ガルヴォルスX 第4話「闇の狙撃手」
針で狙撃する犯人の存在に気付いた健太。しかし影の正確な居場所まではつかめていない。
その健太に向かって針が飛んできた。針を放った影は、彼を仕留めたと確信した。
だが針は健太の左腕をかすめただけで、外れて地面に刺さった。
(何っ!?)
狙撃が外れたことに驚く影。影は驚愕を表に出さないようにするのに必死だった。
(正確に速く狙った・・それなのに外すとは・・・)
たまらず思考を巡らせる影。
そのとき、影は自分に何かが近づいてきていることに気付く。
(まさか!?)
影がとっさに後ろに飛んだ。影がいた場所に健太が飛び込んできた。彼はシャドーガルヴォルスになって、ビルから飛び込んできたのである。
「ちっくしょう!やっと見つけたってのに〜!」
健太がその場で悔しがる。針が飛んできたほうから影の居場所を予測して、彼はガルヴォルスとなって素早くビルからビルに飛び移ってきた。
「あれだけでオレの居場所を突き止めてくるとは・・・!」
影は健太の前で正体を現した。ハリネズミの姿をした怪物、ヘッジホッグガルヴォルスの姿を。
「だがこれが最後だ。オレのこの姿を目撃できるのは・・」
ヘッジホッグガルヴォルスが後ろに飛んで、健太の前から姿を消した。
「アイツ、また隠れやがった!」
健太が声を荒げて駆け出す。が、彼はヘッジホッグガルヴォルスの姿を見失ってしまった。
「コソコソ隠れて針で仕留めてくってか・・他のヤツらに気付かれることもなく・・・!」
健太がヘッジホッグガルヴォルスに憤りを感じていく。
「かわい子ちゃんを手にかけるたぁ、とんでもねぇヤツだぜ!」
健太がさらに進んで、ヘッジホッグガルヴォルスを探す。しかし逆に健太の動きは、ヘッジホッグガルヴォルスに見られていた。
(もう油断しない・・今度こそ確実に・・・)
ヘッジホッグガルヴォルスが物陰に身を潜めて、健太を狙って針を飛ばす。
健太がとっさに反応して針をかわす。しかし感覚を研ぎ澄ませて、かろうじてかわしている状態だった。
(またかわすとは・・だが何度も回避はさせない・・)
ヘッジホッグガルヴォルスがさらに針を飛ばした。そのとき、健太が床を殴りつけて、その衝撃で爆煙が舞い上がった。
(アイツ、目くらましを・・だがオレの狙撃はもうお前を捉えている・・)
小賢しいことをされても針が射抜いたと、ヘッジホッグガルヴォルスは確信していた。だが針の衝撃で吹き飛んだ煙の先に、健太はいない。
(いない・・この一瞬で隠れたとでも・・・)
ヘッジホッグガルヴォルスが目を凝らして、健太がいた場所を確かめる。その床には大きな穴が開いていた。
「穴から逃げたか・・派手なことをする・・」
ヘッジホッグガルヴォルスが床の穴を見て驚きを覚える。
「次に見つけたときは逃がしはしない・・確実に仕留める・・・」
ヘッジホッグガルヴォルスが呟くと、左に針を飛ばす。その先に隠れていた黒ずくめの男が、針に胸を刺されて倒れる。
「あの人間のように・・オレを監視できると思わないことだ・・・」
事切れて動かなくなった黒ずくめを見てから、ヘッジホッグガルヴォルスは姿を消した。
士蓮の部隊の黒ずくめのうち、ヘッジホッグガルヴォルスが監視していた者が次々に返り討ちにあっていた。
「今暗躍しているガルヴォルスは、その手の行動と狙撃に長けている。逆に我々を感知、監視して返り討ちにしている。」
士蓮がガルヴォルスの能力と行動について推測していく。
「慎重に慎重を重ねて行動しろ。深追いは犠牲者の二の舞だぞ。」
“了解。”
士蓮の指示に黒ずくめが答える。連絡を終えてから、士蓮が小さくため息をつく。
(ガルヴォルスは厄介だ。常人離れした能力や、それに溺れた欲望よりも、悪知恵が・・)
ガルヴォルスの企みや行動に滅入る士蓮。
(あの男のほうがずっと分かりやすいが・・)
ふと健太のことを思いだして、士蓮が吐息をもらした。
(ヤツはあのガルヴォルスと遭遇している。両者がそれぞれどう出てくるか、高みの見物をするのもいいかもな。)
健太とヘッジホッグガルヴォルスがぶつかり合うことをよしと考える士蓮。
「いずれにしろ、様子見か・・」
状況が動くのを待つことにした士蓮。彼は椅子にもたれかかったまま、仮眠に入った。
ヘッジホッグガルヴォルスから辛くも逃げてきた健太。彼はヘッジホッグガルヴォルスの強さに毒づいていた。
「アイツ、とんでもねぇヤツだ・・下手に飛び込んでっても格好の的になるだけだ・・・!」
健太がヘッジホッグガルヴォルスを倒す方法を考えていく。
「あのヤロー・・コソコソ隠れやがって・・何とかしてヤツを引っ張り出して・・・!」
彼はヘッジホッグガルヴォルスへの怒りを募らせていた。
「アイツはかわい子ちゃんにまで手を出してきた・・そんなヤツを野放しにさせておくものかってんだ!」
必ずガルヴォルスを仕留めることを、健太は改めて心に決めていた。
健太に逃げられたひとみは、血眼になって彼を探していた。
「健太ったら、どこに行っちゃったんだよ〜・・!?」
ひとみが不満を膨らませて地団太を踏む。
「今度はしっかりつかんで、絶対に逃げられないようにしないと!アイツ、捕まってもすぐに逃げ出す算段するから・・!」
健太のハレンチや悪知恵にひとみは呆れ果てていた。
「たとえ街や人込みの中にいて、女の人にエッチなことをしようとしても、騒ぎが起こればすぐに・・!」
街にまで出てきたひとみが、健太の姿を探して見回していく。街の中の通りには、たくさんの人が行き交っていた。
「ん〜・・この辺りじゃないか・・他も見てみよう・・」
ひとみが街中の別の場所も回ってみることにした。
その彼女の姿を、ヘッジホッグガルヴォルスが見据えていた。
ヘッジホッグガルヴォルスを追っていた健太。彼は感覚を研ぎ澄ませて見つけ出そうとしていた。
「ちっくしょう・・どこに隠れてやがるんだよ・・バケモノの上に、隠れるのがうまいし・・・!」
見つけられないことに不満を膨らませていく健太。
(こうなったら・・オレもバケモノの姿になって・・そうすりゃもしかしたら、あっさり見つけられるかも・・・!)
思い立った健太が、人目から外れて人のいない小道に入り込んだ。
(よーし、ここなら・・!)
健太が周りを見回してから意識を集中する。彼の姿がシャドーガルヴォルスに変わった。
健太が再び感覚を研ぎ澄ませる。すると彼の耳に様々な人の声が入ってくる。
「な、何でこんなハッキリ聞こえてくるんだ・・!?」
押し寄せてくるたくさんの声に健太は驚く。しかし気分を落ち着けることですぐに慣れて、必要な声だけを拾えるようになった。
(よーし。これなら・・あのヤローはどこに・・・!?)
健太が改めて耳を澄まして、ヘッジホッグガルヴォルスの居場所を探っていく。
(この感じ・・もしかしたら、これがアイツの・・・!)
健太がヘッジホッグガルヴォルスと思しき動きをつかんだ。彼はさらにヘッジホッグガルヴォルスのかすかな気配も感じ取っていた。
(見つけたぞ!今度は隠れさせねぇ!引っ張り出して叩きのめしてやる!)
健太がヘッジホッグガルヴォルスのいるところに向かって駆け出した。ガルヴォルスの常人離れした身体能力と速さで。
街中で白昼堂々の狙撃を狙っていたヘッジホッグガルヴォルス。彼が次に狙いを定めたのは、健太を探し回っているひとみだった。
(次はあの女・・どんなに動き回ろうと、オレの獲物に逃げ場はない・・)
ヘッジホッグガルヴォルスがひとみに向けて針を飛ばそうとした。
そのとき、ヘッジホッグガルヴォルスは自分に何かが近づいてきたことに気付いて、狙撃の手を止めた。彼に向かってきたのは健太だった。
「今度こそ、お前を!」
飛び込んできた健太にヘッジホッグガルヴォルスが毒づく。彼は素早く動いて健太の突撃をかわし、物陰に身を潜めて姿を消した。
「いつまでもコソコソしやがって・・出てこい、卑怯者が!」
健太が辺りを見回して怒鳴りかかる。
「しかもかわい子ちゃんを手にかけるたぁ、とんでもねぇヤツだぜ!そんなヤツは、オレは許しちゃおかねぇぞ!」
「オレは女も男も関係ない・・オレは獲物を仕留めることが目的なのだ・・」
怒りを言い放つ健太に、姿を見せないヘッジホッグガルヴォルスが言いかける。
「誰にも気付かれることなく獲物を仕留めるのが、オレの至福・・いつもと変わらない日常の中で、その直後に死へ落ちる・・それを与えると気分がよくなってくる・・」
「それでかわい子ちゃんまで・・そんなお前の好き勝手にさせるかよ!」
自分の考えを口にするヘッジホッグガルヴォルスに、健太が憤りを募らせていく。
「美女の敵はオレの敵!お前は絶対にオレが叩きのめす!」
「高らかに息巻いているお前に、そんなことができるか・・・?」
言い放つ健太にヘッジホッグガルヴォルスが嘲笑を送る。健太が感覚を研ぎ澄ませるが、ヘッジホッグガルヴォルスの居場所をつかめない。
「まずはお前から仕留めさせてもらう・・いつまでも付いてこられても困る・・」
ヘッジホッグガルヴォルスの声が低く響くと、健太の右腕に針が突き刺さった。
「ぐっ!」
腕に痛みを覚えて、健太が顔を歪める。彼は痛みに耐えて踏みとどまり、ヘッジホッグガルヴォルスを探っていく。
「そっちから攻撃してきたか・・・!」
健太が力を振り絞り、針が飛んできたほうに向かっていく。だがその瞬間、別の方向から針が飛んできて、健太の左頬をかすめてきた。
(いつの間に別の場所に・・!?)
すぐに場所を移動してきたヘッジホッグガルヴォルスに、健太が驚愕する。ヘッジホッグガルヴォルスは気配を消して移動していた。
「ムダだ・・オレはお前を確実に仕留める・・」
ヘッジホッグガルヴォルスの声が、健太に向けて響いてくる。
「お前もオレに狩られる以外にない・・オレを倒すことも、逃げることもできない・・」
さらに針が飛んできて、健太の左足に刺さった。
「ぐうっ!」
さらに激痛に襲われて、健太が悶絶する。
「そろそろお前の息の根を止めることにする・・いたぶるのは好きではないし、時間をかけることになる・・」
ヘッジホッグガルヴォルスが健太に向けて、さらに針を飛ばす。健太は痛みが駆け巡る体を突き動かして、針から辛くも逃れる。
(まだ動けるのか・・だがそれもムダだ・・)
ヘッジホッグガルヴォルスは動じることなく、さらに針を放っていく。健太が必死に動くが、針が次々に体に刺さっていく。
「ぐっ・・ちっくしょうが・・・!」
血があふれてくる体を引きずり、健太がヘッジホッグガルヴォルスを追おうとする。
(往生際が悪いな・・お前の命も、これで終わりだ・・)
ヘッジホッグガルヴォルスが目つきを鋭くして、健太の心臓目がけて針を飛ばした。健太の動きは完全に鈍っていて、回避することはできないと、ヘッジホッグガルヴォルスは確信した。
だが、健太が右へ体を動かして、ヘッジホッグガルヴォルスの針をかわした。
(何っ!?)
針をかわされたことに驚くヘッジホッグガルヴォルス。彼はすぐに気分を落ち着かせて、針を飛ばそうとした。
次の瞬間、ヘッジホッグガルヴォルスが自分のすぐそばから威圧感が流れてくるのを感じ取った。彼の前に健太が迫っていた。
「お前!?なぜオレの場所が!?」
「オレはお前を野放しにしねぇ!」
声を上げるヘッジホッグガルヴォルスに健太がつかみかかる。床に押し付けられて、ヘッジホッグガルヴォルスがうめく。
「もう逃がさねぇ!隠れさせねぇ!」
健太が剣を具現化させて手にして振りかざす。ヘッジホッグガルヴォルスが刺されまいと、彼に針を突き立てた。
健太とヘッジホッグガルヴォルスの体に刃が突き立てられる。針を刺されても痛みに耐えて、健太はヘッジホッグガルヴォルスに剣を突き立てた。
「かわい子ちゃんを狙うヤツは、オレの敵だ!」
健太は右手で剣を持ったまま、左の拳でヘッジホッグガルヴォルスを殴りつける。力を込めて叩き込まれる拳に、ヘッジホッグガルヴォルスが激痛を覚える。
「オレとお前の大きな違いは、心までバケモンになっちまってるかどうかだ!」
健太が言い放ち、剣を引き抜いて再び突き立てた。体を剣で貫かれて、ヘッジホッグガルヴォルスから鮮血があふれる。
「がはっ!・・心がバケモノ・・だが、力ではお前のほうがよりバケモノだ・・・」
「そうだな・・かわい子ちゃんをバケモンに襲われねぇようにするんだったら、バケモン呼ばわりされても構わないな!」
うめくヘッジホッグガルヴォルスに、健太が自分の考えを言い放つ。
「ふざけたことを口にする・・そのようなもの・・オレと大差ない・・・」
声を振り絞るヘッジホッグガルヴォルスの体が崩壊を引き起こして消えていった。
「や・・やったぞ・・・」
ヘッジホッグガルヴォルスを倒せたことに安堵する健太。その瞬間、抑え込んでいた激痛に再び襲われて、健太がその場に倒れる。
「ちょっと、ムチャしすぎたってか・・・!」
体中から血があふれていて、激痛が駆け巡っていく状態に、健太は焦りを感じるようになっていた。
だが少しして、健太はその痛みが和らいでいるように感じた。
「痛みがなくなっていく・・傷も、消えていく・・・!?」
自分の体の傷がみるみるなくなっていくことに、健太自身、驚きを隠せなくなる。やがて体の傷が完全に消えた。
「これが、ガルヴォルスの力だっていうのか・・・!?」
ガルヴォルスとしての力に驚かされていく健太。
「だけど体力まではすぐに回復しないみたいだ・・無敵すぎるだろ、こりゃ・・」
健太がガルヴォルスに対して、驚きのあまりに気が滅入っていた。
「さーて、女の敵がいなくなったところで、本来のオレに戻るとするかー!」
健太が気持ちを切り替えて、人の姿に戻る。
「また新しい出会いが待ってるかも〜♪」
健太は上機嫌になって、軽い足取りで街中に繰り出していった。
ヘッジホッグガルヴォルスが倒れたのを確認して、黒ずくめたちは現場の中心に足を踏み入れた。
「ガルヴォルスは死亡。金城健太が倒した模様。」
黒ずくめの1人が士蓮に報告をする。
「金城健太は街の中の別の場所へ移動しました。」
“そうか。お前たちは事後処理を済ませろ。ヤツの監視と追跡は別働隊に任せる。”
「了解。」
士蓮の指示を受けて、黒ずくめが通信を終えた。
黒ずくめたちに指示を出した士蓮が、ひとつ吐息をついた。
「うまく同士討ちをしてくれたが、ヤツの力はガルヴォルスの中でも脅威のようだ。」
士蓮が健太のことを考えてため息をつく。
「ヤツを思い通りにすることができれば、ガルヴォルスを押さえ込める。」
士蓮は健太の掌握を目論んで、次の行動を企んでいた。
次回
「来ないで・・私はまだ死にたくないのよ!」
「氷の力を持つガルヴォルスか・・」
「そ、そんな・・!?」
「貴様、ヤツを庇うつもりか!?」
「きれいなお姉さんは、無条件でオレの味方だ!」