ガルヴォルスRebirth 第15話「信じたい・・・」
コウに迫られて、カズヤとコウは川に落ちて流されてしまった。カズヤが疲弊していたため、2人はすぐに川から出ることができなかった。
カズヤとルナが川から顔を出したのは、街からしばらく離れたところだった。
「ハァ・・ハァ・・早く出ないと・・・!」
カズヤは息を切らしながら、ルナを連れて川からはい出る。その先は海岸の岩場で、ところどころに洞窟の穴があった。
「とりあえずあそこに行くか・・・」
カズヤは仕方なく、ルナを連れてその洞窟の1つに入ることにした。洞窟は岩場ばかりで、1本道のトンネルとなっていた。
カズヤがルナと一緒に洞窟の穴の中で仰向けに倒れる。カズヤは大の字で大きく呼吸していた。
「ハァ・・ハァ・・ここで少し休むしかないのか・・・」
疲れのために思考が働かなくなって、カズヤは洞窟で休息を取ることにした。
「オレは・・・マジで何やってんだよ・・・」
ルナを邪険にせずに助けた自分に、カズヤは腹を立てていた。しかし今の自分を完全に拒絶することもできず、彼は苦悩を深めていた。
カズヤとルナを見失い、コウは怒りを募らせていた。彼は込み上げてくる自分自身の激情を抑えることができないでいた。
「どこへ行った・・どこだ、カズヤ!?」
絶叫を上げて体から紅いオーラと衝撃を巻き起こすコウ。オーラを抑えても、彼は込み上げてくる激情までは抑えられないでいた。
そんなコウの前に数人の兵士たちが現れて、銃を構えてきた。レイに従う兵士たちである。
「貴様のその力はあまりに危険だ・・・!」
「拘束できないのは惜しいが、ここで処分させてもらうぞ・・!」
兵士たちがコウに向けて言いかける。怒りを膨らませていたコウが、その矛先を兵士たちに向けていた。
「どこまでオレを振り回そうとすれば気が済むんだ・・お前たちは!?」
コウが怒号とともに紅いオーラを放出する。兵士たちのうちの数人がそのオーラを浴びた瞬間に、体が崩れて霧散していった。
「ヤツの力・・触れただけで滅ぼすことのできるほどの・・・!」
「撃て!すぐに始末せねば、我々に極めて危険だ!」
一気に危機感を膨らませた兵士たちが、コウに向かって発砲する。だがコウからあふれるオーラで弾丸がかき消される。
「オレは何にも振り回されない・・お前たちにも、アイツにも・・・!」
コウが声と力を振り絞って、兵士たちに飛びかかる。彼が横をすり抜けた直後、兵士たちが体を切り刻まれて事切れた。
「そう・・・オレは・・オレは・・・!」
怒りと憎しみだけでなく、やりきれない気分にも駆られたまま、コウはカズヤを追い求めて歩き出していった。
川からはい出て、洞窟の中で休息を取っていたカズヤ。しかし疲れ切っていた彼は、いつしか眠りについていた。
カズヤが熟睡している隣で、意識を失っていたルナが目を覚ました。
「私・・・ここは・・どこ・・・?」
ルナが体を起こして辺りを見回す。
「カズヤ・・カズヤ!」
ルナが声を上げてカズヤを呼び起こす。彼女に起こされて、カズヤが閉ざしていた目を開ける。
「カズヤ・・・よかった・・・」
「また寝ていたのか・・・ルナ・・・」
安堵の笑みをこぼすルナに、カズヤが当惑を覚える。
「オレがいつの間にか寝てて、その間にルナが目を覚ましたのか・・・」
状況を把握したカズヤだが、ルナに対して複雑な気分を感じていた。
「私、カズヤに助けられたってことで、いいんだよね・・・」
「出たらお前がついてきただけだ・・女を助けようなんて・・・」
感謝を見せるルナにカズヤが憮然とした態度を見せる。
「だけど・・何でか納得できなかった・・このまま見捨てるのができなかった・・見捨てる自分が許せなかったんだ・・」
「カズヤ・・それはきっと、カズヤの優しさだよ・・・」
感情を見せるカズヤを見て、ルナが優しく言いかける。
「もしも優しさがなかったら、助けようなんてことしない・・カズヤには優しさがある・・・」
「女のお前に言われても、全然嬉しくない・・・」
微笑みかけてくるルナに、カズヤが憮然とした態度を見せる。
「オレはもう、誰にも振り回されたくないんだ・・・」
「ヒナタのことで・・ヒナタに無理やりにされたから・・カズヤは女を拒絶して・・・」
「そうだよ・・オレはもう、絶対に強引に振り回されたくないんだ・・あのレイってヤツにも、ルナ、お前にも・・・」
「私は、そんなことしない・・そんなこと、誰にもしたくない・・・」
ルナが言いかけるが、カズヤは彼女の言葉を聞き入れない。彼にとってヒナタから受けた仕打ちは完全にトラウマとなっていた。
「だったら、私のことを好きにしたらいいよ・・・」
ルナが投げかけてきた言葉に、カズヤが眉をひそめる。
「私のことを、カズヤが納得できるようにすればいい・・カズヤが納得してくれるなら、私はどうなっても構わない・・・」
「何バカなこと言ってるんだよ・・そうやって自分が納得したいだけだろ・・」
微笑みかけるルナだが、カズヤは彼女の頼みを聞き入れようとせず、疑念を募らせる。
「そうかもしれない・・今の私が納得できるのは、カズヤが納得できることを見つけること・・カズヤにいつまでも、辛いことやイヤなものを抱えていってほしくない・・」
「だったらオレの前に現れるな・・そうすればオレは・・・!」
懇願を見せるルナに、カズヤが感情をあらわにする。するとルナが倒れて、大の字に仰向けになった。
「好きにしていいよ、カズヤ・・カズヤの気の済むように・・・」
「お前・・・!」
「私はどうなってもいい・・カズヤを助けるためなら、どうなっても・・・」
完全に身を預けてくるルナに、カズヤは困惑していく。
(どうしたらいいんだよ・・どうするのが、オレは納得できる・・・!?)
答えを見出せずに苦悩を深めていくカズヤ。仰向けになっているルナの姿が、彼の心をさらに揺さぶっていく。
「こんなことで・・オレは納得なんて!」
感情を爆発させたカズヤがルナにつかみかかった。カズヤが無理やりルナを抱き寄せる。
「カ・・カズヤ・・!?」
「そこまで言い張るなら・・あのとき、オレがどんな気分だったのか、味わってみろってんだ!」
動揺を見せるルナを抱きしめるカズヤ。激情に駆られたカズヤがルナに無理やり抱擁を迫る。
(これが、カズヤが昔・・ヒナタから受けた仕打ち・・そのときの、カズヤの気持ち・・・)
カズヤに弄ばれていくことで、ルナは彼の激情を実感していく。ルナは服を脱がされて、カズヤに体を触れられていく。
(無理やりやらされて、体を弄ばれて・・それじゃイヤになるはずだよ・・・!)
さらにカズヤに体を触られて、ルナが恥ずかしさを募らせていく。カズヤの手がルナの手足や胸、お尻を撫でていき、そして股下へと伸びた。
「カズヤ・・そこは・・・!?」
股下に触れられて、ルナが動揺を見せる。カズヤに秘所を触れられて、ルナが感じている恍惚が一気に膨らんだ。
「ダメ・・そこをいじくられたら・・・!」
あえぎ声を上げるルナだが、カズヤは接触をやめない。
「そう言い返しても、ヒナタはやめてくれなかった!今イヤだって思う気持ちが、あのときのオレの気持ちだ!」
「カズヤの・・気持ち・・・」
言い放つカズヤにルナが戸惑いを募らせていく。カズヤの激情を痛感して、ルナは自分の身に受け止めることを改めて決めた。
「いいよ、カズヤ・・私も、そうだと覚悟を決めていた・・・」
「ルナ・・どうしてそこまで・・・!?」
ルナの決心にカズヤが困惑を見せる。
「カズヤのために何とかしたいっていう私のわがまま・・カズヤはカズヤの思うようにするのがいい・・カズヤが望む形を、選べばいいと思う・・・」
「オレが、望む形・・・」
微笑みかけてくるルナのこの言葉に、カズヤの心が大きく揺さぶられた。彼の目からうっすらと涙が流れ落ちてきた。
「オレに何もなっていうのに・・お前にはイヤなことしかないっていうのに・・・バカだよ・・マジ、バカ・・・!」
「うん・・本当に馬鹿げてる・・私も、あなたを苦しめている何もかも・・・」
体を震わせるカズヤを前にして、ルナも笑みを浮かべたまま涙を見せる。カズヤはルナを抱き寄せて、2人が口づけを交わした。
(どういうことなんだ・・何も、イヤな気分を感じない・・むしろ落ち着いてくる・・・)
カズヤがルナとの接触に戸惑いを覚える。
(今まで女にはイヤな気分しか感じなかったのに・・少なくても今は、ルナもイヤな気分を感じているはずなのに・・・)
ルナは快楽の中で安心も感じていて、自分も不快感が弱くなっていることに、カズヤは不思議な気分を感じていた。
(すがりたい・・この気分にすがりたくなってきた・・そうしないと、今度こそイヤになってきて、どうかなってしまう・・・)
込み上げてくる感情に促されるように、カズヤがルナのぬくもりを確かめていく。その抱擁にルナも心地よさを感じていた。
(カズヤ・・今は怖くない・・イヤにならない・・逆に気分がよくなってくる・・・)
ルナもカズヤにすがらないとたまらなくなってきていた。
(私はカズヤを受け入れる・・カズヤを受け入れたい・・受け止めたい・・・!)
ルナもカズヤへの想いを募らせていく。2人はすがりつくように抱きしめ合って、互いの肌に触れ合った。
カズヤとルナが洞窟に入り込んでから一夜が明けた。2人は疲れ果てて、抱擁したまま眠りについていた。
「また、寝てしまった・・カズヤと一緒にやって・・それで気分がよくなってきて・・・」
ルナが記憶を巡らせて、カズヤを見つめて戸惑いを感じていく。
(私、カズヤに信じてもらえるようになったのかな・・・)
カズヤへの想いにルナの心が揺れる。するとカズヤも目を覚まして、体を起こしてきた。
「ルナ・・先に目が覚めたのか・・」
「ちょっとだけだよ、早かったのは・・いつの間にか眠っちゃったみたい・・」
カズヤが声をかけると、ルナが微笑んで答える。
「オレ・・女であるお前に、すっかり心を許してしまった・・むしろ、一緒にいる方が安心できるっていうか・・・」
「カズヤ・・・ありがとう・・本当にありがとう・・・」
微笑みかけてきたカズヤに、ルナが戸惑いを感じて感謝を覚える。
「オレは、オレが納得したかっただけだ・・別にお礼なんて・・・」
「それでも、私はカズヤに感謝している・・私のわがままって言ったらそれまでだけど・・・」
「ルナ・・お前もお前で・・・」
苦笑いを見せるルナに、カズヤが呆れてため息をつく。
「カズヤ・・これからどうするつもりなの・・・?」
「分からない・・とりあえず店に戻る・・そっちのほうがここよりは落ち着くから・・・」
ルナが問いかけると、カズヤが気分を落ち着かせようとしながら答える。
「うん・・そうだね・・私もあそこのほうが・・」
ルナが頷いて、脱いでいた服を着ていく。
「目的地は同じだ・・一緒に戻るか・・」
「カズヤ・・うん。」
カズヤに気さくに声をかけられて、ルナは感動を感じながら、微笑んで頷いた。
服を着て洞窟から出たカズヤとルナ。外は朝日が昇っていて、2人が一瞬まぶしさを覚えた。
「すっかり日が昇ってるな・・」
カズヤは呟いてから、ルナと一緒に洞窟を後にした。
そのとき、カズヤは突然強い気配を感じて足を止めた。
「カズヤ・・・?」
緊張を見せるカズヤに、ルナが声をかける。
「この感じ・・アイツ・・・!」
カズヤが呟いて岩場の上に目を向ける。岩場の上にはコウが立っていた。
「コウ、さん・・・!」
コウを目にしてルナも緊張を覚える。2人ともコウの様子がおかしいことを悟っていた。
「オレは敵を倒す・・お前も・・・!」
「コウ、待て・・オレは別に・・・!」
敵意をむき出しにするコウに、カズヤが呼びかける。コウはカズヤの声に耳に傾けず、ダークガルヴォルスに変貌した。
「おい!こっちの話を聞けって!オレはお前とやるつもりは・・!」
「黙れ!オレを脅かすものは全て敵だ!」
カズヤの呼びかけをはねつけて、コウが飛びかかる。
「離れてろ!」
カズヤはルナを横に引き離すと、デーモンガルヴォルスになってコウの突撃を受け止める。
「カズヤ!」
ルナが叫ぶ前で、カズヤがコウに押されて、岩場の壁に叩きつけられる。
「おい・・オレもお前も、レイのことが気に入らないんだろ・・だったらオレたちで争ってる場合じゃないって!」
「お前もオレに敵意を向けてきた敵・・お前もオレの敵だ!」
怒鳴りかかるカズヤにコウが怒りを強めていく。コウに押し切られて、カズヤが突き飛ばされる。
「くっ・・口で言っても分かんないとでも言いたいのかよ!」
感情をあらわにしたカズヤが、剣を具現化して手にする。
「ついに本性を現したか・・・!」
「お前が強引だからだろうが!」
目つきを鋭くするコウに言い返して、カズヤが剣を振りかざす。コウは上に飛び上がって剣をかわす。
コウはそのまま落下して、カズヤの頭を手でつかんできた。
「ぐっ!」
コウに地面に顔を押し付けられるカズヤ。とっさに剣を突き出すカズヤだが、コウが発した紅いオーラにはじき飛ばされてしまう。
カズヤがコウに体を強く踏みつけられる。
「ぐあぁっ!」
体に激痛が走って、カズヤが絶叫を上げる。
「カズヤ!」
ルナがたまらずカズヤとコウに駆け寄ろうとする。気付いたコウが彼女に振り返る。
「やめて!カズヤは何もするつもりなんてなかったのに!」
「オレを脅かすものは全て敵だ・・邪魔をするなら、お前も・・!」
呼びかけるルナにも、コウが憎悪を傾ける。
「ルナ、逃げろ!人間のお前じゃ、すぐに殺されちまうぞ!」
カズヤが声を張り上げるが、ルナはコウから逃げようとしない。
「オレは生きる・・生き残るために、オレは全ての敵を!」
コウが怒号とともに全身から衝撃波を放つ。
「うわっ!」
衝撃に押されて岩の壁に叩きつけられるルナ。痛みを感じながら彼女は倒れる。
「ルナ!」
声を上げるカズヤだが、コウに踏みつけられた痛みで起き上がることができない。
ルナを冷たい目つきで見下ろすコウ。するとルナが起き上がろうとしてきた。
「死にたくない・・死なせたくない・・・!」
声と力を振り絞るルナ。しかし激痛に打ちひしがれて、彼女は立ち上がることができない。
「ルナ、逃げろ・・死にたいのかよ・・!?」
「死にたくない・・でも、カズヤを見殺しにすることもできない・・・!」
呼びかけるカズヤだが、それでもルナは逃げようとしない。
「お前も・・そこまでオレを・・・!」
怒りをさらに膨らませて、コウがルナに拳を繰り出そうとする。
次の瞬間、ルナの姿がコウの眼前から消えた。
「何っ!?」
突然のことに驚愕するコウ。彼はルナを探して辺りを見回す。
そのとき、コウは気配を感じ取って顔をこわばらせる。彼が見上げた先に、カズヤとルナはいた。
カズヤの体からは紅いオーラがあふれ出していた。しかしオーラはルナを傷つけてはいなかった。
次回
「もっとだ・・もっと増やさないと・・」
「カズヤはこれからも、カズヤの思った通りにしていけばいいよ・・」
「いたいた・・」
「世界は人間なんかじゃなく、ガルヴォルスが動かしていけばいいんだよ・・」