ガルヴォルスRebirth 第11話「逃亡」
カズヤだけでなくルナも取り囲んできたレイと兵士たち。銃口を向けてくる兵士たちにカズヤが憤りを募らせ、ルナが困惑を感じていた。
「安心して。悪いようにはしない。ただ彼女の記憶を消すだけよ。あなたたちの正体や私たちのことをね。」
「それで自分たちの思い通りなのかよ・・・!?」
淡々と言いかけるレイだが、カズヤの感情を逆撫でするばかりだった。
「やっぱりお前は許せない・・女だからでも、自分勝手なヤツだからでも!」
怒りを爆発させたカズヤの頬に紋様が走る。彼がデーモンガルヴォルスになって、レイと兵士たちに敵意を向ける。
「殺すつもりになったの?いくらガルヴォルスでも、殺せば殺人よ。」
「みんなに秘密にして、自分たちの都合で平気で銃をぶっ放すお前たちが言えたセリフかよ!」
微笑みかけてくるレイに、カズヤが怒号を放つ。彼が右手を大きく振り上げた瞬間、兵士たちが銃を発砲してきた。
「カズヤ!」
この瞬間にたまらず悲鳴を上げるルナ。だがカズヤは全身から衝撃波を放って、向かってきた弾丸を全て粉々に粉砕した。
カズヤがその直後に、振り上げていた右手を振り下ろして、地面を強く叩いた。その衝撃でレイと兵士たちが揺さぶられる。
その隙にカズヤがレイたちから逃げ出そうとした。彼はルナを目にすると、いら立ちを覚えて舌打ちをする。
「来い!」
「カズヤ!?」
カズヤが動揺を見せるルナを抱えて、レイたちから逃げ出していく。
「追うわよ。2人をあのまま野放しにするわけにいかないわ。」
「了解!」
レイの指示を受けて、兵士たちがカズヤとルナを追う。レイもすぐに車に乗って、2人を追っていった。
襲撃を仕掛けてきたレイたちから逃げていくカズヤ。ルナは自分を連れて逃げてくれた彼に戸惑いを感じていた。
「どうして、私を・・・カズヤは、女である私のことなんて・・・」
「どうしてかなんて分かんないよ!ただ納得できないと思っただけだ!」
声をかけるルナにカズヤが怒鳴るように言い返す。
「ハッキリしてるのは、レイたちのやり方は許せないってことだ・・アイツらは自分たちの目的のために、オレや無関係なみんなまで・・!」
「カズヤ・・・」
「そうだ・・アイツらはみんなをモルモットみたいにしているんだ・・・!」
戸惑いを見せるルナの前で、カズヤはレイたちへの怒りを噛みしめていく。
「オレはアイツらの思い通りにはならない・・他のヤツがどうかされるのも我慢ならない・・今度こそ容赦なく・・!」
カズヤが怒りの言葉を噛みしめていたときだった。兵士たちが回り込んで、再びカズヤとルナに銃口を向けてきた。
「お前たちの動向は把握済みだ。」
「逃げてもムダだ。おとなしく我々についてきてもらおう。」
兵士たちが銃口を向けて忠告を送る。だがカズヤは聞き入れようとしない。
「そんなのでオレがおとなしくすると思ってるのかよ・・・!?」
「お前に銃が効かなくても、そこの女はどうかな?ガルヴォルスでなく、普通の人間だぞ。」
「お前・・それでも人間かよ・・・!」
「ガルヴォルスのお前と比べれば火を見るより明らかなこと。」
平然と言葉を投げかける兵士たちに、カズヤが憤りを募らせていく。
「叩きのめされないと分かんないってことなのかよ・・・!」
カズヤが拳を握りしめて、兵士たちに殴りかかろうとした。
「ぐあっ!」
その前に兵士の1人が苦痛を覚えて倒れた。その背後にいたのは、ダークガルヴォルスとなったコウだった。
「お前・・・!」
「お前たちを野放しにはしない・・ここで叩き潰す・・・!」
声を荒げるカズヤの前で、コウが兵士たちに敵意を見せる。
「コイツ・・!」
「くそっ!撃て!連射しろ!」
兵士たちが即座にコウに発砲した。コウは弾丸を素早くかわして、兵士たちを殴り飛ばしていく。
「おい、待て・・!」
カズヤが呼び止めるが、コウは攻撃の手を止めず、兵士たちを執拗に攻め立てる。そしてついに、コウの手が兵士の1人の首をへし折り、息の根を止めた。
「おい!何やってるんだよ!?」
カズヤがたまりかねて、コウに近づいていく。
「やめろ!コイツらでも人間なんだぞ!」
「だからどうした?人間だから愚かさが許されると思っているのか・・!?」
怒鳴るカズヤにもコウが鋭い視線を向けてくる。
「オレはそのつもりはないが、お前はその女を助けようとしている。本意か不本意かも分からないがな。」
「でもだからって殺すことはないじゃないか!勝手な連中だが、一応は人間なんだ・・!」
「殺したくないために、弄ばれても構わないとでもいうのか・・!?」
声を振り絞るカズヤだが、コウに言われたことに言葉を詰まらせる。
「お前やその女が殺されるか、生き残るためにヤツらを根絶やしにするか。選択肢はそのどちらかしかない・・」
「違う・・それ以外にも・・・!」
コウに言い返して、カズヤがルナに振り返る。
「オレもルナも生き残って、アイツらも殺さずに叩きのめすだけだ!」
「そんなことはありえない・・殺さなければ自分が殺される・・オレはそれを理解している・・・!」
「オレが納得するためだ!そのためにオレは殺さずに生き残る!」
頑なな意思を示すコウに、カズヤも自分の意思を言い放つ。
「まさかあなたまで出て来たとはね、コウ。」
カズヤたちに追いついてきたレイが、コウに目を向けて声をかけてきた。
「コウって・・お前、コウなのか・・・!?」
カズヤがコウに驚愕を覚える。彼がたまらずガルヴォルスから人の姿に戻った。
「お前は・・!?」
コウも驚きを覚えて、人の姿に戻る。互いの正体を目の当たりにして、カズヤとコウが驚愕を隠せなくなった。
「お前もガルヴォルスだったのか・・・!?」
「コウ・・お前があのガルヴォルス・・・!?」
コウが敵意を強めて、カズヤが息をのむ。
「お前も、オレの敵だったのか・・・!?」
「違う!オレは無闇に戦うつもりはない!」
鋭い視線を向けるコウに、カズヤが声を振り絞って呼びかける。
「今オレたちが怒りをぶつける相手は同じはずだ・・・!」
カズヤが投げかけたこの言葉を受けて、コウが目つきを鋭くする。2人が視線をレイに向ける。
「確かに、ヤツもオレの敵だ・・だが敵なのはオレ以外の全てだ・・!」
「どこまでも自分勝手な理屈だな・・」
全てに敵対しようとするコウに、カズヤが肩を落とす。
「でもいいや・・今オレが1番腹が立ってるのは、アイツなんだから・・・!」
カズヤが言いかけて、コウと同時に鋭い視線を向ける。
「まさかそんなことで、一時的とはいえ手を組むとはね。」
「お前がオレたちを弄ぼうとしているからだろうが・・!」
微笑みかけるレイに、コウが怒りの言葉をぶつける。
「これはあなたたちのためでもあるのよ。私たちの言葉を聞いてくれるなら、決して悪いようにはしないから。」
「その言葉で騙されないことを、お前は理解できないのか!?」
微笑んだままのレイにコウが殴りかかる。その瞬間にレイが車を走らせた。
「逃げるな!お前はそうやって安全なところに逃げ隠れする卑怯者だ!」
「生き残るためなら手段を選ばない。それはあなたも同じでしょう?」
憤りを募らせるコウに言いかけて、レイは走り去っていった。追いかけようとしたコウの前に、兵士たちが立ちふさがって銃を構えてきた。
「邪魔だ!」
コウが放たれる弾丸を押しのけて、兵士たちを殴り飛ばす。
「コウ、やめろ!」
コウを止めに入ろうとするカズヤだが、自分とルナにも銃口を向けてくる兵士たちに気付いて足を止める。
「ちくしょう!」
カズヤはルナを抱えてこの場を離れた。兵士たちが即座に発砲するが、カズヤはかいくぐっていった。
カズヤとルナの狙撃を諦めた兵士たちだが、怒りに任せて攻撃をしてきたコウに襲われる。
「オレはお前たちとは違う・・敵を殺すことをためらうことはない・・・」
コウがカズヤのことを考えて、レイたちへの憎悪と殺意を募らせていく。
「これ以上逃がしてたまるか・・いつまでもいい気になれると思うな・・・!」
レイたちへの憎悪を高まらせて、コウが絶叫を上げた。
兵士たちの追撃を切り抜けて、カズヤはルナとともに街のそばに来ていた。人の姿に戻っていたカズヤは、足を止めて回復を図っていた。
「カズヤ・・大丈夫・・・?」
「オレは平気だ・・このぐらいで傷ついたりしない・・・」
ルナが問いかけると、カズヤが不満げに答える。
「あの人も・・コウさんも怪物だったなんて・・・」
「オレも信じられない・・・あのガルヴォルス、何もかも敵だと思っていたけど・・それがコウだったなんて・・・」
ルナもカズヤもコウがダークガルヴォルスだったことに愕然となっていた。
「何がどうなっているの!?・・カズヤもヒナタも、どうなっているの・・・!?」
ルナが困惑したまま、カズヤに問い詰めてきた。
「他にも怪物がいるの!?・・もしかして、怪物がどこかで誰かを・・・!?」
「違う・・オレは自分勝手に人を襲うバケモノとは違う!」
カズヤがルナに感情をあらわにして怒号を放つ。彼の怒りを目の当たりにして、ルナが息をのむ。
「ゴメン、カズヤ・・カズヤはひどいことをする人じゃ・・・」
「オレは、心までバケモノになったつもりはない・・むしろあのレイや、アイツに従ってる連中の心のほうがバケモノの気がしてならない・・」
「レイ・・あの女の人・・・」
カズヤの憤りの言葉を聞いて、ルナがレイの顔を思い浮かべる。
「もうアイツがいい思いをするためにバケモノを倒すなんてまっぴらだ・・でもだからって、人殺しをするつもりもない・・」
「カズヤ・・・」
決意を口にするカズヤに、ルナが戸惑いを見せる。
「とりあえず、オレはもう戻る・・もしも店にヒナタが来たら、今度は追い返してやる・・・」
「カズヤ・・もしかして、店に帰ってきてくれるの・・?」
「まぁね・・こんな状況じゃ、思い当たる場所で落ち着けるのは先輩のお店ぐらいしか・・」
声をかけるルナに、カズヤが憮然とした態度で言いかける。
「とりあえず戻る・・小休止だけでも・・」
カズヤが再び体を動かして、喫茶店に向かおうとした。
「そんなにムリをすることはないわ、カズヤくん。」
そこへ聞き覚えのある声を耳にして、カズヤが緊迫を覚える。彼が振り返った先には、車の窓を開けて微笑んでいるレイがいた。
「アンタ・・・!」
カズヤがレイに鋭い視線を向ける。
「私のところへ来れば休むことができるわ。体も心もね。」
「ふざけんな!もうお前の言うことを聞くもんか!」
「そうやって自分たちだけで抱え込んでも、自分たちを追い込むだけなのよ。」
怒号を放つカズヤに答えて、レイが車から降りた。
「私たちのところへ来なさい。もうこれ以上苦しむことはないのよ。あなたも彼女も・・」
「オレが苦しまないために、オレはお前に逆らうんだよ・・!」
手を差し伸べてくるレイに怒りをぶつけて、カズヤがデーモンガルヴォルスになった。
「2度と勝手なマネができないようにしてやる・・!」
「残念だけどそうはいかないわ。それと、私もいつまでもあなたたちから尻尾を巻いて逃げているわけではないの。」
迫ろうとするカズヤにレイが臆することなく言いかけた。
そのとき、1人のガルヴォルスがカズヤに飛びかかってきた。アルマジロガルヴォルスが体を丸めて突進をしてきた。
「ガルヴォルス、こんなときに・・!」
アルマジロガルヴォルスの奇襲に毒づくカズヤ。彼は丸くなっているアルマジロガルヴォルスを持ち上げて投げ飛ばす。
体勢を整えたアルマジロガルヴォルスが着地して、カズヤに目を向ける。
「このガルヴォルスは私たちの味方なの。あなたの相手をしてくれるそうよ。」
「どこまで他のヤツを利用すれば気が済むんだ・・お前は!」
言いかけるレイにカズヤが怒号を放つ。つかみかかろうとした彼の前に、アルマジロガルヴォルスが立ちふさがる。
「お前、あんなヤツのいいなりになってて、満足なのか!?」
「オレは戦いができればそれでいい・・利用されてるかどうかは二の次なんだよ!」
言い放つカズヤだが、アルマジロガルヴォルスが笑みを見せる。
「このヤロー!」
カズヤが怒りを込めて、アルマジロガルヴォルスに拳を繰り出す。アルマジロガルヴォルスは飛び上がって拳をかわし、体を丸めて突っ込んできた。
「ぐっ!」
突き飛ばされてうめくカズヤ。アルマジロガルヴォルスがさらにカズヤに突進を仕掛けていく。
「くそっ!」
カズヤはアルマジロガルヴォルスの突進をよけて、レイに向かっていく。だがアルマジロガルヴォルスに後ろから突っ込まれた。
「カズヤ!」
倒れるカズヤにルナが悲鳴を上げる。困惑している彼女に向かって、レイが歩いていく。
「まずはあなたを連れて行くことにするわ。これ以上あなたを危険にさらしたりしない。」
「その言葉に騙されない・・あなたよりカズヤのほうが信じられる・・・!」
レイが手を差し伸べるが、ルナは声を振り絞って拒絶する。
「あなたも純粋なのね。だからこそ放っておけないのよ、あなたたちは。」
迫ってくるレイから、ルナが遠ざかろうとする。
「やめろ・・ルナに手を出すな・・・!」
立ち上がってきたカズヤが声と力を振り絞ってきた。
「どういうこと?あなたにとって、彼女はそこまでの人だったのかしら?」
レイが振り向いてカズヤに笑みを見せてくる。
「あなたは極度の女嫌いのはず。そのあなたが彼女を助けるようなことを・・」
「オレが納得するためだ・・このままルナをほっといたら後味が悪くなる・・それだけだ!」
レイの投げかける疑問に言い返すカズヤ。彼が飛びかかろうとするが、またアルマジロガルヴォルスにつかみかかられる。
「お前の相手はオレだぜ!」
「ふざけんな!お前の相手をしてる場合じゃないんだよ!邪魔するな!」
言い放つアルマジロガルヴォルスにカズヤが怒号を放つ。だがすぐに突き飛ばされて、カズヤが丸くなったアルマジロガルヴォルスに突き飛ばされる。
「カズヤ!」
ルナが悲鳴を上げる前で、アルマジロガルヴォルスが倒れているカズヤを踏みつける。
「いきがっていても、結局この程度だったとはな・・これじゃ物足りない・・」
アルマジロガルヴォルスがため息をついてから、カズヤを踏みつけている足に力を込める。
「そろそろしまいにするか。こんなヤツの相手をダラダラとしていても・・」
アルマジロガルヴォルスが肩を落としてとどめを刺そうとしたときだった。突然彼の足元から紅い霧のような光があふれてきた。
「いい加減にしろ・・いつまでも勝手なことを・・・!」
「コイツ、まだ息があったか・・」
声を振り絞ってきたカズヤに、アルマジロガルヴォルスが毒づく。
「もう、オレに・・オレたちに付きまとうな!」
アルマジロガルヴォルスを払いのけて、カズヤが立ち上がってきた。彼の体から紅いオーラが放出されていた。
カズヤの瞳もまた血のように紅く染まっていた。
次回
「オレはお前を許さない・・・!」
「こんなの・・いつものカズヤじゃない・・・!」
「カズヤくんは高まった力を制御できなくなっている。」
「このままでは本当の怪物になるのも時間の問題ね。」