ガルヴォルスZEROrevenge 第10話「果てしない復讐」
負傷したジョージをミライに任せ、アテナの行方を追うダイゴ。だが既にアテナとラットガルヴォルスの戦いは終わり、兵士たちは引き上げていた。
「アテナ・・・マジでどこに行っちまったんだよ・・・!」
ガルヴォルスの出現を感じ取って現場に駆け付けたダイゴだが、そこは人1人の姿も見えなかった。
「おっちゃんの言ってた、カンナってヤツの仕業か・・ゼッテー見つけ出してやるから・・・!」
カンナに対して憤りを感じながら、ダイゴはさらにアテナの行方を探るのだった。
兵士たちによって発見されたガルヴォルスを次々と倒していくアテナ。しかし家族の仇であるランを発見できず、彼女は歯がゆさを募らせていた。
「あれだけガルヴォルスを倒したのに、納得がしていないようね・・」
椅子に腰かけているアテナにカンナが声をかけ、缶ジュースを手渡してきた。
「コーヒーは苦手な人がいるから、ジュースにしたのだけれど・・」
「すみません、気遣ってくれて・・・」
カンナの気遣いに感謝して、アテナが缶ジュースを口にする。
「やはり、あのガルヴォルス、平野ランの動向が気になっているのね・・・」
カンナが話を切り出すと、アテナは缶ジュースを口から離す。沈黙の反応を肯定と見て、カンナは話を続ける。
「今、最優先で行方を追っている・・焦らなくても時期に発見できるわ・・」
「それでも・・こうして待っているだけでも辛い・・この間にも、アイツがまた誰かを襲っているのではないかと思うと、いてもたってもいられなくなるようです・・・」
カンナの言葉を聞いても、アテナは納得できていなかった。
そこへ1人の兵士が駆け込み、カンナに耳打ちで報告をしてきた。
「・・そう・・分かったわ・・すぐに出動準備を・・」
「了解。」
カンナの返答を聞いてから、兵士はこの場を離れた。兵士の姿が見えなくなったところで、カンナがアテナに声をかけた。
「平野ランの居場所が分かったわよ・・」
「アイツが・・・!?」
待っていた知らせを耳にしたアテナが、思わず立ち上がる。
「生き血を吸い取っているガルヴォルス・・オーディション会場の女性たちを襲ったそうよ・・」
「アイツ・・人の命を何だと思って・・・!」
「すぐに行きましょう。部下が先行して包囲しているはずだから・・・」
怒りを募らせるアテナに呼びかけるカンナ。2人はランを倒すために戦いに赴くのだった。
カンナの策略で負傷したジョージは、病院での手当てを受けた。彼の左肩と左腕には包帯が巻かれていた。
「本当に大丈夫なんですか、ジョージさん・・・?」
ミライとともに病室を訪れたジョージを、マリが心配する。
「オレはこれでも刑事だぞ。お前さんたちとは体の出来が違うんだ。」
「そうだね。マリちゃんのほうが頑丈で、回復も段違いだってね♪」
突っ張った態度を見せるジョージを、ミライがからかってくる。
「お前!・・アタタタ・・・!」
彼女に突っかかろうとしたジョージが、肩の痛みを感じて顔を歪める。
「もう、ムリしてはいけないですよ、ジョージさん・・ミライさんも、ジョージさんをからかわないの・・」
マリが苦笑いを浮かべて、ジョージとミライに注意を投げかける。
「それで、ダイゴとアテナさんは・・・?」
マリが話題を変えると、ミライが思いつめた面持ちを見せる。
「ダイゴはアテナちゃんを探しに行ったよ・・アテナちゃん、ガルヴォルスとの戦いに巻き込まれてる・・・」
「そう・・私も回復したら、ダイゴと合流してアテナさんを探しに行かないと・・・」
ミライの答えを聞いて、少しでも早い回復を願うマリ。だが思いつめていた彼女は、回復を難しくさせていた。
アテナやカンナたちを見つけ出せず、ダイゴはマーロンにいるミソラに電話をかけていた。
「アテナのヤツはそっちに戻っていねぇか・・・?」
“ううん・・こっちにも全然連絡が入ってこない・・・”
「そうか・・・もしかしたら、ひょっこり戻ってきてんじゃないかって思ってな・・・」
“あんまりムチャしないでよ。アテナちゃんが大変なことになって、あなたにまで何かあったら・・・”
「大丈夫だ。オレに何かあったら、悲しい思いをするヤツがいるからな・・・」
心配をしてくるミソラに、ダイゴが憮然とした態度で答える。
「アイツが戻ってくるか、何か連絡が入ったら知らせてくれ・・・じゃ、また・・」
ダイゴはミソラに声をかけると、携帯電話をポケットにしまった。
「マジでどこに行っちまったんだよ・・・」
手がかりを完全に見失い、ダイゴは途方に暮れていた。
「こうなったら・・・やべぇ方法だけど、もうこれしか思いつかねぇ・・・」
迷いを振り切ろうとして、ダイゴが首を横に振る。彼はさらに感覚を研ぎ澄まし、アテナとカンナたちの行方を探った。
街の中でのオーディション会場。受験者の多くが若い女性であるこの会場は、短時間で地獄へと変貌した。
会場にランが乱入。女性全員の血を吸い取り、男全員を力試しのために虐殺した。血しぶきにまみれた会場の中央で、人間の姿になっていたランが喜びを感じていた。
「久しぶりに大きな食事にありつけたわね・・強さも一気に高まったわ・・」
満足していたランが、唇を指で拭う仕草をする。
「どこまで強くなったか、アテナかあのガルヴォルスで試してみようかしら・・・」
ランが強くなった自分を確かめるため、会場から歩き出そうとした。
「ここから一歩も外に出すわけにはいかないわ・・・」
カンナが兵士たちを引き連れて、ランの前に駆け付けてきた。
「平野ラン、ここでお前への処罰を遂行する。」
カンナがランに対して、手にした銃を構える。だがランは妖しい笑みを浮かべるばかりだった。
「ガルヴォルスを片っ端から始末しているのはあなたたちね?人間のくせにそこまでの力や知恵を持つようになるなんてね・・」
「お前たちガルヴォルスが人間の進化などとは認めない・・お前たちのような醜い怪物が、人間の最高位などとは絶対に!」
「人間の最高位ねぇ・・少なくても私は、そんなつまんない意地は張るつもりはないんだけどねぇ・・・」
言い放つカンナを、ランがあざ笑ってくる。だがすぐにランの顔から笑みが消える。
「何の力もないのに王様気取りをしている人間・・そんなおふざけが気に入らないのは確かよ・・・!」
「どこまでもふざけた考えをしているのだな、ガルヴォルスは!」
冷淡に告げるランに、カンナが憤慨を見せる。
「絶対に逃がすな!撃て!」
カンナの指示を受けて、兵士たちがいっせいにランに発砲する。すぐさまヒルガルヴォルスに変身したランが、素早く跳躍して弾丸をかわし、そのまま外に飛び出す。
「追撃しなさい!挟み撃ちにする!」
カンナが呼びかけ、兵士たちを引き連れてランを追っていった。
兵士たちの放った弾丸を、ランは軽々とかいくぐっていた。格段に上がっている自分の速さに、彼女自身驚いていた。
(すごいわ。けっこう血を吸い取ったものね・・)
会場の外に飛び出したランが足を止め、外で待機していた兵士たちを見渡す。
「力のほうはどうかしらね・・・」
ランが呟きかけたとき、彼女の前にアテナが姿を見せてきた。
「見つけた・・あなたにやられてからも、あなたを必死に探していた・・・」
低く告げるアテナの頬に紋様が走る。
「あなたを許さない・・・あなたを倒すまで、どこまでも追いかけてやるわ・・・!」
サキュバスガルヴォルスに変身するアテナ。するとランが妖しい笑みを浮かべてきた。
「せっかくだからあなたで試すとするわ・・私の力をね・・・!」
目つきを鋭くしたランが尻尾を振りかざす。アテナは飛翔して、彼女の尻尾をかわす。
だがその彼女の眼前に、ランが素早く飛び込んできた。
「前にも見たけど、大した力ね、あなたは・・いいえ、前よりも力が上がっている・・・でも・・」
ランが繰り出した打撃が、アテナの体に叩き込まれた。
「強くなっているのはお互いさまよ・・」
ランは尻尾でアテナの左足を縛り、地面に叩きつけた。その衝撃と吹き荒れた砂煙で、周囲にいた兵士たちが身構える。
「私はたくさんの人間の生き血を吸い取ってきた・・もちろん、その間もあなたたちの武器についても熟知していった・・・」
倒れているアテナの前に着地するラン。彼女は視線を巡らせて、周囲にいる兵士たちを見渡していく。
「五感を刺激して機能を狂わせて破壊する効果をもたらす弾丸だけど・・今の私にも効くのかしら・・?」
「ならば受けてみるといいわ。あの世に逝けるから・・」
そこへ会場から出てきたカンナが声をかけ、銃口を向けてきた。
「悪いけど、わざわざやられてあげるほど、私は大人しくないから・・・」
ランが尻尾を振りかざし、周囲にいた兵士たちをなぎ払った。
「おのれ!手を休めるな!撃て!」
兵士たちがランに向けて発砲するが、ランは軽い身のこなしで弾丸をかいくぐっていく。彼女の攻撃で倒れていたアテナがゆっくりと立ち上がる。
「に・・逃がさないと言ったはずよ・・・!」
声と力を振り絞って、アテナが空中にいるランを見据える。そのランにカンナの放った弾丸が命中した。
「ぐっ!」
撃たれたランが体勢を崩して落下し、地上に叩きつけられる。
「ガルヴォルスの治癒力は高い!回復の時間を与えるな!」
兵士が手を休めることなく、発砲を続ける。彼らはこれでランを仕留められると確信していた。
「なぁんてね・・」
その瞬間、ランが一瞬不敵な笑みを浮かべた。彼女は弾丸を受ける前と変わらない身軽さで、飛んできた弾丸をかわした。
「効いたと思ったぁ?全然痛くないわよ。ちょっとかゆいというのが正しいかも・・」
「バカな!?この弾はガルヴォルスにも十分効果があるはず!?私があらゆる情報を集約して設計したもの!どれほどのガルヴォルスであっても効かないはずは・・!?」
あざ笑ってくるランに、カンナが驚愕の声を上げる。
「どんな毒でも、毒を以て毒を制す、抗体というものがあるものよ。体の中で抗体を作った私には、もうあなたたちの毒も兵器も通用しないわよ・・・」
「こんなバカなこと・・・認めない・・絶対に認めない!」
妖しい笑みを続けるランに、カンナが怒りを爆発させる。
そのとき、飛翔してきたアテナがランの尻尾をつかんできた。アテナが全力で投げ飛ばし、ランを地面に叩きつける。
「あなたの相手は私よ!」
「フフフフフ、そうだったわね・・」
声を張り上げるアテナにも、ランが笑みをこぼす。
(いいわ。森アテナにあのガルヴォルスを始末させる・・始末した、あるいは倒せる手前まで追い込んだなら、彼女も後を追わせることにする・・)
冷静さを取り戻したカンナが、アテナを利用してランを倒させようと画策する。
(ガルヴォルスが生き残るなど絶対に許さない・・せいぜい醜くくたばるといいわ・・・!)
アテナとランがともに倒れることを見越して、カンナは笑みを強めていた。
他のガルヴォルスの捜索と討伐を行っていた別の兵士たち。彼らが乗るトラックの前に、デーモンガルヴォルスに変身したダイゴが現れた。
「ガ、ガルヴォルス・・・!?」
驚きを覚えた兵士たちが、とっさにブレーキをかけてトラックを急停車させる。トラックが目前まで迫っていたが、ダイゴは全く動じた様子を見せていなかった。
「おめぇらの親玉はどこにいる?答えてくれりゃ何もしねぇ・・」
「ガルヴォルスの言葉などに耳を貸すか!」
問いかけてくるダイゴだが、兵士たちは耳を貸さず、トラックから降りて銃を構えてきた。
「ガルヴォルスは人を食い物にするバケモノだ!お前たちの戯言など、我々には何の得にもならない!」
「オレはオレのために戦う!人間もガルヴォルスも関係あるか!」
言い放つ兵士に、ダイゴも怒号を返す。
「世迷言を!ガルヴォルスはガルヴォルス!排除しなければならない存在だ!」
「勝手なことばかり言いやがって・・しかも決めつけやがって・・・相手が誰だろうが、攻撃してくるなら容赦しねぇぞ!」
発砲を仕掛けてくる兵士たちに向かっていくダイゴ。放たれる弾丸をかいくぐり、彼は兵士たちに拳を叩き込んでいく。
「ぐっ!」
ダイゴの攻撃で倒れ、意識を失っていく兵士たち。だがダイゴは加減しており、全員息はあった。
「な、何ということだ・・・!」
「せっかくの弾も、全てかわされてしまう・・・!」
兵士たちが徐々に恐怖を覚えていく。攻撃を続けていたダイゴが着地し、ゆっくりと兵士たちに振り返る。
「まずいぞ!ここは退却だ!」
兵士たちがダイゴから逃げ出そうとする。だが兵士の1人がダイゴに捕まる。
「おめぇらの親玉はどこだ!?・・アイツを、アテナを連れ戻さなくちゃいけねぇんだよ・・・!」
「ふざけるな・・たとえ命を奪われることになろうとも、ガルヴォルスに従うつもりはない・・・!」
カンナとアテナの居場所を問い詰めるダイゴだが、兵士は頑なに答えるのを拒絶する。
「くっ・・・そうかよ・・・!」
苛立ちを噛みしめて、ダイゴはつかんでいた兵士を横に放り投げた。一切殺戮を行わない彼に、他の兵士たちに動揺が芽生え始めていた。
ダイゴは意識を集中して五感を研ぎ澄ました。彼はどこかで別の兵士が戦っているものと確信していた。
そのダイゴの耳に、発砲音が連続が飛び込んできた。
(これだけぶっ放してりゃ、何かあるだろうな・・・!)
ダイゴはその音のするほうに向かって駆け出していった。去っていく彼に、兵士たちは何もできず呆然となるばかりだった。
強化したランに、アテナは劣勢を強いられていた。ランが攻撃を受けて、倒れたアテナは立ち上がるのもやっとになっていた。
「まだ・・まだ倒れるわけには・・・!」
「ムダよ。これだけの力の差じゃ、私には全然敵わないわよ・・」
声と力を振り絞るアテナを、ランがあざ笑ってくる。
「でもあなたのその力、ムダにしたくない・・私に血を吸われなさい。そうすればその力を有効活用してあげる・・」
「ふざけないで・・あなたに弄ばれるのはもうイヤ・・死んでも従うものか・・・!」
「フフフ、強情なのね・・でもそれが、あなたの力の原動力になっているようだけど・・・」
「負けない・・負けられない・・私がここで負けたら、父さんと母さんは・・・!」
笑みを崩さないランの前で、アテナが力を振り絞る。
「父さんと母さんは、何のために死んだというの!?」
そのとき、アテナの体に変化が起こった。体が刺々しいものへと変わり、背中から黒い翼が広がって羽をまき散らした。
「これは・・・!?」
「進化した・・この状況下で・・・!?」
アテナの変化に兵士やカンナが驚きを覚える。その中でランは笑みを消していなかった。
「まだまだ楽しむことができそうね・・・」
一途の期待を募らせるランに、アテナが鋭い視線を向けてきた。
「消してやる・・お前が、この世界にいることを認めない・・・!」
低い声音を発すると、アテナがランに向かって駆け出していった。
次回
「アテナ・・・こんなボロボロに・・・!」
「私はまだ戦える・・戦わなくちゃいけない・・・!」
「もうここまでね・・・」
「どういうつもりなんです!?なぜこんなことを!?」
「ガルヴォルスの存在を、私は絶対に認めない・・・!」