ガルヴォルスRebirth 第17話「魔手」
カズヤとルナの前に現れたポイズンガルヴォルス、アキラ。2人の前にさらなるガルヴォルスが現れた。
「さっきはありがとうな・・・!」
「すごい力だ・・興奮が止まんない・・・!」
「どんどん湧き上がってくるみたいだぁ〜・・」
ガルヴォルスたちが自分自身の力に喜びを感じていく。
「この力、存分に試させてもらうぜ〜!」
「同じ姿になっているお前でな・・!」
ガルヴォルスたちがカズヤとルナに向かって飛びかかってきた。
「ルナ、下がってろ!」
カズヤがルナを引き離すと、向かってきたガルヴォルスに拳を叩き込んだ。拳を受けたガルヴォルスが昏倒して悶絶する。
「コ、コイツ・・とんでもない力を持ってる・・・!」
「オレたち、すごい力を手に入れたはずなのに・・・!?」
ガルヴォルスたちがカズヤの力にすぐに戦慄を覚える。
「そういうくだらない理由でオレたちに付きまとうな・・・!」
カズヤがガルヴォルスたちに鋭い視線を向ける。彼に睨まれてガルヴォルスたちが後ずさりする。
「そんなに怯えることはないぞ。お前たちも彼も同じなんだから・・」
アキラがガルヴォルスたちに悠然と声をかける。彼に言われてガルヴォルスたちが自信を取り戻していく。
「そうだ・・オレたちはやれるんだ・・・!」
「全員一斉にかかれば、アイツを何とかできるかもしれねぇ!」
ガルヴォルスたちがいきり立って、カズヤに再び飛びかかってきた。カズヤは素早く動いてガルヴォルスたちの突撃をかいくぐる。
「そうだ。人間ではなくガルヴォルスであることを自覚すればいい。そうするのが世界のためにもなる。」
「世界のため!?どういうことだ!?」
「世界は力も知能もあるガルヴォルスが動かすべきなのだ。無力で無能な人間どもの時代は終わっている。」
カズヤが口にする疑問に、アキラが悠然と語りかけていく。
「この情勢の中で、このような能力を持つ存在になれたのは、不幸中の幸いだった。オレはこの能力で人間をガルヴォルスに変える。そしてそれを機に彼らは己の愚かさに気付くことになる・・」
「だからって、みんなをガルヴォルスにしようっていうのか!?」
「それが世界のためになる。もちろん君たちのためにもなる。」
「勝手なことぬかすな!」
アキラに憤りをあらわにして、カズヤが衝撃波を放ってガルヴォルスたちを吹き飛ばす。
「やっぱりお前もレイと同じだ・・他のヤツをおもちゃみたいに扱って・・体だけじゃなく、心までバケモンだ!」
「心もバケモノ・・オレにとっては褒め言葉だ。」
激怒するカズヤだが、アキラは悠然とした態度を崩さない。
「もう、口で言っても分かんないっていうことだな!」
いきり立ったカズヤがアキラに向かっていく。その前にガルヴォルスたちが立ちふさがってきた。
「邪魔だ!」
カズヤが拳を振るって、ガルヴォルスたちを撃退していく。だが数に押されて、カズヤがついに押し倒される。
「カズヤ!」
ルナが悲鳴を上げる前で、ガルヴォルスたちがカズヤを地面に押し付けていく。
「塵も積もれば山となる。お前より劣る彼らだが、力を合わせれば何とかなる。」
もがくカズヤを見下ろして言いかけるアキラ。彼は視線をルナに向ける。
「あの子は人間か・・賢くて純粋そうだ・・」
「おい・・お前、何を・・!?」
笑みをこぼすアキラにカズヤが緊迫を強める。アキラがルナに向かってゆっくりと歩いていく。
「やばい・・ルナ、逃げろ!」
カズヤがルナに呼びかけて、ガルヴォルスたちを振り払おうとする。だがガルヴォルスたちの足を払いのけることができない。
「ガルヴォルスになれば、すばらしい存在になれるだろう。もしかしたら、彼以上の強さを持つことができるかも・・」
手を伸ばしてくるアキラから、ルナが逃げ出そうとする。
「カズヤ、ルナちゃん、逃げて!」
そこへキャットガルヴォルスとなったヒナタが飛び込んできた。ヒナタがアキラに蹴りを繰り出して引き離してから、ルナを抱えて離れる。
「ヒナタ・・・!」
ヒナタの登場に一瞬驚いたルナだが、すぐに我に返って駆け出していく。ヒナタはガルヴォルスたちを突き飛ばして、カズヤも助ける。
「ヒナタ、余計なことを・・・!」
「カズヤはルナちゃんのそばにいてあげて!ここは私が食い止めるから!」
いら立ちを見せるカズヤにヒナタが呼びかける。
「またバケモノが出てきたか・・おっと、オレたちも同じだった・・」
「おっ!どうやらコイツ、女みたいだぜ!」
「ちょっと痛めつけて人間の姿に戻してから、いろいろやっちまおうぜ〜・・!」
ガルヴォルスたちが狙いをヒナタに映してきた。
「向こうから私を狙ってくるんじゃ、こっちにとっても好都合ってことね・・・!」
迫ってきたガルヴォルスたちを迎え撃つヒナタ。彼女は素早い動きでガルヴォルスたちをかいくぐっていく。
「あの子の相手はあなたたちに任せた。オレは2人の相手をしてくる。」
「ち、ちょっとアンタ!」
カズヤとルナを追って歩いていくアキラに、ヒナタが怒鳴る。だがガルヴォルスに行く手を阻まれる。
「おめぇの相手はオレたちだぜ〜・・」
「どきなさい!邪魔をしないで!」
不気味な笑みを浮かべてくるガルヴォルスたちに、ヒナタが怒号を放つ。彼女は素早く飛び込んで、ガルヴォルスたちの合間をすり抜けた。
「おい!待て!」
ガルヴォルスたちが追いかけるが、ヒナタの速さに振り切られてしまった。
ヒナタに助けられて逃げ出したルナと、彼女を追いかけてきたカズヤ。ルナと人の姿に戻ったカズヤは、大通りで合流した。
「またおかしなヤツが出てきたな・・・!」
「ヒナタ、大丈夫かな・・・?」
アキラたちに対してため息をつくカズヤと、ヒナタの心配をするルナ。
「アイツもオレと同じなんだ。簡単にはやられたりしない・・」
「カズヤ・・うん、そうね・・・」
カズヤが口にした言葉に、ルナが微笑んで小さく頷いた。
「それよりも、このまま人込みに紛れたほうが・・そのほうがあの人たちも下手に手が出せないし・・」
「あぁ・・そうなればいいけど・・アイツらがそこまで慎重ならいいけど・・・」
ルナの提案に対して、カズヤが不安を感じていた。
「仕方ない・・このまま人込みの中に・・・!」
アキラたちの追跡を気にして、カズヤはルナと一緒に通りを進んでいった。
「コウ、レイ、そしてあのガルヴォルス・・厄介なのがどんどん出てくる・・・!」
「カズヤ、コウさんは別に・・・」
「分かってる・・けどコウは、何もかも憎んでる・・全部敵だと思い込んでいる・・オレもお前も・・・」
コウを気遣うルナだが、カズヤはコウの言動と暴走を深刻に考えていた。
「落ち着いたら店に戻ろう・・アイツらが前で居座ってるかもしれないから・・・」
カズヤが投げかけた言葉に、ルナが緊張を募らせながら頷いた。
アキラがカズヤと対面したことは、レイの耳にも入っていた。
「やはり興味を持ったようね、アキラは・・」
レイが微笑んで、アキラのことを考えていく。
「今の彼のやり方なら、カズヤくんに効果的かもしれないわね・・」
レイがカズヤのことも考えて、さらに笑みをこぼす。
「問題はやはりコウね・・アキラのやり方は、コウの心を逆撫でする・・」
レイがコウのことを気にして笑みを消す。
「3人がうまくかみ合って、争い合ってくれるといいけど・・・」
カズヤたちの潰し合いを願うレイ。彼女は千載一遇の好機を狙って、部下に指示を出した。
「監視と警戒を怠らないように。ただし深追いもしないこと。」
アキラが狙うカズヤとルナに追いつこうと、ヒナタも通りに出てきた。彼女は通りの人込みを目の当たりにして、焦りを感じていく。
(カズヤ、ルナちゃん・・こんなところにいるなんて・・・!)
見回すだけではとてもカズヤたちを見つけられないことを、ヒナタは痛感していた。
(こんなときでも、ガルヴォルスの力に頼るしかないなんてね・・)
ヒナタは人目のつかない裏路地に入ってから、キャットガルヴォルスになって、聴覚を研ぎ澄ます。しかし通りの人々や車の音が多すぎて、カズヤとルナの声と音を拾うことができない。
(集中しないとノイズにかき消されちゃう・・カズヤとルナちゃんの居場所を、早くつかまないと・・・!)
ヒナタが首を横に振ってから、集中力を高めていく。彼女はついにカズヤたちの居場所をつかんだ。
「いた・・お店に戻ろうとしている・・・!」
ヒナタも喫茶店のあるほうに振り向く。
「まだ近くにあのガルヴォルスたちがいるかもしれないのに・・・!」
またガルヴォルスたちと遭遇することを予感して、ヒナタは不安と焦りを感じていく。
「戻りながら、カズヤたちと合流しないと・・・!」
ヒナタはガルヴォルスの姿のまま、カズヤとルナを追って駆け出していった。
店に近づくにつれて、カズヤは慎重に進むようになっていく。彼はアキラたちガルヴォルスを警戒していた。
「カズヤ、どう・・・?」
「いそうな感じはしない・・力を抑えているかもしれないけど・・・」
ルナが声をかけると、カズヤが囁くように答える。2人はついに店の前の道に差し掛かろうとした。
「オレが様子を見てくる。オレが合図するまでここから出てくるな・・」
カズヤの呼びかけにルナが小さく頷く。カズヤはゆっくりと店の前の道に出ていく。
店に近づいていくカズヤ。彼は男たちの何人かがまだたむろしていた。
「もう、マジでしょうがないヤツらだ・・・!」
カズヤはため息をつくと、デーモンガルヴォルスになって男たちの前に出てきた。
「おっ!お前はさっきの!」
「さっさとここからどっかに行っちまえ!そうすりゃ穏便に済ませてやるよ!」
立ち上がった男たちに、カズヤが忠告を投げかける。
「もう逃がさねぇぞ・・!」
「徹底的に楽しませてもらうぜー!」
男たちはいきり立って、ガルヴォルスたちになって襲いかかってきた。
「言うことを聞けばいいっていうのに・・!」
カズヤが憤りを噛みしめて、ガルヴォルスたちに拳を叩き込む。ガルヴォルスたちが吐血して昏倒していく。
カズヤの強さを改めて目の当たりにして、残ったガルヴォルスたちが怯えて後ずさりしていた。
カズヤがガルヴォルスになって、男たちと戦っている音を、ルナも耳にしていた。
「カズヤ・・怪物たちを倒しているのかな・・・」
ルナが物陰からカズヤの様子をうかがおうとする。
「カズヤなら何とか・・」
「君も何とかしたいと思っているのかな?」
そのとき、背後から聞き覚えのある声を耳にして、ルナが緊迫を覚える。彼女の後ろにアキラが現れた。
「イヤアッ!」
ルナが悲鳴を上げて、道に飛び出してくる。彼女の声を耳にして、カズヤが振り返ってアキラを目撃する。
「ルナ!?・・アイツ!」
カズヤが怒りをあらわにして、ルナに迫るアキラに飛びかかる。彼に気付いたアキラが1度飛び上がってかいくぐる。
「かなり敏感のようだ、お前・・」
着地したアキラが、カズヤに振り向いて笑みをこぼす。
「いつまでもウロウロされるのは我慢ならない・・お前みたいなヤツは、ここで叩き潰してやる・・・!」
怒りをあらわにしたカズヤから紅いオーラがあふれ出してきた。
「ルナ、どいてろ!」
カズヤがルナに呼びかけて、アキラに飛びかかる。アキラはカズヤから遠ざかって、攻撃を回避していく。
「逃げるな!オレと戦え!ルナは関係ないだろうが!」
「正々堂々とか真っ向勝負とか、そういうのはオレのやり方じゃないのでな。」
怒鳴りかかるカズヤをアキラが鼻で笑う。彼のその態度がカズヤの感情を逆撫でする。
「今ここで、オレはお前を倒す!」
カズヤが両手に力を込めて、アキラに飛びかかる。アキラはカズヤとの距離を取って、攻撃をかいくぐっていく。
「お前・・どこまでも逃げ回って・・!」
カズヤがいら立ちながら、1度ルナのところに駆け寄ろうとした。
「うわっ!」
突然別のガルヴォルスが飛び出してきて、横からカズヤにつかみかかってきた。
「コイツ・・またアイツにガルヴォルスにされた・・・!」
カズヤがガルヴォルスたちを引き離そうとする。彼はそのガルヴォルスが、アキラによって転化させられたと痛感する。
「お前にはちょっとおとなしくしてもらおうかな。」
アキラがカズヤに微笑みかけると、ルナに向かっていく。
「君も疑問や不満を感じているのだろう?この愚かで身勝手な世界に・・」
「違う・・私は別に・・カズヤがいるから・・・!」
手を差し伸べてくるアキラから、ルナが遠ざかろうとする。
「ルナ、逃げろ!早く逃げろ!」
カズヤが呼びかけるが、ルナは徐々にアキラに詰め寄られていく。
「その願いや思いを遂げて貫き通すには、相応の力が必要になってくる。その力を、オレなら与えられる・・」
「そんなのいらない・・そんなものを手に入れても、何にも・・・!」
「君も強情だね。でも世界の愚かさを思い知れば、考えを変えることになる。そのときのために、オレが今ここで・・」
反抗を見せるルナに対してため息をつくと、アキラがポイズンガルヴォルスに変貌した。
「アイツ・・・いつまでもオレにまとわりつくな!」
アキラに憤って、カズヤがしがみついているガルヴォルスたちを強引に吹き飛ばした。ガルヴォルスたちが鮮血をまき散らして昏倒していく。
「お前、ルナから離れろ!」
「本当にしょうがないのだから、お前は・・」
怒鳴るカズヤに呆れ果てるアキラ。アキラは体から触手を伸ばして、カズヤを狙う。
カズヤは紙一重で触手をかわした。だが別の触手が伸びてきて、カズヤが足を引っかけられる。
「うわっ!」
体勢を崩されて倒れるカズヤ。彼を見て笑みをこぼすと、アキラがルナに視線を戻す。
「ちくしょう・・どこまでお前は・・・!」
必死になって立ち上がるカズヤ。アキラが伸ばしてきた触手をかわして、ルナが物陰に飛び込む。
(このままじゃ、私のためにカズヤが・・・!)
自分にもカズヤにとっても危機であると、ルナは痛感していた。彼女はアキラから逃げ出そうと必死になっていた。
そのとき、ルナが背中に違和感を覚えて目を見開いた。彼女の背中に触手が刺さっていた。
「えっ・・・!?」
この瞬間にルナは目を疑った。アキラの伸ばした触手が彼女に刺さっていた。
「ルナ・・・!?」
「君にも与えてやろう。世界を変えられる力を・・」
同じく目を疑うカズヤの前で、アキラがルナに微笑みかける。触手を通じてルナの中に毒が注がれていく。
「これで君も、新しいガルヴォルスへ・・・」
「お前!」
喜びを覚えるアキラに、カズヤの怒りが頂点に達した。カズヤは紅いオーラを放出しながら、力任せにアキラを殴り飛ばした。
「ルナ!」
倒れていくルナにカズヤが駆け寄っていく。
「ルナ!大丈夫か、ルナ!?」
カズヤに支えられるルナ。彼女は意識を失って動かなくなっていた。
次回
「オレはお前を絶対に許さない!」
「彼女も本当の自分を見出すことになる・・」
「お前もオレを陥れようというのか・・・!?」
「これ以上、カズヤを追い込まないで・・・!」