ガルヴォルスLord 第16話「ツキアカリ」
海岸に落下していったライとカナメ。ルナが悲痛さを覚えて、崖下を見下ろす。
「ライさん!カナメさん!」
ルナが声を振り絞って叫ぶが、それに答える声はなく、周囲の海原を見渡しても2人の姿を見つけられない。
「ルナ!」
そこへレナの声がかかり、ルナが背後を振り返る。カナエがルナに向けて触手を伸ばしてきていた。
だがその触手が横から飛んできた衝撃波に弾き飛ばされる。レナの放った衝撃波が、ルナを守ったのである。
「お姉ちゃん!」
「ルナ、捕まって!」
叫ぶルナに向けて、レナがつるの鞭を伸ばす。ルナがそれをつかんだところで、レナは鞭を引き寄せる。
ルナを受け止めたレナは、カオリとカナエを見据える。
「このまま逃がしはしないわよ。妹さんと一緒に仲良く死になさい。」
カオリは言い放つと、レナとルナに向けてかまいたちを放つ。レナはとっさに衝撃波を放ち、かまいたちを相殺する。
その衝撃で地面が揺らぎ、粉塵が巻き起こる。そのためにカオリとカナエは視界をさえぎられ、レナとルナを見失う。
「も、もうっ!」
苛立ちをあらわにしながら、カオリが再びかまいたちを放つ。だがその一閃がレナたちを捉えることはなかった。
カオリとカナエが周囲を見回すが、レナとルナの姿を見つけることができなかった。
「あ〜あ、見失っちゃったぁ。」
カナエがため息をついて肩を落とす。カオリは海岸のほうに眼を向けていた。
「カナメたち、生きてるのかな・・・?」
カナエが声をかけると、カオリは淡々と答える。
「ボロボロの状態であの海岸に落ちたのよ。まずは助かりそうもないわね。でもあの2人、まだ生きている気がするのよね。」
「ふぅん・・お姉ちゃんの予感って、けっこう当たるのよねぇ・・・」
カオリの答えにカナエが淡々と頷いてみせる。
「とりあえず2人を探してみるわよ。見つけたら2人とも始末してやるんだから。」
「カナメもやっぱり倒しちゃうんだね。それじゃ見切りをつけないとね。」
カオリの言葉を聞いて、カナエが笑顔を浮かべて頷いた。
普段から荒れ気味の海岸。そこに隣接する岩場に這い上がってきた2つの人影があった。
ライとカナメは生きていた。だがライは意識を失い、カナメが彼を抱えて海から這い上がってきたのである。
疲弊している中、何とか呼吸を整えようとするカナメ。そして周囲を見回して、危険がないか確かめる。
(とにかく、近くの隠れられる場所を探さないと・・レナとルナちゃんも気がかりだけど、今の私には戦う力も残ってない・・・)
満身創痍に陥っていることを自覚して、カナメは立ち上がる。そのとき、彼女は倒れているライを眼にして困惑する。
(どうして、この人を助けてしまったの・・・?)
なぜ先ほどまで憎んでいたライを助けてしまったのか。その理由が分からず、カナメは困惑する。
だがここでこのことを考え込んでいても仕方がない。そう思ったカナメは、ライを連れて近くの洞窟に身を潜めた。
日は傾き始め、海沿いでの動きが困難となる時間となった。カナメはライと外の様子を伺いながら体を休めていた。
ライはまだ眼を覚まさない。その彼のことを、カナメは気がかりにしていた。
(私は何をしているんだろう・・さっきまで、あれだけ憎み合ってたのに、どうして今になって助けようなんて・・・)
時間がたつにつれて膨らんでいくわだかまり。なぜこんな気持ちに駆り立てられるのか、カナメ自身、理解できないでいた。
(イヤ・・イヤになってくる・・どうにかしようとしても、どうにもならないこの気持ちが・・・逆らえない・・ううん、逆らわない・・・?)
自分の気持ちの整理がつかないまま、カナメは眠っているライに近寄る。彼の顔をじっと見つめて、彼女は戸惑いを覚える。
「打ち明けたい・・眼の前にいるこの人に・・・」
揺さぶられる感情の赴くまま、カナメは身につけている衣服を脱ぎだした。さらされた彼女の裸身には、いくつかの傷痕あった。
傍目では目立ってはいないが、凝視してみるといくつか、打撲や切り傷などの傷痕が確認できた。それが彼女の忌まわしき過去の証だった。
カナメは幼い頃に虐待を受けてきた。外見で分かる傷よりも、人間不信にまで追い込まれた心の傷のほうが多く深かった。その傷を知っているのはレナとルナだけである。
「どうしてかなんて分からない・・もしかしたら、これは勇気なのかもしれない・・・自分を打ち明けようとする、一歩前に出る勇気・・・」
カナメはおぼろげになっていく意識の中で、ライの衣服に手をかける。彼の衣服も脱がし、その裸身をじっと見つめる。
何かを強く追い求める衝動が、徐々にカナメの中で膨らんでいく。彼女はついに、ライの体に寄り添っていく。
「あたたかい・・こんなに人の体があたたかく感じるなんて・・・レナもルナちゃんも、こんな感じだったのかな・・・」
その接触の中で高揚感を覚えるカナメ。彼女は自分の秘所にライの性器を入れていく。
「ん、んあっ!」
カナメがたまらずあえぎ声を上げ、それが声にならないものになる。彼女の感じている刺激と快感が一気に高まっていく。
(入ってくる・・ライが、私の中に・・・!)
押し寄せる快感に理性を失いかけるカナメ。その恍惚が、今の彼女の支えとなっていた。
ライの見つめる先には、姉の姿があった。だがその姉はひどく変わり果てていた。
衣服が崩壊し、裸身の石になっているにもかかわらず、姉は心地よさを覚えて微笑んでいた。
その出来事が、ライにはあまりにも異常に感じられた。いつもの姉でないと、彼は思わざるを得なかった。
その姉の横に現れる影。影は姉とライを見つめて、妖しく微笑みかける。
その影によって姉が奪われていく。それがライに怒りと悲しみを植え付け、絶叫を上げさせた。
「姉さん!」
叫び声を上げて起き上がるライ。そこで彼はそれが夢であることに気付く。
だがその夢は過去に起きた出来事。全てが壊れた瞬間であることに変わりはなかった。
「姉さん・・・姉さんを奪ったガルヴォルス、オレは絶対に許さない・・・!」
ガルヴォルスに対する憎悪を膨らませるライ。そのとき、彼は隣にカナメが横たわっていることに気付き、眼を見開く。
そしてライは、自分が裸になっていることにも気付く。服を脱いだのがカナメの仕業であると察し、憤怒を覚える。
「カナメ・・また好き勝手なマネを・・・!」
ライが怒りに任せてカナメを敵視して身構える。だがそこで彼は攻撃にためらいを感じてしまう。
困惑にさいなまれていると、カナメが眼を覚ました。
「んん・・・ライ・・・眼が覚めたのね・・・」
「カナメ・・・お前・・・!?」
微笑みかけるカナメに、ライが当惑を見せる。
「このままあなたが眼を覚まさなかったら私、イヤな気分になっていたかもしれない・・・」
「何を言ってるんだよ・・・お前はどこまでオレを、オレたちを!」
言いかけるカナメの首に、ライが両手をかける。首を絞められて、カナメがうめき声をもらす。
「もうこれ以上、お前たちに奪わせたりしない!幸せも心も、オレの仲間も!姉さんも!」
「ねえ、さん・・・?」
怒りに突き動かされながら、手に力を込めるライ。彼の言葉にカナメが戸惑いを覚える。
「オレはお前たちを倒し、奪われたものを取り戻す!姉さんも、絶対に取り戻してみせる!」
「ね、姉さんって・・・ライ、あなたの過去に、いったい何があって・・」
「うるさい!」
カナメが言いかけると、ライが激昂をあらわにする。彼の頬に紋様が走り、狼の姿をした怪物へと変身する。
「何も失いたくない!これ以上何かを奪われる前に、オレは何が何でもそいつを叩き潰す!」
ライは叫んで、右腕を大きく振り上げて爪を構える。
「私を殺せば、あなたは全てを取り戻せるの・・・?」
そのとき、カナメの声がかかり、ライが思いとどまる。
「私も、私の中にあるものを失いたくない。だから、あなたの気持ちが分かるかもしれない・・・」
「知った風な口を利くな!自分の目的のために周りを傷つけるガルヴォルスが!」
「お願い。話を最後まで聞いて・・」
「聞かないと言ってるだろ!」
「聞いて!」
叫ぶライに対し、カナメが叫び返す。その声にライが感情を抑える。
「私も幼い頃にいろいろなものを失った。絶望した・・それに抗いたくて、私は人を手にかけた。でも、もしかしたら、それは私の罪だったのかもしれない・・・」
物悲しい笑みを浮かべて、自身心境を打ち明けるカナメ。
「私は、本当はいてはいけない存在かもしれない・・知らず知らずのうちに、あなたの大切なものを奪っていたのかもしれない・・・だから、もう好きにしていいよ・・・」
「カナメ・・・!?」
カナメの言葉にライが驚愕を覚える。
「私が死ぬことで、あなたの心が晴れるなら、私は本望よ・・私に、それだけの価値があるなら・・・」
「寝ぼけてんじゃねぇよ・・ガルヴォルスに何の価値もない・・生きてることさえ・・・!」
「だったらその手で私を殺して!私が死ぬことで幸せをつかめるなら、あなたの手で私を・・・!」
カナメがひたすらライに呼びかける。その言葉のひとつひとつが、ライの心に揺さぶりをかけていた。
「私にはもう、あなたを殺すことはできない・・ショーくんも、私やみんなが幸せになってほしいと思ってるから・・・」
カナメが死を受け入れようとするが、ライは振り上げた爪を振り下ろすことができないでいる。それを察したカナメが、ガルヴォルスへと変身する。
「この姿でなら、迷うことなく殺せるでしょう・・・?」
カナメがさらにライに呼びかける。ライにとってカナメを倒せるこの上ない機会だった。
眼の前にいるガルヴォルスを倒せば、幸せの奪還に一歩近づける。そう割り切ろうとしていたが、ライは踏み切ることができないでいた。
「姉さん・・姉さん・・・姉さん!」
振り絞るように叫び、ライがカナメの体に爪を突きつける。彼女の体が切りつけられ、引っかき傷が付けられる。
「そう・・それでいい・・・それで・・・」
死を受け入れようとしているカナメと、恨みを晴らそうとしているライ。だがライはそれ以上、カナメに爪を突きつけることができないでいた。
「ちくしょう・・ちくしょうが!」
ライは感情を爆発させて、再び拳を振り上げて叩きつける。だがその拳が殴っていたのは、カナメの顔の横の地面だった。
「ライ・・・!?」
「何でだよ・・・何で、こんな・・・!?」
驚きを浮かべるカナメの見つめる先で、ライの姿が人間に戻る。彼は眼から大粒の涙をこぼし、その雫がカナメの頬にこぼれる。
「このままお前を倒しても、お前の思い通りになって気に食わねぇ・・結局オレは何をしても、ガルヴォルスの手のひらで踊らされて・・・!」
ライはどうしようもない悔しさにさいなまれた。どう転んでもガルヴォルスのためになることが分かっており、彼は何もできない無力感を感じていた。
「ちくしょう・・・オレは・・ちくしょう!」
「ライ!」
苦悩するライに耐えられなくなり、カナメが体を起こして彼を抱きしめる。その突然の抱擁にライが困惑する。
「なら、もう苦しまなくていいよ、ライ・・あなたは、もう考えなくていい・・・」
カナメがライに振り絞るように声をかける。
「ライ、あなたは私が支配する。だからライ、私を支配して・・・」
「カナメ、何を言って・・・!?」
カナメの言葉の意味が分からず、ライが困惑する。
「私、自分の気持ちが分かった気がする・・・私は本当は、ライを憎んでいなかった・・・」
「お前がそのつもりでも、オレは・・・!」
「互いの気持ちを理解し合うこと。それが、とても大切なことだって、やっと気付けた・・・」
苦悩するライに、カナメが切実に告げる。
「私は自分を守るために、周りを傷つけてた・・ライ、あなたにも・・傷つけられたくなかったから、逆に周りを傷つけてしまっていたのよ・・・」
自分を責めるあまり、カナメの眼から涙があふれてくる。
「ゴメンなさい・・本当にゴメンなさい・・・私・・私・・・」
「カナメ!」
涙ながらに言いかけるカナメを、ライはたまらず強く抱きしめる。その抱擁にカナメが戸惑いを覚える。
「お前こそ、これ以上自分を追い詰めるな・・他人にあれだけ言っておきながら、自分を責めてんじゃねぇよ・・・!」
「ライ・・・」
逆にライに呼びかけられて、カナメが動揺をあらわにする。
「オレがこれまで戦ってきたのは、ガルヴォルスへの復讐だけじゃない。ガルヴォルスに傷つけられる人を増やさないためでもあるんだ・・・」
「傷つけられる人・・・」
「けど、ホントはそうじゃなかった・・オレは、誰も傷ついてほしくなかったんだ・・お前が傷ついているというなら、オレは・・・」
「ライ、あなたは・・・本当はみんなのことを・・・でもガルヴォルスに対する憎悪が、それを攻撃に結び付けてしまっていたのね・・・」
ライの心に共感を抱くカナメ。2人の心は、いつしか互いを追い求めるようになっていた。
「カナメ・・・」
「ライ・・・」
2人は互いの顔を見つめ合うと、ゆっくりと口付けを交わした。2人の中にこれまでにないほどの高揚感、今まで感じたことのない安らぎが芽生えていた。
それから2人は互いの体に触れ合った。互いの体に手を伸ばし、ゆっくりと撫で回し、さらには舌で舐め回していった。その接触が、2人に刺激と快感をもたらしていた。
その喜びをこらえきれず、ついにあえぎ声を上げる。秘所から愛液をあふれ出している中、カナメが胸中で呟きかけていた。
(本当は私、ライのことが、好きだったのかもしれない・・・ライが、ほしくてほしくてたまらない・・・!)
ライに対する想いが、カナメの心の中を駆け巡っていた。
(私は誰かに救われたいと、心の中でずっと思ってた・・でもその誰かに裏切られるのが怖くて、先に進む勇気が持てなかったのかもしれない・・・全てを失うかもしれないと、それがイヤで、ずっと・・・でもそんなことはなかった・・・)
快感にさいなまれるカナメの眼に、同様に恍惚を堪能しているライの姿が映る。
(私は1人じゃない。だから怖がることはもうない・・レナがいる、ルナちゃんがいる、カイリさんがいる・・そして、ライが・・・)
自分が孤独ではないことを悟り、カナメは安堵を募らせる。憎しみを緩和させた2人は、強い抱擁の中で一夜を過ごした。
そして夜が明け、洞窟の中にも朝日が差し込んできていた。その光明で、ライとカナメは眼を覚ました。
2人は互いの気持ちを整理し、決意を固めていた。
「ライ、私は今の自分を壊したくない・・そのために、私は戦い、これからを生きていく・・・」
「カナメ、オレは奪われたものを取り戻すまでは、“これから”を進んでいくことはできない・・オレの姉さんを奪っていったのは、ガルヴォルスなんだから・・・」
ライの言葉にカナメが当惑する。だがカナメはすぐに真剣な面持ちに戻って言いかける。
「なら、私もあなたの奪われたものを取り戻すことに力を貸すわ。」
「カナメ・・・ダメだ。あのガルヴォルスは、自分が手に入れたいと思ったものをどんなことをしてでも手に入れようとする。お前が姉さんのように奪われたら、オレは・・・」
カナメの申し出をライが拒む。彼はカナメ、そしてレナやルナたちが姉の二の舞になることを恐れていたのだ。だからこそ彼ははじめ、彼女たちの介抱を拒もうとしていたのだ。
「ライ、私たちを信じて・・私もレナも、そんなわがままなことにはすごく反発するタイプだから。」
「そんな楽観視できることじゃないんだぞ。お前もどうかなっちまう・・・」
決意を告げていくカナメだが、ライはその気持ちを素直に受け止められないでいる。彼の心境が気がかりになり、カナメは互いが衣服を着たところで思い切って問いかける。
「ライ、あなたと、あなたのお姉さんに何が起こったの?そんなに厄介な相手なの・・・?」
「カナメ・・・あれは・・」
その問いかけにライが答えようとしたときだった。
突如洞窟の奥から触手が伸び、ライとカナメの体を縛り上げた。
「なっ!?」
2人が反応すると同時に、触手は2人を捕まえて奥へと引き込んでいく。ものすごい勢いで引き込まれているため、ライはガルヴォルスになるために意識を集中することができずにいた。
やがてライとカナメは、洞窟の奥にある水の中へと叩き込まれた。息苦しさを覚え、2人はとっさに上に上る。
水から這い上がり、外の空気を吸い込むライとカナメ。そこで彼は、自分たちが飛び込んできていたのが水でないことに気づく。
「血・・・!?」
ライは眼を見開いて、その液体、血を手ですくい取る。この場の異様な空気に、彼もカナメも戦慄を覚えていた。
「やっと捕まえた。超音波でこそこそ見つけて、回りくどく攻め込んだ甲斐があったわね。」
そこへ声がかかり、ライとカナメが振り向く。その直後、触手が2人の体を持ち上げ、血からすくい上げる。
2人が移した視線の先には、ガルヴォルスの姿になっているカオリとカナエがいた。
「カオリ、カナエちゃん・・・どうして・・・!?」
「どうして?だってカナメ、ずい分矛盾してるんだもん。」
驚愕するカナメに、カナエが冷淡に告げる。
「あなたは霧雨ライを倒すと思いながらそれができずにいる。それどころかライと仲良くしている・・・呆れ果てたものよね、ホント・・虫唾が走るぐらいに・・・!」
カオリも続けてカナメに鋭い視線を向ける。
「カナエ、せっかくだから2人の血をいただきなさい。2人もあなたの栄養になれれば十分幸せでしょう。」
「そうだね。2人はガルヴォルス。それなりに美味しいと思うよ。」
カオリの言葉にカナメが頷く。その会話を聞いて、ライが憤りをあらわにする。
「ふざけるな!お前たちのエサになってたまるか!」
「元気がいいね。本当に美味しそうな気がしてくるよ。」
カナエは笑みをこぼすと、ライとカナメを締め付ける。体を縛り上げられて、2人があえぎ声を上げる。
そしてカナエは触手をライとカナメの背中に突き刺す。
「ぐっ!」
「あはっ!」
さらにうめくライとカナメから、カナエが血を吸い始める。2人に突き立てられている触手から、ドクドクと血が吸い取られていく。
「ハァ・・・おいしい・・今まで味わったことのない血・・やっぱりカナメだからかな・・・」
カナエがライとカナメの血の味に恍惚を覚える。
「さて、せっかくだからちょっと遊んじゃおうかな。フフフ・・」
カナエが笑みをこぼして触手を動かしていく。その1本が、カナメのスカートの中に入り、さらに下着から入り込んで彼女の秘所に入り込んでいく。
「あはぁ・・イヤ・・そんな・・・!」
「ウフ・・こういうのも気分がいいよ・・たっぷりいじくってから終わらせるから・・」
あえぎ声を上げるカナメを見つめて、カナエが笑みを強める。触手を動かして、カナエはカナメをさらにいじくっていく。
「カナメ・・・!」
ライが声を振り絞って、カナメの背中に刺さっている触手を引き抜こうとする。だが彼はその触手を引き抜くだけの力を発揮できなかった。
「ムダよ。カナエはこれでも力持ちなのよ。たとえガルヴォルスになっても、簡単には引き抜けないわよ。」
カオリが笑みをこぼしてライに言い放つ。だがそれでもライは諦めず、手に力を込める。
「オレはここで倒れるわけにいかねぇんだよ・・生きて、生きて必ず全てを・・・!」
振り絞るように言いかけたところで、ライはカナメを眼にする。彼の中にひとつの想いが湧き上がってくる。
(そうだ・・オレは、ひとつの光を見つけたような気がする・・・オレに、守りたいものができた・・・だから!)
その想いが頂点に達したときだった。ライの体からまばゆいばかりの光が放たれた。その光が拡散され、彼らを縛っていた触手を切り裂いた。
その光にカオリもカナエも、そしてそばにいたカナメも驚きを覚える。
「この光は・・・ライ・・何が・・・!?」
当惑するカナメの前で、ライが変化していく。それはこれまでのウルフガルヴォルスへの変貌ではなかった。
神々しい輝きを宿した全身を、凄まじい電撃がほとばしっていた。
ライの新たなる形態「雷獣態」であった。
次回
「よくも・・よくもカナエを!」
「私が憎んでいたのは、“人間”じゃなかった・・・」
「これが、オレの犯した罪だというのか・・」
「もうこれ以上、オレの大事なものを奪わせはしないぞ!」