ガルヴォルスRebirth 第14話「魔の衝突」
カズヤとルナを連れて行こうと迫るレイ。そのとき、眠っていたカズヤがデーモンガルヴォルスとなり、さらにオーラをあふれさせてきた。
「これ以上・・オレに近づくな!」
カズヤが叫びとともにオーラを放出する。その衝撃でルナが吹き飛ばされ、レイが身構えて踏みとどまる。
「構わないわ!撃ちなさい!」
レイはカズヤから離れて、兵士たちに指示を出す。兵士たちがカズヤに向けて発砲する。
だが放たれた弾丸はカズヤからあふれるオーラにかき消される。
「め、命中しない・・!?」
「これでは、麻酔銃などを使っても、当たらなければ意味がない・・・!」
兵士たちがカズヤに対して危機感を募らせる。
「お前たち・・しつこいんだよ!」
カズヤが怒りを込めて、右の拳を地面に叩きつける。その衝撃で兵士たちが吹き飛ばされる。
「くっ・・・!」
うめく兵士の1人にカズヤが近づく。カズヤは兵士から銃を奪い取って、力を込めてへし折った。
「オレにこれ以上構うな・・それとも、コレみたいになったほうがいいのか・・・!?」
カズヤから鋭い視線を向けられて、兵士が恐怖を覚える。
「やめて・・やめてくれ!」
兵士が悲鳴をあげて逃げ出していく。カズヤはその兵士を追おうとはせず、レイや他の兵士たちに目を向ける。
「お前たちも、オレを追い込むのか・・・!?」
「確実に暴走しているわね、カズヤくん。」
敵意を向けるカズヤを前にしても、レイは微笑を消さない。
「ダメだ・・こんなの、敵わない・・・!」
「本物の・・本物のバケモノだ・・・!」
他の兵士たちもカズヤたちに畏怖して、銃を撃つことができない。
「こうなってしまっては、もう引き下がるしかないのかしらね・・・」
笑みを消したレイが、兵士たちとともに引き下がろうとする。するとカズヤがレイたちに迫る。
「やめて!」
そのとき、ルナが飛び出してきてカズヤを呼び止めてきた。
「お願い、カズヤ!もうやめて!」
ルナがカズヤの前に立ちはだかる。レイたちを守ろうとしているのではなく、純粋にカズヤを止めたいと思っていた。
「やめろ・・オレを、追い込むな・・・!」
ところがカズヤはそんなルナにも敵意を向けてきた。彼の鋭い目つきと殺気に、ルナが畏怖を痛感する。
「カズヤくん、ルナさんのことも分からなくなっている・・」
レイがカズヤの状態を見て呟きかける。
「もう完全に心を失ってしまっているようね。これではもう本物の怪物ね。」
心まで人でないと悟って、レイは引き下がる。兵士たちも身構えたまま、カズヤから離れていった。
「もう2度と出てくるな・・でないと、今度こそオレは・・・!」
レイたちに吐き捨てて、カズヤがルナに視線を戻す。ルナはカズヤに対して困惑を募らせていく。
そのとき、カズヤが突然苦悩を覚えて顔を歪める。同時に彼から出ていたオーラが揺らぎだした。
「カズヤ!?」
カズヤの異変にルナが声を上げる。カズヤが膝をついて苦しみを浮かべていく。
「カズヤ、落ち着いて!カズヤの心を失くさないで!」
ルナがカズヤに近づこうとする。だがカズヤからあふれているオーラのために、熱さを感じてしまう。
「熱い!・・これが、カズヤの力・・カズヤ自身でも抑えられないでいる力・・・!」
熱さを感じている右手を押さえて、ルナが緊張を膨らませる。下手をしたら体を焼かれてしまうかもしれないと、彼女は痛感していた。
「カズヤ、もう大丈夫だから!カズヤを追い込む人なんて誰もいない!何もないから!」
頭を抱えて苦悩を見せるカズヤに、ルナが声を張り上げて呼びかける。カズヤは呼吸を乱して、徐々に力とオーラを弱めていく。
「オレは・・オレは、誰にも追い込まれない・・・!?」
カズヤが呟きかけて目を見開く。彼の目と姿を見て、ルナはたまらなくなる。
「カズヤ!」
ルナが再びカズヤに飛びつく。彼女はオーラで体を傷つけられるかもしれないのを顧みずに、カズヤを抱きしめた。
「カズヤ、お願い!目を覚まして!」
ルナがカズヤに向かって呼びかける。彼女の声に呼応するように、カズヤが脱力していく。
「オレは・・・オレは・・・」
「カズヤ・・よかった・・・ハァ・・・」
当惑を見せるカズヤに、ルナが安堵を見せる。緊張の糸が切れて、彼女もその場に座り込んでしまう。
「ルナ・・・?」
「心配していたんだよ、カズヤ・・もうカズヤが元に戻らないんじゃないかって・・・」
疑問符を浮かべるカズヤに、ルナが涙ながらに言いかける。そこでカズヤはルナの傷だらけの両腕を目の当たりにする。
「その傷・・まさか、オレが・・・!?」
「ううん・・カズヤは悪くない・・何も悪くない・・・!」
目を見開くカズヤにルナが答える。
(ルナ・・そこまで、オレのことを・・・)
カズヤがルナに対して戸惑いを感じる。彼にはルナの純粋な想いが伝わっていた。
「カズヤ・・お店に戻ろう・・休もう・・」
「あぁ・・そうだな・・あそこのほうが落ち着く・・・」
ルナの言葉にカズヤが頷く。2人が喫茶店に戻ろうとした。
そのとき、カズヤが気配を感じ取って足を止める。
「どうしたの、カズヤ・・・?」
カズヤの様子を気にしてルナが声をかける。ところが緊張を浮かべているカズヤは、彼女の問いかけに答えようとしない。
「いたぞ・・佐久間カズヤ・・・!」
カズヤとルナの前にコウが現れた。
「コウ・・・!?」
「コウさん・・・」
コウの登場にカズヤが息をのみ、ルナが戸惑いを見せる。
「今度こそ・・今度こそお前を!」
いきり立ったコウの頬に異様な紋様が浮かび上がる。彼がダークガルヴォルスとなって、カズヤたちの前に立ちはだかる。
「待って!今のカズヤは・・!」
「邪魔だ・・どけ・・・!」
ルナが呼び止めようとするが、コウに鋭い視線を向けられて言葉を詰まらせてしまう。
「どいてろ、ルナ・・オレが目当てなんだろ、アンタ・・・」
カズヤがルナを引き離して、コウに言いかける。
「オレはこのまま・・このまま倒れるつもりはない!」
叫んで飛びかかるコウ。カズヤがデーモンガルヴォルスになるが、コウの突撃に突き飛ばされてしまう。
(こ、この力・・今までのコウ以上だ・・・!)
コウの力に脅威を覚えるカズヤ。ルナはコウの発揮している力が、暴走したカズヤを彷彿とさせていると感じていた。
(コウさんも・・暴走・・カズヤと同じように・・・!?)
愕然となるルナの前で、コウは体から紅いオーラをあふれさせていた。
「お前も出せ・・この力を・・・!」
「この力・・・!?」
コウが口にした言葉に、カズヤが疑問符を浮かべる。彼は自分が暴走しているときの力を知らなかった。
「あのお前を倒さなければ、意味がない・・だから早く出せ!」
コウが言い放ち、全身からオーラを放出する。
「ぐ、ぐあっ!」
カズヤがオーラを当てられて、体に傷をつけられて鮮血をあふれさせる。彼は苦痛を感じながら昏倒する。
「早くしろ・・それとも、そうまでしてオレを怒らせたいのか・・・!」
コウがカズヤに憎悪を傾ける。コウが振り上げた足がカズヤに叩き込まれた。
「がはっ!」
「カズヤ!」
吐血するカズヤにルナが悲鳴を上げる。うずくまって動けないカズヤを、コウが強く踏みつける。
「このまま死ぬつもりか・・死にたくないんじゃなかったのか・・・!?」
コウがカズヤに力を出すように促す。彼の足がカズヤをさらに押さえ込む。
(オレが死ぬ・・オレが一方的に押し込まれる・・・!?)
カズヤの脳裏に死の直感と同時に、過去の記憶がよみがえってくる。ヒナタから受けた仕打ちと、その絶望を。
(死にたくない・・オレは死にたくない!)
そのとき、コウの体から紅いオーラがあふれ出してきた。
「ぐっ!」
カズヤから放たれた衝撃で、コウが吹き飛ばされる。カズヤの姿が刺々しいものへと変わっていた。
「カズヤ!?」
ルナが絶望感に襲われる。彼女はカズヤが暴走してしまったと痛感した。
「オレを追い込むな・・オレは死にたくない・・・!」
カズヤが拳を握りしめて、コウに鋭い視線を向ける。
「やっと出してきたか・・そのお前を叩き潰すことで、オレは何物にも縛られなくなる・・・!」
コウが笑みを浮かべて全身に力を込める。2人が紅いオーラをあふれさせて、敵意を向け合う。
(いけない・・このままじゃカズヤが・・2人とも・・・!)
ルナは最悪の事態だと思い、不安を膨らませていく。
「オレを追い詰めるものには容赦しない・・2度と手を出させないように、徹底的に叩き潰す!」
「オレは潰されない!逆に叩きつぶして、オレは束縛から抜け出す!」
カズヤとコウが叫び合って飛びかかる。2人が拳を繰り出してぶつけ合うと、爆発のような衝撃を巻き起こす。
「キャッ!」
その衝撃にあおられて倒れるルナ。ぶつけ合った拳に痛みを覚えて、カズヤとコウが顔を歪める。
「くっ・・これが、この力と力のぶつかり合い・・衝突したことで、これだけの反動が・・・!」
自分たちの力の高まりと衝突がどれほどのものなのかを痛感する。
「それでも・・オレは倒れるつもりはない!」
コウはいきり立ってカズヤに向かっていく。カズヤが反射的に反撃して拳を繰り出す。
カズヤとコウが繰り出した拳が、互いの体に命中する。2人の受けるダメージも痛みもまた格段に跳ね上がってた。
「オレは死なない・・死んでたまるか!」
コウが声と力を振り絞って、カズヤと拳を交えていった。
カズヤとコウの暴走と対立を、レイも遠くから見届けていた。
「2人ともこのような事態になるとはね・・正直驚いたわ。恐怖も感じている・・」
2人の攻防と力に対して、レイは微笑を保ったまま呟く。
「近づいたら火傷では済まない・・誰にも、あの2人を止めることはできない・・」
すぐに手を出すことをためらうレイ。彼女は2人の対決に終止符が打たれるのを待つことにした。
「監視状態のまま待機。今の2人に近づくと命はないわ。」
高まる力を暴走させてぶつけ合うカズヤとコウ。2人は自分の体が傷つくことを全く気に留めていなかった。
「やめて・・・」
ルナが2人の姿を目の当たりにして、絶望感に襲われていく。
「ダメ・・このままじゃ間違いなく死んでしまう・・・!」
カズヤの身を案じて、彼女はいてもたってもいられなくなる。カズヤとコウが手に力を込めて向かっていく。
「カズヤ、やめて!」
ルナがカズヤを止めようと飛び出して叫ぶ。次の瞬間、カズヤが突然動きを止めた。
次の瞬間、攻撃の手を止めたカズヤにコウの拳が叩き込まれた。ほとんど無防備になっていたカズヤが、大きく突き飛ばされる。
「カズヤ!」
激しく横転したカズヤにルナが駆け寄る。痛烈な一撃を受けたカズヤが、ガルヴォルスから人の姿に戻る。
「カズヤ、しっかりして!カズヤ!」
ルナが呼びかけるが、カズヤはうめくだけで答えない。その2人にコウが近づいてくる。
「余計な口を挟むな・・せっかくコイツに打ち勝てると思ったのに・・・!」
「いい加減にして・・こんなことをして、傷つけ合って、何になるというの・・・!?」
苛立ちを噛みしめるコウに、ルナが怒りをあらわにしてきた。
「あなたたちが憎まないといけないのはお互いじゃない・・あなたたちを利用しようとしてくる人たち・・たとえば、あのレイって人たち・・・!」
「アイツももちろんそうだ・・だが今オレが打ち倒さなければならないのはコイツなのだ・・・!」
「どうして・・カズヤが何をしたの!?カズヤは高まる力に振り回されただけなのに・・・!」
「だからオレがどうかなっても恨むなと?・・・そんな世迷言を聞き入れるつもりはない!」
問い詰めるルナだが、コウは聞こうとしない。
「オレはコイツを倒す・・邪魔をするなら、お前も・・・!」
コウがルナにも手をかけようとしてきた。
「カズヤ・・・!」
ルナがたまらずカズヤを抱えて、コウから逃げ出していく。
「逃げるな!」
コウが怒りを膨らませて2人を追う。
「ルナちゃん!」
そこへヒナタが飛び込んできて、コウを横から突き飛ばしてきた。
「ヒナタ!?」
「ルナちゃん、カズヤ!・・よかったぁ、追いついた〜・・」
驚きの声を上げるルナに、ヒナタが安堵を見せる。
「あの兵士たちは何とか振り切ってきた・・振り切ったっていうより、向こうが追ってこなくなったって感じだったけど・・」
「ヒナタ・・またカズヤが暴走して、コウさんと、今の人も暴走して・・・!」
互いに事情を話すルナとヒナタ。そのとき、倒されていたコウが立ち上がって、2人に鋭い視線を向けてきた。
「また邪魔者が・・オレを陥れるな!」
激高したコウが全身から紅いオーラを放出する。紅いオーラにあおられるも、ルナとヒナタが踏みとどまる。
「ルナちゃん、カズヤを連れて逃げて!」
「ヒナタ、でも・・!」
呼びかけるヒナタもルナが声を上げる。
「早く逃げて、ルナちゃん!カズヤを助けて!」
ヒナタがルナに向けて悲痛の叫びを投げかける。彼女の思いを受け止めて、ルナはカズヤを連れて離れることしかできなくなった。
「ルナちゃん・・カズヤ・・・アンタを、これ以上行かせない!」
「オレの・・オレの邪魔をするな!」
立ちはだかるヒナタに怒号を放つコウ。彼が突っ込んで、ヒナタの体の拳を叩き込んだ。
「うっ!」
重みのある一撃を体に受けてうめくヒナタ。口から血をあふれさせて、彼女が昏倒した。
「逃がさない・・絶対にオレの手で!」
コウがカズヤとルナを追って駆け出していった。
(ルナちゃん・・カズヤ・・・逃げて・・・)
2人への思いを抱えたまま、ヒナタは激しい苦痛に襲われて意識を失った。彼女は同時に人の姿に戻っていった。
ヒナタに言われて、ルナはカズヤを連れて必死に逃げていた。彼女はひたすら喫茶店を目指していた。
(お店に行ければ、何とか隠れられる・・カズヤを休ませる時間を作れる・・・!)
カズヤのためにひたすら急ぐルナ。
そのとき、カズヤとルナの前にコウが飛び込んできた。
「コウさん!?」
「逃がさないぞ・・お前たち・・・!」
緊迫を募らせるルナに、コウが鋭い視線を向ける。
「コウさん・・ヒナタは・・ヒナタはどうしたの!?」
「誰にも邪魔はさせない・・オレは、オレを利用するものを全て叩き潰す!」
ルナの問い詰めに答えず、コウが2人に向かって拳を繰り出す。
「くっ・・!」
そのとき、カズヤが力を振り絞って、ルナを抱えて駆け出した。だがコウの繰り出した拳の圧力に襲われて、2人が突き飛ばされる。
カズヤとルナはその先の川に落ちてしまう。コウが川に駆け寄って目を凝らすが、2人を見失ってしまった。
「出てこい・・出てこい!」
怒りのやり場さえも見失ってしまう、コウが怒号を上げる。彼があふれさせるオーラで周囲が揺れていた。
次回
「死にたくない・・死なせたくない・・・!」
「カズヤを助けるためなら、どうなっても・・・」
「カズヤが望む形を、選べばいいと思う・・・」
「オレが、望む形・・・」