ガルヴォルスX 第3話「黒い追撃」

 

 

 突如現れた黒ずくめの男たち。健太は黒ずくめたちの追撃から逃げ出した。

「何なんだよ、次から次へと!?またヘンな連中が出てきて!」

 健太が声を荒げて、黒ずくめたちから逃げていく。彼を追って黒ずくめたちが発砲していく。

「ターゲットがそちらへ逃げた。包囲せよ。」

“了解。”

 黒ずくめたちが連絡を取り合う。後ろの黒ずくめたちを徐々に突き放していく健太だが、その前に他の黒ずくめたちが回り込んできた。

「おい・・多すぎだって!」

 執拗に迫る黒ずくめに不満を見せる健太。黒ずくめたちが放つ弾丸を、彼は素早くかわす。

 そのとき、健太の左腕に弾丸が命中した。

「くっ!」

 一瞬痛みを感じて顔を歪める健太。しかしすぐに体勢を立て直して、彼は黒ずくめから逃げようとする。

 そのとき、健太が突然意識がもうろうとなっていく。

(な、何だ!?・・体が、言うことを、聞かねぇ・・・!)

 思うように動くことができなくなり、健太はふらついて倒れてしまう。動けなくなった彼はガルヴォルスから人の姿に戻った。

 うつ伏せに倒れている健太を、黒ずくめの男たちが取り囲んだ。

「ターゲットの捕獲、完了しました。」

“分かった。直ちに連れてくるように。”

 黒ずくめが連絡を取ると、相手の男が指示を出す。

「了解・・連行する。」

 黒ずくめは連絡を終えてから、健太を連れていった。健太は意識が戻らず運ばれていった。

 

 突然意識を失って倒れた健太。意識を取り戻した彼は、何もない小さな部屋だった。

「な、何だ、ここは・・・?」

 健太が飛び起きて部屋を見回す。部屋は固い材質の壁で覆われていて、力で破ることはできない。

「おい!何だよ、ここは!?オレを出せ!」

 健太が部屋のドアを叩いて叫ぶ。しかしドアが開くことはない。

「目覚めて早々、威勢がいいことだ。」

 そのとき、健太のいる部屋に男の声が響いてきた。

「誰だ!?オレをどうしようってんだ!?

「お前はガルヴォルスでありながら、同じガルヴォルスと戦い、倒している。お前のような存在は、我々にとって有力な戦力となる。」

「ガルヴォルス・・あのバケモンのことか・・!?

「そうだ。だが怪物でありながら、元は列記とした人間でもある。」

「人間?あんなのが人間だってのか!?

「あのような姿となり、その力に溺れた時点で、もはや人間として認識するわけにはいかない。犠牲者が出る前に始末しなければならない。」

「ふざけんな!結局人殺しをしてんのを正当化してるんじゃないかよ!」

「それをお前が口にできるのか?お前もその手でガルヴォルスを葬ったのだぞ。」

 男のこの言葉で健太が言葉を詰まらせる。彼はガルヴォルスを倒した瞬間を思い出していく。

「お前の体は人間を超えたものとなっている。その体と力を振るうお前の意思はともかくとしても。」

「お前・・いったい何なんだ!?姿ぐらい見せろ!」

 次々に言葉を投げかけてくる男に対して、健太が怒鳴りかかる。

「それもそうだな。顔すら相手に見せないようでは、臆病者と言われかねんからな。」

 男はそう言うと、しばらくして、健太のいる部屋のドアが開いた。男が健太の前に姿を現した。

「私は兵頭(ひょうどう)士蓮(しれん)。ガルヴォルス討伐を専門とした部隊の総指揮官だ。」

 男、士蓮が真剣な面持ちで健太に名乗ってきた。

「その総指揮官がオレに何の用だよ!?

「我々の力になってもらおう。ガルヴォルスの粛清のために。」

「は?何でオレがそんなことに付き合わなくちゃなんねぇんだよ!?

「お前に選択権はない。この力を得たお前の宿命と義務なのだ。」

「何様のつもりだ!?オレはアンタらの言いなりになんてならねぇよ!」

「ならば他のガルヴォルス同様、処罰の対象にするだけだ。」

 不満を見せる健太に、士蓮は表情を変えずに言いかける。

「いや、訂正しておこう。お前には2つの選択肢があった。我々に従うか、逆らって処罰されるかだ。」

「そのどっちかだって?アンタ、分かっちゃいないな!」

 さらに続ける士蓮に、健太が不敵な笑みを見せてきた。

「アンタらに逆らって、さらにアンタらを返り討ちにするって選択肢だぜ!」

「そんなものはない。お前が我々に屈する以外にない。」

「アンタが決めるもんじゃねぇよ、そりゃ!」

 士蓮が投げかける言葉に、健太が強気に言い返す。

「オレはオレのやりたいようにやる!アンタらが勝手に決めんな!」

 健太は言い放つと、部屋を出ようと士蓮に飛びかかる。だが逆に右腕をつかまれて引き倒される。

「おわっ!」

 健太が床に強く倒されて、痛みを感じてうめく。

「部隊をまとめる者が部下よりも弱すぎたのでは話にならん。」

「つ、つえぇ・・!」

 表情を変えずに言いかける士蓮に、健太がうめく。

「ガルヴォルス相手にはともかくだが、普通の人間相手なら負ける気はしない。」

「そうかよ・・だったら人間を超えりゃいいってだけの話だ!」

 健太は言い放つと、意識を集中してガルヴォルスになろうとする。しかし彼の体に変化が起きない。

「なっ!?変わんない!?

「まだ麻酔の麻痺が残っているようだ。お前が思っているほど回復はしていないため、ガルヴォルスにはまだなれない。」

 驚きを見せる健太に士蓮が言いかける。

「今のお前はオレには勝てない。また麻酔を打って、完全にお前を拘束する。」

「どこまで・・どこまでオレを・・・!」

 士蓮が言葉を投げかけると、健太が怒りを募らせる。

「これは人間とガルヴォルスの戦いなのだ。だが我々人間は、ヤツらに対してあまりに無力だ。」

 士蓮がさらに健太に言葉を投げかけていく。

「ガルヴォルスを掃討できるのは、同じガルヴォルスでしかない。お前のようなヤツは、貴重な戦力となる。」

「そう言ってくれると嬉しいけどな・・やっぱもの扱いは気に入らなねぇな・・!」

 健太が力を振り絞って、士蓮の腕を振り払おうとする。

「ムダなあがきをしても結局ムダということだ。我々に従う他はない。」

「それでのこのこ言いなりになるオレじゃねぇぞ・・アンタたちのおもちゃになるぐらいなら、死んだほうがマシだ!」

 言いかける士蓮に言い返し、健太が彼の腕を振り払った。そのまま健太は立ち上がって前進し、部屋を飛び出した。

「人間の姿でこれほどの力を発揮してくるとは・・」

 士蓮は健太に対して驚きを覚えるが、それを表には出さない。彼は通信機を取り出して呼びかける。

「ターゲットが逃げ出した。直ちに拘束しろ。」

“了解。”

 黒ずくめに指示を出して、士蓮も健太を追って動き出した。

 

 部屋から飛び出した健太が、長い廊下をひたすら突き進んでいた。彼は後ろに黒ずくめたちが追ってきたことに気付く。

「しつこい鬼ごっこは楽しくなくなるぞ!」

 健太が黒ずくめたちに対して不満の声を上げる。意識を高める彼の頬に紋様が走る。

「もしかして、今だったらなれるんじゃ・・!」

 思い立った健太がさらに意識を集中する。彼の姿が漆黒の姿、シャドーガルヴォルスに変わる。

「麻酔の抑制が弱まり、ガルヴォルスの力を抑えられなくなったか。」

 ガルヴォルスとなった健太に、士蓮が毒づく。健太は拳で壁を叩いて、外への穴を破ろうとする。

 そして壁のひとつが破られて、外への穴が開いた。

「よーし!これで出られるぜ!」

 健太が笑みをこぼして、その穴から外へ飛び出していった。

「まずいぞ!早く追わなくては、部外者に知れ渡ることに・・!」

「すぐに追跡の準備を・・!」

 黒ずくめたちが健太の追跡に焦りを感じていく。

「いや、監視までに留めておこう。」

 だが士蓮が黒ずくめたちを呼び止めてきた。

「しかし、このままでは・・!」

「あのような小僧が何を言おうと、誰も信じはしない。もしもガルヴォルスの姿をさらしたところで、逆に恐怖を与えることになるだけ。」

 声を荒げる黒ずくめに、士蓮は落ち着いたまま言いかける。

「ただ監視は怠るな。行動は定期報告しろ。」

「了解。」

 士蓮の指示に黒ずくめが答える。黒ずくめたちは散開して、健太の監視に務めた。

「私の想像以上の曲者のようだ。だが我々から完全に逃げ切ることはできない。」

 士蓮は無表情のまま呟く。彼は1度施設内の自分の部屋に戻っていった。

 

 士蓮たちから逃げ切ることができた健太。街の手前に来たところで、彼は人の姿に戻る。

「ふぅ・・何とか逃げ切れたぞ・・」

 健太が振り返って安堵を覚える。

(それにしても、何なんだ、アイツらは!?・・オレを、ガルヴォルスを倒すガルヴォルスに、だと・・・!?

 健太が士蓮たちのことを考えていく。

(アイツらが何を企んでいるかは分かんないが、確かなことはある・・・)

 健太が頭の中を渦巻いているモヤモヤを振り払う。

(オレとアイツらは、絶対に考えが合わないってことだ!)

 士蓮たちに徹底的に対抗していくことを心に誓う健太。

(さーて。これからまたかわい子ちゃんでも探すかな〜♪)

 健太はにやけ顔を浮かべて、美女を求めて駆け出していった。

 

 賑やかさであふれている街中。多くの人々が絶えることなく行き交っていた。

 その人込みの中にいる1人が、突然倒れた。その男の人に、周りにいた人たちが驚きを覚える。

「た、倒れた!?

「あ、あの、何があったんですか!?

「救急車!救急車を早く!」

 人々が悲鳴を上げて、救急車と警察を呼ぶ。倒れた男の背中には、鋭く硬い針が刺さっていた。

 

 男が倒れた事件の様子を、1人の影が不気味な笑みを浮かべて見ていた。

「また1人仕留めたぞ・・白昼堂々。それなのにひっそりと・・いい感じだ・・」

 影が不気味な笑みを浮かべて、街中の光景を見ていく。

「もっとだ・・もっと獲物を仕留めていってやる・・うまく狩りが成功するごとに、オレの喜びが増していく・・・」

 影は次の標的を求めて、1度場所を変えた。男の命を奪った針は、彼が飛ばしたものだった。

 誰にも気付かれることなく、速く正確に。

 

 美女を求めて街に戻ってきた健太。そこで彼は男が突然倒れた事件で湧いている人だかりを目撃した。

「な、何だ、ありゃ・・・?」

 健太が人だかりをじっと見て、事態を確かめようとする。

(これもバケモンの仕業?・・んなわけねぇよな・・)

 勝手に1人で割り切って、健太は人込みから離れていく。

「それじゃかわい子ちゃん探しと行きますか〜。」

「やっぱり街に来てたんだね、健太・・!」

 そこへ聞き覚えのある声を耳にして、健太が緊迫を覚える。振り向いた彼の前にひとみがいた。

「ひひひ、ひとみ!?何でここに!?

「アンタの行きたがるとこなんて丸分かりなんだからね!」

 声を荒げる健太の腕をひとみがつかみ上げる。

「わわわ!放せ、ひとみ!放せってんだー!」

「今日という今日こそは、きっちりお仕置きしてやるんだから!」

 ジタバタする健太を引っ張っていくひとみ。健太はそのまま街から離されてしまった。

 

 健太の動きの監視だけでなく、他のガルヴォルスの消息の把握にも目を向けていた士蓮。健太に逃げられたが、士蓮は冷静なままだった。

(日常に、自分の生活に戻ろうとしているようだが、ムダだ。ガルヴォルスの力は、簡単に制御できるものではない。)

 健太を掌握していることを士蓮は確信していた。そのとき、彼のいる部屋に通信が入った。

“ガルヴォルスと思しき事件が発生。街の群集の中の1人を狙撃しています。”

「新たなガルヴォルスか。居場所の把握と監視を行え。ただし深追いはするな。狩られることになる。」

“了解。ただちに他に通達します。”

 士蓮は指示を出して通信を終えた。

(ガルヴォルスはその力に溺れて、何をやっても許される、人間を何もかも超越したと自惚れている傾向が強い。が、金城健太の場合は元々備わっていた自信のようだが・・)

 士蓮が健太のことを考えていく。

(人間を襲わないだけマシだと思っておくか・・)

 士蓮が背もたれに体を預けて、ひとつ吐息をついた。

 

 健太を捕まえて自分の家の近くまで戻ってきたひとみ。健太の普段のハレンチな行為を思い出して、ひとみは呆れていた。

「ホントに健太はいつもいつも・・みんなにエッチなことばっかして、迷惑をかけて・・」

 ひとみが健太に注意をしていく。

「アンタには反省というものがないの!?このままじゃとことん悪者になっちゃうよ!」

 次第に誤記が強くなっていくひとみ。

「ちょっと健太、聞いてるの!?

 声を張り上げたまま、ひとみが健太に目を向けた。ところが彼女はつかんでいたのは、人形の腕だった。

「あ、あれ!?いつの間に!?

 ひとみが周りを見回すが、健太の姿がない。

「健太ったら、ホントに抜け目ないんだから〜!」

 ひとみが健太に滅入って、頭を抱えて悲鳴を上げていた。

 

 ひとみからこっそりと逃げ出して、健太は街に舞い戻ってきていた。

「ヘッヘッヘ!オレがそう簡単にお仕置きされてたまるかっての!」

 ひとみから逃げ切ったことを喜ぶ健太。

「さーて。改めて美女探しといくかー。」

 健太が喜びを浮かべて、美女探しに繰り出した。

「ど・こ・に、いるのかな〜?」

 健太が辺りを見回して美女を探していく。

「キャアッ!」

 そのとき、突然街中から女性の悲鳴が上がった。反応した健太が悲鳴のしたほうに向かう。

 その先ではまた1人、女子高生が倒れていた。背中に針が刺さっていて、もう1人の女子高生が震えていた。

(また同じ事件・・犯人が同じってことなのか・・・!?

 同じ犯行を目の当たりにして、健太が目つきを鋭くする。

 そのとき、健太は近くに不気味な感じを覚える。彼は街中の建物の上を見渡していく。

 そして健太はビルの1つの屋上に不気味な影が潜んでいるのを見つけた。

(もしかして、アイツか!)

 健太はその影が犯人だと思い、ビルに向かって駆け出した。彼は人込みをかき分けて前進していく。

(かわい子ちゃんを傷付けるヤツは、何だろうと許しちゃおけねぇ!)

 女子を手にかけた犯人に、健太は強い怒りを感じていた。

 健太はビルに入って、階段を全速力で駆け上がっていく。そして彼はビルの屋上に飛び出した。

 だが屋上には健太以外に誰もいない。彼は辺りを見回して探りを入れる。

「オレの居場所に気付くとは・・お前もオレと同類か・・?」

 そこへ声をかけられて、健太がまた辺りを見回す。それでも彼は声の主を見つけられない。

「だが正確な位置までは分かっていないようだ・・もっとも、オレが見つからないように隠れているのだが・・」

 さらに声が健太に向けて響いてくる。しかし健太に声の主の居場所がつかめない。

「それでもオレの存在に気付けるほどだからな・・始末しておいた方がいい・・」

 声がさらに響くと、隠れ潜む影が針を飛ばしてきた。その矛先にいる健太は、影の居場所がまだ分からなかった。

 

 

次回

第4話「闇の狙撃手」

 

「かわい子ちゃんを手にかけるたぁ、とんでもねぇヤツだぜ!」

「誰にも気付かれることなく獲物を仕留めるのが、オレの至福・・」

「お前もオレに狩られる以外にない・・」

「お前の命も、これで終わりだ・・」

 

 

作品集

 

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