ガルヴォルスRebirth 第22話「黒い鉄槌」
カズヤ、ルナとの性交を経たことで、人間のままで2人のガルヴォルスの力を得たレイ。行動を起こした彼女の前に、大勢の兵士たちが駆けつけてきた。彼女の部隊とは別の兵士である。
「あなたたち、政府直属の部隊ね・・」
微笑みかけるレイに兵士たちが銃を構えてきた。
「木崎レイ。あなたには重要な軍紀違反の容疑がかけられている。我々とともに来てもらおう。」
「政治家たちの言いなりになっているかわいそうな人たち・・でも部下はそういうものだから、仕方のないことかもね・・」
呼びかける兵士たちにレイが微笑みかける。
「連行するぞ。」
兵士がレイに手錠をかけようとした。
「もう私を無理やりどうこうすることはできない・・」
レイは呟くと、全身からオーラを放出してきた。その衝撃で兵士たちが吹き飛ばされる。
「な、何だ、今のは・・!?」
「貴様・・我々に何をした!?」
兵士たちが声を荒げて、再び銃を構える。それでもレイは笑みを消さない。
「もう私は無力ではない。世界を変えられるほどに力を高めることができたのよ・・」
レイが掲げた右手から白く淡い光があふれ出してくる。
「私はもう、あなたたちの言いなりになる必要はない・・」
レイが右手を振りかざして光を放つ。光の衝撃に押されて、兵士たちが吹き飛ばされる。
「き、貴様・・何をしているのか分かっているのか!?」
「これは我が国だけでない!全世界を敵に回す行為だぞ!」
兵士たちがレイたちに憎悪と憤りを見せていく。
「もうそうしてもらう必要はないの。もう私は無力ではないのだから・・」
レイは悠然さを見せたまま、また白いオーラをあふれさせる。
「命が惜しかったら、すぐに私の前から去ることね・・」
「バケモノめ・・撃て!撃ちまくれ!」
レイの忠告を聞かずに、兵士たちが一斉に発砲する。しかし放たれた弾丸は彼女の体に当たる前に、あふれてくるオーラに弾かれてかき消される。
「き、効かない・・・!?」
兵士たちが恐怖を覚えて後ずさりする。
「もう誰も、私を止めることはできない・・」
レイは笑みを消すと、光を宿した右手を振りかざした。光は刃となって兵士たちを切りつけた。
兵士たちが鮮血をまき散らしながら、次々に昏倒していく。痛みと恐怖で動けなくなる兵士の1人に、レイが歩み寄ってきた。
「や、やめろ・・貴様のやっていることは・・・!」
「正しい世界に、あなたたちは不要・・」
声を振り絞る兵士に言いかけて、レイが笑みを消す。
「世界の愚かさは、たった今消えなければならないのよ・・」
レイが衝撃波を放って、兵士にとどめを刺した。レイは肩の力を抜いて、体から出ていたオーラを消した。
「もう私は普通の人間ではない・・怪物でもない・・」
レイが呟いて振り返る。
「そろそろ今の世界を動かしている愚かな人たちに、己の愚かさを思い知らせないと・・・」
レイは野心を胸に秘めたまま、歩き出していった。
レイに弄ばれて、カズヤもルナも絶望に襲われて、無気力状態になっていた。2人とも自力で動くこともままならなくなっていた。
そんな中、カズヤとルナの目からはうっすらと涙があふれてきていた。
「・・・や・・・やだ・・・」
ルナが弱々しく声を発してきた。そして彼女はカズヤにゆっくりと手を伸ばしてきた。
「カズヤ・・・私・・・私・・・」
声と力を振り絞って、ルナがカズヤの手をつかんで握る。
「カズヤ・・・もうカズヤが苦しむ必要はない・・私が・・私が守る・・・」
ルナがゆっくりとカズヤに寄り添っていく。
「ゴメン、カズヤ・・あの人にひどいことされているのに・・何もできなくて・・・」
ルナがカズヤを見つめて、何もできなかった自分を責める。
「もう・・私がカズヤを守る・・それが私だけのわがままだとしても構わない・・それでカズヤに嫌われることになっても・・・カズヤがイヤなものに振り回されるくらいなら・・・」
ルナがカズヤを優しく抱きしめて、ぬくもりを感じ取っていく。
「もう、安心して・・・カズヤ・・・」
「ル・・・ナ・・・」
ルナが呼びかけていくと、カズヤが声を発してきた。
「カズヤ!?・・大丈夫、カズヤ!?」
カズヤの声を聞いて、ルナが喜びの笑みをこぼした。
「カズヤ、大丈夫・・もう誰にも、あなたに手出しさせないから・・・!」
ルナがカズヤの体を抱きしめる。彼女はカズヤを守りたい一心になっていた。心身ともに追い込まれていた彼女は、そう考えることしかできなかった。
(あ・・あったかい・・気持ちが、落ち着いていく・・・?)
カズヤがルナの抱擁に不思議な気分を覚える。絶望して頭の中が真っ白になっていた彼は、心を揺さぶられていた。
(いい気分になっていく・・落ち着いていく・・むしろすがりつきたい・・甘えたいくらい・・・)
カズヤがルナの体に手を伸ばした。彼の手が彼女の背中に触れる。
「カズヤ・・・私のことを、まだ、覚えて・・・」
カズヤに抱かれてルナが戸惑いを覚える。彼女も込み上げてくる安らぎにすがるように、カズヤとの抱擁に身を委ねた。
「カズヤ・・・私がいないと、カズヤは・・・」
カズヤの気持ちが分かったような気がして、ルナが彼をさらに抱きしめる。
「私も・・カズヤがいないと・・・」
ルナが感情のままにカズヤに顔を近づけて唇を重ねた。
(この感じ・・・伝わったことがある・・・この感じは・・・ルナ・・・)
カズヤも感じている心地よさがルナのぬくもりであることを実感した。
自分たちの上層部への服従を断ち切ったレイ。彼女は上層部のいるビルに乗り込んだ。
「お前は、木崎レイ!?」
「久しぶりですね、みなさん。」
驚愕を見せる議員たちにレイが微笑みかける。レイが開けた会議場のドアを閉めた。
「今までは私はあなた方に従うしかありませんでした・・ですが、それも今日限りです・・」
「貴様、自分が何を言っているのか分かっているのか!?」
淡々と言いかけていくレイに、議員たちが怒りをあらわにする。
「これは我々への反逆!それは世界への反逆につながるのだぞ!」
「今まではそれを恐れていた・・でも今の私は違う・・」
怒鳴る議員たちに、レイが微笑みかける。彼女の体から淡い光が霧のようにあふれ出してくる。
「私が世界なのだから・・・」
レイが腕を振りかざして光を放つ。光は衝撃波になって、会議場にいた議員たちを吹き飛ばした。
「ぐっ!」
机や壁に叩きつけられて、議員たちが痛みを覚えてうめく。
「お、おのれ、木崎・・・!」
「部隊はどうした!?早くヤツを始末しろ!」
議員たちが怒鳴り合って、会議場の警報を鳴らす。これで警備員や兵士たちが駆けつけるはずだった。
「ムダよ。あなたたちの部下は来ないわ。私を通さないようにしてきたけど、私を止められなかった・・」
「まさか全員、貴様が手にかけたというのか・・・!?」
レイが口にしたことに議員たちが驚愕を覚える。
「彼らもあなたたちと同じく愚かなことね。私に無謀の戦いを仕掛けるとは・・」
レイが笑みをこぼして、議員たちに近づいていく。議員たちの兵士や警備員たちは、レイによって全滅していた。
「もうあなたたちの思い通りになることは何もないの・・でも怖がることはない。すぐに楽にしてあげるわ・・」
「やめろ・・我々まで手にかければ、貴様は世界の敵に・・・!」
「私は世界となったのよ・・」
忠告を送ろうとする議員に言葉を返して、レイが笑みを消す。
「これ以上苦しみたくなかったら、おとなしく私の洗礼を受けることね・・」
レイが低く告げると、小さな光の矢を放つ。光の矢に貫かれて、議員たちが次々に昏倒していく。
生き残った議員たちが、異質の力を発揮するレイに恐怖を覚える。
「やめて・・助けてくれ・・見逃してくれ・・・!」
議員たちが怯えて、レイに命乞いをする。するとレイがため息をついてきた。
「弱い相手には自己満足に振る舞って、強い相手には助けを求める・・自分の身に危険が迫れば、すぐに手のひらを返す・・実に滑稽ね・・」
レイがまた腕を振りかざして光を放つ。議員たちが深い傷をつけられて、倒れて動かなくなる。
「お願いです!助けてください!何でもしますから、命ばかりは!」
議員が頭を下げてひたすら助けを求める。彼の姿を見て、レイは呆れ果てていた。
「もうあなたたちに、選択肢は1つしかないの・・」
レイが放った光の矢が議員の頭に刺さった。議員全員がレイの手にかかり、動かなくなった。
「今の世界は愚かさであふれている・・世界は正しい形に導かれなければならない・・・そう・・」
レイが呟きかけて、体からあふれ出ていた淡い光を消す。
「私が、世界を正しく導いていく・・・」
レイがきびすを返して、会議場を後にした。会議場には議員たちの血まみれの死体だけがあった。
レイの襲撃と彼女の上層部の全滅は、各国の首脳陣に戦慄を植え付けた。彼らはレイへの警戒を一気に強めた。
しかしレイの脅威の力に対してどう対処すればいいのか、どの国も対策を打ち出せないでいた。
中には討議を重ねているように見せた時間稼ぎを決め込む首脳陣もいた。
上層部とつながりのある有力な人々も、緊張の色を隠せなくなっていた。彼らはこの事件を公にしないようにするので精一杯になっていた。
混迷を極める情勢の中、レイは次の行動に出ていた。それは暗躍して人を襲っているガルヴォルスの討伐だった。
「ねぇ、あなた、ちょっといいかしら?」
レイが街中にいた1人の男に声をかけた。
「何だ、アンタ?オレに何の用だ?」
「別の場所で話しましょうか。ここではあなたのことを他の人に知られてしまうから・・」
疑問を投げかける男にレイが言葉を返す。この言葉に男が緊張を覚える。
「私はどちらでも構わないけど、あなたはどうする?」
「わ、分かった・・場所を変えるぞ・・・!」
レイの言葉を聞き入れる男。2人は人のいないところへ移動した。
「あなたはガルヴォルスとなって人を襲ってきた。その強い力を楽しんでね・・」
「お前もオレと同じってわけか。だからオレのことにも気づけた・・・」
「ちょっと違うわ。私はあなたたちのようなガルヴォルスじゃない。」
緊張を募らせていく男に、レイが妖しく微笑む。
「あなたは表向きには普通の日常を送っているように見せているけど、裏ではガルヴォルスとなり、人間を襲って力を楽しんでいる。実に愚かしいことね・・」
「力を使って何が悪い・・力があるのに使わなかったら、宝の持ち腐れってヤツだ!」
嘲笑してくるレイに男が不満を見せる。
「お前だって強い力を持って喜んでいるはずだ!自分のために使いたくて、ウズウズしてるんだろ!?」
男が問い詰めると、ガルヴォルスになって不気味な笑みを浮かべてきた。するとレイがさらにあざ笑ってくる。
「強い力を持って喜んでいるのは間違いないわ。でもこの力を自分のためだけに使うつもりはないわ・・」
レイは言いかけると、体から淡い光を発する。ガルヴォルスが彼女に向かって飛びかかるが、淡い光にはじき飛ばされる。
「私は世界のために、この力を使う・・世界を乱すあなたたちは、排除される以外にない・・・」
レイが笑みを消してから、光の矢を飛ばす。光の矢に体を貫かれたガルヴォルスが、崩壊を起こして倒れた。
「私は人間として、世界を正しく変えていく・・相手はガルヴォルスも人間も関係ない・・」
事切れたガルヴォルスの亡骸に背を向けて、レイは歩き出した。彼女には付近にいるガルヴォルスたちの正体や居場所を把握していた。
カズヤとルナを追い求めて、ヒナタはレイの部隊の施設に来た。彼女はカズヤたちのかすかな鼓動を耳にして、ここまでたどり着いた。
(ここにいる・・きっとあのレイって人に連れてこられたんだね・・・)
ヒナタが施設の建物を見つめて状況を把握する。そこへ武装した兵士たちが現れて、ヒナタに銃口を向けてきた。
「もう気づかれちゃってるわけ・・悪いけど・・・」
真剣な面持ちを浮かべたヒナタの頬に、異様な紋様が浮かび上がる。
「気を遣うなんてできないから!」
叫ぶヒナタがキャットガルヴォルスになる。兵士たちが発砲するが、彼女は素早くかわしていく。
ヒナタが振りかざす手足が、兵士の持っている銃を次々にはじき飛ばす。
「おのれ、バケモノが・・・!」
「このまま逃がすものか・・・!」
いら立ちを見せて銃を拾う兵士たちに、着地したヒナタが鋭い視線を向ける。
「命が惜しかったら、これ以上私の邪魔をしないで・・・!」
ヒナタの殺気に気圧されて、兵士たちが一瞬動きを止める。その間にヒナタは建物の中に飛び込んだ。
「ま、待て!」
兵士たちが慌てて追いかけていくが、ヒナタの速さに後れを取った。
(カズヤ、ルナちゃん、すぐに助けるから・・・!)
カズヤたちへの思いを胸に秘めて、ヒナタは建物の中を駆けぬけていく。兵士たちや研究員たちの妨害をかいくぐり、彼女はレイの研究室の前にたどり着いた。
ヒナタが右足を突き出して、研究室の頑丈な扉をぶち破った。
「カズヤ!ルナちゃん!」
ヒナタが呼びかけて部屋の中を見回していく。そして裸で倒れているカズヤとルナを発見した。
「カズヤ!ルナちゃん!」
人の姿に戻ったヒナタがカズヤたちに駆け寄る。
「カズヤ、しっかりして!ルナちゃん、大丈夫!?」
ヒナタが2人に呼びかける。息のあるカズヤとルナだが、目が虚ろになっていて反応を示さない。
「2人とも、何をされたの・・・あの人が、何か・・・!?」
カズヤとルナがレイに何かされたのだと思い、ヒナタが激情を募らせる。
「カズヤたちを連れ出さないと・・2人が落ち着けるようにしないと・・・」
ヒナタは再びキャットガルヴォルスになって、カズヤとルナを抱える。研究室を出たヒナタの前に、兵士たちが駆けつけて銃を構えてきた。
「これ以上好きにさせるか・・!」
「おとなしくして、我々の指示に従え!でなければ命の保証は・・!」
兵士たちがヒナタに警告を送る。が、ヒナタは逆に鋭くにらみつけてくる。
「アンタたちに従って、私たちにわずかでも得があるって保証もない・・・!」
ヒナタは言いかけると、カズヤとルナを抱えたまま素早く駆け出した。
「逃がすな!撃て!」
兵士たちが発砲するが、ヒナタたちに当たることはなかった。
「レイ様、大変です!佐久間カズヤと天川ルナが!」
兵士が即座にレイに連絡を試みる。しかしレイからの応答はなかった。
世界を正しく変えるために動いていくレイ。彼女は他の重要拠点に向かおうとした。
その途中の通りでレイは足を止めた。
「今の私には、あなたの強すぎる殺気が痛いほど伝わってくるわ・・」
レイが言いかけると、彼女の前にコウが現れたコウはレイに鋭い視線を向けてきていた。
「お前・・力を手に入れたのか・・・!?」
「そうよ。人間のままで、ガルヴォルスの力を手に入れた・・カズヤたちと交わることで、私は力をつかんだ・・」
コウの問いかけに、レイが微笑んで答える。
「もうあなたは、私に牙を立てることはできない・・私に逆らうことはできない・・・」
レイが言いかけて、体から淡い光を発する。彼女の言葉と考えが、コウの怒りを逆撫でする。
「そうまでして思い通りにしたいのか、貴様は・・・!?」
怒号を放つコウがダークガルヴォルスになる。しかしレイは笑みを消さない。
「前はあなたのその力に恐れていたこともあったけど、今は何も恐れるものがない・・・」
妖しく微笑んでいくレイにコウが飛びかかる。だがレイの光にコウがはじき飛ばされる。
「くっ・・・!」
うめくコウにレイがゆっくりと近づいてくる。
「この際に改めて覚えておくことになりそうね・・どれほどイヤでも受け入れないといけないこともあると・・・」
コウに囁くように言うと、全身から光を放出した。
次回
「もうこれ以上、誰かに振り回されるのはまっぴらだ・・」
「全てがオレを敵に回すことにしても・・」
「カズヤ・・・」
「オレはオレたちを守るためなら、何にでも・・・!」