ガルヴォルスLord 第18話「海辺の休日」
自分の身に起こっている異変に、カナメは驚愕していた。自分が着ている衣服が引き裂かれ、さらけ出された体が石になっていた。
「体が、石になっていく・・それに、服まで破けて・・どうなってるの、コレ・・・!?」
カナメが声を荒げるが、石化した体は彼女の意思に反して微動だにしない。
「ウフフフ。いい感じね。やっぱりあなたはオブジェになったほうが美しいわね。」
そこへ女性と思しき声がカナメの耳に飛び込んできた。彼女の眼前に、女性と思しき影が姿を現し、妖しく微笑む。
「あなたはもう私のもの。このまま美しいオブジェになり、私のコレクションの仲間入りをするのよ。」
「何を言っているのよ・・こんなことで、私があなたのものになるわけが・・!」
「あなたは私の力で石化されていっている。それはあなたが私に支配されている何よりの証拠。」
「支配・・・!?」
女性が口にする言葉にカナメは困惑する。その間にも、石化はカナメの体をさらに侵食していた。
この状況を何とかしようとするカナメだが、石化した体は彼女の言うことをまるで聞き入れようとしない。
「あなたは私のもの。私が十分かわいがってあげるから・・・」
女性が妖しく微笑みかける。反論しようとするカナメだが、もはや彼女には声を上げる力も残っていなかった。
やがて彼女は意識を保てなくなった。カナメは一糸まとわぬ石像と化した。
「イヤアッ!」
あまりの恐怖に悲鳴を上げながらたまらず起き上がるカナメ。呼吸を整えたところで、彼女は自分が今見ていたのが夢だったことに気付く。
「夢・・・あんな夢を見るなんて・・・」
あまりに恐ろしい夢に感じて、困惑の色を隠せなくなるカナメ。
「ん・・どうした、カナメ・・・?」
そこへ、カナメの声を聞いて眼を覚ましたライが声をかけてきた。
「ライ・・・ううん、何でもない・・ちょっと、悪い夢を見ただけだから・・・」
カナメは微笑みかけてライに弁解する。
カオリとの一件の日の夜、ライとカナメはともに一夜を過ごした。2人は衣服を脱いで抱き合い、シーツを羽織って眠っていたのである。
「イヤな夢ならあんまり抱え込まないほうが気が楽だ。お前はこれからを生き抜くんだろ?」
「ライ・・そうだね・・私は、私たちは、これからを精一杯生きるのだから・・・」
ライに励まされて、カナメは小さく頷く。立ち上ってきた朝日の光が、窓から差し込んできた。
カオリの襲撃で滅茶苦茶になってしまったカイリの店は、やむなく臨時休業となった。しかしこれが休みを設けることとなった。
「仕事が多いのもイヤだが、何もないのも気分がよくないよな。」
修復工事が行われている店を見上げて、ライが言いかける。
「ですが、とりあえず落ち着いてよかったよ。あなたもカナメさんと仲直りできたみたいですしね。」
「別にそんな仲が良かったわけじゃねぇよ。」
カイリが言いかけると、ライは憮然とした態度を見せる。
「どうかな?せっかくだから海に行くというのは。」
「えっ!?海に行く!?」
カイリが出した案にライが声を荒げる。そこへカナメ、レナ、ルナがやってきた。
「おやおやぁ?何だか面白い話をしてたみたいだけど。」
レナがライとカオリをからかおうとにやけてみせる。カイリは笑顔を浮かべてカナメたちに言いかける。
「みなさん、営業再開までのこの休日です。海に行って大いに羽を伸ばすことにしましょう。」
「おっ!海ですか。カイリさん、ナイスアイディアですねぇ。」
カイリの申し出にレナが気さくな笑みを浮かべる。
「羽休めには丁度いいかもしれませんね。」
「海かぁ・・あんまり水着をジロジロ見られるのは好きじゃないんだよねぇ・・」
カナメが微笑む横で、ルナが不安の面持ちを浮かべる。胸の大きい彼女は、男のいやらしい視線が気がかりになっていたのである。
そんなルナに歩み寄り、レナが不満を口にする。
「いいよねぇ。かわいい女の子としての魅力が十二分に見せ付けられる妹ちゃんは。」
「もう、からかわないでよ、お姉ちゃん・・」
からかってくるレナに、ルナが肩を落とす。するとレナがルナの肩に優しく手を添える。
「大丈夫よ。ルナにそんなエッチな輩が近づいてきたら、私が懲らしめてやるから。」
「ありがとう、お姉ちゃん・・・」
レナの励ましを受けてルナが微笑む。
「もう、本当にこの姉妹は・・」
その傍らでカナメは呆れるも、この屈託のない日常に安堵を感じていた。これこそが求めていた安息の場所なのだと、彼女は思っていた。
その翌日、ライたちは近くの海辺を訪れた。上は青空と太陽、下は白い砂浜と青い海が広がっていた。
「うーん、やっぱり海はギンギンの太陽の光があるのが1番だよ。」
「いきなり何言い出してるんだよ。」
大きく体を伸ばすカイリに、ライが呆れる。
「それじゃ、男女に分かれて着替えてきましょう。この日のために伸張しておいた水着を、ようやく披露できるときが来たわね。」
レナが期待に胸を躍らせるように言いかける。
それから十数分後、それぞれ水着への着替えを済ませる。先にライとカイリが浜辺で待っていた。
そして次に着替えを終えてやってきたのはレナだった。
「はーい♪お・ま・た・せ♪」
白を基調としたレイヤードビキニを身につけて現れたレナに、カイリが思わず頬を赤らめる。
「もう、カイリさんったら見とれちゃってぇ。やっぱりこの水着とのマッチは正解だったかもね。」
「なに有頂天になってるのよ、あなたは。」
そこへライトブルーのトライアングルを着たカナメがやってきて、レナの態度に呆れてみせる。
「何言ってるのよ、カナメ。あなただってけっこう大胆なの着てるじゃない。」
「買い物のときに、あなたが勝手に選んだんじゃない。だから仕方なく・・」
にやけてくるレナの言葉を受けて、カナメが弁解を入れる。
「別に何でもいいじゃねぇかよ。水着ぐらいで早々引っかかる男なんて本性丸出しのバカだってことなんだよ・・」
ライがため息混じりに愚痴をこぼしたときだった。
ルナが恥ずかしそうに彼らの前に現れた。彼女の着ている水着は、ライム色のきわどいインポートだった。
「ホォ・・」
「ハァ・・」
その姿にライとカイリは眼を離せなくなり、吐息をつく。
「もう、本当にバカなんだから・・・」
2人の反応にカナメが呆れてため息をつく。
「お姉ちゃん、やっぱり恥ずかしいよ、こんな格好・・」
「いいじゃないの、ルナ。あなたは胸も大きいしスタイルもいいんだから、このくらい大胆にいかないと。」
赤面するルナに、レナがからかいの言葉をかける。それでもルナの困惑は消えなかった。
「とにかく、せっかく海に来たんだから泳がないといけないんじゃないの?ここまで来て水着まで来て、泳がないというのはないと思うんだけど?」
「そうね。わざわざデパートで念入りにチェックして試着して選んできたわけだから。」
そこへカナメが言いかけると、レナが微笑んで頷いてみせる。憮然さを浮かべているライに、カナメが手を差し出してきた。
「行こう、ライ・・・」
「・・あぁ・・・」
ライは微笑みかけて、カナメの手を取った。
それからライたちの海辺の休日が始まった。
大海原を元気よく泳ぎ回り、解放感を堪能する。カイリがサーフィンをすると、バランスを崩して海に落ちてしまい、レナが笑みをこぼす。
ルナがいつの間にやら体を砂で埋められていて、それを見て笑っているレナに向けて赤面しながら不安をこぼす。
ビーチバレーを楽しみ、ライとカナメが笑みをこぼす。この屈託なく安らぎに満ちたひと時を、彼らは十分に堪能していた。
自分たちから失われ、手に入れたい、取り戻したいと欲していた日常。その時間を自分たちが過ごしていると、彼らは思っていた。
この時間がいつまでも続いていてほしい。それが、今のライとカナメの切実な願いとなっていた。
その海辺の隣にある海岸。その岩場に佇む1人の男がいた。
男はその岩場から海辺を見つめて、不気味な笑みを浮かべていた。
「ハハ・・美女ばかり・・より取り見取りだなぁ・・」
男が見つめていたのは、海辺にて活発に遊んでいる少女たちだった。
「あの子たちをきれいにしたら、どんなに気分がよくなるだろうか・・ハハハハ・・」
男が欲情に駆られて、岩場から歩き出す。そして彼は、岩場を訪れてきた2人の水着姿の少女たちを発見する。ピンクのワイヤータイプを着た藍色のポニーテールと、胸元にリボンの付いているモンロータイプを着たレモン色のロングヘアである。
「よし・・まずはこの子たちから・・・」
笑みを強める男の頬に紋様が走る。そして彼の姿が、貝を彷彿とさせるシェルガルヴォルスへと変化する。
「きれいに、きれいにしてあげるから!」
シェルガルヴォルスが叫びながら、両手から虹色の光を放つ。その光を浴びたポニーテールの少女が、きょとんとした面持ちのまま固まっていった。
宝石の像と化した少女を目の当たりにして、もう1人の少女が恐怖して悲鳴を上げる。逃げ出そうとした彼女にも、シェルガルヴォルスは光を放つ。
その光を浴びた少女も、きらびやかな宝石の像へと変わり、動かなくなる。その姿かたちを見つめて、人間の姿に戻った男が笑みをこぼす。
「ホント・・ホントにきれいだよ・・他の子たちにもこの気分を味わってほしいな・・」
男は欲情の赴くまま、海辺に向かって歩き出していった。
「ふぅ・・ちょっと休憩・・」
ひと通り海でのひと時を過ごしたカナメが仰向けになる。すると頬に冷たいものを当てられて、カナメが顔を歪める。
「はーい♪あなたにしてはずい分楽しんでたみたいだったけど?」
カナメが眼を向けた先には、カキ氷を手にしたレナが笑顔を向けてきていた。
「くー!やっぱりこのキンキン感がたまらないのよねー、カキ氷って♪」
カキ氷を口にして、独特のうずきに笑みをこぼすレナ。カナメは微笑んで、レナが差し出してきたカキ氷を手にする。
「ありがとう、レナ。いろいろ親切にしてくれて。」
「べ、別に私は・・あなたがこの前のときみたいに落ち込んでたら、こっちまで滅入ってしまうからね。」
カナメが感謝の言葉をかけると、レナが照れ隠しに突っ張ってみせる。彼女の真意を理解していたので、カナメは改めて微笑んだ。
そこへライがやってきて、カナメの隣に腰を下ろしてきた。
「どう?たまにはこういうのも悪くないと思うわよ。」
「そうだな・・何だか、ホントに久しぶりに落ち着けたみたいだ・・」
カナメが言いかけると、ライは苦笑いを浮かべて答える。
「こうして何度か海とか山とか行って、楽しい時間を過ごしてみたい・・ライや、みんなと・・」
「あぁ・・オレもだ・・・」
おもむろに手を取って、微笑みあうカナメとライ。
「ふぅ。いつの間にそんなに熱くなっちゃったのかしらねぇ?」
そこへ手で自分を仰ぐ素振りを見せるレナの言葉がかかり、ライとカナメが気恥ずかしくなってそっぽを向いた。
「アハハハ。仲がいいっていうのは、本当にいいものだね。」
そこへカイリがルナとともに戻ってきた。彼らの手には焼きそばや焼きいかなど、屋台で買ってきた食べ物があった。
「カイリさん、別にそんな・・」
「照れなくていいですよカナメさん。楽しければオールOKですよ。」
動揺を見せながら弁解しようとするカナメに、ルナが笑顔で言葉をかける。その言葉を受けて、カナメは安堵を込めた笑みをこぼした。
「さて、せっかく買ってきたんだから、食べなくては損だよ。」
カイリが屋台の食べ物を勧めてくるが、熱いものばかりのため、ライ以外は嫌々手に取っていた。
そのとき、カイリは海が騒がしくなっているのに気付く。眼を凝らすと、海で遊んでいた人々が海から逃げ出してきているのを目撃する。
「どうしたんだろう?・・何か怪物でも出たのかな・・・?」
「怪物・・・!?」
カイリが呟いた言葉にライたちが緊迫を覚える。
「私、ちょっと様子を見てくる・・」
「あ、ルナ、ちょっと・・!」
慌しい海辺へと向かうルナを追いかけて、レナも慌てて駆け出す。砂浜へと行き着いた2人が見たのは貝の姿をした怪物だった。
「やっぱりガルヴォルスね・・こんなところにまで・・・!」
「みんな宝石みたいに固められてるよ!それも女性ばかり・・!」
レナが毒づき、ルナが不安を浮かべる。シェルガルヴォルスが彼女たちに眼を向けてきた。
「また美女を見つけた・・この子たちもきれいにしてあげないと・・」
振り向いてきたシェルガルヴォルスを見据えて、レナがルナを守ろうとする。
「ルナ、あなたはカイリさんのところに行ってちょうだい。アイツは私が仕留めるから。」
「お姉ちゃん・・・分かったよ。でも必ず無事でいて。ライさんとカナメさんがすぐに来るから。」
「わざわざ2人の手を借りるほどじゃないわよ・・それじゃ、行って。」
ルナの切実な気持ちに対して、レナが自信を見せる。姉の無事を祈ってルナはこの場を離れ、それを見送ってからレナは怪物に不敵な笑みを見せる。
「生憎だけど、私はこれでも十分きれいなの。だからあなたの施しなんて必要ないのよ・・・!」
言い放つレナの頬に紋様が浮かび上がる。ローズガルヴォルスに変身したレナが、シェルガルヴォルスに向けて衝撃波を放つ。
しかし衝撃波の直撃を受けたはずのシェルガルヴォルスは、全く応えた様子を見せない。
「硬い・・私の念力を受けてもビクともしないなんてね・・」
レナが苦笑いを浮かべて毒づく。シェルガルヴォルスは不気味な笑みを浮かべて彼女に近づいていく。
「ガルヴォルスでもいいや・・美女ならきれいにしてあげないとね・・」
怪物は両手から光を放ち、レナはとっさに横に動いて回避する。そこへルナから事情を聞いたライとカナメが駆けつけてきた。
「レナ、大丈夫!?」
「カナメ・・私1人でも何とかなるから、そこで見てなさいって。」
「強がらないで。ここはいっせいにかかって・・」
カナメの呼びかけにレナが突っ張ってみせる。そこへシェルガルヴォルスが虹色の光を放射してくる。
(私の力で、みんなを守ることができるのなら・・・)
その光をかわしながら、カナメが決意を秘める。彼女の姿がスワンガルヴォルスへと変化する。
「カナメ!」
ライもウルフガルヴォルスとなって、シェルガルヴォルスを見据える。ライとカナメが飛び出し、シェルガルヴォルスに向けて同時に拳を叩き込む。
だがシェルガルヴォルスの殻は、2人の攻撃を寄せ付けなかった。
「くそっ!何て殻をしているんだ!」
怪物の耐久力に毒づくライ。シェルガルヴォルスが腕を振りかざし、ライとカナメを振り払う。
怪物との距離を取って着地するライ、カナメ、レナ。ライは持てる力を振り絞るため、意識を集中する。
「だったら、オレの全力で、お前の硬い殻をぶち抜いてやる!」
言い放つライの握り締める拳に稲妻がほとばしる。そのエネルギーを目の当たりにして、レナが眼を見開く。
「ライ・・何が起こってるのよ・・・!?」
「これがライの新しい力・・戦闘能力が何倍にも跳ね上がるわ・・・」
レナの声にカナメが説明を入れる。ライの姿が神々しい輝きを全身に宿した「雷獣態」へと変化する。
ライは眼つきを鋭くして、シェルガルヴォルスへと飛びかかる。稲妻を帯びた拳が繰り出され、怪物が掲げた硬い殻を打ち砕いた。
「なっ!?」
殻を破られたことにシェルガルヴォルスが驚愕の声を上げる。ライの一撃は殻だけでなく、その奥の体をも貫いていた。
「こんな・・この硬い殻が・・・!?」
愕然となる怪物から、ライが拳を引き抜く。おびただしい血が彼の右手から砂地にこぼれ落ちる。
「認めない・・こんなの認めるものか!」
憤怒したシェルガルヴォルスがライに迫る。しかし闇雲な攻撃はライに軽々とかわされてしまう。
業を煮やしたシェルガルヴォルスが、両手から虹色の光を放つ。これをライは稲妻を帯びた右腕で弾き飛ばし、その余波が怪物をも突き飛ばす。
全ての攻撃を跳ね返され、恐怖を覚える怪物。その眼前にライが立ちはだかり、鋭く見下ろす。
「みんなを元に戻して失せろ。でなければここで叩き潰す・・・!」
「くぅ・・くそ・・くそおっ!」
ライの忠告に対し、シェルガルヴォルスはいきり立って突っ込む。両手を突き出して爪で引き裂こうとした。
だが鮮血をまき散らしたのはシェルガルヴォルスのほうだった。ライが放った稲妻の拳が、怪物の体を貫いたのである。
強烈な一撃を受けたシェルガルヴォルスが絶命して、霧散する。崩れ去った亡骸が砂地に混じる。
ひとつ吐息をついたライが人間の姿に戻る。その直後、彼は体力の消耗で疲れ果て、その場にひざを付く。
「ライ!」
同じく人間の姿に戻ったカナメとレナがライに駆け寄る。
「ライ、大丈夫・・・!?」
「カナメ・・あぁ。ちょっとムチャしただけだ・・」
心配するカナメにライが笑みを作って答える。そこへレナが深刻さを浮かべて訊ねてくる。
「その姿と力、体力の消耗が激しいの・・・?」
「えぇ。強力だけど反動が大きいのよ。でもライのことだから、使うときには迷わずに使うと思うわ。」
カナメが説明を入れると、レナは渋々納得したようだった。そしてレナはひとつため息をついてから、呼吸を整えようとしているライに手を差し伸べた。
「ホント、ムチャするんだったらしっかりしなさいよ。みっともなくなっちゃうよ。」
「・・悪かったな・・」
呆れた素振りを見せるレナの手を、ライは憮然さを見せながら取った。
「お姉ちゃん!みなさん!」
そこへルナがカイリとともに駆けつけてきた。
「ルナちゃん・・大丈夫。みんな無事だから・・」
カナメが微笑んで頷くと、ルナも涙ながらに喜んで頷いた。
「やれやれ。とんだ休みになったもんだな。」
ライがため息をつくと、周囲から笑みがこぼれた。
シェルガルヴォルスが倒れたことで、宝石にされていた人々も元に戻った。被害者やその周辺の人々は事実を話すも信じてもらえず、結果、奇怪事件として処理されることとなった。
この日の束の間の休息を終えて、岐路に着いていたライたち。しかしガルヴォルスの介入のため、彼は肩を落としていた。
「ったく。とんだ休みになったもんだぜ。」
「文句言わない。十分に楽しめなかったのは、私たちも同じなんだから。」
愚痴をこぼすライをカナメがなだめる。
「また来ればいいよ。仕切りなおして、今度こそ十分に楽しもう。」
そこへカイリが優しく声をかけてきた。その言葉にレナとルナが笑顔で頷き、ライとカナメも笑みを見せて頷いた。
そんな彼らが街に差し掛かったときだった。ライが突然足を止めて、雑踏に眼を凝らす。
「ライ?」
その彼に向けて、カナメが声をかける。しかし彼の耳には彼女の声は届いていなかった。
ライはただ1人、ある人物をじっと見つめていた。それは長い白髪をした大人の女性だった。
女性もライに視線を向けて、妖しい笑みを浮かべていた。
「アイツは・・・!?」
ライの口からもれた声は震えていた。彼はこれまでにない恐怖と戦慄を募らせていた。
次回
「間違いない・・アイツは・・・!」
「もうダメだ!みんな、アイツから逃げられない!」
「どんなすごいのが来たって、必ず守ってあげるから。」
「お姉ちゃん・・・」
「これでもう、あなたは私のもの・・・」