ガルヴォルスX 第8話「揺れる三角関係」
ユキは健太の高校時代のクラスメイトである。
高校でもハレンチなことを繰り返していた健太。彼の行動に他の生徒たちも先生も参っていた。
その中でそんな健太に気を引かれていたのがユキだった。
周りから左右されず、自分の道をひたすら突き進む健太に、ユキは心を動かされていた。健太がハレンチであることも承知で。
ところが高校卒業を機に、健太とユキは離れ離れになった。しかしユキは再び健太の前に現れたのだった。
健太と再会できて、ユキは心から喜んでいた。彼女は寮に行くと、寮長に事情を話した。
「春日野ユキさんね。話は聞いています。ただ急な転入だったので、寮の空き部屋が用意できていないの。きれいにしていない状態で・・」
寮長が事情を説明して、困った顔を見せる。
「明日には準備を終わらせるから・・それまでは美波さん、あなたの部屋で寝かせてもらえないですか?」
「ええっ!?この子を僕の部屋に!?」
寮長の言葉にひとみが驚きの声を上げる。
「君たちが連れてきたんです。金城さんと一緒にいさせるわけにはいきませんので。」
「でもだからって、どうして僕が・・!?」
「今の段階で君が女子の中で1番の知り合いなんですから・・」
反論するひとみに寮長が言い寄る。言い返せなくなって、ひとみが大きく肩を落とす。
「ふぅ・・寝る時までユキに付きまとわれたらたまんないからな・・」
健太がユキと離れられて安堵していた。
「それと金城くん、今日という今日は罰当番をやってもらいますよ。」
そこへ寮長が健太の腕をつかんで呼びかけてきた。
「ちちち、ちょっとー!オレは何も悪いことはしちゃいないってー!」
「女子に散々変態を働いて、悪くないわけないでしょう!きちんとみんなに謝らないのなら、他の処分も考えないといけなくなります!」
「じ、冗談じゃない!そんな横暴こそやっちゃいけねぇだろ!」
「君のほうが十分横暴です!」
文句を言う健太に寮長が怒鳴る。彼女が彼を引っ張って、寮長室に連れていく。
「まずは反省文をぎっしりと書いてもらいます。そして女子1人1人に土下座して謝ってもらって・・」
寮長が健太に呼びかけていったときだった。彼女が握っていた健太の腕が人形の腕にすり替わっていた。
「い、いつの間に!?・・金城くん、君という人は・・!」
健太に逃げられて寮長が不満を爆発させていた。
寮長からユキを任されて、ひとみは複雑な気分に襲われて参っていた。
「ハァ・・何で僕の部屋に泊めさせないといけないんだよ・・」
「あたしも健太と一緒の部屋にいたかったよ〜・・」
頭を抱えるひとみと、健太と一緒にいられなくて落ち込むユキ。
「何であんな変態といたがるんだよ?女子はみんなエッチなことされて、みんな迷惑してるんだから・・」
「変態だけど、自分を貫いていくのがいいんだよ、健太は。」
「悪い方向へ貫いてるって・・」
健太に憧れるユキに、ひとみは呆れていた。
「健太はホントにハレンチで、反省なんてこれっぽっちもしない。捕まえても逃げ出すばかりだし・・」
ひとみが健太への不満を口にしていく。
「あんなのに入れ込むなんて、あなたもどうかしてるよ・・」
ひとみはユキに振り向いて、彼女にも不満をぶつける
「あなたのためを思って言うよ・・健太に入れ込んじゃうとロクなことにならないよ・・!」
「そんなことないよ。あたし、健太に何度も元気づけられたんだから・・」
注意を呼びかけるひとみだが、ユキは健太への思いを変えない。
「どんなときでも自分の考えを曲げない。前向きなところが、健太のいいところなんだよ・・」
「その真っ直ぐな考え方を、もっといい形で貫いてほしいもんだよね・・」
健太を信じようとするユキに、ひとみは参って肩を落としていた。
自分の部屋に来たひとみは、仕方なくユキを部屋に入れることにした。
「今夜は僕のベッドを使って。僕はその横で寝るから・・」
「そんな・・それじゃあなたに悪いよ〜・・」
呼びかけるひとみにユキが動揺を見せる。
「お客さんを床で寝かせるほうが悪いよ・・」
ひとみが言いながら、床に布団を敷いて寝支度を整える。
「ほら。ちゃんと寝て。夜中に勝手に外に出たりしないでよね。健太に会いに行こうだなんて思わないように・・」
「いじわる言わないでって〜・・」
ひとみから注意されて、ユキが頭を抱えて悲鳴を上げる。
「もう、面倒事が増えるばかりで参っちゃうよ・・」
不満の声を呟いてから、ひとみは布団に横になった。
「う〜・・おやすみ〜・・」
ユキも落ち込みながら、ベッドで寝ることにした。
夜の見回りをしている警官。怪物が起こしているという噂が流れている事件の多発で、彼らは警戒を強めていた。
「やれやれ・・ここのところのおかしな事件のせいで、全然気が休まらないな・・」
警官が事件について考えて、頭を悩ませていく。
「早く捜査が進展しないものかな・・せめて手がかりが出れば・・」
ため息まじりに見回りを続けていく警官。大通りから外れた小さな道に来たところで、彼は1人の青年を目にした。
「おい、君・・こんな時間に1人でどうしたんだ?」
警官が青年を呼び止めて声をかけてきた。
「君も事件のことは知っているはずだね。夜中に1人でこんなところを歩いていたら危ないよ。」
「警官・・警察・・そんなのがいるから、何もかもムチャクチャに・・・」
注意を投げかける警官に目を向けて、青年がいら立ちを募らせる。
「な、何だ・・どうした・・?」
「お前たちは、この世界の害虫なんだよ!」
眉をひそめる警官の前で、青年の姿が変貌を遂げる。
「き、貴様が、事件を起こしている怪物!?」
シャークガルヴォルスを目の当たりにして、警官が恐怖して後ずさりする。
「か、怪物発見!場所は裏通り・・!」
警官が他の警官たちに連絡を取ろうとした。そこへシャークガルヴォルスが爪を振りかざしてきた。
「ぐあぁっ!」
切り裂かれて鮮血をまき散らす警官が、絶叫を上げて昏倒した。動かなくなった彼を見下ろして、シャークガルヴォルスが憤りを募らせていく。
「オレは滅ぼす・・何もかも狂わせている警察を・・・!」
警察への憎悪を噛みしめて、シャークガルヴォルスは歩き出していった。
警察さえも標的にされた怪事件。警部たちもこの事態に滅入っていた。
「これは警察に対する挑戦・・とでも言いたいのか、犯人は・・・」
「オレたちも狙われるってことッスか?・・落ち着かなくなっちゃいますよ・・」
警部たちが不満と不安を口にしていく。
「ヤツがこちらを狙ってくるなら好都合だ。迎え撃って逮捕すればいい・・!」
「えらく過激なことを考えてますね・・」
「おいおい、ビビっちまったのかよ・・」
「ビビりますよ、さすがに・・こっちが狙われてるって分かってたら・・」
「おめぇなぁ・・そんなんじゃデカ務まんねぇぞ・・」
「バケモンじゃなくても、犯人に殺される刑事がいないわけじゃないッス。刑事なら誰だって、それで全然ビビらない人はいないですって・・」
「ったく、おめぇってヤツは・・ちっとはシャキッとしろ・・」
「すいません・・シャキッとします・・」
「やれやれ・・捜査に向かうぞ。」
「わ、分かったッス!」
警部たちが事件の捜査のため、ともに行動をすることにした。
ひとみの部屋で一晩を過ごしたユキ。2人はほとんど同時に朝に目を覚ました。
「お、おはよ〜・・」
「おはよう。ちゃんと寝れたみたいだね・・」
気のない挨拶をして起き上がるユキに、ひとみがため息まじりに返事をする。
「もう健太のところに行ってもいいよね・・早速行っちゃおー♪」
「残念だけど、健太ならもう寮から出ちゃってるよ・・」
すぐに上機嫌になったところでひとみに言われて、ユキが愕然となって固まる。
「健太は早起きで、僕やみんなが捕まえに来る前に外に出てっちゃうんだよね・・僕も何度か早起きして行ったんだけど、いつももぬけの殻で・・」
「健太・・そこまで考えて・・・」
ひとみの話を聞いて、ユキが目を輝かせていく。
「ホントに呆れてものが言えないよ、まったく・・」
「うんうん♪ホントに真っ直ぐでかっこいいよね、健太は♪」
肩を落としたところでユキに喜ばれて、ひとみがズッコケる。
「いい加減にしてって!健太はみんなに迷惑かけてるんだよ!それを褒めるなんてどうかしてると言うしかないよ!」
「だって真っ直ぐで前向きなのが健太なんだよ。」
ひとみが怒鳴ってくるが、それでもユキは健太への思いを変えない。
「いつでもどこでもどんなときでも、かわいい子のために・・全力で動いて、自分の考えを貫いていく・・健太はそういうもんなんだよ・・」
「それが悪い形になってて、みんなの迷惑になってるからダメなんだよ・・」
ユキが健太への純粋な思いを口にするが、ひとみは呆れ果てていた。
「ダメなものはダメ。いくら真っ直ぐだからって、許されることじゃないんだから・・」
「う〜ん・・そういうものなのかなぁ〜・・」
注意を促すひとみに、ユキが腕を組んで悩んでいく。納得していない彼女に、ひとみは頭が上がらなくなっていた。
ひとみが思っていた通り、健太は早起きして寮から飛び出していた。
「早く出て正解だったな。ひとみだけじゃなくユキにまで付きまとわれたらたまんないからな・・」
ひとみ、ユキたちのことを考えて、健太が肩を落とす。
「さーて、気分を切り替えて、またまたかわい子ちゃん巡りでも行くとするかー!」
健太が気持ちを切り替えて、美女を追い求めて街に繰り出す。ところが街に近づくにつれて刑事や警官たちが多くなっていることに気付いて、彼は思わず息をのむ。
(今日はやけに警察多いなぁ・・また事件か・・?)
警察の警戒網が厳しいことに、健太は滅入っていた。
(もしかして、ガルヴォルスの事件か・・・)
健太はこの騒ぎの中にガルヴォルスがいるのではないかという予測を立てていた。
(だとしたらあの士蓮とこの連中が隠れてるんじゃ・・)
黒ずくめたちが自分や他のガルヴォルスの監視に出ているのではないかと、健太は思っていた。彼は人込みから外れて、人のいないところで意識を集中する。
(やっぱコソコソしてるか・・追っ払ってもいいけど、後々面倒になりそうだからな・・それは向こうも同じか・・)
黒ずくめたちの動向を気にしながら、健太は事態が大きく動き出すのを待つことにした。
ガルヴォルスの事件によって強化されていく警察の警戒網。ところがそれが青年の感情をさらに逆撫でしていた。
(そうまでして・・そうまでしてオレを苦しめたいというのか・・・!)
青年が憤りを募らせて、両手を強く握りしめる。
(やっぱり・・やっぱり滅ぼさないといけないようだな・・・!)
いきり立った青年がシャークガルヴォルスに変わった。彼は近くで目にした警官に向かって飛びかかった。
「うわっ!バケモノ!?」
警官だけでなく、周囲にいた人々がシャークガルヴォルスを見て悲鳴を上げる。人々が慌てて逃げ出し、警官たちが剣銃を構える。
「怪物が本当にいるとは・・!」
「市民のいるほうに進ませるな!」
警官たちが声を掛け合って、シャークガルヴォルスの出方をうかがう。
「警察は許されない・・1人も逃がさず、滅ぼす・・・!」
シャークガルヴォルスが警官たちに向かって飛びかかる。
「撃て!」
警官たちが一斉に発砲するが、シャークガルヴォルスに傷をつけることもできない。
「バ、バカな・・!?」
驚愕する警官たちにシャークガルヴォルスが飛びかかる。彼が振りかざす爪と角が、警官たちを切りつけていく。
「ほ、本当にバケモノなのか・・!」
「ありえない・・こんなことありえない!」
警官たちが絶叫を上げながら、シャークガルヴォルスから逃げ出していく。
「逃げるな!」
シャークガルヴォルスが怒号を放ち、さらに角を振りかざしていく。警官たちがさらに切りつけられて、鮮血がまき散らされていく。
怒りと憎しみを膨らませていくシャークガルヴォルスが、恐怖して座り込んでいる女性警官に目を向ける。
「警察は1人も逃がさない・・オレが必ず・・・!」
シャークガルヴォルスが女性警官に向かって歩いていく。女性警官は恐怖から抜け出せず、立ち上がることもできない。
「ちょーっと待ったー!」
そこへ高らかに声が飛び込み、シャークガルヴォルスが足を止めた。彼の前に現れたのは、シャドーガルヴォルスとなった健太だった。
「きれいな人に手を出そうとは、ひでぇヤツだな、お前はー!」
健太がシャークガルヴォルスを指さして、高らかに言い放つ。
「コイツはオレが相手するから、早く逃げてくれ!」
健太が呼びかけるが、女性警官は彼も怖がっていて、逃げ出すこともままならない。
「早く逃げろって!死んじまうぞ!」
健太が怒鳴ると、その声に突き動かされて女性警官が立ち上がり、慌てて必死に逃げ出していった。
「逃げるな!」
シャークガルヴォルスが怒号を放って女性警官を追おうとする。だが彼が伸ばした左手を健太に止められる。
「お前の相手はオレだぜ・・美女の敵が!」
「オレの敵は警察だ!好き勝手に振る舞って、オレたちを苦しめている害虫のな!」
互いに言い放つ健太とシャークガルヴォルス。シャークガルヴォルスが健太の手を振り払い、彼に拳を振りかざす。
健太も拳を繰り出して、シャークガルヴォルスの拳にぶつけ合う。シャークガルヴォルスはさらに爪と角を振りかざしてきた。
「おわっ!」
慌ててよけようとした健太の体を、シャークガルヴォルスの爪がかすめた。
「まともにくらったら、今のオレでもただじゃ済まないだろうな・・!」
シャークガルヴォルスの強さを実感して、健太が毒づく。
「邪魔をするなら、お前もこの手で叩き潰す!」
「オレはかわい子ちゃんやきれいなお姉さんの味方だぜ!お前が何だろうと、女性に手を出すヤツは容赦しねぇぜ!」
怒号を放つシャークガルヴォルスに、健太が言い放つ。2人がぶつけ合った拳が、激しい衝撃を巻き起こす。
「オレはもう振り回されたくない!自分が正義だと思い上がっている害虫は、オレが全て駆逐してやる!」
「お前、自分が神だとか、正義の味方だとか思ってんのかよ!?」
憎悪を言い放つシャークガルヴォルスに、健太も怒りを叫ぶ。
「そう思っているのは、駆逐されるべき害虫どもだ!」
シャークガルヴォルスが憎悪を募らせ、健太に飛びかかる。
「言っても分かんないヤツかよ、おめぇは!」
感情を爆発させた健太が、右手に力を集める。シャークガルヴォルス爪を尖らせて、健太に飛びかかる。
健太が力を込めて、シャークガルヴォルスを迎え撃ち、拳を繰り出した。
次回
「お姉さんを傷付けるヤツは、何だろうと許しちゃおかない!」
「アイツらが勝手なマネをしてきたせいで、オレは・・・!」
「ガルヴォルスの存在が公になれば、混乱をきたすことになる・・」
「ユキ、お前・・!?」