ガルヴォルスX 第2話「狙われる力」
また大学にて女子たちにハレンチなことを繰り広げていた健太。怒って追いかけてくる女子たちから、健太は軽やかに逃げていく。
「いやぁ〜、今日も幸せな1日だぜ〜♪」
健太が女子たちの感触を確かめて、喜びを感じていく。
「何が幸せな1日だよ!?」
だがそこへ声をかけられて、健太が顔を引きつらせる。彼の後ろにひとみが現れた。
「ゲゲッ!ひとみ!」
「今日こそみんなの前で謝ってもらうよ!いつまでも悪いことを続けられると思わないことだね!」
後ずさりする健太に、ひとみが怒鳴りかかる。すると健太が笑みをこぼしてきた。
「せっかくのお楽しみなんだ!やめるわけないってー!」
健太は言い放つと、ひとみから逃げ出していく。
「コラー!待ちなさい、けんたー!」
ひとみが叫んで健太を追いかける。が、すぐに健太を見失ってしまう。
「もー!健太ったらー!」
ひとみが健太に対して不満を膨らませていった。
女子たちからもひとみからも逃げてきて、健太は満足していた。
「ひとみったら、いつもいつも追いかけてきちゃってさ。」
健太がひとみに参ってため息をつく。
「けどオレの美女へのあくなき探究心を止めることはできないのだー!」
健太が高らかに叫んで、軽い足取りで歩いていった。
自分が怪物に遭遇したことを、健太は覚えていた。しかし夢や幻だと思って、彼は気にしていなかった。
夜の林の中を歩く2人の女子。2人は道に迷ってしまい、この林に入ってきていた。
「参ったよ〜・・すっかり迷っちゃったよ〜・・」
「ここはどこか大きな道に出たほうがいいみたい・・」
女子たちが不安を感じながら声を掛け合う。2人は真っ直ぐに林を抜けることを思いついた。
そのとき、木々や葉がざわめいた。突然のことに女子たちがたまらず足を止めて震える。
「な、何かいるの、ここ・・・!?」
女子たちが辺りを見回すが、何かが出てくる様子は見られない。
「気のせいだね・・早くここを出ちゃおう・・」
「そうだね・・うん・・」
女子たちが安心を感じて、改めて林道を歩こうとした。
そのとき、木陰から突然影が飛び出してきた。
「キャアッ!」
その影に女子の1人が襲われた。彼女は影が突き出した牙と爪に体を切り裂かれて、血をあふれさせる。
「イヤアッ!」
残った女子が悲鳴を上げて逃げ出していく。虎の怪物、タイガーガルヴォルスが振り返り、女子を追いかけていく。
タイガーガルヴォルスはすぐに女子の前に回り込んできた。
「キャアッ!」
さらに悲鳴を上げる女子に、タイガーガルヴォルスが襲いかかる。彼が突き出した爪を体に突き刺されて、女子が絶叫を上げる。
「いいぞ、いいぞ・・もっと苦しんで悲鳴をあげろ・・・」
タイガーガルヴォルスが喜びを浮かべて、女子の体をさらに切りつけていく。女子は鮮血にまみれて昏倒して、動かなくなる。
「ハァ・・やっぱいい・・気分がよくなってくる・・・」
タイガーガルヴォルスが喜びを感じて、笑みをこぼしていく。彼は爪についていた血をなめて、味を噛みしめる。
「やっぱりストレス解消はこうでないとな・・」
タイガーガルヴォルスが満足げに振る舞って、林道から立ち去っていく。
「もっと・・もっと鬱憤を晴らさないと・・・!」
歓喜と欲望を込めた笑みを浮かべながら、タイガーガルヴォルスは次の標的を求めて動き出した。
とある高層ビルの1室。椅子に腰かけた1人の男が、携帯電話で連絡を取っていた。
「また新たなガルヴォルスの事件が起こったか・・」
男が報告を聞いて呟く。
「おそらくあのガルヴォルスと鉢合わせするときが来る。戦って消耗したところで確保に向かえ。」
“了解。監視を続けます。”
男の指示に相手が答える。男は連絡を終えて、携帯電話をしまう。
「ガルヴォルスにとっての脅威となるガルヴォルス、か・・」
男が呟いて、新しくガルヴォルスとなった健太のことを考える。
「ガルヴォルスの暴徒化を阻止するには、ガルヴォルスを手なずけるしかないとは・・毒を以て毒を制すとはよく言ったものだ・・」
皮肉を口にして、男は窓越しに見つめていた外の景色に背を向けた。
度重なる奇怪な殺人事件に、警察は苦悩を深めていた。人間業でない手口で、手がかりすら見つけることができないでいた。
「全く・・何がどうなってんだか・・」
「猛獣でもない限り、こんなマネできませんよ・・でもそんなのがいたら、誰かが気づくはずですし・・」
警部たちが事件の状況に頭を悩ませていく。
「何か尻尾がつかめれば、一気に前進しそうなんですけどね・・・」
「甘ったれたことをぬかすな。オレたちが引きずり出すんだよ、犯人を・・」
警部たちが言葉を交わしながら、さらに周辺に目を向けていく。
「お前はそっちの聞き込みに行け。オレはこっちだ。」
「分かりました!必ず手がかりをつかんでみせます!」
警部たちが別れて、周辺への聞き込みに向かった。
大学から少し離れた丘の上に、健太はいた。その丘からは街を見渡すことができて、大学も見下ろすことができる。
「ここからなら眺めがいい。当然美女探しにもってこいってな!」
健太が美女を求めて大学を見下ろしていく。
「おっ!あっちにかわい子ちゃん発見!」
健太が大学の正門のそばの道を歩く女子たちを見つけて指さす。
「よーし!今度はあの子たちにするかなーっと!」
健太は喜びを浮かべて、その女子たちを目指して丘から駆け下りていった。
大学から出た女子たちは、街へ繰り出そうと通りを歩いていた。
「さっさと買い物済ませて帰ろう。怖い事件が立て続けに起こってるみたいだし・・」
「そんなの噂話だって〜。気にしないで買い物楽しんじゃおうよ。」
女子の1人が不安を口にすると、もう1人の女子が明るく言いかける。
「そうかな・・殺人だよ、その事件・・それも犯人が全然分からないし・・」
「だから噂だって。気にしたっていいことないって〜。」
「もう、のん気なんだから・・」
「前向きだって言ってよ〜♪エヘヘヘ〜♪」
不安と笑顔のやり取りを交わしていく女子たち。
「あ、忘れ物しちゃったかもしれない・・ちょっとバッグの中、確かめないと。」
「ここが人通りあって危ないよ。ちょっと道外れよう・・」
女子たちが1度人込みから離れて、自分の荷物を確かめようとした。
そのとき、女子の1人が突然肩をつかまれた。
「えっ?誰かつかんできた?」
女子の1人が疑問符を浮かべて振り返る。その先にいたのは怪物、タイガーガルヴォルスだった。
「今度はお前たちで楽しませてくれよ・・」
「バ、バケモノ・・!?」
不気味な笑みを浮かべるタイガーガルヴォルスに、女子が悲鳴を上げる。彼女に向かって、タイガーガルヴォルスがキバと爪を突き立てる。
「イヤアッ!」
女子が絶叫を上げて、血をあふれさせて倒れる。彼女のそばにいたもう1人の女子が、この瞬間を目の当たりにして恐怖を覚える。
「この感じ・・何度味わってもたまんない・・」
タイガーガルヴォルスが笑みをこぼして、女子にゆっくりと振り向く。
「や、やめて・・来ないで!」
女子が悲鳴を上げて逃げ出す。
「せっかく見つけた獲物なのに、逃がすと思うか・・」
タイガーガルヴォルスが女子を追って駆け出す。彼はすぐに女子の前に回り込んできた。
「助けて!誰かー!」
悲鳴を上げる女子をタイガーガルヴォルスが押し倒し、地面に押し付ける。
「助けを呼んでも、オレをどうにかできるヤツなんていない・・」
タイガーガルヴォルスが笑みを強めて、女子に爪を突き立てようとした。
そのとき、タイガーガルヴォルスが突然横から突き飛ばされた。助けられた女子の前にいたのは、健太だった。
「大丈夫だったかい、かわい子ちゃん!」
健太が女子に振り向いて、気さくに言いかける。彼の登場に女子は当惑している。
「早く逃げなって!さもないとあのバケモノにやられちまうぞ!」
健太に呼びかけられたことで我に返り、女子が慌てて立ち上がって駆け出していった。
「邪魔してくるとはいい度胸じゃないかよ・・オレのストレスが逆に上がっちまったぜ・・・」
タイガーガルヴォルスが立ち上がり、健太を睨みつけてきた。
「まずはお前でストレス解消させてもらうぞ・・男だからそんなにはなりそうもないが・・」
タイガーガルヴォルスが笑みをこぼしてから、健太に向かってゆっくりと迫ってくる。
「ホントだったのかよ・・バケモノがいるってのは・・・!」
健太は夢か幻だと思っていた怪物の存在を目の当たりにして、改めて思い知らされた。
「どっちにしても、このままやられてやるヤツなんて誰もいないっての!」
健太が慌ててタイガーガルヴォルスから逃げ出していく。
「逃がすか!」
タイガーガルヴォルスがいきり立ち、健太を追いかける。全速力で逃げていく健太が、路地の中の小道に差し掛かった。
健太に助けられて、逃げ延びることができた女子。かなり走ったところで彼女は足を止めて、健太を心配する。
「あの人、大丈夫なのかな・・・?」
健太も無事に逃げられたのかを気にしていく女子。でもタイガーガルヴォルスが追ってくるのではという恐怖のほうが強くなった。
「ダメ・・逃げないと・・・!」
女子は再び走って逃げようとした。
そのとき、女子の前に黒ずくめの男が現れた。足を止めた彼女を、他の黒ずくめたちが取り囲んできた。
「だ、誰ですか、あなたたち・・・!?」
疑問とさらなる不安を見せる女子が、黒ずくめの1人に後ろから手刀を受けて気絶する。
「この者の記憶を消しておけ。決してガルヴォルスのことを頭の中に留めておかぬよう。」
「了解。」
黒ずくめたちが声を掛け合って、倒れた女子を連れていった。
「ガルヴォルス、および金城健太の拘束に向かう。ここからは迂闊な行動が命取りとなる。」
「直ちに配置に付きます。」
黒ずくめたちが次の行動に移り、健太を捕らえに向かった。
タイガーガルヴォルスから逃げ出していく健太。しかしすぐにタイガーガルヴォルスに回り込まれてしまう。
「ムダなあがきはやめて、おとなしくオレになぶり殺されろ!」
「だから、はいそうですかって殺されるかっての!」
不気味な笑みを浮かべるタイガーガルヴォルスに、健太が文句を言って再び逃げ出そうとする。が、タイガーガルヴォルスが振りかざした爪に背中を切りつけられる。
「ぐっ!」
背中に傷をつけられて、健太が激痛を覚えてうめく。倒れた彼が痛みで悶絶していく。
「そうだ・・その調子でもっと苦しんでもらうぜ・・!」
タイガーガルヴォルスが喜びを募らせて、健太に近づいていく。
(あのとき、オレがバケモノを見て、襲われたのはホントだったってことかよ・・だったら、オレがバケモノを叩きのめしたってのも、ホントだったってことだよな・・・!?)
健太が自分が怪物に襲われたときの記憶を呼び起こしていく。
(それだけの力があるなら、今、オレに使わせろ!)
感情を高まらせた健太が、力を振り絞って立ち上がる。そのとき、彼の頬に異様な紋様が浮かび上がる。
「これは・・お前も・・!?」
健太の異変を目の当たりにして、タイガーガルヴォルスが驚愕する。健太の姿が異形のものへと変わった。
「まさかお前もガルヴォルスだったとはな・・」
「ガルヴォルス?・・それがバケモノの名前なのか・・?」
タイガーガルヴォルスが上げた声に、健太が眉をひそめる。
「しかしガルヴォルスでも力の優劣というものがある・・同じガルヴォルスになったからって、オレを超えたことには・・!」
タイガーガルヴォルスがいきり立ち、健太に向かって飛びかかる。タイガーガルヴォルスが爪を振りかざすが、健太が素早くその右手をはじき返す。
「何っ!?」
簡単に攻撃をはじかれたことに、タイガーガルヴォルスが驚愕する。
「どうやら、オレはお前を超えたみたいだ・・・!」
健太が目つきを鋭くして、タイガーガルヴォルスに飛びかかる。健太が繰り出した拳が、連続でタイガーガルヴォルスに叩き込んでいく。
「お、重い・・こんな強い力を持っていたなんて・・・!」
健太の攻撃にうめくタイガーガルヴォルス。いら立ちを膨らませた彼は、全身に力を込めて飛び出す。
一気にスピードを上げたタイガーガルヴォルス。健太がその素早い動きに視線をキョロキョロさせる。
「どうだ!いくらお前の力が強くても、素早く動けば当てられないだろう!どうにもならないまま、今度こそお前を仕留めてやるぞ!」
タイガーガルヴォルスが勝ち誇り、健太に飛びかかる。
「これで終わりだ!」
タイガーガルヴォルスが健太に爪を突き出した。彼の一撃が健太の体を捉えた。
タイガーガルヴォルスの爪の先端は健太の体に当たっていた。しかしタイガーガルヴォルスの腕は健太の両手に受け止められていた。
「バカな!?オレのスピードを見切った!?」
攻撃を止められたことに、タイガーガルヴォルスが驚愕する。
「どんなに速くたって、攻撃が当たった瞬間までは居場所が分かってるってもんだ!」
健太が言い放つと、つかんでいたタイガーガルヴォルスの腕をひねった。
「ぐおっ!」
タイガーガルヴォルスが腕を折られて、絶叫を上げて悶絶する。
「かわい子ちゃんを手にかけるたぁ、ふてぇヤローだな!」
健太が怒りをあらわにして、両手を強く握りしめる。
「オレをここまで怒らせたなら、もう容赦はできないぞ!」
「や、やめろ!」
怒号を放つ健太に助けを請うタイガーガルヴォルス。健太の重みのある一撃が、タイガーガルヴォルスの体に叩き込まれた。
「がはっ!」
タイガーガルヴォルスが吹き飛ばされて、強い衝撃で吐血する。体の骨をも砕かれて、彼は立ち上がることもできなくなった。
「こんな・・こんな馬鹿げた死に方・・ありえない・・・!」
タイガーガルヴォルスが声を振り絞って抗おうとする。彼の前に健太が立つ。
「これに懲りて、もう殺しなんてしないことだな・・」
健太はそういうと、タイガーガルヴォルスの前から去ろうとする。とどめを刺そうとせずに。
(い・・いい気になるなよ・・ここまでやられて、おとなしく引き下がると思うな・・・!)
タイガーガルヴォルスが健太への憎悪を募らせる。彼は力を振り絞り、健太に不意打ちを仕掛けようとした。
そのとき、突然弾丸が飛び込んできて、タイガーガルヴォルスが背中を撃たれた。
「うおっ!」
立て続けに撃たれて、タイガーガルヴォルスが悶絶する。この出来事に健太も緊張を覚える。
「オレ・・オレは・・・!」
タイガーガルヴォルスが倒れて、体が崩壊を引き起こした。
「な、何だ、いきなり・・!?」
健太も突然のことに驚きを感じていく。
「ターゲット発見。虎のガルヴォルスは始末。」
そこへ黒ずくめの男たちが駆けつけて、健太を取り囲んできた。
「これより確保開始します。」
「確保!?オレを捕まえるってか!?」
銃を構える黒ずくめたちに、健太が声を荒げる。
「冗談じゃないぜ!オレを簡単に捕まえられると思うなよ!」
健太が毒づいてから黒ずくめたちから逃げ出す。黒ずくめたちが健太を追って、一斉に発砲した。
次回
「これは人間とガルヴォルスの戦いなのだ。」
「ガルヴォルスを掃討できるのは、同じガルヴォルスでしかない。」
「オレはオレのやりたいようにやる!」
「アンタたちのおもちゃになるぐらいなら、死んだほうがマシだ!」