ガルヴォルスFate 第14話「娘と母」

 

 

 ついに実の父親にまで正体を知らせることになった由記。だが幸一郎は彼女のもうひとつの姿、フェイトについて知っていた。

 草原に戻った由記は、自分の知りうる限りのことを幸一郎に話した。福音町で起こった出来事やすれ違いも含めて。

 大まかな事情を理解した幸一郎は頷いてみせていた。

「なるほど。それでお前は、自分を見つめなおすつもりで、ここに戻ってきたわけか。」

「うん・・これからどうしたらいいのか、自分自身と見つめ合って、答えを出そうと思ったから・・・」

 幸一郎の言葉に由記は気持ちを正直に告げた。すると幸一郎は一瞬困り顔を見せる。

「皮肉なものだよ。まさか世界の命運が、私の娘に委ねられているとはな・・」

 幸一郎の皮肉に由記は戸惑うが、わざと悪ぶっていると思って安堵してみせた。

「だが、お前はそんな運命などお構いなしなのだろう?お前が家を出たときから、自分の道を自分で切り開く覚悟はできているのだろう?」

「うん・・・フェイトの運命なんかに、私は振り回されたくない。私はちはやと・・・」

 由記は言いかけて戸惑い、言葉を詰まらせる。彼女の様子を見て、幸一郎は微笑んだ。

「お前は、いい友を持ったな・・・」

 父親の励ましの言葉に、由記は素直に喜んだ。気持ちに整理が付いた彼女は、逆に幸一郎に声をかけた。

「お父さんも知っていたんだね、フェイトを・・」

「・・・あぁ。本当ならずっと明かさないままにしようと思っていたが、お前がフェイトであるなら、そうも言ってられん。」

 幸一郎は由記に真剣な眼差しを向けていた。自分の娘が最大の当事者となっている以上、彼は彼女に自分の知っていることを全て話すことにした。

「由記、私が地方探索員であることは知っているな?」

「はい・・」

「だが私のこの仕事は表向きのものだ。本当はフェイトを初めとした異形の種族の研究団なのだ。」

「フェイト・・異形の種族・・・」

 幸一郎の言葉に由記は困惑を浮かべる。娘の心境を察しながらも、幸一郎は続ける。

「研究団の総責任者だった私は、その種族の恐るべき能力を始めに知った。形態や特徴などはそれぞれ異なるが、いずれも対象を別の物質に変化させてしまう能力を備えていることが分かった。」

 この言葉に、由記は怪物たちが使っていた力を思い返していた。石化、凍結、金属化。効果は様々だが、どれも相手を別の物質に変化させて固めていた。

「そして彼らの中で能力が飛び抜けているのが、“フェイト”と呼ばれる存在、お前のことだ。」

「私が・・」

「フェイトは彼らと同質、かつ彼ら以上の能力を備えている。そして決定的な能力が備わっている。それは、治癒・蘇生能力だ。」

 そして自分の力が学園のみんなの金属化を解き、タール漬けで命を落としかけたちはやを救ったことを思い返していた。もしもその力がなかったなら、由記もちはやも生きてはいなかった。

「その強大な力が、また別の強大な力を呼び寄せつつある。ワームホールから巨大なエネルギーが地球に向かって接近しつつある。フェイトの力に引き寄せられてな。まるで磁力に流される鉄のように。」

 フェイトが滅びなければ、そのエネルギーの前に世界が滅びる。由記は今、世界の命運の中心に立たされているのだ。

 理不尽な運命に苦悩する由記。幸一郎はそんな彼女に優しく手を差し伸べる。

「フェイト、全ての運命を司る者・・運命を遂行することも、運命に抗うこともできる。」

「お父さん・・・」

「由記、お前の運命はお前だけにしか決められん。周りやフェイトは関係ない。お前の意思で、お前の進むべきと思う道を歩んでいくんだ。」

「ありがとう・・・お父さん・・私・・・」

 父親に励まされて、由記は思わず涙をこぼす。必死に声を振り絞ろうとする彼女を、幸一郎は優しく抱きしめる。

「由記、今お前がやらなければならないことは何だ・・・?」

「私がやらなくてはいけないこと・・・」

 幸一郎に問いかけられ、由記は決意を秘める。

「私はみんなを守りたい。みんなといるこの幸せな時間を、私がいるべき場所を・・ちはやや黎利先輩、天音先輩、みんなと・・・」

「・・・そうか・・・それがお前の道なら、その道を進んでいけ。私はお前と、お前の周りにいる人たち、お前の選ぶ道を信じる・・・」

 幸一郎は由記の選ぶ道を信じ、世界の命運を彼女に託した。

(由記、お前は何ものにも負けない。世界の運命にも、お前自身の心にも・・・)

 その中で彼は、由記と睦月の仲がよくなることも願っていた。

 

 ちはやは今、福音町郊外の海辺に来ていた。そこは彼女にとっての大切な場所だった。

 この海辺はちはやと由記が初めて会った場所である。ちはやは自分の胸に手を当てて、そのときのことを思い返していた。

 福音大付属高校の受験が終わり、期待薄と自信を失くしていたちはや。ため息混じりに帰路についていたときのことだった。

 その途中に見えた海辺で、彼女は1人の少女を眼にした。沈痛の面持ちを浮かべて、その少女はじっと海を見つめていた。

 彼女の様子が気になったちはやは、そそくさに海辺に駆け寄った。

「どうしたの?」

 ちはやはその少女、由記に声をかけてみた。すると由記は戸惑いの面持ちで振り向いてきた。

「元気ないみたいだね。もしかして、試験がうまくいかなかったとか・・」

 あまり気遣いのないようなちはやの言動。しかし由記はその指摘で思いつめる様子は見せなかった。

「あたしも自信がないんだ。一生懸命勉強したんだけど、何だかやまを外しちゃったって感じで。テヘへへ・・」

 ちはやが気さくな照れ笑いを見せるが、由記はきょとんとした面持ちを浮かべていた。

「あの、私・・試験はそんなに不安があるわけではないんだけど・・・」

「えっ・・・」

 由記の言葉にちはやは唖然となる。しばしの沈黙の後、由記は笑みをこぼしていた。

「あなた、面白い人ね。あなたと話していると、何だか気持ちが和らいでしまったわ。」

「そ、そうかな。みんなバカっぽいとかってよく言われるんだけど・・・」

 由記の言葉にちはやは照れ笑いを浮かべる。気持ちを落ち着けてから、ちはやは改めて声をかける。

「あたし、沢北ちはや。あなたは?」

「私は南城由記。もし福音に通うことになったら、よろしく。」

 由記は思わず手を差し出していた。ちはやは喜びを見せながら、由記のその手を取って握手を交わした。

 これが由記とちはやの出会いだった。次に2人が会ったのは、2人が高校に合格し、寮についたときだった。

(由記、もう1度会いたい・・会ってあのときみたいに励まして、あたしの気持ちを伝えるんだから・・・)

 思い出を胸に秘めて、ちはやは由記を見つけ出すことを改めて誓った。

 

 幸一郎が密かに願っている由記と睦月の和解。だが由記は睦月と分かり合える気持ちを持てないでいた。

 相手は自分を思い通りになる道具としか見ていない。その認識が由記の心を縛り付けていた。

 なぜ娘として見ようとしない。どうして気持ちを知ろうとしない。由記の心は、睦月に対する苛立ちで打ちひしがれていた。

 その気持ちを抱えたまま、由記は家の近くを散歩していた。通りがかれば、知り合いと久しぶりに会って、懐かしさを分かり合えると思ったからだ。

 姿は変わっても心はさほど変わっていない友人や恩師たちと再会して、由記は安らぎを覚えていた。しかし同時に、何も変わっていないような感覚をも感じていた。

 何も変わっていない睦月のことを思い出してしまいそうで、彼女は辛くなるのを必死になってこらえていた。

 そしてしばらく草道を歩き回ったところで、由記は家へと戻った。

「ただいま・・・」

 元気のない声をかけながら、由記は玄関に入る。父、幸一郎が出迎えてくれたが、母、睦月は姿さえ見せない。

「どうしたんだ、由記?散歩して気持ちがいいほうに傾いているはずなのに、元気がないじゃないか。」

 心配する幸一郎に問いかけられて、由記は沈痛の面持ちのまま答える。

「いろいろ見て回って、いろいろな人と会ってきたけど、全然変わってないのが、私には辛い・・・」

「由記・・・」

 由記の言葉に幸一郎も困惑を浮かべる。

「そういえば、またあの人、部屋に閉じこもってるんだね・・・」

 由記が周囲を見回し、睦月が姿を見せないことに気付くと、皮肉めいた笑みを浮かべた。

「私のことなんかいつも心配しないで、自分のことばかり・・自分さえよければそれでいい・・・」

「由記・・母さんは母さんなりにお前のことを心配している。」

 弁解を入れる幸一郎だが、由記はそれをあざ笑うような反応を見せる。

「心配している?ならどうしてあんな態度を私に見せるの?どうしていつも、私に冷たくするの・・・!?」

 感情をあらわにする由記に、幸一郎も言葉が出なくなってしまった。

 そのとき、外から玄関へ冷たい空気が入り込んできた。あまりの冷たさに由記は思わず眼を細める。

「冷たい・・・おかしい。いくらここが農地でも、この季節にこんな冷たい風が入ってくるはずがない・・」

 その冷気に不審を抱いた由記が外に眼を向ける。そこで彼女は驚愕を覚える。

 田畑の周辺を白い旋風が吹き荒れ、草木を次々と白く凍てつかせていた。

「この風、この冷気・・もはやあの種族の仕業では・・!」

 幸一郎も驚きを覚えながら、眼前の現状を見据える。

「お父さん、私、行ってくるから・・これ以上、ここにいる人たちを傷つけさせるわけにはいかない・・・!」

 由記が告げて家を飛び出そうとしたところを、幸一郎が呼び止める。

「くれぐれもムリをするな。お前の体と命は、お前だけのものではないのだからな。」

「分かってる。私は生きて戻ってくる・・絶対に・・・!」

 幸一郎に頷いてみせてから、由記は改めて家を駆け出した。

 

 農地の真ん中で極寒の旋風を巻き起こしていたのは、萌を失って怒りと悲しみに駆られた美冬だった。彼女は由記を求めて、傍若無人に猛威を振るっていた。

「出てきなさい、フェイト!あなたは私が必ず仕留める!」

 憤慨をあらわにしながら、美冬が猛吹雪を巻き起こす。草木や農作物、人々が次々と凍り付いていく。

 その極寒の中で、睦月が必死に冷気から逃げようとしていた。だが美冬は彼女の逃亡を見逃してはいなかった。

「悪いですけど、あなたも凍り付いてもらいますよ。恨むなら、フェイトを恨むことね。」

 冷淡な笑みを浮かべた美冬が、逃げていく睦月に向けて冷気を放つ。冷気は速く、睦月に簡単に追いつこうとしていた。

 そこへ由記が飛び込み、睦月を冷気から守った。その瞬間に美冬が眼を見開く。

「とうとう姿を見せましたね、フェイト・・・!」

 フェイトの登場に、美冬はこの上ないほどの歓喜を覚えて満面の笑みを浮かべる。その眼下で、由記が睦月の体を起こしていた。

「なぜ、あなたが私を助けたのですか・・・?」

 当惑しながら問いかけてくる睦月に背を向けて、由記は立ち上がる。

「勘違いしないで。あなたを助けたわけではないわ。ただ、もうこれ以上、誰かが死んだり傷ついたりするのを見たくないだけ・・・」

 淡々と告げる由記の言葉に、睦月は反論できないでいた。

「もしもあなたが私のことを少しでも想ってくれているなら・・これから起こることから、絶対に眼をそらさないで・・・」

 由記は睦月に言いかけてから、上空で停滞している美冬を見上げる。決意を秘めた由記の頬に紋様が走る。

「由記、あなたは・・・」

 睦月が驚愕して眼を見開く中で、由記の姿が変化する。人間のものとは違った姿、フェイトへと。

「私のこの姿に不満があるならそれでもいいよ。私自身、この姿と力を快く思っているわけではないから・・・」

 由記は動じる様子を見せずに告げてから、剣を具現化させて美冬を見据える。怪魚の怪物の姿の美冬が、由記の登場と変身に哄笑を上げていた。

「いいですわ!フェイト、あなたは私の手で倒す!萌を手にかけたあなたを、私は許さない!」

 美冬が由記に言い放つと、槍を出現してその切っ先を向ける。

「私が憎いというなら、私を狙っても構わない。だけど、私を倒すために、関係のない人たちまで危害を加えることは許さない。」

「奇麗事はやめなさい。萌の命を奪ったあなたを、私は決して許さない。どんな手段を使ってでも、私はあなたを倒す・・・!」

 互いに言い放った直後、由記が飛翔し、美冬が降下する。2人はそれぞれの武器を振りかざして、相手を狙う。

 剣の刀身と槍の刃が交錯し、力比べに持ち込まれる。感情の赴くまま、美冬が力任せに槍を振りかざして、由記の剣をはねのける。

 同時に美冬の体から冷気の旋風が湧き起こる。その冷たい竜巻に由記が巻き込まれる。

 剣の刀身、由記の手足を次々と白く凍てつかせていく冷気に、美冬が笑みを強めていく。

「さぁ、凍りつきなさい!私たち姉妹の怒りと悲しみを、体も心も凍らせて感じなさい!」

 美冬の言葉が放たれる中で、由記が氷に包まれていく。しかし吹き荒れる冷気の束縛から彼女は逃れることができないでいた。

 そしてついに、由記は氷塊の中に閉じ込められた。旋風の中に浮遊している氷塊を見つめて、美冬は微笑んでいた。

「残念ですが、今の私の力は前回の比ではありませんわ。強度も濃度も格段に上げてありますから、いくらフェイトでも脱出することなど・・」

 勝ち誇りを見せた美冬だったが、その瞬間、由記を閉じ込めている氷塊に亀裂が生じた。

「そ、そんなバカなこと・・!?」

 美冬が愕然さを見せる前で、氷塊はさらにひび割れて、ついには崩壊する。解放された由記の背中から光り輝く翼が広がった。

「そんな!・・私の渾身の力を注いだ氷を破ることなんて・・・ありえない・・!」

 動揺を隠せない美冬を、由記は鋭い視線で見つめていた。

「あなたの怒りより、私の心が強くなっているだけよ・・私は私の道を突き進むだけ!」

 由記が眼を見開き、持てる力を解放する。神々しい閃光が解き放たれ、凍てついていた森林を暖める。

「私の道は私が決める!他の誰かに、運命なんかに決めさせない!」

「いいえ!あなたは私に命を奪われる!あなたの運命は、既に確定しているのよ!」

 決意を告げる由記に反論して、美冬が再び吹雪を巻き起こす。冷気の旋風の中には、鋭い氷の刃が散りばめられていた。

 由記は剣を振りかざして、冷気と氷の刃をなぎ払い、美冬に向かって飛び掛っていく。

「私は負けない!あなたにも、フェイトの運命にも!」

 一歩も引かない由記の突き出した剣が、美冬の体を貫いた。激痛を覚えて美冬が吐血する。

「あ、あなたは・・私が、この手で・・・!」

 苦痛に顔をゆがめながらも、美冬が由記の首をつかむ。力を振り絞って由記の首を絞めるか凍てつかせようとしたが、手に力が入らなかった。

「世界がどうなろうと関係ない・・あなたを倒さなければ・・萌は、浮かばれない・・・!」

 必死になっている美冬の眼からは涙があふれていた。怒号に駆られながらも、彼女にはまだ人としての心が残っているのを、由記は目の当たりにして当惑を覚えた。

「あなたに何をしても許されないことは分かってる・・でも今は、私は生きていたい・・生きなければならない・・・」

 由記は沈痛の面持ちで美冬に呼びかけて、人間の姿に戻る。美冬も脱力して、姿が人間に戻る。

「あなたの怒りも、私の罪も、全て背負っていくから・・・」

 優しく語りかける由記。それでも美冬の心から怒りや悲しみが消えるとは思っていない。

 事切れた美冬が固まり、由記の腕の中で崩れて消えていく。由記は右手で剣を、左手で美冬の血と亡骸を握り締めていた。

 そして由記は、後ろで困惑を浮かべている睦月と、駆けつけた幸一郎に振り返った。

「これで分かったでしょう?私はあなたのいう凡人よりもさらにかけ離れた存在。理不尽な運命に逆らうために、自分の手を血で汚してきたのよ・・・」

 再び皮肉めいた態度を見せる由記だが、睦月は困惑したまま言葉を返さない。

「たとえ周りがどうなろうと、私は私の道を歩いて逆らい続ける。そんな運命も、あなたも・・・」

「・・あなたは、いつの間にか大きくなってしまったのね・・・」

 そのとき、睦月が由記に向けて声をかけた。その声に由記は当惑を覚える。

「私が思っていた以上に過酷な経験をしながらも、あなたは強く生きてきた・・心も体も・・・それなのに、私はそのあなたの変化を見ようとせず、あなたを・・・」

「母さん・・・」

 睦月の言葉に由記は戸惑いを見せる。しかし由記は母に寄り添おうとはしなかった。もしも母親に甘えれば、また昔に戻ってしまいそうな気がしたのだ。

(そうだったんだね・・私は母さんの全てを否定していたわけではなかったのよ・・・ほんの少しでも、心が通じ合えればそれでよかったんだね・・・)

 由記は悟った。家族や親友を前提にして分かり合うわけではない。分かり合って初めて、家族の絆や友情が深まっていくのだと。

 もう迷うことはない。過去や戒めに囚われることもない。少しでも分かり合えるなら、その気持ちと素直に向き合えばいい。

 由記は、長く抱えていたわだかまりを拭うことができた。

「お父さん、お母さん、私、行きます・・けじめをつけたいことがあるから・・・」

 由記は幸一郎と睦月に呼びかけた。すると幸一郎が由記に呼び止め、1枚の手紙を取り出した。

「由記、お前にこれを渡しておく。ここで読むにしろ、後で眼を通すにしろ、これをお前に託しておきたい。」

「お父さん・・・ありがとう。受け取っておくよ。」

 幸一郎から渡された手紙を、由記は微笑んで受け取った。

「由記、せめて今晩だけ、一緒にいてほしいんだけど・・・」

「ごめんなさい、お母さん。私も少しでも一緒にいたいけど・・私はすぐにでも戻らないといけないから・・・」

 睦月が呼び止めてくるが、由記は沈痛の面持ちで頑なに拒んだ。

「ありがとう、お父さん、お母さん・・・私、必ずまた会いに戻るから・・・」

 由記が幸一郎と睦月に微笑みかけた。彼女は母親に自分の思いが通じたことを無意識に喜んでいたのだ。

 両親に背を向けた由記は、これ以上何も言わずに歩き出した。そしてフェイトへと姿を変えると、翼を広げて飛び去っていった。

(本当に・・ありがとう・・・)

 両親に感謝の意を胸に秘める由記の眼から涙がこぼれていた。

 飛び立っていった娘を見送って、幸一郎は睦月に声をかけた。

「信じよう、由記を。私たちの娘が、これからどの道を歩んでいくのか・・」

「そうね、あなた・・・」

 幸一郎に微笑んで答える睦月。久しく笑っていなかったと、彼女は心の中で思っていた。

 

 

次回

第15話「動き出す黒幕」

 

「滅ぶべきなのは果たしてフェイトだけですかな?」

「お前もお前の戦いを始めるのか・・」

「姫女さん・・・!?」

「これからのフォース、および特捜班は、僕が取り仕切ります。」

 

 

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