ガルヴォルス
-Phantom Heart-
第4章
テツヤたちの組織を壊滅させたトウガ。彼は引き続きリュウガの行方を追っていた。
「前に私たちが戦った場所にもいない・・あのガルヴォルスたちも転々としているのかな・・・?」
カノンがリュウガたちの動向に当惑していた。感覚を研ぎ澄ませている彼女だが、リュウガの居場所を見つけることができない。
「それでも必ず見つけ出して叩きつぶす・・ゴミクズは1人残らずオレがぶっ潰さないとならねぇ・・・!」
トウガの意思と敵意は揺るがない。敵と認識したものを完全に倒す彼の意思は変わらない。
「今はこの人を探すことに専念しよう・・他の敵も出てくるかもしれない・・・」
カノンがトウガに言いかけて、改めて意識を集中する。
「いた・・近くに来ている・・・」
「何っ・・・!?」
リュウジの気配を感じ取ったカノンの声に、トウガが足を止めた。
「アイツがいたか・・どこだ・・・!?」
「あっち・・数キロ先だと思う・・・」
トウガが聞いてきて、カノンが気配の感じるほうを指さす。
「あの辺りはビルだらけみてぇだ・・気付かれても、ここは一気に・・・!」
ビル地帯を見据えるトウガの頬に異様な紋様が浮かび上がる。彼がビーストガルヴォルスとなって、ビル地帯に向かっていく。
「トウガ!」
カノンもエンジェルガルヴォルスとなって、トウガを追って飛翔した。
近づいてくるトウガたちに、リュウガはすぐに気付いた。
「お前らはさっさと戻れ。オレは野暮用を思い出した・・」
リュウガが足を止めて、男たちに声をかけた。
「アニキ、もしかしてこの前のヤツが・・・!?」
「オレも付いていくぜ!アニキばっかに負担かけるわけには!」
しかし男たちは引き下がらず、リュウジに加勢しようとする。
「やめろ!お前らが出てってもぶっ殺されるだけだ!」
「しかし、それじゃアニキが・・・!」
「オレは簡単には死なない・・たとえアイツがどれだけ強くなっていようと、オレは負けはしないぜ・・」
男たちからの信頼に、リュウガは戸惑いを覚える。彼は男たちの心意気に心を動かされそうになった。
「だがダメだ!オレはお前らを死なせるようなことはしたくねぇ!」
リュウガは言い放って男たちに背を向けた。
「もしもオレとアイツが戦ってるとこに出てきたら、お前らを許さないからな・・・!」
「アニキ・・・!」
鋭く言いかけるリュウガに、男たちが困惑する。リュウガはゆっくりと歩き出して、トウガの迎撃に向かった。
建物を飛び越えて、トウガがカノンとともにリュウガのところを目指していく。
「近づいてくる・・あの人が・・・!」
「オレたちに気付いて、それでも近づいてくるか・・そうまでして、オレを・・!」
カノンがリュウガの気配を感じ取り、トウガが目つきを鋭くする。
「今度こそ叩きつぶす・・今度こそぶっ潰す!」
リュウガへの憎悪を募らせて、トウガがビル地帯の中にある空き地に着地した。カノンも空き地に着地したところで、リュウガが姿を現した。
「やっぱお前らだったか。しつこいのは十分分かってたが、ここまでとはな・・」
リュウガがトウガたちを見て、ため息まじりに言いかける。
「おめぇはオレがブッ倒す・・絶対にな!」
トウガが怒りをあらわにして、リュウガに向かっていく。
「今度こそお前の息の根を止めとかないと、みんなまで殺されることになる・・!」
戦意を強めたリュウガの頬に紋様が走る。シャークガルヴォルスとなった彼が、トウガと爪をぶつけ合う。
「おめぇらゴミクズがいる限り、オレも世の中もムチャクチャになっちまう!」
「バカなことぬかすな!オレらがお前をムチャクチャにしようなんざ考えちゃいない!むしろお前がオレらをそうしようとしてるんじゃないか!」
「自分のしている愚かさをオレに押し付けるな!」
「押し付けてるのはがお前だっていうのに!」
怒号をぶつけるトウガにリュウガが言い返す。2人が連続で拳をぶつけ合い、衝撃を巻き起こす。
リュウガが肘の刃をトウガに向けて振りかざす。トウガは素早く刃をかわして、爪を突き出す。
「ぐっ!」
その瞬間、トウガの体にリュウガの右足が叩き込まれた。この一撃でトウガがふらつき、出した右手もリュウガに届かない。
「オレは倒れるわけにいかないんだよ・・ダチのためにもな!」
リュウガが考えを口にして、再び肘の刃を構える。その瞬間、彼はカノンが敵意を向けてきたと感じて、狙いを彼女に変えた。
「お前もお前で厄介だからな!注意しないはずがない!」
リュウガから鋭く睨まれて、カノンが息をのむ。
(あの人は勝負じゃなく戦いをしている・・この前の人とは違う・・・!)
カノンはリュウガが戦い慣れていることを痛感する。リュウガが視線をトウガに戻して、肘の刃を構える。
「これでお前との戦いに専念することができる・・・!」
「オレは今まで1人で戦ってきた・・オレはおめぇらを必ず倒す・・オレは何が何でも死にはしねぇ!」
飛びかかるリュウガにトウガが怒号を放つ。彼の体から電撃がほとばしり、リュウガを押し返す。
「何っ!?」
不意を突かれたリュウガが驚愕の声を上げる。トウガの体から電撃があふれ出していた。
「オレはおめぇをブッ倒す・・ゴミクズを滅ぼすまで、オレは殺されても死なねぇ!」
トウガは言い放つと、リュウガに向かって飛びかかる。そのスピードは先ほどを大きく超えるほどに上がっていた。
「ぐっ!」
トウガに重みのある拳を体に叩き込まれて、リュウガがうめく。トウガの力も先ほどよりも上がっていた。
リュウガがとっさに肘の刃を振りかざすが、トウガに軽々とかわされる。
「ぐふっ!」
再びトウガに拳を打たれて、リュウガがうめく。ふらつく彼が苦痛にさいなまれて吐血する。
「力も速さも格段に上がっている・・オレを超えるほどにまでなるとは・・!」
トウガの高まる戦闘力にリュウガが毒づく。彼に向かってトウガがゆっくりと近づいてくる。
「もうおめぇの好きにはさせねぇ・・オレが息の根を止める!」
トウガが怒りを募らせて、リュウガに向けて爪を振りかざそうとした。
「アニキ!」
そこへ男たちがやってきて、リュウガに声をかけてきた。
「お前ら・・来るなと言ったのが分からないのか!?」
リュウガがたまらず男たちに怒号を放つ。
「やっぱりほっとけねぇよ、アニキのこと!」
「たとえアニキに一生恨まれることになっても、オレらはアニキとともにやってやりますよ!」
男たちがリュウガたちに自分たちの意思を伝える。
「アニキから離れろ!さもねぇと容赦しねぇぞ!」
男たちがトウガに言い放つと、それぞれガルヴォルスとなった。
「たとえ死んでも、アニキは死なせはしねぇ!」
「よせ、やめろ!」
飛びかかる男たちに、リュウガが叫び声を上げる。
「どいつもこいつも、オレをそんなに苦しめたいのかよ!」
激高したトウガが男たちを迎え撃つ。彼が繰り出す拳と爪が、ガルヴォルスとなっている男たちを叩きのめしていく。
「やめろ・・オレの仲間に、これ以上手を出すな!」
リュウガが怒号を放って、トウガに飛びかかる。リュウガが肘の角を振りかざしてトウガにぶつけるが、傷1つ付かない。
「オレの角が切り裂けないだと!?・・鉄も簡単に切れるのに・・!」
「おめぇらがオレをどうこうしなければよかったんだよ・・それが分かんねぇから、おめぇらはゴミクズなんだよ!」
驚愕するリュウガにトウガが怒号を放つ。トウガは体から電撃を放って右手を突き出して、リュウガの刃をへし折った。
「ぐあぁっ!」
リュウガが激痛に襲われて、悶絶して絶叫を上げる。昏倒する彼を、トウガはさらに右足を振りかざして蹴り飛ばす。
「ぐふっ!・・・み・・みんな・・・!」
吐血するリュウガが、トウガの手にかかり倒れた仲間たちを目の当たりにして愕然となる。
「何が何でも・・お前は息の根を止めないとならないな!」
リュウガのトウガに対する怒りが頂点に達した。2人が同時に飛び出して、リュウガが右の拳を繰り出す。
「オレはおめぇらの思い通りにはならねぇ!」
トウガも怒りを口にして、リュウガの拳をかわす。直後にトウガの右手の爪がリュウガの体に突き刺さった。
「オレに密着したな!」
リュウガは言い放つと、左腕を振り上げて、肘の刃をトウガの背中目がけて全力で振り下ろす。だがトウガの体から出ている電撃が、彼の体をリュウガの刃から守った。
「こ、こんな!?」
刃を突き立てられなかったことに、リュウガが驚愕する。トウガがさらに爪を押し込んで、リュウガを切り裂いた。
体も心も切り裂かれて、致命傷を負ったリュウガ。倒れて動けなくなった彼に、トウガがさらに近づいてくる。
「おめぇらゴミクズがいなくなれば、オレたちは安心できるんだよ・・・!」
トウガが鋭く言いかけて、握りしめた右手に電撃も集中させた。彼はその拳をトウガに叩き込んだ。
拳の威力と衝撃で絶叫をもかき消えた。リュウガはトウガの一撃で即死に陥った。
さらに衝撃は空き地も吹き飛ばし、周囲のビルをも揺さぶった。崩壊した空き地の真ん中で、トウガが呼吸を乱しながら立っていた。
「これでコイツも叩きつぶした・・だが、まだまだ自分たちが正しいと思い上がるゴミクズどもはいる・・全滅させるまでは、オレは・・!」
敵への憎悪を絶やさないトウガ。戦いを続けようとする彼に、カノンは困惑を感じていた。
そのとき、トウガが突然体に激痛を覚えて顔を歪める。彼がガルヴォルスから人の姿に戻ってふらつく。
「トウガ!」
カノンが声を上げて、倒れかかったトウガを受け止める。
「トウガ、しっかりして!トウガ!」
「くっ・・力が・・入らない・・体が、言うことを・・・」
心配の声をかけるカノンに抱えられたトウガが、弱々しく呟く。
(体力の消耗が激しい・・力も弱っている・・大きな負担が、体への影響を引き越している・・!?)
トウガの状態を見て、カノンが深刻さを感じていく。
(治さないと、トウガを・・私がトウガを助ける・・・!)
感情をかき立てられたカノンが、トウガに意識を傾ける。彼女のガルヴォルスの力が、光となってトウガに伝わっていく。
「トウガ・・1度ここから離れるよ・・・」
カノンはトウガに告げると、崩壊した空き地から飛び去った。
トウガがリュウガと交戦したことは、逃亡を図った政治家たちの耳に届いていた。
「ヤツの行動で、我が国のダメージが蓄積されていく・・!」
「だが我らがみすみす出ていくのは滑稽だ。死ににいくようなものだ。」
政治家たちがトウガのことを話していく。彼らは自分たちのやろうとしていること変えようとは思っていない。
「我々が生き残れば日本は何度でも立て直せる。」
「バケモノを滅ぼすためなら、もはや手段は選ばんさ。」
「他の犠牲など、平和のための尊い犠牲として賛美されるさ。」
トウガたちを滅ぼすことだけを考えて、政治家たちは不敵な笑みを浮かべていた。
リュウガたちを手にかけたトウガだが、疲弊して意識を失った。彼を連れて、カノンは人気のない地下通路に来ていた。
(ここなら人は来ない・・何か来ても、私なら対処できる・・・)
床に横たわらせたトウガを見つめて、カノンが戸惑いを募らせる。
(お願い、トウガ・・死なないで・・・)
カノンが再びトウガに力を送る。カノンはトウガが必ず目覚めると信じていた。
淡い光を体に宿したトウガが、閉ざしていた目を開いた。
「トウガ・・!」
「カノン・・・オレは、いったい・・・?」
歓喜を覚えるカノンに、トウガが声を上げる。
「ここはどこだ?・・アイツらはどうなった・・!?」
「あのガルヴォルスたちたちは死んだよ・・ここはあの場所から少し離れた場所・・安全な場所を探して、私がここまで来たの・・・」
周りを見回すトウガにカノンが事情を説明する。
「トウガが突然倒れて、私、どうしたらいいのか分からなくなって・・・」
「またおめぇに助けられたみてぇだな・・悪かったな・・・」
「ううん・・トウガが無事というだけで、私はよかったと思っている・・・」
肩を落とすトウガに、カノンが笑顔を取り戻した。
「あれからどのくらいたったんだ・・?」
「日が暮れて、今は夜だよ・・」
トウガがさらに問いかけて、カノンが答える。するとトウガが力を振り絞って立ち上がる。
「まだ敵はいる・・みんなブッ倒すまで、オレはじっとしてるわけにいかねぇ・・!」
「待って、トウガ!まだ休んだほうがいいよ!またあの力を使って倒れたら、今度は助からないかもしれない!」
歩き出そうとするトウガをカノンが呼び止める。
「オレは死なねぇ・・ゴミクズどもを滅ぼすまでは、殺されても死なねぇ!」
「私は!・・あなたがいなくなったら、どうすることもできなくなる・・!」
意地を見せるトウガに、カノンが悲痛の声を上げる。彼女はトウガがいなくなることを何よりも恐れていた。
「だから、オレは死んだりしねぇって言ってるだろうが・・!」
「あなたを心配することは、間違いなの・・・!?」
声を振り絞るトウガを想い、カノンが目から涙を流す。彼女がたまらずトウガの背中に寄り添った。
そのとき、トウガはカノンを支えきれずに、彼女と一緒に床に倒れてしまう。
「お、おい・・・カノン・・・!」
「ゴメン、トウガ・・私・・・!」
当惑を覚えるトウガに謝るカノンが、思わず顔を赤らめる。
「どうなってるんだ・・・ここから、おめぇから離れたくなくなってる・・・!?」
「トウガ・・・!?」
トウガが口にした言葉に、カノンも戸惑いを募らせる。込み上げてくる感情に抗えず、2人はそのまま抱擁を交わした。
「これが・・女の体なのか・・・」
「私・・大人になって、抱きしめられたのは初めてかもしれない・・・」
互いの体の感触を実感して、トウガとカノンが安らぎを覚える。
「カノン・・このまま、抱いててもいいか・・・?」
「トウガが望むなら、私は構わない・・私の体を好きにしても・・・」
トウガが聞くと、カノンが頬を赤らめて小さく頷いた。2人は顔を近づけて、唇を重ねた。
互いの唇に伝わる心地よい感覚。トウガもカノンもキスは初めての経験だった。
(どうなってるんだ・・・カノンとこうしてると、イヤな気分が消えていく・・・)
(私・・トウガと深く触れている・・トウガとの距離が縮まっていく・・・)
トウガとカノンが心の中で心地よさを感じていく。2人はさらに触れ合おうと、衣服を脱いでいく。
戸惑いを感じながら、トウガがカノンのあらわになった胸に触れた。彼の手の感触にカノンが恍惚を覚える。
(これが、女の胸・・ホントに、こんなに膨らんでるのか・・・)
(私、体を触れられている・・トウガに触れられている・・・!)
カノンの体を確かめるトウガと、彼に触れられて戸惑いを募らせるカノン。さらにトウガに胸を揉まれて、カノンがたまらずあえぎ声を上げる。
「ダメ・・この気分・・抑えられない・・・!」
頬を赤らめて呼吸を乱すカノン。彼女の様子を見てトウガが手を離そうとした。
「待って・・もっと触れていて・・・」
するとカノンが声をかけて、トウガが手を止める。
「いいのか?・・このまま、オレがお前を・・・」
「いいよ・・トウガだったら、何をしてきても受け入れられる・・・」
動揺を膨らませるトウガに、カノンが微笑みかける。彼女はトウガに触れられることを喜びとして感じていた。
「カノン・・とことんオレを受け入れるのか・・・」
「それがいいっていうなら、私は構わない・・・」
心を動かされるトウガに、カノンが微笑みかける。
「お前がそこまで言うなら、オレはもう遠慮しねぇ・・」
ためらいを振り切ったトウガが、再びカノンの胸に触れて撫でまわしていく。
「あぁ・・もっと・・もっと触って・・・」
カノンが心地よさを膨らませて声を上げる。するとトウガがカノンの胸の谷間に顔をうずくめてきた。
「ト・・トウガが・・私に入ってくる・・・!」
トウガのぬくもりと吐息を感じて、カノンがあえぎ声をもらしていく。
トウガがさらに手を伸ばして、カノンの腰やお尻に回していく。さらに触れられて、カノンが恍惚を募らせていく。
(もっと・・もっと入ってきて・・私に触れてきて・・・!)
カノンが心の中でトウガに触れられる喜びを大きくしていた。
「あっ・・・」
トウガの指が股下に触れた瞬間、カノンがたまらず声を上げた。
「カノン・・・」
「大丈夫・・触っていいよ、トウガ・・・」
戸惑いを見せるトウガに、カノンが微笑んで頷いた。トウガはさらに手を伸ばして、ついにカノンの秘所に触れた。
「ぁぁ・・ぁはぁ・・・!」
カノンがさらにあえぎ声を上げる。トウガも感触に心を揺さぶられていく。
「カノン・・・ダメだ・・オレも、我慢ができねぇ・・・!」
トウガが感情に突き動かされて、カノンを強く抱きしめた。トウガの性器がカノンの秘所に入り込んだ。
「あっ!・・あああっ!」
押し寄せる恍惚にさいなまれて、カノンが声を張り上げる。
「くっ!・・くぅぅぅ・・・!」
トウガもカノンとの性交に快感を覚える。それでも2人は交わりを持とうとする欲情にも駆られる。
「トウガ・・トウガが入ってくる・・私の中に入ってくる・・・!」
「ダメだ・・止まんなくなってる・・もっと・・もっと!」
恍惚を募らせて声を張り上げるカノンとトウガ。2人の秘所、性器から愛液、精液があふれてくる。
(トウガと私が混じりあっていく・・私とトウガが、1つに・・・!)
カノンが呼吸を乱しながら、心地よさを募らせていく。
(これは、オレもコイツもムチャクチャになることのはずだ・・それなのに、気分がよくなってくみてぇだ・・むしろ、したくなってくる・・・!)
トウガも心の中で、カノンとの抱擁への欲情に駆られていく。
(カノンにとってオレが必要なのと同じで、オレもカノンが必要だってことか・・・!)
自分の気持ちを確かめて、トウガはカノンへの想いを感じるようになった。
強い恍惚と抱擁を続けたまま、トウガとカノンは眠りに着いた。
抱擁と性交、それらのより恍惚。初めて感じた刺激の中で2人が眠り、夜が明けた。
先にトウガが目を覚まして、眠り続けているカノンを目の当たりにした。
(カノン・・・)
カノンへの想いを感じて、トウガが戸惑いを浮かべる。
(オレ、カノンにエッチなことをしちまったんだな・・カノンはオレのことを受け入れたけど・・・)
カノンと深く交わったことに、トウガは困惑していた。これから自分たちの身に何が起こるのか、彼は詳しく想像できなかった。
(おかしなことになってるけど・・カノンと一緒にいると安心できる・・それだけは確かみたいだ・・・)
カノンへの感謝を見せて、トウガは笑みをこぼした。
「ト・・トウガ・・・」
カノンも目を覚まして、トウガに声をかけてきた。
「カノン・・・オレ・・・」
「昨日はゴメン・・わがまま言ってしまって・・・」
困惑を見せるトウガに、カノンが微笑みかける。
「けど、オレが身勝手におめぇをムチャクチャにして・・こういうふざけたことが許せなくて、オレは戦ってきたってのに・・・」
「それは私のわがまま・・トウガは私に付き合わせてしまっただけ・・・」
自分を責めるトウガに、カノンが弁解を入れる。
「トウガが憎んでいるのは、自分勝手に人を傷付けて、それを悪いと思わずに正しいことにしてくる人・・」
「カノン・・・それは・・そうだけど・・・」
「トウガはその人たちとは違う・・敵を野放しにせずに倒す、人の心を持っている・・・」
動揺を感じているトウガをカノンが励ます。トウガは込み上げてくる迷いを振り切ろうとする。
「私はあなたのその姿と強さに心を打たれた・・そしてあなたのために私も力を使おうと思った・・・」
自分の思いを口にして、カノンが自分の胸に手を当てる。
「あなたがあなたの戦いをする・・私があなたのために力を使い、助けていく・・それが私の幸せになる・・・」
「カノン・・そこまでオレと一緒にいようとしてくれるのか・・」
「私は、あなたに救われたから・・・」
カノンが感謝してトウガに寄り添う。トウガはカノンに救われているという感覚を覚えていた。
「今はオレが、おめぇに救われてる・・おめぇがいなかったら、オレは助からなかったことが何度かあった・・・」
「トウガ・・・」
トウガの思いを聞いて、カノンが戸惑いを見せる。
「これからも一緒にいてくれ・・またおめぇを抱かせてくれ・・・!」
トウガが言いかけて、カノンを抱き寄せてきた。彼からの抱擁にカノンも心を揺さぶられた。
「頼まなくても、私もトウガのそばにいたいから・・・」
「カノン・・・ありがとうな・・・」
互いに感謝するカノンとトウガが、抱擁を続けて、一緒にいることを実感した。
交わりを持ったことで、もう離れ離れになることはない。トウガもカノンもそう思っていた。
それから服を着たトウガとカノンは、地下道から出て外の様子をうかがった。外は普段と変わらない、人々の行き交いと日常があった。
「いつものようにみんな過ごしている・・でも・・・」
「その裏でゴミクズどもがいい気になってる・・絶対に許しはしねぇ・・・!」
深刻な面持ちを浮かべるカノンと、敵意と憎悪を募らせるトウガ。2人は街の雑踏に溶け込むように歩き出す。
「次はどこに行くの・・?」
「ゴミクズどもの巣窟・・自分たちだけ安全な場所にいて、オレたちをムチャクチャにしているヤツらだ・・・!」
カノンの問いかけに答えて、トウガが視線を移す。彼が向かっていたのは、政治家たちの会議場。
会議場では上位の一部の政治家たちは逃亡を図り、他の者たちは人々の救済やガルヴォルスの討伐など、様々な思惑を抱えて滞在していた。
「崎山トウガがこちらに来ているだと!?」
トウガの接近に政治家たちが驚愕をあらわにする。
「防衛線を敷いて食い止めようとしていますが、全く歯が立ちません!」
「早く避難を!ここも危険です!」
ボディガードと警備員が政治家たちに報告して、退避を呼びかける。
「すぐに逃げるぞ!殺されては何にもならない!」
「冗談ではない!あのような畜生にいいようにされて、その上ヤツから尻尾巻いて逃げ出したとなれば、耐えがたい屈辱を味わうことになる!」
「そうなるぐらいなら、ヤツに刃向かって死んだほうがマシだ!」
逃げ出すことを考える者と、徹底抗戦を決め込む者。政治家たちの中でも考えが二分していた。
「私は逃げるぞ!まだ死にたくない!こんなことで死にたくはない!」
逃走を考える政治家たちが会議場から逃げ出す。
「臆病者め!我々はあのような恥知らずにはならん!犬死するつもりもない!」
「バケモノが!必ず息の根を止めてやる!」
不満を口にする政治家たちが、トウガたちに対して迎撃態勢を敷いていった。
会議場に向かっていくトウガとカノン。警備員たちが止めに入るが、トウガによって殴り飛ばされていく。
「ゴミクズを守ろうとするおめぇらも、結局はゴミクズだってことなのかよ・・・!」
憤りを募らせるトウガが、警備員や兵士たちの防衛線を破って突き進んでいく。カノンも彼に続いていく。
「ダメです、止められません!」
「こちらの攻撃が全然効きません!今の装備ではとても・・!」
兵士たちがトウガの力に危機感を募らせる。恐怖のあまりに逃げ出そうとする彼らだが、トウガに追いつかれて手にかけられる。
「ゴミクズは必ず滅ぼす・・絶対に逃がしはしねぇぞ・・!」
敵意と憎悪を浮かべたまま、トウガがカノンとともに会議場の中に入っていった。
ボディガードや警備員、兵士たちが次々と行く手を阻んでくるが、トウガは拳と爪を振るって返り討ちにする。
「どいつもこいつも、自分たちのためだけに行動するゴミクズが・・・!」
怒りの言葉を口にして、トウガが激情を込めて壁に拳を叩きつける。壁が壊されて、その衝撃で周囲の壁や柱も揺さぶられて破損する。
そしてトウガとカノンは会議場の奥、政治家たちのいる会議室にたどり着いた。
「来たか、バケモノ・・!」
政治家たちがトウガとカノンを目の当たりにして鋭い視線を向ける。
「人々を襲い、見境なしに暴れ回るバケモノ・・これ以上貴様らの好きにさせてたまるか!」
「バケモノ・・・オレたちよりも、おめぇらの心のほうがバケモノだ!」
敵意を向ける政治家たちに、トウガが憎悪を募らせる。
「自分たちがバケモノであることを棚に上げて、我々をバケモノ呼ばわりするとは!」
「滑稽だ!実に滑稽!貴様らをこのまま野放しにすれば、被害は世界規模にまで広がる!」
政治家たちが激高して、取り出した拳銃を発砲する。しかしトウガの体に弾丸が弾かれる。
「みんなをムチャクチャにさせてるのは、自分たちが正しいと思い上がっている、おめぇらゴミクズだろうが!」
トウガが怒号を放ち、床を強く踏みつける。その衝撃で机が強く吹き飛び、政治家たちが吹き飛ばされて壁に押し付けられる。
「貴様ら・・我々も手にかけて、国や世界を混乱に陥れるつもりか・・!?」
「貴様らの思い通りになることは決してない・・暴徒の貴様らのやることに納得する人は誰もいない!」
力の差を見せつけられても、政治家たちはトウガに屈しない。彼らのその態度が、トウガの憎悪を逆撫でする。
「ゴミクズの味方をしたり、放っておいたりするヤツもまたゴミクズ・・おめぇらに納得するほうがどうかしてるんだよ!」
トウガが握りしめた右手を振りかざして、政治家の1人に拳を叩き込んだ。その政治家は悲鳴を上げる間もなく体をバラバラにされた。
「こ・・この・・人殺しが!」
もう1人の政治家が再び発砲をする。しかしトウガには全く通じない。
「おめぇらはゴミクズだ・・おめぇらを叩き潰すことは、人殺しにはならねぇ・・・!」
トウガが言いかけて政治家たちに迫る。
「ゴミ掃除をすることが罪になるのか?・・むしろ感謝されること、みんなのためにやったほうがいいことだ・・・!」
「何をわけの分からんことを!人をゴミ扱いするとは、やはり貴様らはバケモノだ!」
鋭く言いかけるトウガに、政治家たちがいら立ちをあらわにする。その態度にもトウガは怒りを募らせた。
トウガが爪を振りかざして、政治家たちを切りつけた。政治家たちが鮮血をまき散らして、倒れて動かなくなった。
「もう何も言うな・・おめぇらが声を出すだけで、オレの気分が悪くなるんだよ・・・!」
憤りを噛みしめて、トウガは声を振り絞る。
「トウガ・・・」
打ち震えている彼を見て、カノンは困惑を感じていた。
「行くぞ、カノン・・ここにいる敵は倒した・・・」
「うん・・・」
トウガが声をかけてカノンが頷く。2人は崩壊をきたした会議場を後にした。