ガルヴォルスFangX 第25話「姉妹」

 

 

 ミサの念力によって動きも力も封じ込められていたリオ。身動きが取れないまま、リオはミサに抱き寄せられていた。

「お願い、リオ・・私に、あなたのぬくもりを確かめさせて・・・」

「イヤ・・放して、お姉ちゃん・・・!」

 呼びかけるミサをリオは拒絶しようとする。

「ならもう仕方がない・・あなたにはこうしたくなかったけど・・私が納得できなくなるくらいなら・・・!」

 ミサがメデューサガルヴォルスに変わって、リオをじっと見つめる。

 

    カッ

 

 ミサの複数の目から光が発せられた。

 

   ドクンッ

 

 リオが強い胸の高鳴りを覚える。次の瞬間、ミサの念力が解かれた。

「これで、リオもオブジェに変わる・・・」

  ピキッ ピキッ

 ミサが呟くと、リオの両足が石に変わり、靴が弾け飛んで素足があらわになる。

「足が石に!?・・動かせない・・・!」

 足が動かせなくなり、リオが驚愕する。このまま裸の石にされてしまうと思って困惑する彼女を、ミサが見つめる。

「もうこうでもしないと確かめることができない・・ゴメン、リオ・・あなたにまでこのような姿にすることになって・・・」

「ふざけないで・・ふざけるな!」

 声をかけるミサに憤るリオ。彼女が力を振り絞るが、ガルヴォルスになることもできない。

「余計な辛さを感じないように、一気にオブジェにするからね・・」

  ピキッ パキッ パキッ

 石化が一気に進行して、リオの着ていた服が引き裂かれて、石になった裸がさらけ出された。

「そんな・・このまま私、石に・・裸に・・・!」

 石化して裸にされていき、そのことに全くの抵抗ができない自分に、リオは憤りと絶望を募らせていく。

「大丈夫・・あなたの姿を見ているのは私と、あなたと同じようにオブジェになった人だけだから・・」

「そういう問題じゃない・・私は・・このまま振り回されたくない・・・!」

 ミサが言いかけるが、リオは不条理に屈することに抗おうとする。

  ピキッ ピキキッ

 石化がさらに進行して、リオは両手の先や髪まで石にされていた。身動きが取れなくなり、リオは絶望にさいなまれていた。

「イヤ・・私・・私は・・・」

  ピキキッ

 声を振り絞っていたリオの唇も石に変わった。

(私は・・お姉ちゃんにも・・振り回されたくない・・・!)

   フッ

 涙を流していた瞳も石に変わり、リオも完全に石化に包まれた。

「やった・・これで、リオのぬくもりも確かめられる・・・」

 ミサがリオの石の裸身を見つめて、喜びを感じて妖しく微笑んでいく。彼女はリオに近寄って優しく抱き寄せた。

「それじゃ早速、あなたの心の中へ・・あまりさみしい思いをさせるのはよくないからね・・・」

 ミサがリオに意識を傾けて、彼女の心の中に入り込んでいった。

 

 ミサによって石化されて、リオは絶望に打ちひしがれていた。心の世界の彼女の意識は、完全に脱力状態に陥り、暗闇の中を流れていた。

「私は逆らえなかった・・私たちを苦しめた身勝手に・・・」

 自分を無力だと思って、リオは弱々しく呟いていく。

「お父さん、お母さん、ナオミ・・あなたが一方的に殺されてしまった連中の身勝手を、私は受け入れてしまった・・私は今まで、何のために生きてきたの・・・?」

 絶望に満ちた問いを投げかけるリオ。しかしこの問いに答えるものは何もないはずだった。

「そんなことないよ、リオ・・」

 声が響いてきたが、リオは反応を示さない。その彼女に近寄ってきたのは、ミサの意識だった。

「来たよ、リオ・・あなたのぬくもり、確かめさせてもらうね・・・」

「お姉ちゃん・・・やめて・・来ないで・・これ以上、私を苦しめないで・・・!」

 手を伸ばしてくるミサに、リオが悲鳴を上げる。しかしミサの手はリオの体に触れた。

「やめて!触らないで・・!」

 リオが抵抗しようとしたが、ミサの手を振り払うことができない。

「どかせない・・念力・・・!?

 抵抗が全くできないことに、リオが驚愕する。

「違うよ・・これはリオ、あなたがオブジェになっているから・・・」

「えっ・・・!?

「本当のリオは、もう指一本動かせない・・だからあなたはもう私に抵抗ができない・・どんなに抵抗しようとしても、必ず拒絶されてしまう・・」

「そんなことない・・そんなこと・・・!」

 ミサの言葉を聞かずに逆らおうとするリオだが、彼女の意思に反して体が言うことを聞かない。

「それじゃ、確かめさせてもらうね・・悪いようにはしない・・きっと気分はよくなれるから・・・」

 ミサが妖しく微笑んで、リオを優しく抱き寄せた。振り払おうとしたリオだが、ミサの抱擁から抜け出ることができない。

 ミサの手がリオの胸に触れる。ミサはリオの胸を撫でまわして、さらに揉んでいく。

「やめて、触らないで・・こんなことしないで・・・!」

 リオが触られることに不快感を示すが、ミサからの接触から抜け出ることができず、さらに胸を揉まれていく。

「間違いない・・この感じ・・お母さんと同じ・・・!」

 ミサはリオの体の感触が母親のものと同じだと感じていた。ミサはリオへの興味と情意をさらに強めて、さらに彼女の体に触れていく。

「やめて・・触んないで・・お姉ちゃん・・・!」

 リオが触れられることで恍惚を感じて、心を乱していく。その彼女の体に触れていくことを、ミサはひたすら求めていた。

「間違いないよ・・これが、私がずっと求めてきた、お母さんのぬくもり・・・!」

「お姉ちゃん・・こんなことしたら、私がおかしくなってしまう・・・!」

「お母さんの子供・・だからリオがお母さんと同じぬくもりを持っていてもおかしくなかった・・・」

 顔を歪めてうめくリオに、ミサが膨らませている感情を伝えていく。ミサがおもむろにリオと唇を重ねた。

 石化されていることで抵抗が拒絶されて、リオはミサに一方的に口づけされる。

 しばらく口づけをしてから、ミサはリオから唇を離した。

「もっと・・もっとあなたのぬくもりを確かめていきたい・・・」

 ミサがリオの股下に手を伸ばして、秘所をいじりだした。

「う、うああぁっ!・・やめて・・そんなところ・・触らないで・・・離れて・・・!」

 リオが恍惚が一気に強まってあえぎ声を上げる。しかし彼女はミサを引き離すことができず、さらに秘所をいじくられていく。

「あなた・・これでもお姉ちゃんなの!?・・姉妹や家族で、こんなことをしていいと思っているの・・・!?

「私は私の求めているものを確かめたいだけ・・その気持ちにウソはつけない・・・!」

「だからって・・だからって・・・お姉ちゃん・・・!」

 感情と欲情をむき出しにするミサに触れられるばかりで、リオはただただうめくだけだった。

「でも・・こうしてばかりだと、私がリオをいじめていることになってしまう・・・」

 ミサがふと手を止めて、リオから少し離れた。リオは恍惚にさいなまれて、完全に平常心を失っていた。

「今度はリオが、私に触れてくる番だよ・・」

 ミサがリオの右手を取って、自分の胸に当てさせる。

「ぅぅ・・そう・・このまま、もっと・・・」

 ミサが恍惚を感じながら、リオの手でさらに胸を撫でさせていく。

「私が・・・私がお姉ちゃんを・・・」

 自分の手がミサの体を弄んでいることに、リオは困惑する。しかしミサに触れられた快感にさいなまれて、リオは逆らおうとする気持ちも持てなくなっていた。

「いいよ、リオ・・私にもっと触れてきて・・・」

 ミサが脱力しているリオを抱き寄せて、自分の体にさらに触れさせていく。

「リオ・・このまま・・このまま私を・・・!」

 ミサに促されて、リオが彼女の体に触らされていく。ミサも恍惚を感じて心地よくなっていく。

「これが・・触れられていく感覚・・リオもみんなも・・こんな気分を・・・」

 自分が与えてきた恍惚を確かめて、ミサは満足していく。

「だったら・・こうされることも受け入れないといけない・・・」

 ミサがリオの手を使って、自分の秘所に触れさせる。今まで感じたことのない恍惚を感じて、ミサはたまらずあえぐ。

「あはぁ・・これが・・そこに触れられる感覚・・・!」

 触れられる心地よさを感じて、ミサが喜びを募らせる。一方、リオは一方的に振り回されて、抵抗もできないことに絶望を募らせていた。

「もうイヤ・・このまま、勝手に振り回されたくない・・・」

 リオが弱々しく辛さを呟いていく。

「こんなイヤなままでいたくない・・一方的に振り回されるだけなんて耐えられない・・」

 不条理からの解放を心から願うリオ。しかしどんなに願ってももう解放されることはないと、彼女は思うようになっていた。

 

 ミサに石化されて、心をも弄ばれてしまったハルとアキ。2人は互いへの抱擁で自分を保っていた。

 ハルもアキも不条理に抗いたいと願っていた。しかしそれが通らない現実に、2人は自分を失いかけていた。

 アキと口づけを交わし、彼女の胸や腰などを撫でまわしていくハル。ハルはアキに触れることで、アキはハルに抱きしめられることで、完全に自分をなくさないようにしていた。

“助けて・・・”

 そのとき、ハルとアキに向けて声が響いてきた。しかし2人には伝わらず、さらに抱擁が続いていく。

“もうこれ以上、身勝手なことに振り回されたくない・・このまま弄ばれたら・・私は私でなくなってしまう・・・”

 リオの声はさらに響いてくる。するとハルとアキの手がふと止まった。

「この声・・・」

「リオ・・さん・・・」

 ハルとアキも弱々しく声をもらす。

「もしかして・・リオさんも・・・」

「ダメだよ・・僕たちも・・自分のことしか考えられないよ・・・」

 アキとハルがリオに対して言葉を口にしていく。その2人に、リオの呼び声がさらに響いてくる。

“お願い・・助けて・・・私は、こんなイヤなものの中にいたくない!”

「イヤなもの・・・イヤなもの・・・」

 リオのこの叫び声を耳にして、ハルとアキは心を揺さぶられた。

「そうだ・・僕は、イヤなものを叩き潰してきた・・安心をつかみたかった・・・」

 本来の自分を思い出して、ハルが失いかけていた自分の感情を取り戻しつつあった。

「そのために私も・・ハルについてきた・・私がハルの心の支えになっていることが、私は嬉しかった・・・」

 アキも自分の本当の気持ちを口にしていく。

「ここでこうしているのが、本当に私たちが求めていた安心なのかな・・・?」

「・・・違う・・これは・・僕たちの本当の安心じゃない・・・」

 アキが投げかけた問いかけにハルが答える。

「ここにいれば、私たちは離れ離れにならない・・ずっと一緒にいられる・・誰からも傷つけられることもなく・・・」

「でも・・アイツのものにされている時点で、これは僕たちの安心じゃない・・・」

 アキの言葉に答えて、ハルが意識を集中していく。

「やっぱり僕たちは・・ここから出ないといけない・・本当に心から安心できるところを見つけないといけないんだ・・・!」

 力を込めて、ミサの石化から抜け出そうとするハル。

「戻れ・・元に戻れ・・・僕たちはこんなところにはいたくない・・・戻れ・・・!」

 ハルが必死に呼びかけて念じていく。そこへアキがハルを抱きしめて、一緒に念じ出した。

「お願い・・私も、ここにいたくない・・・!」

「僕たちはここから出るんだ・・そうじゃないと、僕たちは心から安心できない・・・!」

 アキとハルが力だけでなく、声も振り絞る。

 そのとき、ハルとアキの体から光があふれ出してきた。

「これって・・・!?

「もしかして・・力が戻ったんじゃ・・・!?

 驚きの声を上げるアキとハル。ハルは続けて意識と力を集中させていく。

「僕たちは、こんなところでじっとしてるつもりはないんだ!」

 声を張り上げるハルから、まばゆい光がほとばしった。そのまぶしさにアキがたまらず目を閉じた。

 

 リオの心の中に意識を入り込ませていたミサ。互いに恍惚を感じ合えたことに、ミサは喜びを募らせていた。

 だがそのとき、ミサは何らかの違和感を感じて笑みを消した。

「この感じ・・リオじゃない・・リオの、お母さんと同じぬくもりは今も感じている・・」

 現実に意識を戻したミサが、部屋の周りを見回していく。

「何かがおかしい・・もしかして、私がオブジェにした誰かに何か・・・」

 ミサが石化した女性たちを見回して、異変を探っていく。

「でも私に石化されたら、いくらガルヴォルスでも自力で石化を解くことはできない・・オブジェになっている間は、力が使えないのだから・・・」

 ミサが感じ取っている異変に疑問を感じていく。彼女の視線がハルとアキで止まった。

「この2人・・石の体から、光が・・・!?

 ミサがハルとアキに目を疑う。2人の石の裸身から淡い光があふれてきている。

「どうなっているの!?・・どうしてこんなこと・・・!?

 ミサがハルとアキに恐る恐る近づいていく。2人の体からあふれている光は、だんだんと強くなっていく。

「もしかして本当に、自力で私の石化を・・・!?

 ハルとアキに対してさらに目を疑うミサ。彼女の前で光は一気に強まっていった。

 部屋中にきらめいた光が弱まると、ミサの前にはハルとアキの姿があった。2人は石から元に戻って、彼女に目を向けていた。

「やっと・・やっと元に戻れた・・・」

「ここはあの部屋・・石化が解けた・・・」

 ハルとアキが石化が解けたことを実感する。ミサがこの2人の姿を見て、完全に疑念に襲われていた。

「私の石化は、私以外では絶対に解けないのに・・どうして・・!?

 ミサがたまらずハルたちに疑問を投げかける。

「そんなの分かんないよ・・ただ元に戻りたい、この不愉快から抜け出したい、そう思っただけだよ・・・」

「分からない・・そんなことでオブジェから元に戻るなんて・・・!?

 ハルの言った言葉の意味が分からず、ミサが首を横に振る。

「どういうことなのか、どうしても分かんないなら、考えるのをやめる・・僕たちはここから出ていく・・そして僕たちが安心できる場所を探す・・・」

「ううん・・もうこの世界に安心できる場所はないよ・・私が安心させてあげるしか・・・」

「その時点でもう、僕たちの安心じゃない・・・」

 手を差し伸べるミサだが、ハルは受け入れようとしない。

「何度も言わせないで・・僕たちの安心は、僕たちが見つけるしかない・・僕たちが納得しないと、安心できるはずもないから・・・」

「お願い・・行かないで・・でないと私、心のどこかで引っかかりができてしまう・・・」

 自分の考えを正直に口にするハルに、ミサがさらに呼びかけていく。

「そう・・あなたたちにまた動かれると、リオが安心できなくなってしまう・・だからあなたたちは、また私が・・」

 ミサが追いかけると、ハルが鋭い視線を向けてきた。

「僕の邪魔をするなら、許さないよ・・・!」

 言いかけるハルの頬に紋様が走る。彼はファングガルヴォルスとなって、ミサに立ち向かおうとしていた。

 

 

次回

第26話「牙と剣」

 

「まさかあなたたちに助けられるなんて・・・」

「私はあなたたちにすがるつもりはない・・」

「私はあなたたちと違う道を進んでいく・・・」

「さようなら・・お姉ちゃん・・・」

 

 

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