ガルヴォルスRebirth 第６話「錯綜」
レイの部隊である兵士たちに向かっていくカズヤとコウ。２人のガルヴォルスに対して、兵士たちが銃を発射する。
カズヤはコウとともに弾丸をかいくぐって、兵士たちから銃や武器を取り上げていく。だがコウは拳や力を振るって、兵士たちを惨殺していく。
「おい！殺すまでやんなくてもいいだろうが！」
カズヤは兵士を手にかけていくコウに怒鳴る。だがコウは攻撃の手を止めない。
「敵は叩き潰す！それ以外にオレが打つ手はない！」
「いくらコイツらが悪くても、殺すことはないだろ！」
呼び止めるカズヤだが、コウは聞き入れずに攻撃を続ける。
「やめろって言ってんだろうが！」
我慢の限界に達したカズヤが、コウに拳を振りかざす。気づいたコウが即座にかわす。
「そうやって人殺しをしていったら、結局その姿と同じバケモノになっちまうんだぞ！」
「本当のバケモノはヤツらのほうだ・・自分たちの目的のために、オレをモルモットにした・・・！」
「そのイヤな気分はオレも同じだ・・だからって、アイツらがやってるみたいに、問答無用のやり方をしたら・・！」
「オレはヤツらとは違う・・お前と組むつもりもない・・・！」
カズヤの呼びかけをはねつけて、コウが彼に鋭い視線を向ける。
「共通の敵がいる・・それだけのことだ・・・」
「ホントに・・ホントにそれだけなのか・・・!?」
自分の生のために他者を手にかけることをためらわないコウに、カズヤが憤りを浮かべていく。
「だったらやっぱり・・お前にも負けるわけにいかないな！」
カズヤが剣を具現化して、コウに向かって振りかざす。コウはこれも後ろに下がってかわす。
「お前も、オレの行く手を阻んでくるのか・・・！」
コウが低い声音で言いかけると、彼も黒いオーラを圧縮して剣を作り出した。
「ならばお前もヤツらと同じく、敵と判断して倒す！」
コウが言い放ち、飛びかかって剣を振りかざす。カズヤも負けじと剣を不利かあしてぶつけ合う。
力比べに持ち込むが、カズヤはコウにだんだんと押されていく。
「悪いけど、オレは倒されるわけにはいかないんだよ！」
カズヤが力を振り絞って、右足を突き出した。体に足を当てられて、コウが蹴り飛ばされる。
窮地から辛くも脱したカズヤだが、コウも兵士たちも姿を消していた。
「危ないとこだった・・アイツらもいなくなっちゃったが・・・！」
カズヤが辺りを見回して呟いていく。彼の姿がガルヴォルスから人に戻る。
「早くコウを探さないと・・もう遠くに行っちゃったか・・」
カズヤはコウを探しに再び駆け出していった。先ほど戦ったダークガルヴォルスがコウであることを知らないまま。
カズヤに突き飛ばされたコウは、その先の木の茂みに突っ込まれていた。彼は感情を爆発させてオーラを発し、周囲の草木を吹き飛ばす。
「くっ！・・アイツに、オレが出し抜かれるとは・・・！」
憤りを抱えたまま、コウが人の姿に戻る。
「やはり全てがオレの敵だ・・レイも、ヤツに従う連中も、あのガルヴォルスも・・・！」
人間、ガルヴォルス双方への憎悪をさらに強めて、コウは歩き出していった。
コウを追いかけて探し回ったカズヤだが、彼を見つけることができないまま、喫茶店に戻ることになった。
「おかえり、カズヤ・・コウさんには会えなかったみたいだね・・」
「あぁ・・どこに行っちゃったんだか・・」
ルナが声をかけると、答えたカズヤが肩を落とす。
「そのうちまた来るだろう。コウって人、どうやらオレらしか頼りにできるのがいないみたいだから・・」
「うん・・だから、他の人の当てがなくて、大丈夫かなって心配が・・・」
コウのことを気にするカズヤとルナ。
「とにかく、今は気持ちを切り替えて、ここの仕事だ・・」
「そろそろ夜の本格的な時間だね。」
カズヤとルナが声を掛け合って、喫茶店での仕事に集中するのだった。
コウだけでなく、カズヤにも手痛い目に合わされた兵士たち。彼らは２人のことをレイに報告していた。
「ガルヴォルス、それも強力な２人を敵に回したのは、正直痛い、というところね・・」
「このまま佐久間カズヤ、速水コウの監視を続けます。」
「いいえ、２人の監視もここで打ち切るわ。」
「よろしいのですか、２人を野放しにして・・？」
「これ以上あなたたちを死に追いやるのはいただけないわ。この際だから、今のうちに休息を取っておくことね。」
「了解しました・・・」
兵士たちの身を案ずるレイ。彼女の言葉を受け止めて、兵士たちは引き下がっていた。
（カズヤ、コウ、２人とも厄介になってきたのね。でも何をしてこようと、あなたたちは私の思い通りになる・・）
カズヤとコウに追い込まれるも、レイは全く自信を揺るがしていなかった。彼女は２人に手を打つ次の機会を待つことにした。
カズヤやレイへの憤りを抱えたまま、コウは人気のない森林で束の間の眠りについていた。
（アイツら・・レイはオレを思い通りにしようとして、あのガルヴォルスはオレの邪魔をした・・アイツらには、オレは絶対に屈しない・・・！）
自分を貫こうとするコウ。彼は迷いやためらいを捨て去ろうとする。
（だが、オレはあの２人に助けられた・・２人に心を許した・・・）
コウがふとカズヤとルナのことを思い出して、感情を揺さぶられていく。
（オレは誰も信じないようにしていたのに・・利用されないために、オレはオレだけで生き抜こうとしていた・・それなのに、今はオレは、カズヤとルナという２人に心を許している・・・）
喫茶店でのカズヤとルナの時間を思い出すコウ。そして彼は自分が動揺していたことに気付いて我に返る。
（オレは、なぜそこまで気にしているんだ・・・!?）
自問するコウだが、答えが返ってくることはない。
（オレは本当にあの２人に・・オレが思っていた以上に、オレは心を揺さぶられていたのか・・・!?）
自分の心境に変化が起きているのではと思い、コウが困惑していく。
（オレはオレだ・・何が起ころうと、それは変わらない・・・！）
自分に言い聞かせながら、コウは眠りについていく。彼は気分が落ち着かないまま、一夜を過ごすことになった。
この日のカズヤの仕事は休みだった。彼は気分転換に、１人でバイクを走らせていた。
（たまにはこうして、何も気にせずに１人でのんびり過ごすのもいいな。清々しくなるっていうか。）
気分を落ち着かせて、ツーリングを楽しんでいくカズヤ。
（レイとかいう女とその軍隊連中、あの強いガルヴォルス、そして先輩がどこに行ったのか・・悩みはいろいろだけど、全部解決してやる。）
自分の決心を感じ取って、カズヤは気持ちの整理をしていった。
そのとき、カズヤは異様な気配を感じ取った。彼ははじに寄って止まってから、感覚を研ぎ澄ませる。
「またガルヴォルスが出てきたのか・・どこにでもいるのか、アイツらは・・!?」
ガルヴォルスの暗躍に不満を覚えるカズヤ。彼はバイクから降りて、周囲を探索する。
「どこだ・・どこにいるんだ・・・!?」
カズヤが辺りを見回して、ガルヴォルスの居場所を探る。
そのとき、カズヤが突然耳鳴りを覚えて、耳を手でふさぐ。
「な、何だ、この音は!?・・響いてくる・・・！」
耳鳴りに顔を歪めるカズヤ。彼はその中で、その音波の元を探ろうとする。
「もしかして、これもガルヴォルスの仕業だっていうのか・・・!?」
感情を高ぶらせるカズヤの頬に紋様が走る。彼はデーモンガルヴォルスとなって、音波への耐性を強める。
「どっから聞こえてきてるんだ・・・!?」
音波を感じる方に向かって、カズヤは走り出す。彼は道を外れた森の中に入った。
「この辺りなのか？・・どこにいるんだ、コイツを出してるヤツは・・・!?」
「ここまで来るとはな！だが同じガルヴォルスなら不可能じゃねぇか！」
声を振り絞るカズヤに向かって、別の声が飛び込んできた。彼に向かって１つの影が飛び込んできた。
「くっ！」
とっさに動いて影を回避したカズヤ。だが彼の左腕にかすり傷が付けられる。
痛みを感じて顔を歪めているカズヤの前に、１体の怪物が降り立った。コウモリの姿をしたバットガルヴォルスである。
「コイツはお前が出してたのか!?」
「そうだ！いい音色だろ!?ズンズン響き渡るんだぜ、オレの超音波は！」
カズヤが問いかけると、バットガルヴォルスが喜びを込めて言い放つ。
「コイツのどこがいい音色だってんだ!?」
「そうだな・・他のヤツが苦しむ音ってとこだな！」
声を振り絞るカズヤに、バットガルヴォルスが言い放って再び飛びかかってくる。カズヤは背中から翼を広げて飛び上がり、バットガルヴォルスの突撃をかわす。
「それでかわしたつもりか!?空中はオレの得意な場所だぜ！」
バットガルヴォルスがスピードを上げて、またカズヤに飛びかかる。カズヤは回避が間に合わず、バットガルヴォルスの突撃を受ける。
「ぐっ！」
カズヤが苦痛を覚えて、体勢を崩して地上に落下する。
「ダメだ・・空中だと全然よけきれない・・！」
「お前はオレから逃げ切れない！この音色を防がれても、オレの爪と牙がお前を仕留めるぞ！」
うめくカズヤを見下ろして、バットガルヴォルスがあざ笑ってくる。
「さっさと息の根を止めちまえば、それ以上痛い思いをせずに楽になれるぜ！」
「冗談じゃない・・そんなこと、誰が認めるかっての！」
さらに笑みをこぼすバットガルヴォルスに、カズヤが言い返す。
「そうか・・だったらなぶり殺しだ！」
バットガルヴォルスがカズヤに向かって飛びかかる。
「だから、オレはやられるわけにいかないんだよ！」
カズヤが全身に力を込めて、バットガルヴォルスの突撃を受け止める。
「いくらスピードが速くても、オレを狙ってくるのが分かってるなら！」
「分かってるなら、何だってんだ？」
言い放つカズヤをあざ笑うバットガルヴォルス。次の瞬間、バットガルヴォルスの右手の爪が、カズヤの体に刺さる。
「うっ！」
痛烈な一撃を受けて、カズヤが顔を歪めて膝をつく。
「オレには爪と牙がある！接近戦でもオレには勝てないぜ！」
うずくまるカズヤを見下ろして、バットガルヴォルスがさらにあざ笑ってくる。
「さーて、これからじっくりいたぶってやるとするか！」
バットガルヴォルスがカズヤを痛めつけようと構える。カズヤがとっさに剣を具現化して身構える。
そのとき、バットガルヴォルスが強い気配を感じ取って、緊迫を募らせた。彼はたまらずカズヤから離れる。
「強い力・・ただのガルヴォルスじゃない・・・！」
バットガルヴォルスが痛感してくる気配に息をのむ。感覚が鋭い彼は、押し寄せてくる気配を強く感じていた。
「この感じ・・アイツか・・・！」
カズヤも気配を感じ取って、その正体に気付いた。彼らが振り向いた先にいたのは、ダークガルヴォルスとなったコウがいた。
「全てオレの敵だ・・ヤツらも、ガルヴォルスも・・・！」
コウが殺気をむき出しにして駆け出す。バットガルヴォルスが後方に下がり、カズヤがとっさに立ち上がる。
「ぐっ！」
次の瞬間、迫ってきたコウがカズヤを蹴り飛ばす。そしてコウはすぐに、バットガルヴォルスに詰め寄ってきた。
「このっ！」
バットガルヴォルスが飛び上がると同時に、コウに向けて爪を振りかざす。が、コウは爪を素早くかわして、バットガルヴォルスの足をつかんだ。
「何っ!?うわっ！」
驚くバットガルヴォルスがコウに引っ張られて、投げ飛ばされて木の幹に叩きつけられる。苦痛を覚えるバットガルヴォルスに、コウが迫ってくる。
「くそっ！」
バットガルヴォルスがとっさに超音波を放って、コウの突撃を一瞬鈍らせた。その隙にバットガルヴォルスが素早く飛び上がって、上空に逃げていった。
「逃げるな！叩き潰されろ！」
コウが怒号を放つが、バットガルヴォルスは姿を消してしまった。コウは憤りを噛みしめたまま、カズヤに振り返る。
「お前もオレの敵だ・・オレはもう、何にも振り回されたりしない・・・！」
「振り回されたくないのはオレのセリフだ・・」
鋭い視線を向けてくるコウに、カズヤが言い返して、剣を強く握る。
「オレも散々振り回されてきた・・だからそうならないように意地を見せる・・たとえ、オレと同じような境遇のヤツが相手でも・・！」
カズヤが声を振り絞って、コウに飛びかかって剣を振りかざす。コウは素早く動いてカズヤの剣をかわす。
さらに剣を振りかざしていくカズヤ。コウは右手でカズヤの剣をつかむ。
「オレはお前とは違う・・オレを陥れようとするものは、全てこの手で・・！」
「それでもオレは！」
冷徹に告げるコウに対して、カズヤが左手を握りしめて繰り出す。
「オレの生き方はオレが決める！」
カズヤの拳がコウの体に叩き込まれる。コウが押されて木の幹に叩きつけられる。
「コイツ・・力が増してきている・・・！」
カズヤの高まっている強さを痛感して、コウがいら立ちを募らせる。カズヤがゆっくりとコウに近づいてきて、コウに鋭い視線を向ける。
「お前がお前の生き方を決めようと、オレの生き方を変えることはできない！」
コウは言い放つと、全身から黒いオーラを放出させる。
「うあっ！」
オーラの衝撃に押されて、カズヤが吹き飛ばされる。コウが森の中に突っ込んだカズヤを追いかけるが、カズヤの姿を見失う。
「どこだ・・どこに行った!?」
カズヤに対して怒号を上げて、コウがオーラを放出していった。
コウに吹き飛ばされて、カズヤは森の木の茂みを突っ切って、外まで飛ばされていた。
「くっ！・・アイツ、前より強くなってる・・・！」
コウの強さにうめくカズヤが、人の姿に戻る。
「それに、あのコウモリヤローもどっかにいる・・アイツがまた悪さをしてくるかもしれない・・・」
バットガルヴォルスの動向も懸念するカズヤ。
「今ここで考えてもしょうがない・・喫茶店に戻るか・・」
カズヤは気持ちを切り替えて、喫茶店に戻ることにした。
喫茶店に戻ってバイクを止めたカズヤ。彼はメットを外して１度ため息をついてから、喫茶店に入った。
「ただ今帰ったよ〜・・」
「あ、カズヤ、あなたにお客様が・・」
気のない挨拶をするカズヤに、ルナが駆け寄って声をかけてきた。
「えっ!?カズヤ!?」
そのとき、喫茶店に声が響き渡った。その声に聞き覚えがあり、カズヤが緊迫を覚える。
「わー♪カズヤ♪やっぱりここにいたんだ〜♪」
「げっ！ヒナタ!?」
テーブル席にいた１人の少女、小桜ヒナタにカズヤが驚きの声を上げる。
「お前、何でここに来てるんだよ!?」
「いろいろ調べてきて、ここまで来たんだよ♪」
怒鳴りかかるカズヤに、ヒナタが笑顔を振りまく。
「これでカズヤにいつでも会えちゃうってわけだね♪」
「ふざけるな！オレにまとわりつくな！」
ヒナタが明るく言いかけると、カズヤが怒りをあらわにしてきた。２人のやり取りを目の当たりにして、ルナは戸惑いを感じていた。
次回
「私、カズヤの幼馴染みだったの・・」
「どこまでオレを苦しめれば気が済むんだ!?」
「オレはお前を、許すつもりはない・・・！」
「カズヤ、アンタ・・・!?」