ガルヴォルスLord 第24話「激情の猛攻」
マーブルの力と抱擁によって、ライとカナメは体だけでなく、心までも彼女の支配下に堕ちてしまった。抱き合ったまま石化した2人を目の当たりにして、レナは愕然となった。
「そんな・・・ライとカナメまで・・・!?」
「2人とも最高の心地よさに浸ってるわ。イヤなことをみんな忘れて、心を寄せ合って気持ちよくなってるわ。」
「ふざけたこと言わないで・・ライとカナメは、こんなときにいちゃつくほど落ちぶれちゃいないわよ!」
マーブルが感嘆の声を上げると、レナが憤りの言葉を言い放つ。するとマーブルは妖しく微笑みかける。
「ウフフフ。だったら確かめてみたら?ガルヴォルスであるあなたなら、触れる意識を傾ければ、心の中をのぞけるわ。」
マーブルの言葉にレナは息を呑む。レナはマーブルを警戒しつつ、ライとカナメに近づいていく。
(ライ、レナ、そんな簡単に、あんな女にいいようにされたりしないでしょう・・・!?)
一抹の不安と悲願を胸に秘めて、レナはカナメの腕に触れて意識を集中する。
その直後、レナの脳裏にライとカナメの姿がよぎった。その異様な光景にレナは息を呑む。
ライとカナメは互いを抱きしめ合い、その抱擁に没頭していた。もはや今の2人には、自分たちの愛以外のことは何もなかった。
「ライ・・レナ・・・何やってるのよ、2人とも!私はルナを、ライはお姉さんを助けに来たんでしょ!?こんなところでいちゃついてる場合じゃないって、あなたたちが1番分かってるはずでしょう!」
「ウフフフ、ムダよ。今のライくんとカナメちゃんは心が崩壊してるの。」
ライとカナメに憤りを込めて呼びかけるレナに、マーブルが妖しく微笑みかける。
「この上ない絶望に押しつぶされないよう、互いを愛し合うことで何とか自分を保ってる・・今の2人は、母親に甘える赤ん坊と同じなのよ。」
「あなたが・・ルナだけじゃなく、ライとカナメまで・・・!」
「あなたにも与えてあげるわ・・ルナちゃんと同じ、終わりのない快楽をね・・」
怒りを抱えたまま、レナがマーブルに振り返る。そして一糸まとわぬ石像と化しているルナに眼を向けて、レナは歯がゆさを覚える。
(ルナ・・ゴメンね・・あなたをこんな姿にして・・・すぐにお姉ちゃんが助けるから・・・)
「あなたのものになるなんてお断りよ・・!」
ルナの想いを胸に秘めて、レナが再びマーブルに振り返る。レナの頬には異様な紋様が浮かび上がっていた。
「ルナをこんな姿にした罪は重いわよ・・どんな手段を使ってでも、必ずあなたを殺す!」
言い放ったレナの姿がローズガルヴォルスへと変貌する。レナからほとばしる殺気が、マーブルに鋭く向けられていた。
「ウフフフ。あなたもずい分と純粋なのね。ルナちゃんのためにここまで一生懸命になって・・でも、そのほうが私にとって喜ばしいことなんだけどね・・」
マーブルは妖しく微笑むと、レナに向けて右手を掲げる。
「いらっしゃい。あなたのその全力の殺気、しっかり受け止めてあげる。」
マーブルの言葉にいきり立ち、レナが花びらの刃を放つ。だがその刃の群れが、マーブルの放った衝撃波で弾き飛ばされる。
レナは間髪置かずにマーブルに飛びかかり、手にした花びらの刃を突きつける。だがマーブルが掲げた右手から発する障壁に止められる。
「そしてあなたも私のコレクションに加えてあげる。大丈夫よ。ルナちゃんと一緒にいさせてあげる。せめてもの手向けよ。」
「そういうのを余計なお世話っていうのよ!」
淡々と言いかけてくるマーブルに対し、レナがいきり立つ。力押しを決め込むが、マーブルに到達することがない。
「あなたも分かってるはずよ。あのとき、あなたは私に全く歯が立たなかったことを。」
マーブルは笑みを強めて衝撃波を放つ。その力に押されて、レナは突撃を跳ね返される。
「ぐっ!」
うめくレナが床を横転する。だがレナはすぐに体勢を立て直し、即座に念力を放つ。それは衝撃波ではなく、マーブルを拘束する見えない縄だった。
「分かってるわ。だから、前と同じだと思ったら、大間違いよ!」
眼を見開いたレナが、再びマーブルに向かっていった。
漆黒に彩られた空間の真っ只中。心身ともにマーブルの支配下にあったライとカナメは、互いの体を抱きしめ合い、触れ合っていた。
ライとカナメの心は崩壊を引き起こしていた。もはや今の2人は、本能の赴くまま、相手にすがりつくだけだった。
時に体を撫で回し、時に舌で舐め回していく。その接触に快楽を覚え、2人は吐息をつく。
2人の心の中にあるのは互いに向けての愛だけ。レナもルナも、カイリもアリサも、彼らの心には存在していなかった。
ルナやライ、カナメを救うために向かっていくレナだが、マーブルの驚異的な力に全く歯が立たなかった。
マーブルの放つ念力に体を持ち上げられ、身動きが取れなくなったレナ。必死にもがいて念力から逃れようとするレナだが、マーブルの力は強く、逃れることができない。
「やっぱり私には敵わなかったようね。でもあなたの力、前より上がってるのも確かよ。」
マーブルがレナを見つめて妖しく微笑む。
「悪いけど、こんなところでじっとしてるわけにはいかないのよ・・誰かがおめおめとやられるから、私1人で終止符を打たなくちゃなっちゃったじゃないのよ・・・!」
「別にムリをする必要はないのよ。あなたも私のものになれば、ルナちゃんやみんなと一緒にいられるのよ。」
皮肉を言い放つレナに、マーブルが淡々と言いかける。だがレナはその言葉を受け入れない。
「ルナとは一緒にいたいけど、あなたの手の中なんてお断りよ!」
レナは言い放つと、全身に力を込める。するとマーブルが発していた念力が力任せに破られ、レナが解放される。
床にひざを付き、レナが大きく呼吸をする。彼女の体力は徐々に削り取られていっているのだ。
「まだまだこんな底力があったなんてね。それでも私には敵わない。」
レナの前にマーブルが近づき、淡々と言いかける。
「私を倒すのだったら、あのときのライぐらいじゃないと。」
「あのときの、ライ・・・」
マーブルに言われて、レナはライの真の姿、雷獣態を思い返す。その姿になったライは、マーブルを圧倒していた。
「でも唯一の希望だったライも、もう私のコレクションの仲間入り。あなたももうオブジェになるしかないのよ。」
「つくづく勝手を言ってくるのね・・虫唾が走るとはまさにこのこと・・・」
マーブルの言葉を一蹴して、レナがゆっくりと立ち上がる。だがもはや戦う力さえ残っていないのは明らかだった。
「その体で、どうやって私を殺せるのかな?」
あくまで余裕を見せるマーブルが、レナに石化の雷を放とうと右手を掲げる。その前で、レナは打開の糸口を必死に探っていた。
(私に残されている勝機はもうこれしかない。アイツが私を奪おうとしてるなら、絶対にそれを防げる・・・!)
思い立ったレナが、マーブルに向かって飛びかかる。レナはマーブルにしがみつき、しっかりを締め付ける。
「ウフフ。まさか私が抱きしめられるなんてね。」
マーブルは笑みをこぼしてレナを見つめる。それでもレナはマーブルから離れない。
「そういえばあなた、私もコレクションに加えたいとか言ってたわね。でもこうして密着してたら、どうなるのかしらね?」
不敵な笑みを浮かべて言い放つレナに、マーブルが眉をひそめる。
「このままあなたが私を石にしようとしたら、あなたまで巻き添えになるわね。楽しみなんじゃないの?自分自身が丸裸の石像になるんだから。」
レナは確信していた。この状態ではマーブルは石化の雷を放てない。放てば自分も石化してしまうことになると。
この状態を維持すれば、マーブルの思い通りにはならない。レナはそう思っていた。
だがマーブルは妖しい笑みを崩していなかった。
マーブルはレナにしがみつかれているにも関わらず、指を鳴らした。上から放たれた稲光が、レナとマーブルに向かって飛び込んだ。
マーブルにしがみついていたレナが脱力していき、姿が人間へと戻る。稲光に包まれた彼女が、平穏を保てないような感覚を覚える。
やがてレナが身につけている衣服が、稲光の衝撃で引き裂かれていく。だがレナはこの衝動に抗うことができなくなっていた。
しばらくして稲光が消失し、レナとマーブルが姿を現す。レナは完全に脱力してしまい、その場に立ち尽くしていた。
そこでレナは信じられないものを目の当たりにして驚愕していた。自分と同じく稲光を浴びたはずのマーブルが、何事もなかったようにその場に立っていた。
「何で・・私と一緒に当たったはずなのに・・・」
レナが平然としているマーブルに弱々しく疑問を言いかける。するとマーブルが妖しい哄笑を上げてきた。
「ウフフフフ。私を道連れにしようという考えは見事だと言っておくわ。でも残念。これは私の力。自分の墓穴を掘るような仕組みにはできていないわ。」
「そんな・・そんな、ことって・・・」
マーブルの言葉を聞いたレナが愕然となる。
そのとき、レナは突如押し寄せてきた衝動に顔を歪める。体から無機質な音が響いてくるのを実感し、彼女は奇妙な気分を感じていた。
「な、何!?・・この感じ・・強すぎて、どうかなっちゃいそう・・・」
体の中を駆け巡る刺激に、レナは押しつぶされそうになるのを何とかこらえていた。だが彼女の秘所から愛液があふれ出てきていた。
「ど、どうして出てきちゃうの!?・・止まんない・・止めようって考えてるのに、勝手に出てくる・・・!」
「ウフフフ。今のあなたは、石化の快感で抑制が全く効かなくなってるのよ。だからあなたの快楽のまま、自分を解放していくのよ。」
動揺するレナに、マーブルが妖しく微笑みかける。マーブルはレナを後ろから抱きしめると、レナの右の胸をもみ始める。
「く、くあぁ・・あはぁ・・」
さらなる快感と刺激にレナがあえぎ声を上げる。
「どう?こうするともっと気持ちよくなってくるでしょう?」
マーブルに胸を揉み解されるだけでなく、体を撫で回されて、レナがさらにあえぐ。彼女の秘所からあふれた愛液が彼女の素足を伝い、床にこぼれていく。
「不思議よね?石になってるはずなのに、ちゃんと人の柔らかさがある。それが人から石への変質の途中の、ほんの一瞬の不思議な感覚なのよ。」
マーブルはレナに妖しく語りかけるが、レナは快感にさいなまれて、答える余裕すらなくなっていた。マーブルはレナの下腹部に手を伸ばし、指で愛液をすくい取る。そしてその指を自分の口に運んで舐め取る。
「おいしい・・ルナちゃんを想うあなたの心が、私の中にも広がってくるわ・・」
「勝手に人の気持ちを説明しないでほしいわね・・・」
感嘆の声を上げるマーブルに、レナがようやく反論の言葉を返してきた。
「ウフフ、まだまだ元気なのね。なら、今回はちょっと趣向を変えたことをしてみましょうか。」
マーブルは言いかけると、再びレナの下腹部に手を伸ばし、愛液をすくい取る。その指先を、今度はレナの口の中に入れる。
自分の愛液を口の中に押し込まれて、レナが動揺を膨らませる。とっさに吐き出そうと考えたが、体が思うように反応しない。
ついに口に入れられた愛液を飲み込んでしまうレナ。体だけでなく、心までも追い込まれてしまう。
「おいしいでしょう?自分の気持ちを自分で味わうのも、悪くないということね。」
悠然と囁くマーブルだが、レナは完全に困惑してしまい、抗う意思も揺さぶられてしまっていた。
「それじゃそろそろ、愛しい妹さんのところに行かないとね。あまり時間をかけすぎると、石化が進行しすぎて寄り添うこともできなくなってしまうから。」
マーブルはレナに言いかけると、彼女を抱えたまま音もなく移動する。着地した2人の前には、石化されて棒立ちのままでいるルナがいた。
「私は十分に楽しませてもらったわ。後は妹さんと楽しい時間を過ごすといいわ。」
妖しく微笑むマーブルに促されるまま、レナはルナに寄り添う。ルナの顔を眼にして、レナは失いかけていた意識を取り戻す。
「ルナ・・ルナが、いた・・・」
眼前のルナを見つめて、レナが笑みをこぼす。彼女は想いの赴くまま、ルナを優しく抱きしめる。
「ゴメンね、ルナ・・お姉ちゃん、ドジっちゃった・・あの女にムチャクチャにされちゃった・・・こんなお姉ちゃん、ダメだよね・・・」
ルナに謝罪の言葉をかけるレナ。悲痛さのあまり、彼女の眼から涙があふれてくる。
そのとき、レナの眼に、微笑みかけてくるルナの姿が映った。石化されていない、普段のように優しく笑顔を絶やさないルナの姿を見て、レナは戸惑いを覚える。
「謝るのは私のほうだよ、お姉ちゃん・・お姉ちゃんのために何もできなくて、私・・・」
「ルナ・・・」
ルナの言葉を耳にして、レナは困惑する。だがレナは迷わずに、ルナの体を抱き寄せた。
「いいのよ、ルナ・・あなたがそばにいるだけで、お姉ちゃんはとっても幸せなんだから・・お姉ちゃんが無敵なのは、ルナがいるからなんだから・・・」
「お姉ちゃん・・・ありがとう・・・」
互いの気持ちを確かめ合って、レナとルナが抱きしめあう。その抱擁に、レナはこれ以上ないほどの心地よさを感じていた。
(謝るのも、感謝するのも私のほうだよ・・ゴメンね、ルナ・・そして・・ありがとう・・・)
ルナの石の体を抱きしめたまま、無機質な音を立てて固まっていくレナの体。石化とそれによる快感にさいなまれる中、レナはルナへの想いで満たされていた。
脱力し、レナの意識が途切れる。その瞬間、彼女の体は完全に石化に侵食された。
「ウフフフ。これでまた、私のコレクションが増えたわね。それも妹に後から姉が寄り添うという不思議な形で・・」
レナとルナを見つめて、マーブルが笑みをこぼす。彼女は2人の石の体に触れて、その感触を確かめる。
「深い絆で結ばれた姉妹が、こうして寄り添いあって永遠の愛の中を過ごす。これ以上ないくらいの幸せのはずよ。」
レナとルナの顔を見つめて、マーブルは2人の頬を舐める。石化した人の体の感触を確かめることも、彼女の快楽のひとつだった。
そのとき、部屋の外から足音が聞こえ、マーブルが視線を移す。すると傷だらけのカイリが部屋を訪れてきた。
「カイリ・・・!?」
マーブルが笑みを消して声を荒げる。疲れ果てているにもかかわらず、カイリは笑みを見せてきていた。
「カイリ、大丈夫!?誰が、誰がこんなことを・・・!?」
「姉さん、僕は大丈夫だよ・・それよりもゴメン・・僕、ライくんを止めることができなかった・・・」
心配の声をかけるマーブルに、カイリが謝罪の言葉を返す。マーブルは微笑んで、首を横に振る。
「いいえ。あなたは何も悪くないわ。見て。こうしてライくんもカナメちゃんもレナちゃんも、みんなきれいなオブジェになったわ。」
「やったんだね、姉さん・・これで姉さん、幸せが舞い込んできたんだね・・」
石化したライたちを指し示して喜びを浮かべるマーブルに、カイリも同意して笑みをこぼす。
「カイリも寂しくなくなるわね。今まで過ごしてきた子たちが、今こうしてここにいるんだから。」
「そんなことないよ。言ったじゃないか。僕は姉さんさえいてくれるなら、全然寂しいことはないって・・」
「ウフフ。あなたにそういってもらえると、私も嬉しいわ・・ライくんとカナメちゃんの心の中をのぞいてきたわ。2人とも互いへの愛でいっぱいになっているわ。」
「愛でいっぱいにさせた。というのが正しいのでは?・・そのほうがすばらしいけどね。姉さんの優しさを受けたんだ。これ以上の幸せはないよ。」
感嘆の言葉を掛け合うマーブルとカイリ。マーブルは再びレナとルナの石の体を優しく抱きしめる。
「カイリ、レナちゃんとルナちゃんの心の中にも入るからね。2人の愛も育まないといけないからね。」
「僕に断らなくてもいいよ。姉さんが思うようにすればいい。だってみんな、姉さんのコレクションの仲間入りをしているんだから。」
マーブルが言いかけると、カイリが弁解を入れる。マーブルは頷くと、レナとルナを抱き寄せ、意識を傾ける。
この姉妹の心の中にも、マーブルの意識が入り込んでいった。
次回
「こうすればもっと気持ちよくなれる・・」
「あなたが求めていたものは、本当は何なの?」
「姉さん・・・!?」
「あなたが・・・!?」
「あなたが求めていたのは私じゃない。あなたのずっとそばにあったのよ・・・」