ガルヴォルスX 第17話「新たな野心」
抱擁を交わした健太とひとみは、いつしか眠りについていた。朝を迎えたところで、ひとみは目を覚ました。
「夢・・じゃないんだね・・・」
ひとみが健太に目を向けて、記憶を呼び起こして戸惑いを覚える。
「ホントにエッチしちゃったんだね、僕・・健太と・・・」
健太と抱擁したときのことを思い出すひとみ。彼女は口付けをしたことも思い出して、自分の唇に軽く指を当てる。
「エッチなのはイヤだと思ってたのに・・実際にやったら気分がよくなってた・・健太に、ムチャクチャにされるのを望んでた・・・」
自分の体を抱きしめて、ひとみが震える。自分の心の整理がつかず、彼女は苦悩を深めていた。
「ひとみ・・起きてたのか・・・」
健太も目を覚まして、ひとみに声をかけてきた。
「健太・・・僕たち、ホントにエッチを・・・」
「正直、オレもここまですごくなるとは思ってなかった・・気分がよすぎて、止まらなくなりそうだった・・・」
ひとみと健太が自分たちの抱擁に戸惑いを感じていく。2人は互いの顔を見つめ合って、動揺を膨らませていく。
「健太のあたたかさが、僕の中に入ってきてた・・ハレンチなのはいけないことだって、僕、健太にきつく言ってたのに・・・」
「これがオレの幸せの形・・オレのパラダイスってことか・・」
「バカなこと言わないでって・・他の人にハレンチ働いていいってことにはなんないんだから・・」
笑みをこぼす健太にひとみが頬を赤らめて注意をする。
「これで人のこと言えないとか考えてたら、大間違いなんだからね・・もう僕以外に、エッチなマネはさせないんだから・・ハレンチなことをしていいのは僕だけなんだから・・・」
「ひとみ・・・」
「僕をここまでにさせたんだから・・僕じゃ満足できないなんて言わせないから・・」
戸惑いを募らせながら言いかけるひとみに、健太も戸惑いを覚える。彼は後ろからひとみを抱きしめてきた。
「満足できねぇなんて言わねぇよ・・っていうか、おめぇじゃねぇと満足できねぇ・・そんな気がしてならねぇ・・・」
「健太・・・」
健太が投げかけた言葉に、ひとみが心を揺さぶられる。
「僕以外のエッチはさせないから・・・」
「楽しみだって言っとくよ・・」
互いに笑みを見せ合うひとみと健太。2人は互いのぬくもりを感じ取っていた。
自分の寮の部屋でうずくまっていたユキ。そのまま眠っていた彼女のいる部屋に、ひとみがやってきた。
「ユキちゃん・・・」
「・・・ひとみ・・ちゃん・・・」
ひとみに声をかけられて、ユキが目を覚ました。彼女の顔に泣いた跡があるのを、ひとみは気付いた。
「ずっと、健太と一緒にいたんだね・・・」
「あ・・うん・・・」
ユキが投げかけた言葉に、ひとみが小さく頷いた。
「もしかして、健太と、その・・エッチ・・したの・・・?」
ユキが切り出した問いかけに、ひとみが困惑しながら小さく頷いた。
「ゴメン、ユキちゃん・・ユキちゃん、健太のこと・・・」
「うん・・好きだっていうのはホント・・でも健太が幸せになって、健太が自分の道を突き進んでいけたらいいとも思ってる・・」
謝るひとみに、ユキが自分の正直な気持ちを言う。
「それだったら、あたしの想いが健太に届かなくたって・・・」
「ユキちゃん・・・!」
作り笑顔を見せてきたユキに、ひとみが寄り添ってきた。突然の抱擁にユキが戸惑いを覚えて言葉を詰まらせる。
「ゴメン、ユキちゃん・・ホントに、ゴメン・・・!」
「ひとみ・・ちゃん・・・」
ひたすら謝ってくるひとみに、ユキも動揺を膨らませるばかりになっていた。
「僕、健太と離れ離れになりたくなかった・・健太への気持ちを止めることができなかった・・・」
「それはいいよ、ひとみちゃん・・ひとみちゃんには、ひとみちゃんの気持ちがあるんだから・・・」
「でも、それで僕は、君を・・ユキちゃんの気持ちを・・・!」
「いいんだよ・・健太が幸せで、それでひとみちゃんも幸せでいられるなら・・・!」
健太とひとみのために身を引こうとするユキ。彼女の思いを実感して、ひとみが心を揺さぶられていく。
「僕・・これでいいのかな・・・ホントに・・・」
「これからも・・健太のことをお願いね・・・」
戸惑いを募らせるひとみに、ユキが微笑んだ。
「ユキちゃん・・・ありがとうね・・・」
彼女に感謝して、ひとみも微笑んだ。2人は寄り添い合い、改めて互いの気持ちを分かち合った。
ひとみが部屋からいなくなって、1人になった健太。彼はベッドに座って、ひとみとの抱擁とそのぬくもりを思い返していた。
「すっかり、気分がよくなってたな、オレ・・・」
健太が戸惑いを抱えたまま、自分の右の手のひらを見つめて握りしめる。
「灯台下暗しっていうのか・・オレのパラダイスは、オレのすぐそばにあったのにな・・・」
ひとみへの思いを感じて、健太が笑みをこぼす。
「これからはひとみとのこの気分を堪能していくとするか・・しばらくやってれば、気持ちの整理がつくか・・」
心地よさと安らぎを求めて、健太はひとみに心を傾けることを考えていた。
「さーて、散歩にでも出て、外の空気でも吸ってくるか。」
健太は気分転換を決めて、部屋を出て行った。
ひとみに励まされたユキは落ち着きを取り戻しつつあった。彼女は窓から外を眺めていた。
(ひとみちゃんと一緒にいるのが、健太の幸せになってる・・でも、あたしはそれが悪いなんて思わない・・・)
ユキが心の中で健太のことを考えていく。
(そう・・あたしは健太が幸せだったら、それでいいんだから・・)
健太のためを思って自分に言い聞かせていくユキ。そのとき、彼女は健太が外に出てきた。
「健太・・1人でお出かけ・・・」
気軽に出かけていく健太を見送って、ユキは笑みをこぼしていた。
気分をよくしようとして、健太は外に出かけた。彼は歩きながら背伸びをする。
「街でもひと回りしてくるか。散歩コースには丁度いい。」
健太が呟いて大通りを歩いていく。
(いつもはかわい子ちゃんやきれいなお姉さんを求めて、ここを回ってたな・・あのときは思いっきり楽しんでたな・・)
健太が心の中で今までの自分を思い返していく。
(今日はかわい子ちゃんは・・・)
いつものように美女を探そうとした健太だが、それが本音でないことに気付いて、表情を曇らせる。
(違う・・オレが入れ込んでるのは、他のかわい子ちゃんじゃなくて・・・)
素直に喜べないようになって、健太が心の中で呟いていく。
(やっぱおめぇじゃねぇと納得できねぇな・・ひとみ・・・)
ひとみのことを考えて、健太が笑みをこぼす。
「ひと回りして気分転換したら、寮に帰るか・・」
健太が気分を落ち着けてから、再び歩き出した。
「貴様が金城健太か・・」
そこへ声をかけられて、健太が足を止めて振り返る。彼の前に現れたのはシュウだった。
「誰だ、アンタは?オレに何か用か?」
「名乗りもせずに話を進めるのもいい気がしないな。オレは鳥尾シュウ。全てを支配する男だ。」
問いかけてくる健太に、シュウが不敵な笑みを浮かべて名乗りを上げる。
「全てを支配する?また大きな口を叩くヤツが出てきたな・・」
健太がため息をついてから、強気な態度を見せる。
「お前のことは耳にしているぞ。これからは貴様がオレの最大の敵になるわけか。」
「敵?オレに対して何を企んでる?・・もしかして、お前も・・!?」
「フン。察しはいいようだな。オレもガルヴォルスだ。」
身構える健太の前で、シュウの頬に異様な紋様が浮かび上がる。
「それもただのガルヴォルスではない!」
目を見開いたシュウが黒い異形の姿に変わる。ダークガルヴォルスとなった彼が、健太に迫る。
「金城健太、貴様もオレが頂点に上り詰めるための踏み台になってもらうぞ!」
「それで、オレを利用して叩き潰そうってことかよ・・・」
言い放つシュウに対して、健太が憤りを覚える。
「どいつもこいつも、オレを思い通りにしねぇと気が済まねぇのかよ・・・!?」
怒号を放った彼の姿がシャドーガルヴォルスとなる。
「ほう。それが貴様のガルヴォルスの姿が、並みでないことは確かだな。」
シュウが健太を見て笑みをこぼす。
「だが上には上があるということも忘れるな!」
シュウが言い放ち、健太に向かって飛びかかる。健太が後ろに動いてこの場から離れる。
「どうした!?いきなり逃げ腰か!?」
「かわい子ちゃんがそばにいたらどうするってんだよ!」
挑発を投げかけるシュウに、健太が文句を言う。2人は街から離れて、人通りの少ない道にたどり着く。
「ホントに堂々としてるな、アンタ!人前だってのに!」
「オレは全てを支配する男だ!オレのことが他のヤツに知られようが、後ろめたいことなど何もないわ!」
毒づく健太にシュウが強気に言い放つ。彼は自分のことを隠すどころか、前面に押し出そうとしていた。
「貴様はこの世界の中で1番、オレの支配の邪魔をするヤツだと確信した!貴様も兵頭士蓮のように屈服させてやるぞ!」
「何っ!?士蓮に何かしたのか!?」
「オレが始末してやった!貴様がヤツを追い詰めてくれたおかげだ!感謝するぞ!」
「おめぇ・・アイツを倒すために、オレを利用しやがったのか・・・!?」
高笑いを上げるシュウに、健太が憤りを募らせる。
「それが支配者の特権というものだ!力があれば、何をやっても許される!」
「それでかわい子ちゃんにまで手を出そうだなんて、考えてるのかよ!」
強気を見せるシュウに、健太の怒りが頂点に達した。
「そんなマネ、オレがいる限り、絶対させねぇ!」
言い放つ健太の体が刺々しいものへと変わる。一気に力を増した彼が、シュウに拳を叩き込む。
「ぐっ!」
思いのある一撃を受けて、シュウが顔を歪める。彼はとっさに健太から離れる。
「これが、士蓮を追い詰めた力か・・オレとしたことが、それほどの力を侮るとは・・・!」
健太の力を痛感して、シュウが毒づく。健太が振り向いて、シュウに鋭い視線を向ける。
「オレがいる限り、おめぇの好きにはさせねぇぞ!」
健太が言い放つと、シュウに向かって飛びかかる。シュウがとっさに影を伸ばして、健太を狙う。
「くっ!」
健太が反応して、とっさに横に動いて影をかわす。彼は勢いを止めずに前進し、シュウに再び拳を叩き込む。
「ぐはっ!」
全身に激痛が駆け巡り、シュウがうめく。彼は影を伸ばして、健太を引き離していく。
「どうした!?最初のでけぇ態度はどこへ行った!」
健太がシュウに向かって強気に言い放つ。シュウが健太に対していら立ちを見せる。
「まさかこのオレが、尻尾巻いて逃げることになるとはな・・・!」
毒づくシュウが健太から離れていく。
「今日のところは勝ちを譲ってやる!だが貴様がオレに勝つのは、これが最初で最後だ!」
シュウは言い放つと、健太の前から去っていった。
「おいっ!コラ、待て!」
健太が追いかけようとするが、シュウは姿を消した。
「逃げられたか・・調子のいいヤローが出てきたな・・!」
健太がシュウに毒づく。健太はシュウがレベルの高いガルヴォルスであることを実感していた。
「アイツに士蓮がやられちまったってのかよ・・そして次はオレを狙ってきたか・・」
人の姿に戻った健太がシュウの動向を気にする。
「自分のために他のヤツを平気で利用して始末しようとするアイツに、かわい子ちゃんたちをいいようにされてたまるかよ!今度会ったら確実にブッ飛ばしてやるぜ!」
シュウを女性の敵だと認識して、健太が手を握りしめる。
「さーてと、そろそろ帰るとするか。」
健太は気さくな笑みを浮かべて、寮に戻ることにした。
買い物に出かけていたひとみが寮に帰ってきた。彼女は寮の前にユキがいたことに気付く。
「ユキちゃん、ただいま・・」
「ひとみちゃん・・おかえり。買い物に行ってたんだね。」
声をかけてきたひとみに、ユキが微笑んで答える。
「健太も、外に出てるの?」
「そうみたい。健太のことだから、きっと女の子を追っかけまわしてるんじゃないかな・・」
「もう、健太ったら・・しっかり問いただして、反省させてやるんだから・・」
ユキの話を聞いて、ひとみがふくれっ面を見せる。
「あ、噂をすれば帰ってきたみたいだよ。」
「えっ・・?」
ユキが声をかけてひとみが振り向く。健太が落ち着いた様子で帰ってきた。
「健太、どこに行ってたんだよ?」
「散歩だよ、散歩。気分転換にいいかなって思ってさ。」
歩み寄ってくるひとみに、健太が気さくに答える。
「また女の人を追っかけてたんだろうね・・・!?」
「そのつもりだったんだけど・・」
「やっぱりー!アンタって人はー!」
気のない態度で答える健太にひとみが詰め寄る。
「けど、乗り気がしなくてな・・やっぱおめぇじゃねぇと気乗りしねぇみてぇだ・・」
「ち、ちょっと・・健太・・・!」
健太が口にしてきた言葉に、ひとみが動揺して顔を赤くする。
「そそそそ、そんなこと言ってごまかそうとしても、ぼぼ、僕は騙されないよ!」
「えらく動揺してるぞ、ひとみ・・自信持てって。オレも持ってるから。」
「もー!健太のバカバカー!」
笑みをこぼす健太にさらに赤面するひとみ。彼女が健太に握った両手を当てていく。
「落ち着けって、ひとみ・・よせって・・」
すがってくるひとみに苦笑いを浮かべる健太。2人のやり取りを見て、ユキは複雑な気分を感じていた。
健太との戦いから撤退することになったシュウ。健太にやられたことに腹を立て、自分の屋敷に戻ってきたシュウが、廊下の壁や床に八つ当たりする。
「おのれ、金城健太・・このオレに屈辱を与えるとは!」
いら立ちを募らせるシュウが、床を強く踏みつける。
「この屈辱、必ずヤツに味わわせてやる・・それはオレ自身の力を高めることで可能とするとして・・・!」
歯ぎしりをしながら、シュウが徐々に落ち着きを取り戻していく。
「今のこのいら立ちを解消することを優先しなくては・・・!」
屈辱の解消を念頭に置いて、シュウが不敵な笑みを浮かべる。彼は廊下を真っ直ぐに進んでいった。
屈辱を晴らそうとするシュウ。彼の目の前には全裸の女性がいた。
シュウに体を弄ばれて、女性は声にならないあえぎを上げていた。彼女の反応を見て、シュウが喜びを感じていた。
「そうだ・・これがオレだ・・全てを支配するオレが表れている・・・!」
自分が最高で絶対であることを実感して、シュウが笑みをこぼしていく。
「オレにできないことは何もない・・オレが全てを支配する・・・!」
支配という野心をむき出しにしていくシュウ。
「あの小僧にもそのことを思い知らせてやるぞ・・・!」
健太への敵意をもむき出しにして、シュウは次の行動に移るのだった。
次回
「またふざけたヤツが出てきたぞ・・」
「今度出てきたら、必ずブッ倒してやるぜ!」
「健太が突っ走りすぎないように、僕がしっかり目を光らせとかないとね。」
「アイツらを使えば・・思い知らせることができるかもしれないな・・・」