ガルヴォルスRebirth 第5話「邂逅」
廃工場を後にして、バイクで喫茶店に戻ってきたカズヤ。喫茶店はルナによって開店の準備が整っていた。
「もう準備はできているよ。この前もとりあえず準備はできたから・・」
「けど、料理や接客はさすがに1人じゃムチャだってことだな・・今日はオレも力入れるさ・・」
声をかけてきたルナに、カズヤが笑みをこぼして喫茶店に入ってきた。彼は顔と手を洗って、エプロンをつけてきた。
「さーてと、気分よく動くとするか。」
「本当に気晴らしを済ませてきたんだね・・出かける前よりいきいきしてる・・」
気を引き締めるカズヤを見て、ルナは喜びを感じて笑みをこぼしていた。
ダークガルヴォルスとなってマネキンガルヴォルスに襲いかかったコウ。彼の手にかかり、マネキンガルヴォルスは体をバラバラにされていた。
「強い・・さっきの子よりも、全然・・・」
「消えろ・・オレの前から・・・!」
うめくマネキンガルヴォルスをつかんでいる手に、コウは力を入れる。その右手から黒いオーラがあふれ出してきた。
「何を・・やめて・・やめ・・・!」
悲鳴を上げようとしたマネキンガルヴォルスが、黒いオーラに包まれた。彼女はオーラの中で崩壊して、消滅していった。
「ガルヴォルスも、人間も許さない・・絶対に1人残らず・・!」
「相変わらず張り切っているわね、コウくん。」
怒りの言葉を口にしたところで、コウが声をかけられた。彼の後ろにはレイがいた。
「久しぶりね、コウくん。あなたのことは・・」
レイが言いかけていたところで、コウが飛びかかってきた。その直後に煙幕が飛び出してきて、彼の視界をさえぎった。
「逃げるな!」
コウが強引に煙を突っ切るが、レイの姿はなくなっていた。
「出てこい!また隠れて逃げるのか!?」
「確実にあなたにやられるというところなのに、いつまでもいると思っている?」
怒鳴るコウに、レイが遠くから声をかけていく。
「あなたがガルヴォルスを倒していくのを、私たちは見守らせていくわよ。それが世界のためになる・・」
「ふざけるな!オレはお前たちを許さない!オレを徹底的に利用したお前たちを、ガルヴォルスも人間も!」
「すっかり私たちを憎んでいるのね。それなりのことを私たちはあなたにしたのだからね。」
「だったらすぐに死ね・・オレに殺されろ・・・!」
微笑みかけてくるレイに、コウが憎悪を募らせていく。
「悪いけど、そうなるくらいなら、私はあなたを完全に切り捨てる・・」
レイが低く告げると、次の瞬間、コウが突然射撃される。身を潜めて銃を構えていた兵士たちが連続で発砲を仕掛けてきた。
「こんなマネで・・オレが死ぬなんて・・オレは認めない!」
コウが言い放ち、全身から黒いオーラを放出した。オーラは矢のような形状になって、潜んでいた兵士たちに向かっていく。
「ぐあっ!」
矢を撃ち込まれて、兵士たちが鮮血をあふれさせながら倒れていった。
「オレは・・オレはこんなことで死なない・・・!」
体の痛みを抑え込んで、コウが力を振り絞って歩いていく。彼の様子をレイは見守っていた。
「今ならヤツは手負いです。ここでとどめを・・」
「そうして深追いすると、逆に命を落とすわ。速水コウはそういう子なの。」
兵士が言いかけるが、レイは追撃を言い渡さない。
「監視を続けなさい。あの負傷では監視を振り切ることは不可能です。」
「了解。全部隊に申し渡します。」
レイの指示に兵士が答えて、彼女のそばから離れた。
「あなたたちが何をしてきても、私たちの思い通りになるのよ、コウくん、カズヤくん・・」
自分たちの行動に全くの曇りがないという確信を、レイは抱いていた。彼女はモニターに映されているコウの姿を見つめていた。
昼間の客入りを乗り越えて、カズヤとルナは落ち着きを取り戻していた。
「今日はそんなでもなかったか・・」
カズヤが喫茶店を見回してから肩を落とす。
「あ、砂糖が切れそう・・私が買ってくるよ・・」
ルナが砂糖が少なくなってきたことに気付いて、カズヤに声をかけた。
「あぁ。オレが店番してるから・・」
「うん。行ってくるから、気を付けてね・・」
「心配いらないよ。オレはあのときのルナみたいにドタバタしたりしないから。」
「あれはもう忘れてよね・・・!」
カズヤにからかわれてふくれっ面を浮かべてから、ルナは喫茶店を飛び出していった。
「忘れられてないのは、オレの女への嫌気だ・・」
女のトラウマを思い出して、カズヤがいら立ちを感じるようになる。しかし彼はすぐに気を引き締めて、仕事に集中するのだった。
買い出しのため、喫茶店を出たルナ。買うものを買い揃えて、彼女は喫茶店に戻っていく。
そのルナが喫茶店に到着しようとしたときだった。
「あれ?・・倒れている・・・!?」
道端で倒れている人を見かけて、ルナが駆け寄っていく。
「しっかり!しっかりしてください!」
ルナが倒れていた青年を抱えて呼びかける。その青年はコウだった。
「大丈夫ですか!?声、聞こえますか!?」
ルナがさらに呼びかけると、コウが意識を取り戻した。
「気絶していたのか・・・くっ!」
コウがルナを目撃して、身構えてルナから離れる。だが疲弊していて、彼は思うように動くことができなくなっていた。
「待って・・ムリに動いたら・・・!」
「オレに近づくな!・・オレに何をするつもりだ・・・!?」
心配の声をかけるルナに、コウが敵意を向ける。しかし体の痛みで彼はふらつく。
「ムリするから・・すぐに手当てしないと・・!」
「そうやってオレを利用しようとしても、オレは騙されないぞ!」
不安を募らせるルナと、警戒を緩めないコウ。睨んでくるコウに、ルナが辛さを覚える。
「何か、あったみたいだね・・・」
ルナが悟って困惑を見せるが、コウはそれでも敵意を消さない。
「でも、ここは信じてもらうしかない・・でないと、手当てをすることもできない・・・」
どうしたらいいのか分からず、ルナはコウに対して困惑を募らせるばかりになっていた。
「せめて、手当だけでもさせて・・傷だらけのあなたを放っておくなんて・・」
「オレは1人で生きる・・オレは絶対に、他に心を許さない・・・!」
「1人・・そんなのは、絶対にためにならない・・」
「分かったようなことを・・・!」
「分かるよ・・思い知らされたよ・・1人だと本当にドタバタして、結局何にもできなくなっていた・・」
ルナがコウに自分の経験を打ち明けた。喫茶店での仕事がうまくいかず、カズヤに助けられたことを彼女は思い返していた。
「だから、1人より2人のほうが、みんなのほうが・・・!」
ルナが手を差し伸べるが、それでもコウは敵意を消さない。
「本当に手当をするだけ・・それで何かあったら、私を憎んでもいい・・・」
ルナがこういうと、コウは腑に落ちないながらも大人しくする。
「私の働いている喫茶店、ここから近いからそこで・・」
ルナが案内して歩き出すと、コウがいら立ちを浮かべたままついていった。
「ありがとうございましたー。」
外へ出る客たちに挨拶をするカズヤ。店に客がいなくなったところで、彼は深呼吸をする。
「ハァ・・すっかり慣れちゃったもんだな、ここの仕事も・・」
落ち着きを感じていたカズヤだが、すぐにリョウのことを思い出して不満を覚える。
「先輩・・マジでどこに行っちゃたんだか・・帰ってきたらボッコボコにしてやるんだから・・・」
リョウへの不満でふくれっ面を浮かべるカズヤ。そんな彼のいる喫茶店のドアが開いた。
「おっと・・いらっしゃいま・・」
カズヤが気持ちを切り替えて、挨拶をした。喫茶店に入ってきたのはルナと、彼女についてきたコウだった。
「どうしたんだ、いったい・・・?」
カズヤがコウの様子を見て緊張を覚える。
「帰り道の途中で見かけて、手当てをしたくて・・・」
「しょうがないな・・救急箱取ってくる・・」
ルナから事情を聞くと、カズヤは奥へ行って救急箱を取りに行った。
「アイツも・・オレなんかのために・・・」
「カズヤは根はやさしいから、信じても大丈夫だよ・・ただ、女性が嫌いだけど・・・」
苛立ちを浮かべているコウに、ルナがカズヤのことを言いかける。少ししてカズヤが救急箱を持ってやってきた。
「って、持ってきたけど、道具の使い方、よく分かんないんだよなぁ・・」
「それなら貸して。私、だいたい使えるから・・」
肩を落とすカズヤから救急箱を受け取るルナ。そして彼女はコウの手当てを始めた。
「やっぱ女だけあって手馴れてるな・・・」
コウを手当てするルナを見て、カズヤが感心の声を上げる。
「女だから手当てができるってことでもないんだけどね。勉強していたのが役に立っただけだよ・・」
「そういうものか・・とにかく、オレはこういうのは全然ダメダメだぁ・・」
微笑んで語りかけるルナに、カズヤが肩を落とす。
「お前たち・・本当にオレを利用したりしないのか・・・?」
コウがカズヤたちに疑問を投げかけてきた。
「利用?どういうことか分かんないけど、オレも利用なんてものはイヤだな・・」
カズヤが口にした言葉に、コウが眉をひそめる。
「オレは女に振り回されたことがある・・だから利用なんてものに嫌気がさしてるんだ・・するのも、されるのも・・」
「お前も・・何かあったということか・・・」
カズヤの心境を察して、コウが戸惑いを感じていく。
「何か、深い事情があるみたい・・・」
ルナがコウを心配して、おもむろに言いかける。しかしコウは自分のことを話そうとしない。
「言いたくないことをムリに言うことはないさ・・オレだって・・」
するとカズヤが笑みをこぼして、コウに言いかけてきた。彼の言葉を受け止めて、コウは肩を落とした。
「ここで会ったも何かの縁ってヤツだ・・オレは佐久間カズヤだ。」
「私は天川ルナです・・」
カズヤとルナがコウに自己紹介をする。
「オレは・・コウ・・速水コウだ・・・」
コウも2人に自分の名前を打ち明けた。
「コウか・・よろしく、コウ。」
カズヤが笑みを見せて、コウに手を差し伸べてきた。しかしコウは彼の手を取ろうとしない。
「まぁ、いいか・・無理強いはしたくないし、オレも・・」
カズヤは差し出した手を引っ込めて、苦笑いを浮かべた。
「コーヒーぐらいなら出せるけど・・・?」
「いや、水でいい・・苦いのは嫌いだ・・・」
カズヤが言いかけると、コウは冷めた態度ながらも答えてきた。
「そうか・・分かった・・すぐに入れるよ・・」
カズヤは笑みを見せてから、コップを取り出して水を入れた。
少し小休止してから、コウは喫茶店を後にしようとしていた。
「もう行って、大丈夫ですか・・・?」
「いい・・オレはこれからも、1人で自分のことをしていく・・・」
ルナが声をかけるが、コウは考えを変えようとしない。
「だが2人には世話になった・・お前たちなら、信じてもいいかもしれない・・・」
「コウさん・・・いつでも来てください。大歓迎です・・」
正直な気持ちを口にするコウに、ルナが笑顔で声をかける。
「気が向いたらまた来る・・ここが、ここだけが、オレが心を許せる場所かもしれない・・・」
「そんな大げさなことでもないんだけど・・・まぁいいか、それで・・」
コウが呟いた言葉に、カズヤが苦笑いを浮かべた。
「オレは行く・・オレにはやることがあるから・・・」
コウはカズヤとルナに言いかけると、1人歩き出していった。
「1人で大丈夫かな?・・手当てはしたけど、本当に応急処置って感じだし・・」
コウの心配をしていくルナ。カズヤもコウのことを気がかりにしていた。
「この時間はお客は来そうもないか・・オレ、途中まで送ってくる・・」
「カズヤ・・・!」
コウを追いかけて飛び出していったカズヤに、ルナが声を上げる。彼女の前からカズヤの姿も見えなくなっていった。
カズヤ、ルナと別れて1人歩き出したコウ。2人以外にはまだ彼は警戒を強めたままでいた。
(まだ、レイの部隊がオレを狙っているのか・・・!)
周囲に向けて感覚を研ぎ澄ませていたコウ。彼は兵士たちが物陰に身を潜めていることに感づいていた。
「出てこい・・それともコソコソ隠れたまま死にたいのか・・・!?」
低く鋭い声音で言いかけるコウ。彼の頬に異様な紋様が浮かび上がる。
「い、いかん!撃て!」
隠れていた兵士たちが危惧して、コウに向けて銃を発砲する。が、ダークガルヴォルスとなったコウの体に、傷をつけることもできない。
「何というヤツだ・・ガルヴォルスめ・・・!」
「引け!撃ち続けながら撤退しろ!」
危機感を覚えて、兵士たちが逃げ出していく。だがコウに回り込まれて、拳を叩き込まれて即死していく。
「オレを陥れるものは、何だろうと誰だろうと・・・!」
敵意をむき出しにしてくるコウに、兵士たちは焦りを隠せなくなった。
コウを追ってカズヤは街の近くの道を進んでいた。カズヤはまだコウを見つけられないでいた。
「コウ・・いなくなるの早すぎだって・・」
カズヤが辺りを見回しながら、不満を口にする。
そのとき、カズヤは強い気配を感じ取って緊張を覚える。
「この感じ・・・!?」
息をのんだカズヤが、気配のする方に向かっていく。彼がたどり着いた通りには、発砲しながら逃げ惑う兵士たちがいた。
「アイツら・・あのときの・・・!」
兵士たちに対して憤りを感じていくカズヤ。彼の視界に、兵士たちを追撃するコウが現れた。
「アイツまで・・今度は簡単にはやられないぞ・・・!」
ダークガルヴォルスとなっているコウに対して、カズヤがいきり立つ。彼の頬に紋様が走り、姿がデーモンガルヴォルスとなる。
カズヤが向かってきたことに気付いて、コウが振り返る。
「お前も出てきたのか・・・!」
拳を繰り出してきたカズヤを、コウが迎え撃つ。カズヤは拳を軽くかわされ、コウに拳を叩き込まれる。
「うっ!」
痛烈な一撃を受けて、カズヤが顔を歪める。しかしカズヤは踏みとどまって、コウに視線を戻す。
「今度は簡単にやられないぞ・・オレはお前たちに時間を費やしている場合じゃないからな・・!」
「オレの敵になるなら・・誰だろうと叩き潰す・・・!」
互いに敵意を向け合うカズヤとコウ。
「構え!」
その2人に向かって、兵士たちが銃を構えてきた。カズヤとコウが彼らに視線を向ける。
「どうやらお前も、コイツらのことが気に入らないみたいだな・・!」
カズヤがコウに言いかけて、兵士たちに対して身構える。
「オレもコイツらにはいい思いはしてない!」
カズヤは言い放って、兵士たちに立ち向かっていった。
「お前が何をしようと同じこと・・お前もヤツらも、全てオレの敵だ!」
コウも言い放ってから、カズヤに続いて兵士たちに向かっていった。
次回
「共通の敵がいる・・それだけのことだ・・・」
「お前、何でここに来てるんだよ!?」
「オレが思っていた以上に、オレは心を揺さぶられていたのか・・・!?」
「振り回されたくないのはオレのセリフだ・・」
「オレの生き方はオレが決める!」