ガルヴォルスX 第21話「支配」
ひとみを人質にして、健太を背後から狙い撃ちしたシュウ。影に体を貫かれて、健太が吐血する。
「やったぞ・・思い知らせてやったぞ・・・!」
ふらつく健太を見て、シュウが喜びを膨らませていく。
「健太!・・しっかりして、健太!」
ひとみが叫び声を上げると、健太は倒れそうになったのを踏みとどまる。
「ちっくしょう・・どこまでもきたねぇマネしやがって・・・!」
「健太・・・!」
シュウにいら立ちを見せる健太に、ひとみが困惑を感じていく。
「支配者は何をやっても許される。何度も言わせるな!」
「やっぱおめぇは、徹底的に叩きのめさねぇといけねぇな・・・!」
高らかに言い放つシュウに、健太が憤りを募らせる。
「そんな体で何ができる?オレに迫れる力を発揮できると言えど、その体では満足にそれもできないだろう。」
「まだオレを甘く見てるな・・オレは美女のためなら不可能を可能にする男だ・・・!」
あざ笑ってくるシュウに、健太が笑みを見せてきた。
「今は、ひとみのためなのが有力だけどな!」
彼は声を張り上げて、ひとみを助けようとシュウに飛びかかる。
「忘れたか!人質がいるんだぞ!」
「そんな脅しに屈するオレじゃねぇ!手を出す前におめぇをブッ飛ばす!」
シュウの思惑に乗らず、健太がシュウに向けて正確に拳を振りかざす。シュウはいら立ちを噛みしめると、ひとみを健太に突き出す。
健太が攻撃を止めて、慌ててひとみを受け止める。
「大丈夫か、ひとみ!?」
「大丈夫かはこっちのセリフだよ、健太!・・血が・・・!」
心配の声をかける健太に、ひとみが悲痛さを込めて言い返す。体を貫かれた健太の傷は深く、まだふさがっていない。
「このぐらい、傷のうちに入らねぇよ・・それよりも、アイツへの怒りのほうが強いぐらいだ・・・!」
嘲笑を浮かべているシュウに振り向き、健太が憤りを見せる。
「おめぇは必ず、ここでブッ倒す!」
「そんなマネ、もう貴様にはできんぞ!」
向かってくる健太をシュウがさらにあざ笑う。周囲の影が次々に飛び出して、健太目がけて伸びてくる。
「同じ手にかかるかっての!」
健太が素早く動いて影をかわしていく。そして彼はシュウに向かっていく。
「そんな状態でそこまえ動けるとは、大したものだ・・だが・・」
シュウが目を見開き、健太に向かって拳を振りかざす。健太が後ろに飛んで拳をかわす。
「どこまでも、オレの思い通りに動くようになったな!」
「何だと!?」
笑みを強めるシュウに、健太が声を上げる。すると影がひとみを狙ってきた。
「このヤロー!」
健太が怒りを募らせて、ひとみのところへ向かう。彼は彼女を庇って、影に再び体を刺される。
「健太!」
体から血をあふれさせる健太に、ひとみが悲鳴を上げる。
「おめぇ・・どこまできたねぇんだ・・・これが支配者ってヤツのやり方なのかよ!?」
「貴様を屈服させるためだ。おとなしくオレに降参すれば、これ以上の屈辱は味わわなくて済むぞ?」
怒号を放つ健太をシュウがあざ笑ってくる。
「何度も言わせるなよ・・おめぇの言いなりにはならねぇよ・・絶対に!」
「悪い・・実に往生際が悪い・・オレの感情を逆撫でしてくる・・・!」
意地を見せる健太に、シュウがいら立ちを募らせる。
「貴様のようなヤツは、徹底的に叩きのめさないとな!」
シュウが鋭く言いかけて、影を一気に伸ばす。多量の影の触手が健太の体に次々に命中していく。
「ぐっ!・・こ、この・・!」
痛みを振り切り、シュウに反撃しようとする健太。だが疲弊と負傷が重なり、ついに彼の姿が人間に戻ってしまう。
「健太!」
倒れていく健太をひとみが受け止めて支える。健太は呼吸を乱して、痛みに顔を歪めていた。
「健太、しっかりして!健太!」
ひとみが呼びかけるが、健太は痛みのあまりに返事ができない。
「悪あがきもこれで終わりだな。」
シュウが健太とひとみに近づいてきて、不敵な笑みを見せてきた。
「だが春日野ユキ同様、貴様たちも心を曲げないのだろうな。たとえオレに死刑にされても・・」
健太とひとみの意思が頑なであることを悟り、シュウが笑みを消す。
「オレに屈服することになるのが、この2人にとっても屈辱となろう・・」
シュウが目を見開いて、周囲の闇を広げて健太とひとみを閉じ込める。
「これで貴様たちも逃げられない。お前たちはこのオレのものとしてくれる。」
「冗談じゃない・・僕もアンタの言いなりになんてならない!」
迫るシュウにひとみが意地を見せる。
「健太は僕を守ろうとしてくれた・・健太みたいな力はないけど、僕は健太を!」
「貴様もとことん強情なヤツだ・・力がない分、身の程知らずというところか・・」
声を張り上げるひとみに、シュウが呆れて肩を落とす。
「その反抗的な意思を打ち砕くために、まずは貴様たちに支配を思い知らせるとするか・・」
シュウは言いかけると、体から黒い球を出してきた。危険だと察知して、健太を連れて逃げようとするひとみだが、2人とも黒い球を体に入れられる。
「やった・・貴様たちもオレのものとなった・・・!」
シュウが健太とひとみに対して、喜びと勝利の確信を見せる。体の痛みが和らいで、健太がシュウに視線を向ける。
「もう貴様たちは、オレから逃れることはできない!」
「どこまでもバカなことを・・オレを思い通りにできねぇって、何度も・・!」
高らかに言い放つシュウに健太が言い返す。
ピキッ ピキッ ピキッ
そのとき、寄り添い合っていた健太とひとみの来ていた上着が突然吹き飛ぶ。2人の体が石に変わっていた。
「えっ!?・・ど・・どうなってるの、コレ・・!?」
「体が石に・・おめぇ、オレたちに何しやがった・・!?」
ひとみが驚愕をあらわにして、健太がシュウに問い詰める。
「分かっているはずだ。貴様たちに石化をかけたのだ。」
「石に!?・・裸にもする石化だと・・!?」
語りかけるシュウに、健太も驚愕を感じていく。
「そういえば貴様は女に目がないヤツだったな。女をものにするには、この力はのどから手が出るほどほしいものではないか?」
シュウが健太を見てあざ笑う。すると健太が鼻で笑ってきた。
「おめぇ、かわい子ちゃんやきれいなお姉さんのことを何にも分かっちゃいねぇな・・そんなんじゃ、ハートを射止めるなんてことはできねぇよ!」
「フン。そのザマでよくそんな口が叩けるな。ハートを射止める?何をバカなことを・・」
言い放つ健太をシュウはさらにあざ笑う。
「オレは支配者だ。オレに支配される者は、全てをさらけ出し、オレの意のままに弄ばれるだけとなる。逆らうことは許されん。」
「だから相手の気持ちは完全無視ってわけか・・やっぱおめぇは何にも分かってねぇな・・!」
勝気を崩さないシュウに対し、健太も強気を崩さない。
「相手のことを思いやり、相手の気持ちをしっかりと受け止めてから、オレの思いを見せる・・そうして初めてハートを射止めることになるんだよ!」
「その割には押し付けがましいとこあるじゃない、健太・・」
意気込みを見せる健太に、ひとみが半ば呆れる。
「くだらない。貴様は支配者の器とは程遠いということだな。」
「何もかも自分の思い通りにして満足するのが支配者だっていうなら、オレはそんなもんになるつもりなんてねぇよ!」
「支配者になる気も、オレに従うつもりもないということか・・だが!」
ピキッ ピキキッ
意地を貫く健太に呆れるシュウ。次の瞬間、石化が進行して、健太とひとみの足にまで及んだ。
「もはや貴様たちはオレの支配下にあるのだ。このままオブジェとなり、仲良くオレにされるがままとなるのだ!」
裸にされた健太とひとみを見て、シュウがあざ笑う。
「ここまで進行すれば、何の抵抗もできまい・・オレの支配、存分に体感するがいい!」
「くっ!・・体が、全然動かねぇ・・マジで、石になっちまってる・・・!」
「これじゃ僕たち、完璧にさらしものじゃない・・・!」
高らかに笑ってくるシュウに、健太とひとみが困惑を募らせる。2人は抱き合ったまま立ち尽くして、この場から動くことができなくなっていた。
「このまま・・このまま終わってたまっかよ・・・!」
健太が力を入れて抗おうとする。
ピキキッ パキッ
石化が健太とひとみの手足の先まで進んだ。2人は互いの顔を見つめ合っていた。
「健太・・・僕・・もう・・・」
「諦められるかよ・・オレがやられたら、おめぇやユキが・・他のみんなが・・・!」
力を入れられずに弱々しく言いかけるひとみの前で、健太が抗おうとする。しかし石化した体は彼自身のいうことを聞かない。
「もうムダだ・・貴様たちはオレのものだ・・」
シュウが2人をさらにあざ笑っていく。
「健太・・僕は・・・」
ひとみが突然、健太の唇に自分の唇を重ねてきた。突然の口付けに健太が動揺を覚える。
(ひとみ!?・・こんなときに、いきなりこんな・・・!)
動揺を膨らませる健太だが、石化のためにひとみから唇を離すことができない。
パキッ ピキッ
石化がさらに進行し、健太とひとみの唇も石に変わった。口付けを終えることができなくなり、2人は互いを見つめ合っていた。
(ひとみ・・このまま、おめぇと・・・!)
ピキッ パキッ
白く固まってひび割れていく互いを見つめて、健太とひとみが愕然となっていく。
(オレたちは・・こんなところで・・・!)
身動きの取れない中、必死にシュウに抗おうとする。
「終わりだ・・金城健太・・・」
フッ
シュウが一言告げた瞬間、健太とひとみの瞳も石に変わった。2人も完全に石化に包まれて、一糸まとわぬ石像となって立ち尽くしていた。
「やった・・やったぞ!ついにやった!」
シュウが健太とひとみを見つめて、歓喜の哄笑を上げる。
「金城健太、ついに貴様もオレに屈服した!オレが何をしようと、貴様たちは何の抵抗もできまい!」
健太たちの周りを回って見渡していくシュウ。彼は手を伸ばして健太の左肩をつかんできた。
「オレに触られても力を加えても、貴様たちは何もできない!あの反抗的な態度を見せることもできないのだ!」
健太とひとみを自分のものにしたと実感して、シュウが喜びを膨らませていく。
「これが支配だ・・貴様たち、これが支配されるということだ・・・!」
高らかに言い放つばかりのシュウ。健太もひとみも全く反応を見せない。
「おっと・・喜ぶのはまだ早い。ヤツらはまだ、心の中ではオレに屈服してはいない・・」
シュウが唐突に笑みを消して、健太とひとみに改めて目を向ける。
「あの小娘と同じように、貴様たちも徹底的に思い知らせる必要がある・・オレに支配されていることを・・・」
シュウは地面の影を伸ばして、健太とひとみを縛り付ける。シュウはこのまま2人を連れて、自分の屋敷に戻った。
シュウの力にかかり、石化された健太とひとみ。2人もシュウに連れ込まれて、同じく石化された女性たちのそばに置かれた。
「貴様たちもこの中に加わるときが来た。しかもその小娘のそばだ。オレをあそこまで追い詰めたのは貴様だけだからな。光栄に思うがいい。」
シュウが健太とひとみを見て笑みを浮かべる。2人のそばにはユキがいた。
「では思い知らせてやるぞ。貴様たちはオレに屈服していることを・・」
シュウが健太とひとみに寄り添い、意識を傾ける。シュウの意識が2人の心の中に入っていった。
石化されても、健太とひとみの意識は残っていた。2人は心の中でも抱擁を交わしていた。
「ちくしょう・・アイツに石にされちまうなんて・・しかも丸裸だなんて・・・」
「裸のままずっとあの人のところで・・あの人のいいように・・・」
悔しさを噛みしめる健太と、不安を感じていくひとみ。
「何とかして・・元に戻って、今度こそアイツをブッ倒さねぇとな・・・!」
「でもどうやって!?・・力、使えるの・・!?」
打開の糸口を探る健太に、ひとみが問いかける。健太が意識を集中して、ガルヴォルスになろうとする。
「くっ・・力が出ない・・ガルヴォルスにもなれない・・・!」
「そんな・・・!?」
力が出せない健太に、ひとみがさらに困惑する。
「どうやったら元に戻れるのか、分かんねぇ・・石のまんまなんてまっぴらゴメンだ・・・!」
「健太・・僕もだよ!このまま裸のままで、アイツのところにいるなんて・・!」
歯がゆさを募らせていく健太とひとみ。
「僕にも、健太やユキちゃんみたいな力があったら・・・!」
「落ち着けって、ひとみ・・この状況、オレの力だけで何とかしてやるぜ・・!」
無力さを痛感していくひとみに、健太が自信を見せる。
「とりあえず、力は使えるようにしとかないとな。元通りになる上で重要になりそうだ・・」
「健太・・相変わらずなんだから・・どんなときでも、健太は健太なんだよね・・・」
腕組みして考える考え込んでいる健太に、ひとみは思わず笑みをこぼしていた。
「やはりオレに屈してはいなかったか。」
そこへ声がかかり、健太とひとみが緊張を覚える。2人の前にシュウが現れた。シュウは健太とひとみの心の中に意識を介入させてきた。
「シュウ!?何でおめぇがここに!?」
「ほう?ここが自分の心の中だってことはすぐに感付いていたようだな。」
驚きの声を上げる健太に、シュウが不敵な笑みを見せる。
「貴様たちはオレのものとなっている。オレにオブジェにされ、支配されたのだ。その貴様たちの心の中に、オレは入り込んだにすぎん。」
「そういうことかよ・・わざわざオレたちの中に土足で踏み込んできやがって・・!」
語りかけてくるシュウに健太が毒づく。
「今度こそ思い知らせてくれるぞ・・貴様たちもオレに屈服しているということを・・」
「わりぃがそんなことにはならねぇよ!おめぇをブッ倒して、元に戻ってやるよ!」
目つきを鋭くするシュウに、健太が強気に言い放つ。するとシュウが哄笑を上げてくる。
「そんなマネはできんぞ。貴様たちはもう、オレに逆らうことはできないのだから。」
「また勝手なことをぬかして・・思い知らされるのはおめぇのほうだ!」
健太がシュウに向かって拳を振りかざそうとした。だがそのとき、健太は突然体の自由が利かなくなる。
「な、何っ!?」
「健太・・!?」
この事態に健太だけでなくひとみも驚きを覚える。
「どうなってるんだ!?・・これ以上、前に進めない・・・!?」
「言ったはずだ。オレに逆らうことはできないと。オレへの抵抗は強制的に拒絶されるのだ。」
声を荒げる健太に、シュウが不敵な笑みを見せる。
「今の貴様たちはオレに石化されたオブジェ。実際は指一本動かせない状態なのだ。その貴様たちがオレに逆らえないのは当然のことだろう。」
「ふざけんな・・こんなの・・こんなの・・!」
語りかけるシュウに、健太がつかみかかろうとする。しかし体が言うことを聞かず、健太はシュウに近づくことができない。
「貴様たちはオレに何をされようとも、刃向かうことは全くできない・・オレに支配されていることを、十二分に思い知らせてやるぞ・・」
目を見開くシュウを前にして、健太もひとみも緊迫を募らせていった。
次回
「貴様たちの全てはオレの手の中だ。」
「体も心も、決意や愛といったものも、全てオレのものなのだ。」
「誰もオレに逆らうことはできない・・」
「全ての支配者はただ1人・・このオレだ!」