ガルヴォルスX 第20話「暗黒」
ユキに助けられて健太と合流したひとみ。健太とひとみはシュウが現れた場所に来たが、ユキもシュウもいない。
「ここで間違いないのか、ひとみ・・・!?」
健太が声をかけて、ひとみが小さく頷く。
「間違いないよ・・あの男から僕を守ろうとして、ユキちゃんは・・・」
「それじゃ、ユキはどこに・・・!?」
ひとみの説明を聞いて、健太が辺りを見回す。
「まだ気配が残ってる・・やっぱりここだ・・・」
健太が残っていた気配を感じ取り、緊張を募らせる。その気配がシュウのものだということも、彼は理解した。
「あのシュウってヤロー・・ひとみやユキにちょっかい出してくるなんて、なめたマネを・・・!」
「健太・・・」
シュウに憤りを感じていく健太に、ひとみが戸惑いを感じていく。
「でも辿れない・・地面を潜ったにしちゃ、穴が開いたような跡もない・・・」
ユキとシュウの行方が分からず、健太が頭を抱える。
「ユキちゃんが・・僕のために・・・!」
ひとみがユキの心配をして、悲痛さを感じて震える。すると健太がひとみに笑みを見せてきた。
「心配すんな、ひとみ。ユキはオレが必ず見つけ出してやる。」
「健太・・・」
言いかけてくる健太に、ひとみは戸惑いを募らせていく。
「とりあえず、この辺りを見回ってみるぞ。もしかしたら居場所が分かるかもな・・」
「うん・・そうだね・・・」
健太の声にひとみが頷く。2人はユキを追い求めて、必死に駆けまわっていった。
ユキを石化して全裸の石像にして、影の中に連れ込んだシュウ。彼がたどり着いたのは自分の邸宅だった。
「光栄に思うがいい。オレの屋敷に招待されたことを。」
シュウがユキを置いてあざ笑っていく。石化しているユキは何の反応も見せない。
「オブジェになった女は、体が石になる恐怖と全てをさらけ出される恥辱に襲われて、絶望し、オレに屈してきたが、貴様は違う。オレへの反抗意思と金城健太とあの小娘への思いが残っている・・」
改めてユキの心の中をのぞいて、シュウが顔から笑みを消す。
「ならばその余計な感情を取り払ってやればいい・・オレに支配されているのだと・・」
シュウがユキに詰め寄り、彼女の心の中に介入しようとする。
「思い知らせてやるぞ・・オレに逆らうことはできないと・・」
ユキの石の体に手を当てて、シュウは彼女の心の中に自分の意識を入れた。
シュウの力を受けて石化されたユキ。全裸の石像にされて動くことも声を出すこともできなくなった彼女だが、意識は残っていた。
「あ・・あれ・・・あたし・・・?」
自分に起きたことを思い返していくユキ。
「あの男を止めようとして・・体を石にされて・・・」
自分が全裸の石像にされたことを改めて実感して、ユキが不安を覚える。
「ひとみちゃん、大丈夫かな・・・健太・・・」
ユキはひとみと健太の心配をしていく。彼女は自分よりも2人のことを心配していた。
「アイツ・・どうしてるのかな・・もう健太たちと・・・」
「金城健太とあの小娘を追うのはこれからだ。」
そこへ声が飛び込んできて、ユキが緊迫を覚える。彼女の前に現れたのはシュウだった。
「あ、あなたは・・あのガルヴォルス・・!」
「フフフ・・だがその前に、貴様に改めて思い知らせてやらないとな・・貴様はオレのものになっていることを・・」
声を荒げるユキを見て、シュウがあざ笑ってくる。
「あなた、何で!?・・何がどうなってるの・・・!?」
「せっかくだ。教えてやろう。ここは貴様の心の中だ。オブジェになっても意識は残る。今ここにいる貴様は、貴様の心、精神なのだ。」
「心・・精神・・・!?」
「そのほうがオレに屈していることを分からせることができて、オレはいいがな。」
ユキに語りかけて、シュウがあざ笑ってくる。
「貴様はオレのもの。オレの思うように弄ばれるだけなのだ。」
「しつこいよ!あたしはアンタの思い通りになんてならない!たとえ丸裸の石にされたって!」
「それはどうかな?言ったはずだぞ。貴様はオレのものだと。」
反抗の意思を崩さないユキを、シュウはさらにあざ笑ってくる。
「ち、ちょっと・・何・・こっちに来ないでよ・・・!」
ユキが緊張を募らせて、シュウから離れようとする。しかしシュウが伸ばした手に腕をつかまれる。
「うっ!・・ちょっと、放して!放してって!」
ユキがもがいてシュウの手を振り払おうとした。だがそのとき、ユキは腕に力が入らなくなったと実感する。
「どうなってるの!?・・腕が、思うように動かない・・・!?」
「オレに逆らえなくて当然だ。実際の貴様は動くことのないオブジェなのだから。」
驚愕するユキをシュウがあざ笑う。その意味を痛感して、ユキが愕然となる。
「オブジェになっている貴様は、オレに逆らうことを拒絶される。つまり貴様はオレにされるがままになるということだ!」
シュウは言い放つと、両手でユキの両腕をつかみかかってきた。抵抗を拒絶されて、ユキはシュウの手を払うことができない。
「思い知らせてやるぞ・・オレという支配者の存在を!」
シュウがユキを強く抱きしめてきた。彼は彼女の体を手で触れていく。
「イヤッ!ちょっと・・やめてよ・・!」
声を上げるユキだが、シュウから抜け出すことができない。
シュウはユキの胸をつかんでもみほぐしていく。ユキは恥じらうことしかできず、感情を揺さぶられていく。
「離れてよ・・あなたなんかに・・あなたなんかに!」
「いいぞ、いいぞ。そうやって絶望していくのを見ると、オレの心が晴れやかになるぞ。」
悲鳴を上げるユキにシュウが喜びを募らせる。さらにシュウはユキに口付けを強要した。
(やめて・・イヤだよ・・よりによって・・こんなヤツに・・・!)
絶望感を募らせて、ユキが目から涙をあふれさせる。抗うこと自体ができないことを痛感して、彼女は力を入れられなくなる。
ユキから唇を離して、シュウが彼女をさらにあざ笑う。
「ようやく思い知ったか。オレに支配されているという現実を・・」
シュウが言いかけるが、ユキは脱力してしまっていた。
「では仕上げだ。誰もオレに逆らうことはできないことを、十分に刻み込ませてくれる。」
シュウがユキをまた抱き寄せる。彼は性器を彼女の秘所に入れてきた。
「ぁぁぁ・・ぁぁあああぁぁぁ・・・!」
ユキが性交も強要されて、あえぎ声を上げていく。彼女は心を絶望で満たされて、ただ泣くことしかできなかった。
「分かる・・オレには分かる・・コイツがオレに完全に屈したのが・・・」
シュウがユキから体を離して笑みをこぼしていく。
「どうだ!思い知ったか!これが、支配というものだ!」
シュウがユキに勝ち誇り、笑い声を上げる。ユキは完全に脱力していて、目が虚ろになっていた。
「貴様はオレに逆らうことはできない。ただオレに弄ばれるしかないのだ!」
ユキを完全に支配したと実感して、シュウが歓喜に打ち震える。彼は徐々に落ち着きを取り戻して、ユキに背を向ける。
「では、そろそろ向かうとするか。金城健太とあの小娘のところへ・・」
健太とひとみに狙いを移して、シュウはユキの心から出ていった。彼に弄ばれて絶望して、ユキは呆然と漂っていた。
自分に意識を戻したシュウ。彼は立ち尽くしているユキを見て、再び笑い声を上げる。
「これでコイツも、完全にオレのものだということを理解したことになる。」
ユキをものにしたことを実感していくシュウ。
「これがあの2人の屈服に向けての足がかりとなるか。面白くなってきたぞ。」
期待に胸を躍らせて、シュウが部屋を見渡す。この部屋にはたくさんの女性たちが立ち並んでいた。みんなユキと同じように全裸の石像にされていた。
「貴様たちもオレに屈するのだ。オレが全ての支配者であることを思い知らせてやる。」
健太とひとみに野心を向けて、シュウは部屋を後にする。ユキも他の女性たちも、心を絶望で満たしたまま部屋に取り残されていた。
シュウが現れた場所とその周辺を回っていく健太とひとみ。しかし2人はユキもシュウも見つけることができない。
「マジでどこに行っちまったんだ・・・」
「ユキちゃん・・・どこに・・・!?」
肩を落とす健太と、不安を募らせるひとみ。
「1回寮に戻るか・・入れ違いで戻ってるかもしれねぇし・・どっちにしても、休んでから出直さねぇとな・・」
「健太・・・うん・・そうだね・・・」
健太が投げかけた声にひとみが頷く。2人は1度寮に戻ろうとした。
「もう帰るのか、貴様たち?」
そのとき、健太とひとみの耳に声が飛び込んできた。2人は緊張を覚えて足を止める。
「ったく・・出るならさっさと出て来いってんだよ・・・」
健太が愚痴をこぼして振り返る。彼らの前にシュウが現れた。
「貴様たちの前に思い知らせていたのだ。貴様たちの仲間にな。」
「えっ!?・・ユキちゃんに・・ユキちゃんに何をしたの!?」
不敵な笑みを見せるシュウに、ひとみが感情をあらわにして問い詰める。
「オレの支配に屈した。なかなか強情だったが、ついにオレに屈服したのだ。」
「屈した!?・・どういうことだ!?」
言いかけるシュウに健太が問い詰める。
「言葉通りの意味だ。あの娘はオレが支配した。オレのものとなったのだ。」
「バカなことぬかすな!ユキはおめぇみてぇなヤツに従うような弱いヤツじゃねぇ!」
シュウに憤り怒鳴る健太。するとシュウが高らかに笑ってきた。
「だが事実だ。オレのものとなり、オレにいいように弄ばれたことで、ヤツは思い知ったのだ。」
「どこまでもふざけやがって・・ユキはどこだ!?案内しろ!」
健太が怒りに体を震わせて、シュウに問い詰める。
「オレは誰の指図も受けん。オレに屈服するなら考えないでもないがな。」
「どこまでもふざけやがって・・・おめぇなんかに絶対に屈しねぇ・・!」
強気を崩さないシュウに反発して、健太が前に出る。彼の頬に異様な紋様が浮かび上がる。
「言う気がねぇならもう聞く気はねぇ・・・!」
健太の姿がシャドーガルヴォルスに変わる。
「オレが徹底的にブッ倒してやる!」
「理屈抜きで向かってくるか。それでこそ金城健太というものだ。だがオレは全てを支配する者!貴様であろうとオレに逆らうことは許されん!」
健太とシュウが言い放ち、構えを取る。
「ひとみは下がってろ・・近くにいると危ないぜ・・!」
「うん・・分かった・・・!」
健太が呼びかけて、ひとみは離れて物陰に隠れる。
「さぁ、かかってこい!オレはこの前のようにはいかないぞ!」
「安心しとけ!おめぇが負けるのは次で最後!そしておめぇがオレに勝つことは2度とねぇ!」
言い放つシュウに健太も強気に言い放つ。
「おめぇの息の根は、オレが止めてやるよ!」
健太が飛び出し、シュウに向かって拳を繰り出す。シュウは夜の闇の中に消えて、健太の打撃をかわす。
「どこに行った!?コソコソ隠れやがって!」
健太が声を上げて辺りを見回す。シュウは闇に入って姿を消している。
「健太、後ろ!」
ひとみが声を上げて、健太が後ろに振り返る。彼の影からシュウが飛び出してきた。
「そういうなら、望みどおり出てきてやるぞ!」
シュウが健太に詰め寄り、手を伸ばしてきた。健太は回避が間に合わず、シュウの手に首をつかまれる。
「健太!」
ひとみが声を上げる前で、健太がシュウに持ち上げられて首を絞められる。
「言ったはずだ。この前のようにはいかないと!」
シュウが健太に向けて高らかに言い放つ。
「このまま首を絞めつけて、苦痛とオレの存在を思い知らせてやるとするか。」
「そうはいくか・・オレはおめぇをブッ飛ばすんだからよ!」
不敵な笑みを崩さないシュウに対し、健太が声と力を振り絞る。彼の姿が刺々しいものとへと変わる。
「ぐっ!」
一気に高まった健太の力に腕をはねのけられて、シュウが突き飛ばされる。
「その姿、その力・・ついに本気になってきたか・・・!」
シュウが健太に視線を戻して、笑みをこぼす。
「だが、そんな力をもってしても、オレに勝つことはできない!」
「ブッ倒すって言ったはずだ!今のオレを止めることはできねぇ!」
互いに高らかに言い放つシュウと健太。健太が一気にシュウの懐に飛び込んできた。
「うっ!」
健太が繰り出した拳を体に叩き込まれ、シュウが大きく突き飛ばされる。激痛のあまり、彼は顔を歪めて吐血する。
「へっ!けっこう効いてるじゃんか!このまま押し切るぜ!」
「いい気になっていられるのも今のうちだ!」
さらに飛びかかる健太に不敵な笑みを見せて、シュウが再び闇の中に消える。
「また隠れやがって・・こんな卑怯じゃオレは倒せねぇぞ!」
健太が声を張り上げて、シュウを探して周りを見回す。彼はどこからでも見やすい十字路の真ん中まで移動した。
「オレならここだ!丸見えだ!思う存分狙い放題だぜ!」
健太が自分の姿をさらして挑発する。シュウをおびき出して迎え撃つために。
「もしかして、隠れたまま逃げたなんて言うんじゃねぇだろうな!?」
健太がさらに呼びかけて、シュウを探す。それでもシュウは健太の前に姿を現さない。
「マジで逃げたか・・今はひとみのとこへ行くか・・」
健太が吐息をついて、物陰に隠れているひとみのところへ向かう。
そのとき、健太はひとみの背後の影からシュウが出てきたのを目にした。
「ひとみ、逃げろ!」
「えっ!?」
健太の呼び声にひとみが緊張を覚える。しかしシュウに気付いて後ろを振り返ったときにはもう遅かった。
「捕まえたぞ、小娘!」
シュウが両腕でひとみを捕まえて持ち上げる。
「うあっ!」
シュウに締め付けられて、ひとみが声を上げる。
「ひとみ!」
「おっと!動くなよ、小僧!」
ひとみを助けようと駆け寄ろうとした健太に対し、シュウがひとみを人質にとる。
「コイツはただの人間だ。オレがちょっとでも力を込めれば、あっという間にコイツの骨はバラバラだぞ。」
「ヤロー・・支配者を自称しておきながら、卑怯なことばっかしやがって・・!」
脅しをかけてくるシュウに、健太が憤りを感じて体を震わせる。
「全てを支配する者は、何もかも許されるのだ。大人しくすればコイツの命は保障してやるぞ。」
シュウがひとみに目を向けて、健太に呼びかける。
「健太、僕に構わずにコイツをやっつけて・・!」
ひとみが声を上げて、健太を奮起させようとする。
「貴様、そんなに死に急ぎたいのか?」
「アンタなんかの言いなりになるぐらいなら、死んだほうがマシだよ!」
笑みを消すシュウにひとみが言い放つ。
「いい度胸だ・・ならば望みどおり貴様から!」
「やめろ、てめぇ!」
目を見開いたシュウに、健太が飛びかかろうとした。
次の瞬間、健太の体が突然貫かれた。彼の影が形を変えて地面から飛び出して、彼の体を貫いていた。
「・・っと思ったが、貴様が隙を作ったのでな・・」
「シュウ・・おめぇ・・・!」
あざ笑ってくるシュウを睨む健太が、激痛に顔を歪める。
「健太・・健太!」
体から血をあふれさせる健太に、ひとみが悲痛の叫びを上げた。
次回
「もう貴様たちは、オレから逃れることはできない!」
「オレの支配、存分に体感するがいい!」
「オレたちは・・こんなところで・・・!」
「終わりだ・・金城健太・・・」