ガルヴォルスLord 第23話「支配の石化」
「・・ライ・・・ライ・・・」
カナメの呼びかけを耳にして、ライは意識を取り戻した。
「ライ・・眼を覚まして、ライ・・・!」
カナメの呼びかけが強まり、ライはようやく眼を開けた。するとカナメが沈痛の面持ちで見つめてきていた。
「カナメ・・・」
「ライ・・よかった・・このまま眼を覚まさないのかと思った・・・」
ライが呟きかけると、カナメが安堵の笑みを浮かべてきた。そこでライは、カナメが丸裸であることに気付く。
「カナメ、お前・・・!?」
「ライ、私たち、マーブルの力を受けて体が石になって・・・」
声を荒げるライに、カナメが事情を説明する。それを聞いてライは歯がゆさをあらわにする。
「そうか・・もう、オレたちはアイツの手の中なんだよな・・・」
ライが言いかけると、カナメも沈痛の面持ちを浮かべた。
「私、マーブルにかけられた石化に逆らえなかった・・体の変化に、どんどん気持ちよくなってきてしまって・・・」
カナメは言いかけて、自分の身に降りかかった気分を思い返していた。マーブルの力によって体が石に変質した際、かつてない快感と刺激に襲われた。その感覚に心を大きく揺さぶられ、彼女は冷静さを保てなかった。
「ライの言うとおりだった・・体の中からピキピキと音がしてきて、その音のひとつひとつが私の中を駆け巡ってきて・・おかしくなっていくのが自分でも分かる・・・」
「カナメ・・・」
「もしもライに抱きしめられていなかったら、私、このままマーブルに好感を持ってた・・・私・・・」
悲痛さをあらわにするカナメに、ライは戸惑いを覚える。カナメはマーブルの力に飲み込まれそうになった自分を責めていたのだ。
するとライがそんなカナメの体を強く抱きしめた。その抱擁にカナメが戸惑いを見せる。
「もう自分を責めるな、カナメ・・お前は何も悪くないんだ・・・」
「ライ・・・」
「これはアイツの力なんだ・・アイツの石化は体だけじゃなく、心までおかしくさせてしまう・・姉さんもルナも、それで・・・」
カナメに呼びかけて、ライはマーブルへの憤りをあらわにした。だがもはやどうすることもできないとも実感しており、彼らは歯がゆさを募らせるしかなかった。
「ライ、私たち、どうなってしまうのかな・・このままずっと、マーブルの好き放題にされてしまうのかな・・・」
「そういうことになるんだろうな・・・あの漫画はどうなったんだ?」
「よく分からない・・完全に石化されてから石化が解けるまで意識がなかったし、元に戻るときに事件の記憶を消されてるから・・」
「意識がない、か・・もしかしたら、その間にいろいろやられてる、なんてこともあったりしてな。」
「やっぱりライね・・恥ずかしいことを平気でいうんだから・・・」
不安定な空間の中で、屈託のない会話をするライとカナメ。2人は互いを抱きしめ合い、そのぬくもりを感じ取っていた。
「このまま、こうして抱きしめてることしかできないんだね、私たちは・・・」
「そういうことになるのか・・今のオレたちの、せめてものわがままということなのか・・・」
カナメが囁いた言葉にライが苦笑する。
「どうせだから、私たちも好きなことをしてしまいましょうよ。こんな状態だから、できることは限られてるけど・・」
「それでも、少なくても気休めにはなるだろうな・・・」
言葉を交わすと、ライはカナメの素肌に手を当てる。彼女の滑らかな肌を撫でて、行き着いた胸を揉んでいく。
その接触にカナメがうめく。だがその中で彼女は安らぎと心地よさを感じていた。
「ウフフフ、2人とも何だか楽しそうね。」
そのとき、聞き覚えのある声を耳にして、ライとカナメが緊迫を覚える。
「この声・・マーブル・・・!?」
「バカな・・どうしてアイツが、オレたちのところに・・・!?」
カナメとライが驚愕の声を上げる。その間も、マーブルの妖しい微笑みがこの空間に響き渡っていた。
「どうして?分かってるはずでしょう?あなたたちは私のものになったんだから。」
マーブルがさらに妖しく微笑みかける。そしてライとカナメの前に彼女は姿を現した。2人と同じように、一糸まとわぬ姿で。
「どう?いい気分でしょう?美しいオブジェになるのは。」
「何をふざけたことを言ってるんだ・・ここまで入り込んできて・・そこまでオレたちをムチャクチャにしたいのかよ!」
悠然と語りかけてくるマーブルにライが声を荒げる。するとマーブルはさらに笑みを浮かべてくる。
「そんな物騒なことは考えていないわ。ただ、あなたたちからイヤなものを取り除きたいだけ。」
「何!?・・オレにとっては、お前が1番イヤなんだけどな・・・!」
マーブルの言葉にライが愚痴るように言い放つ。それでもマーブルは笑みを消さない。
「マーブル、どうしてそこまで、私とライに執着するの・・・!?」
そこへカナメが真剣な面持ちでマーブルに声をかけてきた。
「あなたはたくさんの女性をさらっては石にして、自分のものにしてきた・・そのあなたが、私たちを強く求めるのはどうしてなの・・・!?」
「ウフフフ。そうね。せっかくだから教えてあげる・・・」
問い詰めてくるカナメに眼を向けて、マーブルが答える。
「それはね、ライくん、カナメちゃん、あなたたちの中に、希望という輝きがあるからよ。」
「希望・・・!?」
マーブルが口にした言葉に、ライとカナメが眉をひそめる。
「あなたたちは絶望というものを経験してきた。人の負のどん底まで落ちながら、それでも生きようとしてきた・・」
「何を言ってきてるんだよ・・その絶望を与えたのはお前だろうが!」
マーブルの言葉に反発し、怒号を上げるライ。だがマーブルはそれに気負うことなく、話を続ける。
「絶望という暗闇の中で、あなたたちは一条の希望の輝きを追い求め続けてきた。それは自分を最高の輝きにするためのすばらしい行為だったのよ。」
「どこまで勝手なことを言えば気が済むんだ!自分の価値観でオレたちを測るな!」
「ウフフ。確かに私の価値観だけど、あなたを悪くするつもりはないのよ。」
「お前はオレから姉さんを奪った!お前のせいで、お前が姉さんをおかしくしたせいで、オレがどれほど苦しんだと思ってるんだ!」
マーブルに対して激情をあらわにするライ。マーブルの行為が、ライの運命を大きく変えたのだ。
「それが今のあなたを、最高に磨かれたあなたを生み出したのよ。」
「なっ・・・!?」
眼を細めて告げたマーブルの言葉に、ライは言葉を詰まらせる。
「あなたがお姉さんを奪われて、怒り悲しみ、絶望することは、私の予測していたことだったのよ。」
「そんな・・それじゃ、まさか・・・!?」
マーブルの言葉に、カナメが愕然となって声を荒げる。
「そう。この時間まで、あなたたちはずっと、私のシナリオ通りに動いてたのよ・・・」
笑みを強めて言いかけるマーブル。その言葉にライとカナメは言葉を失った。
姉を奪われて絶望し、ガルヴォルスへの憎悪を膨らませた日々。自分たちの利欲のために他人への排他を振りかざしてきた人間に絶望し、狂気にさいなまれた日々。それらが全て、1人の女が企てた脚本の中でしかなかったことに、2人はさらなる絶望を感じていた。
愕然となっているライとカナメに向けて、マーブルがゆっくりと歩み寄る。左手でカナメの左胸に触れて、滑らかに揉み解していく。
「あ・・ああぁぁ・・・!」
その接触にあえぎ声を上げるカナメ。その反応を見て、マーブルが高揚感を募らせていく。
「それでいい・・あなたたちはこうして気持ちよくなっていけばいいの。もうあなたたちの邪魔をするものは何もないわ・・」
「やめろ・・カナメから手を離せ・・!」
ライがマーブルの手をカナメから引き離そうとする。だが彼の伸ばした手がマーブルの右手につかまれる。
マーブルはライのその手を引き寄せて、カナメの左胸に当てさせる。カナメがさらにあえぎ声を上げ、ライが困惑を見せる。
ライがカナメに触れている右手を引き離そうとする。だがマーブルにつかまれているその手を思うように動かせない。
「どうなってるんだ・・右手が、全然動かせない・・・!」
「ムダよ。あなたたちはもう、私に絶対に逆らえない・・だって、あなたたちはもう、私のものになったんだから・・」
抗うライに向けて、マーブルが淡々と言いかける。その言葉にライは眼を見開く。
「あなたたちは私の石化の雷を受けて、美しいオブジェになった。今のあなたたちは、私の手の中にいるのと同じなのよ。あるいは・・」
マーブルは言いかけると、ライとカナメを抱き寄せる。突然の抱擁に2人は困惑し、身動きができなくなる。
「こうして抱きしめられている、といえるのかしらね。」
自分の胸の谷間にライとカナメの顔を押し当てるマーブル。ライとマーブルは逆らうことができず、困惑を膨らませるばかりだった。
「こういう愛の安らぎを堪能するのも、私の喜びのひとつなの。あなたたちの鼓動が、私の胸や体にどんどん突き刺さってくるのよね。」
「は、放して・・私は、私たちは、あなたの悪趣味に染まりたくない・・・!」
恍惚を膨らませていくマーブルに抗おうとするカナメ。しかしカナメもライも、マーブルの抱擁から逃れることができない。
「何度も言ってるでしょう?あなたたちは私のもの。あなたたちは実際は、オブジェになっていて指一本動かせない状態にあるのだから・・」
「それじゃ、オレたちがお前に逆らえないのは・・!」
「そう。だからあなたたちは、私に何をされても文句は言えないの。」
マーブルはライとカナメに言いかけると、そっと手を伸ばす。そしてライの性器をつまむと、カナメの秘所に挿入する。
「あはぁ・・ぁぁぁぁ・・・!」
「やめろ・・オレたちを・・オレたちをこんな・・・!」
押し寄せる刺激と快感にあえぐカナメとライ。抵抗することもできず、2人はマーブルのされるがままになっていた。
「どんなに逆らおうとしてもダメよ・・あなたたちは私の思うがまま・・あなたたちは私に抱かれて、永遠の快楽を楽しむのよ。」
マーブルは言いかけると、ライとカナメを優しく抱きしめた。もはや2人は逆らおうとする意思さえ揺らいでいた。
「最初はね、あなたのお姉さんだけを狙っていたのよ。でもそこであなたを見たとき、直感したのよ。これはとんでもない上玉だって。」
マーブルが囁くようにライに言いかける。
「でもそのときはすぐに手に入れようとはしなかったわ。まだものにする時期じゃなかったから・・果実は成熟してから取ったほうがいいからね。」
「それじゃ、オレがお前やガルヴォルスを憎むようになることは、お前の願っていた通りのこと・・・」
「そう。あなたは絶望のどん底の中で、光を求めて必死に手を伸ばしていた。それがあなた自身の輝きを磨くことになったのよ。」
弱々しく答えるライに、マーブルは淡々と話を続けていく。
「待った甲斐は十分にあったわ。あなたは私が思ってた通り、ううん、思ってた以上にあなたはすばらしくなっていた。しかも同じような形ですばらしくなっていたもう1人の女の子と一緒にいた・・こんなに嬉しいことはなかったわ・・」
マーブルは笑みをこぼすと、ライとカナメの頬に優しく手を沿える。
「今は最高の気分だわ・・あなたたちを抱きしめていると、心が安らいでくる・・・あなたたちには、本当に感謝しているわ・・・」
感謝の言葉をかけて、ライとカナメに体を寄せるマーブル。だがライもカナメも完全に気力を失っていた。
今までの人生も戦いも、憎むべきものを憎むことでさえ、全てマーブルの手のひらの上で踊らされていたことであると理解し、彼らは一切の希望が持てなくなっていた。
絶望に陥った彼らの心は崩壊を起こしていた。2人は無意識に互いを抱きしめ合い、素肌への触れ合いを求めた。
「それでいい・・あなたたちはこうして心地よさを感じ続けていけばいいのよ・・それがあなたたちの、永遠の幸せになるのだから・・・」
マーブルはライとカナメの姿を見て喜びを感じ、2人から離れた。
「あなたたちのその愛を邪魔するものはもう何もない・・安心して、その愛を楽しむといいわ・・・」
マーブルは抱擁を続けるライとカナメを見つめて、この空間から姿を消した。2人の瞳には生の輝きはなく、ただ本能的に互いに触れるだけだった。
抱き合った体勢のまま石化したライとカナメの意識へと潜り込んでいたマーブルが、現実に意識を戻してきた。2人の体だけでなく心も手中に収まったことに、彼女は喜びを感じていた。
「これでライくんもカナメちゃんも、最高かつ永遠の快楽に堕ちていった・・それが、私の心にも安らぎを与えることになる・・・」
ライとカナメの石の頬に手を添えて、マーブルが呟く。
「私の石化の雷は、オブジェにした人の中にある輝きを表面化させる。最高の輝きを宿していたライくんとカナメちゃんは今、最高のオブジェとなった・・」
心の底から湧き上がってくる恍惚を抑えきれなくなるあまり、マーブルはライとカナメの頬に軽く唇を当てた。
「しかも、心の中で愛を膨らませてる・・あなたたちは、私のコレクションを代表する柱となったのよ・・・」
マーブルは笑みを強めて、ライとカナメの石の体を撫で回していく。完全に石化されている2人は、その接触に逆らうことはない。
「この腕、この胸、この足、触ってはいけないものまで、全て私のもの・・この2人を、私が独占しているのよ・・・」
2人を支配していることを実感するマーブル。石の体に触れていた手を引き、その指を舐める。
「私に支配されれば、絶対に不幸になることはない・・最高の快楽と心地よさを、永遠に感じていられるのよ・・・」
マーブルは周囲に立ち並んでいる裸の女性の石像たちを見回して呼びかける。全てが彼女によって石化され、押し寄せる快楽を堪能している女性たちである。
「せっかくだから、2人にサービスをしてあげないとね。」
マーブルは笑みをこぼすと、再びライとカナメを抱きしめる。彼女は音も立てずに姿を消し、別の地点へと移動する。
彼女の前にいた裸身の石像の少女。それはライの姉、アリサだった。
「ずっと追い求め続けてきたものね。会わせてあげないわけにはいかないわよね。」
マーブルはアリサの前にライとカナメを置く。マーブルは3人から離れて、その裸身を見つめる。
「弟とその恋人を見守る姉、というところね・・」
悠然さを浮かべて、マーブルが哄笑を上げる。欲情と支配を実感して、彼女は喜びを振りまいていた。
そのとき、廊下のほうから足音が響き、マーブルが振り向く。この部屋に、ガルヴォルスたちを撃退してきたレナがたどり着いてきた。
「ようやくご到着のようね、レナさん。」
マーブルが妖しい笑みを浮かべて、レナに声をかける。悠然さを見せながらも慄然さを噛み締めているレナが、マーブルに眼を向ける。
「ずい分と手荒な歓迎をしてくれたわね・・きついお礼をしてあげるから、覚悟しておいたほうがいいわよ・・」
「ウフフフ。それは楽しみね。刺激あるものなら、退屈しなくていいと私は思うわ。」
鋭く言い放つレナの言葉に、マーブルは笑みを崩さずに答える。彼女に近づいていくレナが、そのそばにいたライとカナメの変わり果てた姿を目の当たりにする。
「えっ・・・!?」
見つめる先の光景が信じられず、レナが言葉を失う。マーブルが笑みを強めて、感嘆の言葉をかける。
「少し遅かったわね。さっき、ライくんとカナメちゃんが私のコレクションに加わったところよ。体も心も、私に抱かれて気持ちよくなっていったわ・・」
哄笑を上げるマーブルに驚愕の色を隠せなくなるレナ。ライとカナメは、心身ともにマーブルの魔手に堕ちていった。
次回
「そんな・・・ライとカナメまで・・・!?」
「あなたにも与えてあげるわ・・ルナちゃんと同じ、終わりのない快楽をね・・」
「あなたのものになるなんてお断りよ・・!」
「どんな手段を使ってでも、必ずあなたを殺す!」