ガルヴォルスX 第1話「目覚める力」

 

 

人間じゃなくなっても、バケモノになっちまおうが関係ねぇ!

他のヤツらがどう思おうが関係ねぇ!

オレはこの力で、オレのいるこの場所を守る!

 

 

 かわいい女子たちがよく入学してくることでも有名である大学。その大学に、とんでもない噂でもちきりの男が入学してきた。

 その男は筋金入りの変態。女子に対してハレンチなことをやらかしては、彼女たちの仕返しを軽やかにかいくぐる。

 男の名は金城(きんじょう)健太(けんた)。性格は熱血で猪突猛進。ハレンチなど自分の欲望にも素直で、エッチなことばかりしている。

「やっぱここの女子は発育がいいぜ!」

 この日も健太は女子の胸にタッチしていた。女子たちが悲鳴を上げて、手を挙げたり物を投げたりしたが、健太は軽やかにかわしていった。

「この変態!戻ってこーい!」

「逃げるな、卑怯者!」

 胸を触られた女子たちが健太に文句を言ってくる。

「せっかくのすばらしいレディ&ガールのボディだ!タッチしないなんてもったいないってもんだぜ!」

 健太が気さくな笑みをこぼして、駆け足で逃げ出していった。

「もー!金城ったらー!」

 女子が健太に対して不満を爆発させていく。

「ヘッヘッヘ!今日も幸せ気分でいられそうだ!」

 健太がハレンチを成功させたと実感して、喜びを膨らませていた。

「そうはいかないよ、健太!」

 そこへ声が飛び込んできて、健太が緊迫を覚える。振り向いた彼の前に、藍色のショートヘアをした女子がいた。

「げっ!?ひとみ!?

 健太が慌ただしく後ずさりする。女子、美波(みなみ)ひとみが彼に鋭い視線を投げかけてきていた。

「何でお前がここにいるんだよ!?

「健太のやることは僕にはお見通しだよ!」

 声を荒げる健太にひとみが高らかに言い放つ。

「もう・・いくら幼馴染みだからって、こうも付きまとわれるとはな・・」

 健太がひとみに対して不満な素振りを見せる。

「健太はいつもいつも女の子にエッチなことして・・いい加減にしないと、僕じゃなくて警察に捕まることになっちゃうよ!」

「へっ!警察だってそう簡単にオレには追いつけないって!」

 注意を呼びかけるひとみだが、健太は強気に言って、また逃げ出してしまった。

「あっ!コラ、健太、待ちなさいってー!」

 ひとみが慌てて健太を追いかける。ところが建物の廊下で彼を見失ってしまう。

「もー!健太のヤツ・・今度見つけたらただじゃおかないんだからー!」

 ひとみが健太への不満でふくれっ面を浮かべた。

 

 夕方に差し掛かり、街外れの道に暗さが差し込んできた。その道を1人の女子が歩いていく。

「ちょっと遅くなっちゃったかな・・急いで帰らないと、パパとママに心配かけちゃう・・!」

 早く家に帰ろうとする女子が、だんだんと駆け足になっていく。

「みーつけた・・かわいこちゃーん・・」

 その途中、女子の耳に不気味な声が入ってきた。

「えっ・・!?

 女子が足を止めて辺りを見回す。ところが周辺には誰もいない。

「気のせいか・・ビックリさせないでよ・・・」

 女子が安堵の笑みをこぼして、また歩き出す。

 そのとき、女子の目の前に黒い影が飛び出してきた。

「たっぷり楽しんじゃうよ〜・・」

「キャアッ!」

 不気味に笑ってきた影に、女子が悲鳴を上げる。影は犬を思わせる姿の怪物という正体を見せて、女子に襲い掛かってきた。

 怪物は女子の体に食らいついて、鮮血が地面にまき散らされていく。

「はぁ・・やっぱりかわいこちゃんを味わうのは気分がいいなぁ・・」

 怪物が女子の感触を味わって、喜びを膨らませていく。

「この気分があるからやめられないんだよなぁ・・また他のかわいこちゃんを味わいに行くとするか・・」

 怪物が次の獲物を求めて移動を開始した。

 

 怪物が人々を襲っている。その噂は一部で広まっていた。しかし怪物が犯人という証拠は何もなく、警察も怪物の話をまるで聞いていなかった。

「事件が起こったの、この近くだよね・・・?」

「怪物だなんてありえないって・・そういうのは空想上の生き物だって・・」

「でも犯行が人間離れしてるって・・」

 大学の生徒たちも怪物について会話をしていく。

「おかしな話ばっかしてるな、みんな・・」

 生徒たちの話を耳にして、健太がため息をつく。

「僕のゼミでもその話で持ちきりだよ・・」

 そこへひとみがやってきて、健太に声をかけてきた。

「まぁ、健太の仕業じゃないね。いくらなんでも人殺しなんてするわけないし・・」

「ひとみ・・」

「健太だったらエッチに走るもんね。」

「ひとみ、オレを何だと思ってやがるんだよ〜・・」

 ひとみが投げかけた言葉に、健太が大きく肩を落とす。

「僕もバケモノなんていないと思ってるけど、物騒なことに巻き込まれないに越したことはないってね。」

 ひとみが健太に向かって言いかけていた。ところがそばに健太はおらず、また女子を追いかけ回していた。

「もー!健太ったらー!コラー!」

 ひとみが怒って健太を追いかけていった。

 

 この日も女子へのハレンチを楽しんで、健太は満足していた。

「ふぅ。今日もたっぷり楽しんだなぁ。ひとみの追跡もうまく巻けたし。」

 健太が大学のほうに振り返ってにやける。

「それじゃ、これから街のほうに繰り出すとするか。街にたくさん人がいるってことは、そこにはかわい子ちゃんもたくさんいるってことだぜ!」

 健太が期待と欲望を膨らませて、街に繰り出していく。

「けど、街は事件で警官がウロウロしてるんじゃないか?・・ま、いいか。見つかったら逃げりゃいいだけの話だ。」

 健太がにやけながら、たどり着いた街を見渡していく。行き交う人々の中から、彼は美女を見つけていく。

「やっぱり街はより取り見取りだぜー!」

 健太が歓喜を振りまきながらさらに見渡していく。

「さーて、誰から行っちゃおうかな〜・・」

「ちょっと君。」

 狙いを定めようとしていた健太が声をかけられる。彼が振り向くと、そこには2人の警官がいた。

「最近起こっている事件については知っているね?危ないからあまり遅くまで外を出歩かないように。」

「あ・・あぁ。分かった・・用があるとき以外はさっさと家に帰るよ・・」

 警官から注意を言われて、健太が力なく答えた。警官たちが立ち去ったのを見送ってから、健太が安堵を見せる。

「ビックリした〜・・オレが美女狙ってるのがばれたかと思った・・」

 健太が大きくため息をついてから、再び辺りを見回す。

「さーて、改めて美女を探すとするか!」

 健太が女子を狙って人込みの中に入っていった。

 そのとき、健太は裏路地に入っていく1人の女性を見つけた。

「おっ!かわい子ちゃん発見!」

 健太がニヤニヤしながらその女性を追いかけていく。裏路地は昼間でも日の光が差し込みにくくなっていて、薄暗くなっていた。

「あんなきれいな女性が、こんなところで何を・・?」

 健太が女性の行動に疑問を感じていく。

「ま、かわいければ何であってもオールOKってな!」

 ところが健太はすぐに気持ちを切り替えて、女性を追いかけていく。

 そのとき、女性がふと後ろのほうに振り向いてきた。健太が慌てて曲がり角に隠れて見つからないようにする。

 女性は辺りを見回しながら、さらに前に進んでいった。

「気づかれないように追っかけないとな・・」

 健太は安心を感じながら、女性を追いかけ続けていた。女性はそわそわしながらさらに進んでいく。

(何をそんなに周りを気にしてんだ?まさか、オレに気付いて・・・!?

 健太が不安を覚えて注意を強めていく。それでも欲望に忠実になって、彼は女性を追いかけていく。

 やがて女性が足早になって、ついには走り出した。

(ヤバッ!見つかったか!?

 健太が焦りを感じながら、女性の後をさらに付けていく。

 やがて女性は小さな道を抜けて、広場へと出た。女性は辺りを見回して、誰かいないかを確かめる。

「そんなにオレのことが気になるのかな〜?」

 そこへ不気味な声が飛び込んできて、女性が緊迫を覚える。健太もこの声を聞いて辺りを見回す。

 後ずさりする女性の前に、犬の姿をした怪物が現れた。

「キャアッ!」

 悲鳴を上げた女性に怪物が飛びかかる。女性が体をズタズタにされて、動かなくなっていく。

(バケモノ・・アイツが、噂になってたバケモノってヤツなのか・・・!)

 健太が怪物を目の当たりにして緊迫を覚える。女性を襲って、怪物が喜びを浮かべる。

「ハァ・・やっぱりかわいこちゃんを襲うのは気分がいい・・・」

 怪物が安堵と喜びをかみしめて、吐息をつく。怪物は鼻を動かして、辺りに注意を向ける。

「1匹ネズミが隠れてるなぁ・・」

 怪物が笑みをこぼすと、健太が隠れている路地に向かって飛び込んできた。

「うわっ!」

 路地の壁が怪物に壊されて、健太が吹き飛ばされて出される。

「オレは鼻が利くんだ。コソコソ隠れててもにおいで分かる・・」

 怪物が振り向いて健太に不気味な笑みを浮かべてきた。

「お、おい・・夢でも見てるんじゃないよな、オレ!?・・こんなバケモノ、あり得ないって・・・!」

 健太が声を荒げて、慌てて後ずさりする。

「男を弄んでも面白くないんだけどなぁ・・ばらされるくらいなら、始末しといたほうがいい・・」

 怪物が健太さえも息の根を止めようと、不気味な笑みを浮かべて迫ってくる。

「冗談じゃないって!こんなムチャクチャなので死んでたまるかよ!」

 健太が慌てて怪物から逃げ出す。だが飛び込んできた怪物にすぐに回り込まれる。

「そ、そんな!?ぐあっ!」

 驚きの声を上げる健太が、怪物が振りかざした右腕に叩きつけられて吹き飛ばされる。

「いでえ!腕が折れるー!」

 叩かれた腕を押さえて、健太が絶叫を上げて悶絶する。苦しんでいる彼を見下ろして、怪物が笑みをこぼす。

「痛いか・・苦しいか・・だったらすぐに終わらせて、痛いのを消してやらないと・・・」

 怪物が健太にとどめを刺そうと近づいてくる。

「死にたくない・・こんな馬鹿げたことで死ねるか・・・!」

 健太が声と力を振り絞って立ち上がる。

「オレはもっともっと・・かわい子ちゃんを堪能したんだから!」

 そのとき、健太の頬に異様な紋様が浮かび上がる。彼の異変を目の当たりにして、怪物が驚愕する。

「それはお前、もしかして・・・!?

 声を荒げる怪物の前で、健太の姿が変わる。人間とは違う人型の異形の姿に。

「お前も、オレと同じだというのか・・・!?

 変化した健太を目の当たりにして、怪物が後ずさりしていく。

「でもすぐにならなかったということはなり立てってことかな?・・それなら何とかなりそうかな・・」

 怪物はすぐに笑みを取り戻すと、健太に向かって飛びかかる。怪物は健太に爪を鋭くした右手を振りかざしてきた。

 すると健太が左腕を構えて、怪物の右手を受け止めた。

「なっ!?

 攻撃を止められたことに驚く怪物。怪物が手を押し込もうとするが、健太の腕に完全に阻まれる。

「コイツ・・ただの怪物じゃない・・とんでもない力・・・!」

 怪物が健太の発揮する力にさらに驚愕する。

「こ、このっ!」

 怪物が左手も健太目がけて振りかざそうとした。そのとき、健太が右足を振り上げて、膝蹴りを怪物に叩き込んできた。

「がっ!」

 重みのある衝撃と痛みに襲われて、怪物が後ずさりして悶絶する。

「このままではこっちが死んでしまう・・そんなわけにいかない・・・!」

 怪物が慌てふためき、健太から逃げ出していく。

「足の速さには自信があるぞ!いくらどんだけ力が強くても、追いつくことなんて・・!」

 走りながら笑みをこぼす怪物。怪物は視線を後ろから前に戻す。

 だがその先に健太が立っていた。彼は怪物の前に回り込んでいた。

「い、いつの間に!?

 驚愕を覚えた瞬間、前進してきた怪物が、健太が突き出して右手に貫かれた。

「がっ!」

 怪物が絶叫を上げて、体から血をあふれさせる。健太が手を怪物から引き抜く。

「そんな・・もっと・・もっと楽しみたいのに・・・」

 怪物が倒れて、血を吐きながらうめいていく。

「助けて・・まだ・・死にたくないんだよ・・・」

 助けを請う怪物に向かって、健太が右足を振り上げて叩きつける。怪物は鮮血をまき散らして動かなくなる。

 事切れた怪物を見下ろしてから、健太は歩き出す。しばらく進んだところで、彼の姿が怪物から人間に戻った。

「あ、あれ?・・オレ、何をやってたんだ・・・?」

 我に返った健太が辺りを見回す。動揺を覚える彼が、血まみれで倒れている怪物を目の当たりにする。

「あれは、あのバケモノ・・何かあったのか・・・!?

 健太が怪物に対して疑問を募らせていく。そのとき、健太は右手に血が付いていたことに気付く。

「オレはケガはしてない・・ってことはまさか・・・!?

 健太が不安を膨らませて、怪物の遺体に視線を戻す。すると怪物の体が崩壊を起こして、砂のように崩れていった。

「オレがこのバケモンを仕留めたってのか・・・!?

 目の前の現実が信じられず、健太が愕然となって体を震わせる。

「そんな・・そんなわけ!」

 彼は慌ててこの場から逃げ出していく。怪物も消失して、その場は何事もなかったかのような静寂が訪れた。

 

 怪物との遭遇と崩壊から必死に逃げてきた健太。彼は街の中に飛び込んでから立ち止まり、乱れた呼吸を整えていた。

(あれは夢とか幻とか、きっと見間違いだよな・・・)

 健太が自分に言い聞かせて安心しようとする。

「悪いことを気にしてたってしょうがねぇ・・それよりもかわい子ちゃんだぜー!」

 健太がすぐに立ち直り、美女を追い求めて駆け出していった。

 

 怪物が健太に倒された場所に、1人の人物がいた。スーツにサングラスといった黒ずくめの格好だった。

 黒ずくめは怪物が消えた地点をじっと見つめていた。

「ガルヴォルス、消失しました。」

 黒ずくめの男が携帯電話を取り出して連絡を取る。

“ガルヴォルスの死は完全なる消滅。その瞬間を目撃されない限り、証拠は一切残らない。”

「それともう1人、ガルヴォルスに転化した者がいます。」

“転化した?そのガルヴォルスが仕留めたのか。”

「おそらく。そのガルヴォルスも、現在追跡、監視しています。」

 黒ずくめが連絡をしていく。

「捕獲いたしましょうか?」

“そのように。ただし注意しろ。ガルヴォルスは人知を超えた能力の持ち主だぞ。”

「分かっています。直ちに捕獲いたします。」

 指示を受けた黒ずくめが場所を移動した。

 

 その頃、別の黒ずくめが健太の姿を監視していた。その黒ずくめに向けて通信が入る。

“その男を確保しろ。こちらの管理下に置く。”

「了解。直ちに。」

 指示を受けて黒ずくめが答える。彼らは怪物「ガルヴォルス」となった健太に目を付けた。

 

 

次回

第2話「狙われる力」

 

「コラー!待ちなさい、けんたー!」

「やっぱりストレス解消はこうでないとな・・」

「これより確保開始します。」

「オレを簡単に捕まえられると思うなよ!」

 

 

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