ガルヴォルスZEROrevenge 第4話「本当の優しさ」

 

 

 ガルヴォルスへの怒りを膨らませて、アテナが飛びかかる。彼女が最初に攻撃を仕掛けたのはダイゴだった。

「お前・・また出てきやがったのか!?

「何度でもやってやる!ガルヴォルスを倒すためなら、何度でもどこへでも!」

 毒づくダイゴにアテナが言い放つ。彼女が突き出してきた右手を、ダイゴがつかみ取る。

「邪魔すんな!今はおめぇの相手をしてる場合じゃねぇ!」

「そんなこと知らない!ガルヴォルスのいいようにさせない!」

 呼びかけるダイゴだが、アテナは聞き入れようとしない。交戦する2人に向けて、ゴールドガルヴォルスが笑みを見せる。

「何だかよく分からないが、これで安心して、そこの子を金にできる・・・」

「くそっ!こんなときに!」

 マリに迫るゴールドガルヴォルスにダイゴが毒づく。だがアテナの猛攻に行く手をさえぎられて、マリを助けに行けない。

「邪魔すんな!このままじゃアイツが!」

「逃げるな!ガルヴォルスは絶対に逃がさない!全員私が倒す!」

「そうかよ!だったら力ずくでもおめぇをどかす!」

 敵意をむき出しにするアテナに対し、ダイゴが力を振り絞る。だが彼が繰り出した右の拳を、アテナが飛翔して回避する。

「かわした・・・!?

「何度も食らうと思ったら大間違いよ!」

 驚愕の声を上げるダイゴに、アテナが言い放つ。彼女が突き出した爪に切りつけられて、ダイゴが顔を歪める。

「大丈夫!あのように固い相手なら、私の力のほうが効果があるから!」

 そこへマリがダイゴに向けて呼びかける。彼女は意識とともに力を集中させる。

「そのくらいでやられるオレでは・・・!」

 ゴールドガルヴォルスが笑みを見せた瞬間、マリが素早く詰め寄ってきた。彼女は収束させた力を、ゴールドガルヴォルスに注ぎ込む。

「物理攻撃が通じなくても、力を中に押し込めて爆発させれば・・!」

「何っ!?

 彼女の力を体内で爆発されて、ゴールドガルヴォルスが絶叫を上げる。激痛にさいなまれて、ゴールドガルヴォルスがのた打ち回る。

「ま・・まさか体の中で攻撃をされるなんて・・・!」

 苦しみながらも力を振り絞って立ち上がるゴールドガルヴォルス。

「悔しいけど、これじゃ戦えない・・・!」

 ゴールドガルヴォルスが目を光らせ、マリがとっさに回避する。その間にゴールドガルヴォルスが彼女の前から逃げていった。

 逃げられたことに一瞬困惑するマリだが、アテナに追い込まれているダイゴに目を向ける。

(このままじゃダイゴが・・・!)

 マリがとっさに飛び出し、アテナに向けて光を放射する。その光を浴びたアテナが、体に切り刻まれたような傷をつけられて血をまき散らす。

(このガルヴォルス、こんな攻撃をしてくるなんて・・・!)

 逆に追い込まれたアテナが飛翔して、ダイゴとマリの前から去っていった。

「あのガルヴォルス、前よりも力を付けてやがる・・一筋縄じゃいかなくなってる・・・」

「ダイゴ、大丈夫・・・!?

 毒づくダイゴに心配の声をかけるマリ。2人が人間の姿に戻る。

「オレは大丈夫だ・・・それよりも、そろそろアテナのところに戻らねぇとな・・」

「そうね・・相当ガルヴォルスを憎んでいたし、飛び出していないとも限らないし・・・」

 ダイゴの言葉にマリは頷く。2人はひとまずアテナのところに戻ることにした。先ほど攻撃を仕掛けたサキュバスガルヴォルスが、アテナであることを知らないまま。

 

 ダイゴに一矢報いたものの、マリの攻撃に追い詰められて退くしかなかったアテナ。人間以上の自然治癒力で傷が癒えたところで、彼女は人間の姿に戻った。

「もう1人のガルヴォルス・・そんな攻撃をしてくるなんて・・・!」

 アテナがマリの変身しているエンジェルガルヴォルスの力に毒づく。

「でも、2度はあんな攻撃は受けない・・ガルヴォルスは、私が倒す・・・!」

 ガルヴォルスへの怒りをさらに膨らませていくアテナ。通りに出てきたところで、彼女は戻ってきたダイゴとマリを発見する。

「2人とも、無事だったのね・・・」

 2人の無事に安堵を覚えるアテナ。彼女を見つけた2人も駆け込んできた。

「2人とも何ムチャをしているんですか!?ガルヴォルスに向かっていくなんて!」

「しょうがねぇだろ・・そうでもしねぇとみんなお陀仏だったんだからよ・・」

 声を張り上げるアテナに、ダイゴが憮然とした態度で答える。

「それよりも、何でそこまでガルヴォルスを憎むんだよ・・人間じゃガルヴォルスに太刀打ちできねぇっていうのは、おめぇにも当てはまることだろうが・・」

「そんなの関係ない・・ガルヴォルスは、私から何もかも奪ったのよ・・・!」

「だったらオレも関係のねぇことだ・・人間もガルヴォルスも関係ねぇ・・・」

「でもガルヴォルスは許せない・・ガルヴォルスがいるから、世界が悪くなるのよ!」

 あくまでガルヴォルスへの憎悪を貫くアテナ。するとダイゴがため息混じりに言葉を返してきた。

「ガルヴォルスだけじゃねぇよ・・世界をおかしくしてるヤツなら、人間にもたくさんいる・・・」

「そんなこと・・普通の人間は、ガルヴォルスのように身勝手じゃないし・・・」

「それはたまたまだ・・オレはこのふざけた世界をイヤになるほど経験してる・・・ガルヴォルス以上に身勝手な人間もいるし、人間よりも人間らしいガルヴォルスもいる・・・」

「そんなことない・・ガルヴォルスはガルヴォルス・・私の敵なのよ・・・!」

 ダイゴが語る言葉を、アテナは聞き入れようとしない。するとマリが沈痛の面持ちで、首を横に振ってきた。

「私もダイゴの言うとおりだと思う・・私も、そう学んだから・・・」

「どうして・・ガルヴォルスは、私から全てを奪った敵なのに・・・!」

 マリの言葉さえも受け入れようとしないアテナ。彼女は涙をあふれさせて、その場に膝をついた。

「おめぇが昔何があったのかはオレは知らねぇ・・けど、ガルヴォルスがおめぇの家族を奪ったのは、ガルヴォルスだからじゃねぇ・・そのガルヴォルスが、おめぇのいう身勝手なヤツだからだ・・・!」

 声を振り絞るように言いかけるダイゴ。彼は両手を強く握りしめていた。

「もしもそんなヤツが目の前に現れたら、オレはゼッテーに許しちゃおかねぇけどな・・・!」

「ダイゴは身勝手な人が嫌いなの・・人間、ガルヴォルス関係なくね・・よくつかみかかっては、刑事のジョージさんに迷惑をかけているけどね・・」

 ダイゴとマリのこの言葉を聞いて、アテナが戸惑いを覚えた。

(ダイゴ・・私と似たところがある・・ううん、私以上に、身勝手さに怒りを感じている・・・)

 ダイゴの信念を目の当たりにして、アテナは心を揺さぶられる。

「とりあえず帰るぞ・・あんなことがあったから、もうクタクタだ・・」

「そうね・・行こう、アテナさん・・」

 ダイゴの言葉に頷くマリ。彼女に呼びかけられて、アテナも立って歩き出していった。

 

 たどり着いたマリの家を目の当たりにして、アテナが驚きを見せる。

「すごい・・一軒家に2人だけで住んでいるなんて・・・」

「これでもまだ広いくらいだから、アテナさんも気持ちを楽にしていいよ・・・」

 マリがアテナに笑顔で声をかける。戸惑いを見せていると、アテナがマリに優しく肩に手を乗せられる。

「・・では、お言葉に甘えることにします・・・」

「やれやれ・・やっと落ち着くとこに落ち着いたか・・・」

 問題が解決したと悟って、ダイゴが肩を落とした。

 アテナは家の中の空き部屋のひとつに案内された。そこは生活として使われていなかったが、常にマリが整頓していたため、きれいに整えられていた。

「服の代えは明日ミソラさんとミライさんが用意してくれるそうです。今日はそろえられませんが、我慢してください・・」

「それなら大丈夫です。そんなに着飾りたい性格ではないですから・・」

 説明するマリに、アテナが弁解を入れる。

「それでは夕ご飯にしますね。アテナさんはくつろいでいてくださいね・・」

「そんな・・ただのんびりしているだけなのは・・・私、手伝いますよ・・そのくらいのことはしないと悪いですから・・・」

 マリからの優しさに応えようとするアテナ。彼女は次第にマリに心を開くようになっていた。

 一方でアテナは、ダイゴの考えや行動を素直に受け入れることができずにいた。彼の悪ぶった態度が、彼女に懸念を抱かせていたのである。

 ダイゴと直接会話を交わすことがないまま、アテナは新しい家での最初の夜を過ごした。

 

 アテナがマリの家に住み始めてから一夜が明けた。

 ミソラとミライがそろえた服の試着のため、アテナはマリに連れられてマーロンに向かうことになった。

「ダイゴは行かないの・・・?」

「オレは行かねぇ・・仕事でもねぇのにわざわざマーロンに行く必要はねぇって・・・」

 マリが投げかけた問いかけに、ダイゴが憮然とした態度を見せて答える。

「オレのことは気にせずに行ってこいよ・・女同士、仲良くな・・・」

「ダイゴ・・ありがとう・・・それでは、行ってきます・・・」

 笑みを見せて見送るダイゴに、マリが笑顔を見せる。彼女はアテナと一緒にマーロンに出かけていった。

 2人が見えなくなったところで、ダイゴは笑みを消した。

「出てこいよ・・オレたちを・・いや、マリたちを狙ってんのは分かってんだから・・・」

 ダイゴが声をかけると、後ろの物陰からゴールドガルヴォルスが現れた。

「せっかく狙っていたのに・・・今度こそ・・お前たちを・・・!」

 苛立ちを浮かべるゴールガルヴォルス。ダイゴもデーモンガルヴォルスに変身して、ゴールドガルヴォルスを迎え撃った。

 

 マリと一緒にマーロンに向かっていたアテナ。彼女の心境を察して、マリが声をかけてきた。

「ダイゴのことを、まだ受け止めきれていないんですね・・・」

 マリが投げかけた言葉にアテナは答えない。その沈黙を肯定と見て、マリは話を続ける。

「確かに悪ぶった態度を見せます・・でも本当は心優しい人なんです・・心と体を通わせることで、私はダイゴの本心を知ることができた・・・」

「マリさん・・・」

「ダイゴは信じられます・・許せない相手には徹底的に戦い抜きますが、心を許せる人には本当に親切にしてくれます・・・」

 戸惑いを見せるアテナに。マリが手を差し伸べてきた。

「どうか信じてあげて・・・私たちは、アテナさんのことを信じているから・・・」

「マリさん・・・あの人も、信じてもいいんですよね・・・?」

 アテナが投げかけた問いかけに、マリは笑顔で頷いた。

「では改めてマーロンに向かいましょう。みんな待っていますよ・・」

 マリと一緒に、アテナはマーロンに向かう。アテナは徐々にマリたちに打ち解けるようになっていった。

 

 攻撃を仕掛けてきたゴールドガルヴォルスを迎え撃つダイゴ。物理攻撃の通じないゴールドガルヴォルスに対し、ダイゴはエネルギーを集中させて直接送り込む攻撃方法を取った。

「こういう戦い方ができるのは、マリだけじゃねぇんだよ!」

 言い放つダイゴが、手にしている剣をゴールドガルヴォルスの右肩の関節に突き立てた。刺すに至らなかったが、ダイゴはそのまま自身のエネルギーを放出する。

「そう簡単にやらせてたまるものか・・・!」

 ゴールドガルヴォルスがダイゴに向けて眼光を放とうとする。ダイゴはとっさにゴールドガルヴォルスから離れて、眼光をかわす。

 ダイゴが注ぎ込んだエネルギーの暴発が、ゴールドガルヴォルスの体を蝕む。

「オレはみんなを金に、きれいにしたいんだよ・・どうしてそれを邪魔する・・・!?

「自分の勝手な考えで、無関係なヤツらを巻き込んでんじゃねぇよ・・迷惑にしかならねぇんだよ・・・!」

 声を荒げるゴールドガルヴォルスに、ダイゴが鋭く言葉を返す。力の暴走に耐えられなくなり、ゴールドガルヴォルスが倒れる。

「せっかくいい気分になっていたのに・・いい気分になりたいだけだったのに・・・」

 不満を口にしながらゴールドガルヴォルスが事切れ、霧散していった。

「それしか考えてねぇからいけねぇんだよ・・・」

 人間の姿に戻ったダイゴが歯がゆさを見せる。わだかまりを抱えたまま、彼は家へと戻っていった。

 

 マーロンの前ではミライが待っていた。マリとアテナがやってきたのを見つめると、ミライは笑顔で手を振ってきた。

「マリちゃん♪アテナちゃん♪」

「ミライさん、待っていてくれたんですね・・・」

 迎えてくれたミライに、マリも笑みをこぼしていた。

「いろいろ用意しているから、早速試着してみようね♪」

「はい。よろしくお願いします、ミライさん・・」

 笑顔を絶やさないミライに連れられて、アテナがマーロンに入っていった。

 それからアテナはいろいろな服を試着することになったかわいらしいものからかっこいいもの、果てはコスプレ衣装や着ぐるみまで。

 コスプレや着ぐるみは恥ずかしいとして、アテナは私服にすることを拒んだ。

「え〜。かわいいのに〜・・」

「かわいくても普段着るものとしては明らかにおかしいです。なので私には必要ありません。」

 不満の声を上げるミライだが、アテナは聞き入れようとしなかった。

 ひと通りの衣服をもらうこととなり、アテナはミソラとミライに感謝の意を示した。

「本当にありがとうございます、ミソラさん、ミライさん。私のためにここまでしてくれて・・」

「いいのよ、アテナちゃん。ミライとサイズが合っていたから、こちらも助かったわ・・」

 頭を下げるアテナに、ミソラが言葉を返す。

「それにあたし、いろいろと買っちゃって部屋に余らせちゃうんだよねぇ。だからもらってくれてむしろよかったかもね・・」

「もう、ミライったら・・衝動買いはやめなさいって何度言ったら・・・」

 苦笑いを浮かべるミライに、ミソラが呆れて肩を落とす。

「私・・ここまで親切にされて・・・もしかしたら、みんなして私を騙しているのではないかと思ってしまって・・・」

「私もダイゴほどじゃないけど、騙すのはあまり好きじゃないの。これでも真っ直ぐなほうだからね・・」

 喜びを浮かべるアテナに、ミソラが正直に告げる。

「何かあったかは知らないけど、アテナさんは自分に正直でいてくれていいから・・みんな、正直者ばかりだからね・・」

「ミソラさん・・・本当に、ありがとうございます・・・マリさんも、ミライさんも・・・」

 ミソラに励まされて、アテナが喜びのあまりに目から涙をあふれさせる。

「アテナちゃん・・そんな、泣かなくても・・・」

「すみません・・・でも、涙が・・涙が止まらなくて・・・」

 困り顔を見せるミライの前で、アテナが涙を拭っていく。が、涙はどんどん彼女の目からこぼれていく。

「気持ちが大きく揺れ動くときは、涙が自然と出るものですよ・・・」

 そこへサクラを抱いたユリが顔を見せてきた。彼女の言葉にアテナが戸惑いを覚える。

「嬉しかったり辛かったりしたときは、泣いてもいいですよ・・・」

「ユリさん・・・ありがとうございます・・・」

 ユリの言葉を受けて、アテナが涙ながらに笑顔を見せた。喜びに満ちあふれている彼女を、遅れてマーロンにやってきたダイゴが見守っていた。

 

 

次回

第5話「失われているもの」

 

「私は、父さんと母さんを殺したガルヴォルスを許さない・・・」

「あんなことがなければ、私は・・・」

「身勝手なことをすれば、自分の首を絞めることになる・・」

「自分さえよければ、他のヤツはどうなってもいいっていうのかよ・・・!?

 

 

作品集

 

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