ガルヴォルスRebirth 第21話「邪の呪縛」

 

 

 コウが放ったオーラは周囲にも広がった。その衝撃に、身動きの取れないカズヤたちが巻き込まれた。

 レイは兵士が庇ったことで無傷でいられた。兵士たちの十数人が負傷して倒れていた。

「コウ・・どこまでも往生際が悪いのね・・・」

 レイが辺りを見回して呟きかける。彼女の視界にコウの姿は入ってこなかった。

「コウ自身、この衝撃で吹き飛ばされてしまったのね・・ここにいるのは・・」

 レイはさらに周囲を見回していく。彼女は倒れている数人の兵士たちの他、カズヤとルナがいた。

「カズヤくんとルナさん・・もう1人は吹き飛ばされてしまったようね。」

 ヒナタがいないことを口にするレイ。

「レイさん・・」

 そこへ兵士たち数人がレイの前に駆けつけてきた。

「カズヤくんとルナさんを連れて行きなさい。他の人の捜索も行ってください。」

「了解。直ちに。」

 レイの命令に答えて、兵士たちが散開していく。カズヤとルナが意識が戻らないまま、兵士たちに連れて行かれる。

「隊長、こちらに毒島アキラがいました。」

 兵士たちが声をかけて、レイがその場所に向かう。そこではアキラが倒れて動けなくなっていた。

「ついにあなたの悪巧みもここまでということになったわね、アキラ。」

「くっ・・レイ・・・!」

 微笑みかけるレイにアキラがうめく。

「皮肉なものね。同じく敵対していたコウに助けられることになるとは・・おかげであなたを仕留めることができる・・」

「ただの人間のお前に、ガルヴォルスであるオレを仕留めることなど・・・!」

 レイに言い返して、アキラが触手を伸ばそうとした。だが兵士の射撃を受けてアキラが動きを止められる。

 激痛に襲われて顔を歪めるアキラを見て、レイがため息をついた。

「あなたには本当に手を焼かされたわ・・あなたのために厄介なことは後を絶たなかった・・・」

 レイは言いかけると、銃を手にしてアキラに銃口を向ける。

「もうあなたと会うこともないわ・・あなたには感謝してるわ・・・」

 レイが笑みを見せると、アキラが力を振り絞って飛びかかろうとした。

「さようなら・・」

 レイが引き金を引いて、アキラの頭に銃弾を撃ち込んだ。昏倒して動かなくなったアキラが、崩壊を引き起こした。

「コウと小桜ヒナタの行方は分かったの?」

「いえ、この付近にはいません。遠くまで飛ばされた可能性があります。」

 レイの問いかけに兵士が答える。

「あなたたちは引き続き捜索を。私たちはこの2人を連れて行くわ。」

「分かりました。」

 レイからの指示を受けて、兵士が敬礼を送ってから離れていった。

「では行くわよ、あなたたち。すぐに目を覚ますとも、眠っているフリをしているとも限らないから、注意を怠らないように。」

「分かりました。常に麻酔を投与して、自由が利かないようにしておきます。」

 レイが別の兵士たちに指示を出す。兵士たちによって、カズヤとルナが車に入れられた。

 カズヤもルナも意識が戻らないまま、レイたちに連れていかれた。

 

 コウの放ったオーラで遠くの森まで吹き飛ばされていたヒナタ。人の姿に戻っていた彼女は、木の下で意識を取り戻した。

「ここは・・・?」

 ヒナタが立ち上がって辺りを見回す。彼女は遠くで煙が上がっているのを目撃する。

「こんなに遠くまで飛ばされていたなんて・・・」

 状況を把握して、ヒナタが頭を抱える。

「早く戻らないと・・カズヤとルナちゃんが危ない・・・!」

 ヒナタが意識を研ぎ澄ませて、キャットガルヴォルスになろうとする。しかし疲弊を感じて、彼女はガルヴォルスになれずに息が上がってしまう。

「体力が・・アイツらにやられた弾のせいで、まだ・・・!」

 ヒナタが膝をついて息を乱していく。疲弊と麻痺で彼女の感覚は鈍ってしまっていた。

「助けに行かないと・・カズヤとルナちゃんを・・・!」

 それでもヒナタはカズヤたちを助けようと、足を引きずりながら前に進んでいく。

「カズヤ・・ルナちゃん・・無事でいて・・・!」

 2人を信じて、ヒナタは疲れ果てている体に鞭を入れて街に戻っていった。

 

 自分たちの基地へと戻ってきたレイたち。兵士たちがカズヤとルナを連れ出してくる。

「2人は私の研究室に連れて行く。そこまでお願い。」

「そこでよろしいのですか?そこには拘束のための器具は多くないはずですが・・」

 言いかけるレイに兵士が言葉を返す。

「構わないわ。その代わり、麻酔は強力にしておいて。」

「分かりました。何かあればすぐに連絡を・・」

 レイの言葉を受け入れて、兵士たちはカズヤとルナを彼女の研究室に運んだ。

「ありがとう。ここは私だけでいいわ・・」

「分かりました・・失礼します。」

 レイに答えると、兵士たちは研究室を出た。部屋は音が中と外の間で一切伝わらない構造となっていた。

「これで誰にも邪魔されない。思う存分やれるというもの・・」

 寝台で縛られているカズヤとルナを見て、レイが妖しく微笑む。

「そろそろ意識が戻る頃かしら。でも体に入れた麻酔は強いものを入れているからね・・」

 レイが呟いたところで、カズヤが意識を取り戻した。

「オレは・・・な、何だ、ここは!?

 カズヤが部屋を見てもがく。しかし体が麻痺していて、彼は縛り付けているロープから抜け出せなくなっていた。

「あなたたちはまだ麻酔が効いている。ガルヴォルスになるどころか、思うように力が入らないわ。」

「ふざけんな・・どういうつもりだ・・・!?

 微笑みかけるレイをカズヤが問い詰める。そのとき、ルナも目を覚まして、自分たちの状況に驚きを覚える。

「えっ!?ここ、どこ・・!?

「ルナ・・・!」

 声を荒げるルナにカズヤが声をかける。

「あなたも気が付いたのね。あなたには目に焼き付けておくといいわ。私が世界のための力を得るための儀式を・・」

「儀式・・!?

 レイが口にする言葉に、カズヤが疑問を募らせる。

「私は人間として、人間のままで、世界を動かす力を手に入れる。あなたにはそのための人柱になってもらう、ということよ。」

「人柱!?何寝ぼけたことぬかしてんだよ!?第一、オレはお前の思い通りにはならないって!」

「残念だけど、あなたが理不尽をはねのけ続けるのはもう終わるのよ。私に力を託すことによってね・・」

 妖しく微笑むレイに怒りをあらわにして、カズヤがロープから抜け出そうとする。

「あなたもムダな抵抗というのが好きのようね・・でも、もうあがく必要はないの・・」

 レイはさらに笑みをこぼすと、着ていた服を脱ぎだした。

「な、何を・・!?

 突然のことにルナが動揺を覚える。裸になったレイが、身動きの取れないカズヤに寄り添ってきた。

「私があなたを楽にしてあげる。私が導いてあげるわ・・」

 レイが言いかけると、カズヤに唇を重ねてきた。カズヤが目を見開いて、さらにもがく。

 レイが1度唇を離して、憤りを見せるカズヤの顔を見つける。

「お前・・オレのことを・・・!?

「あなたにとって、この行為はこの上なく屈辱的なことだったわね・・」

 憤りを募らせるカズヤに、レイが微笑みかける。

「人は屈辱や絶望を体験し続けると、心が壊れてしまうもの・・あなたも耐えられるかしらね・・・」

 レイが言いかけると、あらわになっている自分の胸をカズヤの体に押し当ててきた。

「純情な人だったら、男はもちろん、女でも心を動かされてしまうものよ。こういうことをされたら・・」

「やめろ・・やめろってんだ・・!」

 さらに胸を当ててくるレイに、カズヤが声を荒げる。

「やめて!カズヤから離れて!」

 ルナが悲鳴を上げるが、レイはカズヤへの接触をやめない。今度はレイはカズヤの顔を自分の胸の谷間にうずめてきた。

「そう・・その息遣い・・その反応・・・私を刺激していく・・・」

 カズヤとの接触にレイが徐々に恍惚を感じるようになっていく。カズヤに触れれば触れるほど、抱けば抱くほど、レイは喜びを膨らませていった。

 だがカズヤは不快感を募らせていた。彼の脳裏に、かつてヒナタから受けた抱擁がよぎってきていた。

「やめろ・・これ以上、オレを追い込むな・・・!」

 拒否反応を示すかのように、カズヤがさらにもがいていく。しかし彼は縛り付けているロープからもレイの裸身からも抜け出せないでいた。

「こんなのを・・どうしてもオレは受け入れないといけないというのかよ・・・!?

「それが、あなたの運命となったのよ・・受け入れる以外に道はない・・」

 声と力を振り絞るカズヤに、レイが囁きかける。

「でも気に病むことはないわ。それが世界を変える力になるのだから・・」

「人柱がどうのこうのってことかよ・・だから、オレはそんなものには・・・!」

「あなたたちも世界のための力となるのよ。名誉に思うべきよ。」

 カズヤに微笑みかけて、レイが彼の服を脱がしていく。

「やめろ・・オレを弄ぶな!」

 激高するも抗うことのできないカズヤ。レイは自分の秘所に、裸にしたカズヤの性器を入れさせた。

「ハァァ・・この交わりよ・・この刺激が、私に新しい力をもたらしていく・・・」

 カズヤが自分の中に入ってくるような高揚感を覚えて、レイが笑みを強めていく。

「どうしてこんなことが・・力につながってくるの・・・!?

 困惑を募らせながら、ルナがレイに問い詰める。するとレイがルナに視線を向けてきた。

「命の誕生は交わりによって生まれている・・こうすることで、力を得ることもね・・・」

「そんなことで、オレたちにこんな・・・!?

「これは特別なのよ。人間である私と、ガルヴォルスであるあなた。その関係が重要なのよ・・」

 声を荒げるカズヤに、レイが語りかけていく。

「ガルヴォルスと交わることで、私は強い力を得ることができる。あなたのガルヴォルスの力が、私に流れていくのよ・・私が人間のままで・・」

「それで、こんなマネを・・・!?

「そう・・あなたはこのまま、私に力と至福を与えていくのよ・・」

「そんなに・・そんなにオレたちを思い通りにしたいのか!?

「それが、世界を正しく変えられるなら・・」

 声を張り上げるカズヤにレイが微笑みかける。レイが快楽を感じながら、カズヤを縛っていたロープを外した。

「もっと・・もっとあなたのぬくもりを・・あなたの力を・・・」

 レイが性交したまま、カズヤを抱き寄せて、接触を体感していく。体の麻痺と心の揺らぎのため、カズヤは抗うことができない。

「やめて・・・カズヤから離れて・・カズヤを追い込まないで・・・!」

 ルナが叫んでもがくが、体の麻痺でロープを外すことができない。レイがカズヤを弄んでいくのを見ていることしかできなくて、ルナは悲痛さを募らせていく

「やめろ・・やめろ・・・やめろ・・・!」

 声を張り上げるカズヤだが、完全に心を揺さぶられて、レイにされるがままになっていた。

「このまま私に身を委ねればいい・・あなたの力が、この乱れた世界を正していくのよ・・・」

 レイはカズヤに囁いて、さらに自分と交わらせていく。絶望で心がいっぱいになったカズヤは、見開いている目から涙を流していた。

「カズヤ・・・もうやめて!やめてよ!」

 ルナがひたすら悲痛の叫びを上げる。彼女の声を耳にして、レイはようやくカズヤとの抱擁をやめる。

「これで十分かしらね・・カズヤくんには感謝しているわ・・・」

 レイは体を起こすと、ルナに向かって歩いてきた。

「あなたにも感じさせてあげるわ・・人とガルヴォルスの交わりで得られた力を・・」

 レイは言いかけると、ルナの着ていた服を脱がしてきた。

「イヤアッ!」

 たまらず悲鳴を上げるルナ。彼女のあらわになった胸に、レイが手を当てる。

「女同士でも、感じ合うことはできるのよ・・」

「やめて・・離れて・・離れて!」

 微笑みかけるレイにルナが声を荒げる。しかしルナはレイに抗うことができない。

 レイが自分の胸の谷間に、ルナの顔をうずめる。顔を胸に押し当てられて、ルナが言葉を出せなくなる。

「あなたも感じているわね・・カズヤくんが感じていた感情を・・」

 ルナのぬくもりを感じて、レイが喜びを膨らませていく。

「あなたもカズヤくんと交わったことがあるのね・・あなたの心と体が、荒んでいた彼を救ったのね・・私からも感謝させてもらうわ・・」

「あなたなんかのために、私とカズヤは・・・!」

 レイに心を見抜かれて、ルナが困惑していく。

「あなたもガルヴォルスになったのよね・・あなたからも強い力を感じるわ・・カズヤとは少し違う力だけど・・・」

「違う・・私もカズヤも人よ・・あなたは、人であることを捨ててしまっている・・・!」

「私が人であることを捨てている?おかしなことを言うのね。」

「他の人を平気で利用して弄ぶ・・体は人間でも、心は怪物以上の怪物よ!」

 あざ笑ってくるレイにルナが言い放つ。身動きの取れないルナは、レイに憤りを見せていく。

「私は正真正銘の人間。その私を怪物だというなら、この世界で生きている人の大半が怪物ということになるわ。」

 レイは笑みを消さずに言うと、ルナの胸に手を当ててきた。彼女に胸を揉みほぐされて、ルナが心を揺さぶられて息を乱していく。

「人間はみんな私利私欲のために行動している。あなたたちも結局は例外ではないわ。私利私欲を遂行するには、相応の力が必要となってくる。」

「それで、カズヤにあんなことを・・・!?

「世界を変えるには生半可な力では不可能。だからといってガルヴォルスになってしまったら意味がない。」

 目を見開くルナに、レイが語りかけていく。

「だから私はこうして、カズヤくんと交わることで、ガルヴォルスになることなく力を受け取ることができた・・あなたたちには感謝しているわ・・」

 目つきを鋭くしたレイから半透明なオーラがあふれ出してきた。オーラはルナを包み込んで、さらに彼女を縛っていたロープを外した。

「な、何、コレ!?・・・まさか、コレって・・・!?

「そう。私に流れてきたカズヤの力よ・・あなたも感じ取れたのね・・」

 愕然となるルナにレイが微笑みかける。

「あなたが心を寄せたカズヤくん・・彼の力を得た私に抱かれるのは、安心できることよ・・」

「違う・・あなたはカズヤじゃない・・私たちを追い込もうとしている、悪い人・・・!」

「あなたもカズヤくんも、本当に強情なのね・・その純粋なところが、強い力を生むのよ・・」

 声を荒げるルナにレイが囁いていく。ルナがレイに体を撫でまわされるが、体に力が入らず、されるがままになる。

「力さえも、惹かれあっているものなのね・・あなたの力も、私の中に入ってきている・・・」

「イヤ・・私は・・私はそんなこと・・・!?

 妖しく微笑むレイの抱擁から抜け出せないルナ。ルナも絶望を感じて目が虚ろになっていた。

「ありがとう、ルナさん、カズヤくん・・あなたたちのおかげで、私は人のまま、世界を変えることができる・・・」

 レイがルナをゆっくりと寝台に横たわらせる。ルナも完全に脱力していて、まともに動かない状態になっていた。

「ここはあなたたちだけにしておくわ・・2人だけの交わりを、この後も続けていけばいい・・」

 レイがルナとカズヤを見て微笑みかける。2人とも絶望で心がいっぱいになっていて、放心状態にあった。

「麻酔も時期に切れるでしょうけど、心のほうは治ることはないわね・・」

 レイは言いかけるとかけていた鍵を解除して、ドアを開けた。部屋の前には兵士たちが数人待機していた。

「部屋はこのまま閉鎖する。2人のことはもう放っておいていいわ。」

「しかし・・・!」

「ここの警備はいいわ。危険と判断したら手を出さずに退避しなさい。」

 当惑を見せる兵士たちに呼びかけると、レイは1人歩き出していく。疑問を抱えたまま、兵士たちは彼女の研究室のドアを閉めて鍵をかけた。

 

 カズヤ、ルナとの交わりを果たしたレイ。彼女は自分の体に力が満ちあふれているのを実感していた。

「私は今、理想の私になることができた・・これで、何もかもが私の思い通り・・・」

 レイが自分の両手を見つめて喜びを募らせていく。

「この私が、愚かになったこの世界を変えていく・・最高の人間として・・・」

 心の奥底に秘めていた野心を感じながら、レイは行動を開始するのだった。

 

 

次回

第22話「黒い鉄槌」

 

「もう誰も、私を止めることはできない・・」

「そうまでして思い通りにしたいのか、貴様は・・・!?

「正しい世界に、あなたたちは不要・・」

「私が、世界を正しく導いていく・・・」

 

 

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