怒号を放つカンナが、ダイゴに向けて銃の引き金を引いた。
アテナを探して上空を停滞していたマリ。彼女は五感を研ぎ澄まして、アテナの居場所を割り出そうとしていた。
だがそのさなか、マリは突如打撃を受けた。怯んで落下していったマリだが、地面に衝突する直前で体勢を立て直して衝突を免れた。
「ここにもガルヴォルスがいたのね・・・!」
マリの前に現れたのはアテナだった。マリは目の前にいるサキュバスガルヴォルスがアテナであることを感じ取っていた。
「お前も倒す・・ガルヴォルスも、敵は全て倒す・・・!」
「アテナさん・・・アテナさんだよね・・・?」
マリがアテナに向けて声をかけ、人間の姿に戻る。
「その姿・・・マリさんも、ガルヴォルス・・・!?」
正体を明かしたマリに、アテナが驚愕する。驚きのあまり、彼女も人間の姿に戻る。
「秘密にしていてごめんなさい・・ガルヴォルスを憎んでいるあなたに私たちのことが知られたら、あなたの心を傷つけてしまうと思ったの・・でも、もっと早く打ち明けるべきだった・・そうするほうがあなたを傷つけずに済んだかもしれなかった・・・」
「あなたまで騙していたのね・・・私を陥れるために・・・」
自分の心境を打ち明けるマリだが、アテナは憤りを膨らませる一方だった。
「もう騙されない・・・あなたも、ダイゴもみんな、私の敵!」
再びサキュバスガルヴォルスに変身したアテナ。彼女はマリさえも敵として認識していた。
次回
「お前が全ての始まりだった・・・」
「お前がいなかったら、私は幸せでいられたのに・・・」
「私を殺せば殺人・・まさに犯罪者ね・・・」
「お前の息の根を止めることでしか、私の幸せは戻ってこない・・・」