ガルヴォルスX 第16話「非情の終末」
ユキの力によって回復した健太が、士蓮と黒ずくめたちに抵抗の意思を示してきた。
「まさか完全回復してくるとは・・・」
士蓮が健太を見据えて毒づく。シャークガルヴォルスと互角以上だった力の健太と対峙すれば、さすがに自分たちでも無事では済まないと、士蓮は考えていた。
「ヤツの動きに注意しつつ、後退!引き上げるぞ!」
「そうやってまた逃げるつもりなのかよ!」
指示を出す士蓮に健太が声を張り上げる。
「我々は倒れるわけにはいかない。我々の任務を完遂するためなら、引き上げることは憶病なことではない。」
「そうやって言い訳口にして、結局は尻尾巻いて逃げるんだろ!」
淡々と言いかける士蓮を、健太が挑発する。しかし士蓮は聞く耳を持たない。
「深追いはするな。全員撤退だ。」
「逃がさねぇよ!」
士蓮がまた指示を出すと、健太が飛びかかってきた。黒ずくめたちが反射的に銃で応戦するが、健太の体に弾丸が弾かれる。
「くっ!・・全く効かない・・!」
声を荒げる黒ずくめたちに、健太が拳を振りかざす。黒ずくめたちが殴り飛ばされて、激しく横転して動かなくなる。
「惑わされるな!お前たちは下がれ!」
士蓮は黒ずくめたちに呼びかけて、健太の前に出る。
「金城健太は、私が相手をする・・・!」
目つきを鋭くした士蓮が、タイタンガルヴォルスになる。
「そうだ・・そうでなくちゃな・・!」
健太が笑みを見せて構えを取る。
「お前たちは体勢を立て直し、美波ひとみと春日野ユキの追撃に迎え。」
「しかし、それでは隊長が・・!」
「部隊の全滅が我々の、いや、世界の最悪の結末となる。それだけは避けなければならない。それに私は倒れはしない。ガルヴォルスを殲滅するまでは。」
「隊長・・了解しました・・ご無事で・・・!」
士蓮に促されて、黒ずくめたちは彼と別れてこの場を後にした。
「部下思いのしっかりしたヤツだけど、やっぱおめぇらの考えもやり方も気に入らねぇ!」
健太が士蓮に向かって声を張り上げる。
「激しくガルヴォルスのことを憎んでるな、アンタ!そんなにいなくなってほしいのかよ!?全員が人襲って喜ぶヤツばかりじゃねぇってのに!」
「愚問を・・ガルヴォルスは滅びなければならない。ガルヴォルスという存在は、いるだけで全てを狂わせる・・」
「またそんな勝手を・・・!」
「我々の独善ではない。これは、数々のガルヴォルスを見てきた末に見出した結論なのだ。」
憤りを見せる健太に、士蓮が自分の考えを告げる。
「ガルヴォルスは危険極まりない。本人が人殺しや破壊を求めていなくても、ガルヴォルスの本能に突き動かされて暴走し、獣同然と化す傾倒にある。私のように自我を保っていられるのはほんのひと握りだ。」
「だからって、そのほんのひと握りもみんなぶっ潰しちまうっていうのかよ!?」
「そのわずかも危険視されるべき存在であることは否定できない。私自身もな。」
怒鳴りかかる健太に対し、士蓮は平静を崩さない。
「ガルヴォルスは全て滅ぼす。完全に根絶やしにした後、私も命を絶つつもりでいる。」
「どこまでも勝手なんだな、おめぇってヤツは・・・!」
頑なな意思を示す士蓮だが、健太は彼の意思を拒絶する。
「オレもおめぇらも自分勝手だが、おめぇらは他のヤツのことをちっとも考えちゃいねぇ・・だからオレは、おめぇのような生き方は絶対にしねぇ・・・!」
健太が自分の考えを言い放ち、全身に力を込める。
「オレはオレの生き方をする・・かわい子ちゃんやきれいなお姉さんへの思いを、これからも届け続けるぜ!」
健太が士蓮に向かっていって、拳を繰り出していく。士蓮が回避と防御でかいくぐるが、徐々に押されていく。
「そのようなくだらないことで・・ガルヴォルスとしてはもちろん、人としても実に滑稽だ。」
「ハーレムをバカにすんな!美女のパラダイス以上に幸せなことはねぇ!」
嘲る士蓮に健太が怒鳴りかかる。健太の攻撃の力が徐々に増していき、士蓮を追い込んでいく。
「おめぇらのようなヤツらに、オレの生き方を勝手に決めさせるかよ!」
「そうしなければ、全てが混乱をきたす。」
「混乱させてんのはおめぇらのほうだ!」
士蓮が口にする言葉を、健太はことごとく一蹴していく。彼の繰り出した拳が、ついに士蓮の体に命中した。
「ぐっ!」
士蓮が激痛を覚えて後ずさりしていく。
「そうまでして・・そうまでして勝手気ままに生きていこうというのか・・我々の言う通りにしていれば、ガルヴォルス討伐を加速化し、世界を安定させることができるというのに・・・!」
士蓮が声を振り絞り、健太に鋭い視線を向けてくる。
「我々の言う通りにしなければ、お前たちも世界の敵に・・!」
「どうあっても、オレを思い通りにはできねぇよ!」
言いかける士蓮に健太が言い放つ。健太が右手を握りしめて力を込める。
「オレの道の邪魔をするなら、アンタを全力でブッ飛ばすだけだ!」
健太が全力を込めて、士蓮に拳を叩き込んだ。
「ぐあっ!」
全身を衝撃が駆け巡り、士蓮がうめく。彼の体から血しぶきがまき散らされた。
「私・・私は・・・!」
体から血をあふれさせて、士蓮が後ずさりしていく。
「もうオレたちにちょっかい出してくるな・・かわい子ちゃんやきれいなお姉さんにもな・・・」
健太は士蓮に言うと、ガルヴォルスから人の姿に戻る。
「待て・・このまま、野放しにさせるか・・・!」
健太に向かって手を伸ばす士蓮だが、体が思うように動かない。
「自分が死んでまで、そんなことをやり通して、何がいいっていうんだよ・・もういい加減に、おとなしくしてろよ・・・」
士蓮に背を向けた健太が言いかけて、ゆっくりと歩いていく。
「このまま戦死することもできず、生き恥をさらせというのか・・認めない・・認めるわけにはいかない・・・!」
士蓮が憤りを覚えて、傷ついた体を突き動かして健太を追おうとする。
「オレは戻る。ひとみとユキのところに・・」
「させるものか・・このままお前を、野放しには・・・!」
言いかける健太に士蓮が言い返す。去っていく健太を、士蓮は追うことができなかった。
「私は・・私はまだ・・倒れるわけには・・・!」
立ち上がろうとする士蓮だが力が入らず、ついにガルヴォルスから人の姿に戻る。
立っていることもままならなくなり、士蓮はこの場に倒れた。
健太に促されて、ひとみとユキは寮の近くまで戻ってきていた。
「健太、ここに戻ってきてよね・・そのときにはきちんとお仕置きして・・・」
健太を思うあまり、いつもの素振りを出すひとみ。彼女のそばでユキが呼吸を整える。
「ユキちゃん、大丈夫・・・?」
「う、うん・・ここに来るまでに体力が戻ってきたよ・・」
ひとみが心配して、ユキが笑みを見せて頷く。健太の回復で消耗した体力が回復しつつあった。
「健太も大丈夫だよ。あれだけのパワーと信念で、しかも全快したんだから・・」
「ユキちゃん・・うん。健太はしぶといからね・・」
ユキの健太への信頼の言葉を聞いて、ひとみは頷いた。
「2人そろってオレの噂か?」
そのとき、健太が戻ってきてひとみとユキに気さくな笑みを見せてきた。
「健太、戻ってきたね。信じてたよ・・」
「ユキ・・体のほうはもう大丈夫みたいだな・・」
ユキと健太が声を掛け合って微笑んだ。健太は視線をひとみに移す。
「健太・・こっちに戻ったんだね・・このまま僕から逃げていっちゃうんじゃないかって思ってたよ・・」
ひとみが照れ隠しに、健太に突っ張った態度を見せる。
「とりあえず、おめぇらの顔を1回見ときたくてな・・2人も無事でよかった・・」
健太が安堵を込めた笑みをこぼして、2人に背を向ける。するとひとみが彼に近づき、寄り添ってきた。
「もう逃がさないよ・・みんなに謝るまで放さないから・・・!」
「ひとみ・・・」
すがりついて声を振り絞るひとみに、健太が心を揺さぶられる。ひとみは健太にしがみついて、離れようとしない。
「だったらどこまでも付いてくるか・・・」
健太はひとみに抱き着かれたまま、寮に向かって歩いていく。その2人の様子を見て、ユキは唖然となっていた。
健太にしがみついたまま、ひとみは彼の部屋まで来た。
「ホントに放さなかったか・・こうなっちまったら、どうなっても知らねぇぞ・・・」
健太がひとみに振り返り、ひとみを抱きしめてきた。
「け、健太・・・!?」
突然のことに動揺するひとみ。健太は彼女とともにベッドに横たわる。彼からの抱擁に彼女は動揺を膨らませていく。
「こうなったら、おめぇにいろいろやってやる・・とことん付き合ってもらうぜ・・」
「ちょっと、健太・・・!」
笑みをこぼす健太に声を荒げるひとみ。健太がひとみの胸に手を当ててきた。
「健太・・僕にまで、ハレンチなことを・・・!」
健太に胸を触られて、ひとみが困惑していく。
「こ、こうなったら、とことんアンタに付き合ってやるんだからー!」
ひとみが赤面しながら、抱かれたまま健太を押し倒す。彼女のこの行動に健太が一瞬動揺を覚える。
「おい・・ひとみも大胆になってきたじゃねぇか・・」
笑みをこぼす健太の前で、ひとみが自分の服を脱いでいく。彼女は健太に自分の裸をさらけ出していく。
ひとみは改めて健太を抱きしめる。彼女の胸が体に当たるのを感じ取り、健太は動揺を覚える。
(オ、オレ・・初めてキスされた・・しかも、ひとみから・・・!)
ひとみとの口付けの感触に、健太はさらに心を揺さぶられていく。ついに2人の抱擁は、裸と裸の触れ合いとなった。
健太は再びひとみの胸に手を当てて、撫でて揉んでいく。その接触に心地よさを感じて、ひとみがあえぎ声を上げる。
(き・・気持ちいい・・エッチなことをされて、イヤなはずなのに・・・)
嫌がっていたはずのエッチな行為を、ひとみは徐々に受け入れようとする。健太がひとみの体にさらに手を伸ばし、腰や尻を撫でまわしていく。
「もう、健太・・好き勝手に触ってきて・・・」
ひとみが声を上げて、自分の胸に健太の顔をうずめてきた。胸の谷間に顔がうずめられて、健太も心地よさを膨らませていく。
(これが、おっぱいの感触・・想像以上の気分のよさ・・・!)
ひとみの胸のぬくもりを実感して、健太が安らぎも感じていく。
(さすがのオレも、意識がぶっ飛びそうだ・・・!)
押し寄せてくる恍惚にさいなまれて、健太がひとみの胸から顔を出して、大きく呼吸する。
「もっと・・もっと抱きしめていたい・・もっと、この感じを味わいたい・・・!」
「僕も・・僕もこのまま、健太と一緒に・・・!」
健太とひとみが声を張り上げて、強く抱擁を交わしていく。
「ち、ちょっと・・何か、入ってくるよ・・・!」
ひとみが動揺をあらわにして声を荒げる。彼女の秘所に健太の性器が入り込んできた。
「健太・・ちょっとそれはさすがに・・・あぁぁぁ・・・!」
「ダメだ・・オレでも、抑えられねぇ・・・!」
性交の快感に刺激されて、ひとみと健太が声を荒げる。2人はさらに抱きしめ合って、強まる快感に溺れていく。
(これが・・エッチってことなんだね・・・僕も、女だってことなんだね・・・)
男に抱かれることに心を動かされていることを、ひとみは実感していった。彼女はまた健太と口付けを交わした。
(これが、ひとみの感じ・・ひとみのぬくもり・・ひとみの、想い・・・)
健太もひとみとの抱擁を実感していた。感じ取っていた快感は、彼が思い描いていた以上のものとなっていた。
健太に打ち負けて、士蓮は歯がゆさを募らせていた。彼は痛みが駆け巡る体を突き動かして、小道を歩いていた。
「私は倒れるわけにはいかない・・サメのガルヴォルスは倒れたが、金城健太は未だ健在・・野放しにすれば、世界はさらなる混乱に襲われる・・・」
声と力を振り絞り、士蓮はゆっくりと歩を進めていく。
「必ず・・必ず拘束して、処罰しなければ・・・」
「まさかここで貴様が弱まるとはな・・」
そこへ声がかけられて、士蓮が目を見開く。彼は背後から気配を感じ取っていた。
「久しぶりだな、士蓮・・本当に久しぶりだ・・・」
「お前は・・シュウ・・鳥尾シュウ・・・!」
ここで士蓮がようやく振り返る。彼に向かって男、シュウが不敵な笑みを浮かべてきていた。
「何しに来た・・我らを裏切った男が・・・」
「ガルヴォルスを憎み、ガルヴォルス殲滅しか頭にない貴様には、力を手に入れた喜びなど理解できないだろうな・・」
鋭い視線を向ける士蓮を、シュウがあざ笑ってくる。
「まさかシュウ、お前も・・!?」
「そうだ。貴様と同じだ・・オレもガルヴォルスとなった・・それも、並みのガルヴォルスではない・・」
緊迫を覚える士蓮に語りかけるシュウの頬に、異様な紋様が浮かび上がる。彼の姿が黒い人型へと変わっていく。
「それがお前のガルヴォルスとしての姿か・・」
「そうだ・・この姿と力は、全てをものにするためにある・・」
目つきを鋭くする士蓮に、シュウが笑みをこぼして言いかける。
「そして士蓮、貴様に引導を渡すときが来た。」
シュウは笑みを強めて構えを取る。
「私は貴様に敵わず、何度も辛酸をなめてきた。だが今度が貴様がそうする番だ。」
「完全に力に溺れたか、シュウ・・だがそのようなお前に負ける私ではない・・」
喜びを膨らませていくシュウに、士蓮は態度を変えずに言いかける。
「それに、ガルヴォルスとなり、その力に溺れて暴徒と化したお前には、もはや生きる資格すらない。」
「それを決める権利は、貴様にはない!」
敵意を向ける士蓮を、シュウがあざ笑ってくる。士蓮もタイタンガルヴォルスになって、シュウを迎え撃つ。
「ガルヴォルスである貴様には、たとえ同じガルヴォルスになったオレでも無傷で勝つことは不可能だっただろう。だが今は体力を大きく消耗している。勝機がないのは貴様のほうだ。」
「卑怯なマネを・・そうまでして私を葬ろうというのか・・・!?」
「目的のために手段を選ばないのは貴様も同じ。貴様の息の根を止めるためなら、オレもどんなことでもやるぞ!」
憤りを覚える士蓮に、シュウが目を見開いて飛びかかる。士蓮が放つ針をかわして、シュウが一気に詰め寄ってきた。
士蓮が拳を繰り出して、シュウの体に叩き込んだ。しかしシュウにほとんどダメージを与えられない。
「よほど力を使っているようだな・・蚊に食われたほどにも感じないぞ・・・!」
シュウが笑みを強めて士蓮を見据える。
(金城健太から受けたダメージが大きかったか・・・!)
士蓮が体力の消耗を痛感して毒づく。
そのとき、士蓮の体を黒い影が貫いた。士蓮が吐血して脱力していく。
「これは・・・影・・・影が、伸びた・・・!?」
声を荒げる士蓮から、影が引き抜かれる。血をあふれさせた士蓮がうつ伏せに倒れる。
「お前の、力か・・・!」
「影を操る、と思ったのだろうが、それだけではない・・私が操れるのは闇・・あらゆるものを支配する闇だ・・!」
見上げる士蓮をあざ笑うシュウ。
「士蓮、貴様を地に這いつくばらせるのも、オレの闇の力だ!」
シュウが右手を突き出して、士蓮の体に叩き込んだ。士蓮の体からさらに鮮血があふれ出した。
「わ・・私は・・まだここで倒れるわけには・・・!」
諦めようとせずに声と力を振り絞る士蓮だが、シュウにさらに体を押し付けられる。
「もう貴様が縛り付ける時代は終わったんだよ・・早く地獄に落ちるのだな・・・!」
勝ち誇るシュウの眼下で、士蓮が倒れて動かなくなる。彼の体が崩壊して消えていった。
「やったぞ・・ついに士蓮が始末したぞ!」
士蓮を倒したことを喜び、シュウが高らかな笑い声を上げる。
「これからは全てが、オレの思い通りとなる!逆風に押されることはもうないのだ!」
士蓮に屈することなく自分の意のままに行動できることを喜ぶシュウ。彼は隠していた野心をむき出しにして、次の行動を開始するのだった。
次回
「もう僕以外に、エッチなマネはさせないんだから・・・」
「あたしは健太が幸せだったら、それでいいんだから・・」
「貴様が金城健太か・・」
「どいつもこいつも、オレを思い通りにしねぇと気が済まねぇのかよ・・・!?」