ガルヴォルスFangX 第24話「邪の愛」

 

 

 ミサによって石化されたハルとアキ。抱擁したまま全裸の石像となった2人だが、意識は残っていた。

「アキ・・大丈夫・・・?」

「ハル・・・うん・・大丈夫・・でも私たち、石にされて・・・」

 ハルの心配の声にアキが頷く。2人は暗闇の広がる心の世界を見回す。

「石にされて・・アイツのいいようにされてしまった・・・もう、僕たちは・・・」

「ハル・・私が・・私がそばにいるから・・・!」

 不安を膨らませていくハルに、アキが呼びかける。彼女に寄り添われて、ハルが戸惑いを感じていく。

「アキ・・ありがとう・・支えてくれて・・・」

「ううん・・私、ハルにずっと助けられてばかりだよ・・ハルがいないと、私・・・」

 抱きしめ合って互いがそばにいることを実感していくハルとアキ。

「もう僕たちにあるのは、このあたたかい感じだけ・・・」

「それでも・・私たちの安心になれれば・・・」

 互いの抱擁を確かめていくハルとアキ。2人は互いにすがりつくことで、自分を保っていた。

「やっぱり、お互いにすがりついているのね・・」

 そこへ声がかかって、ハルとアキが緊張を覚える。2人の前にミサが現れた。

「あなた・・・!」

「僕たちの心の中にまで・・・!」

 アキがミサが怯えて、ハルが敵意を見せる。

「僕たちをどこまで陥れれば気が済むんだ、お前は!?

「陥れるなんてとんでもない・・むしろあなたたちに安心を与えてあげたいだけ・・・」

 怒鳴るハルに、ミサが妖しく微笑んで答える。

「でも、その前に私のことで確かめさせてもらうよ・・私が満足できるかどうか・・・」

 ミサがさらに笑みをこぼして、ハルとアキに向かって手を伸ばしてきた。

「やめろ・・僕たちに近づくな!」

 ハルが怒鳴るのも聞かずに迫ってくるミサ。彼女の伸ばした手がアキの腕をつかんだ。

「アキに触るな!」

 ハルがアキからミサを引き離そうとした。だがそのとき、ハルは突然体の自由が利かなくなる。

「動かない!?・・動け!どうして動かないんだ!?

 ハルが体に力を入れるが、それでも動かすことができない。その間にミサがアキを後ろから抱きしめてきた。

「ちょっと・・やめて・・触らないで・・・!」

 悲鳴を上げるアキを抱き寄せるミサ。ミサがアキの胸に手を当てて、感触を確かめていく。

「アキから離れろと言っているんだ・・離れろ!」

 ハルが怒鳴ってアキを助けようとするが、それでもミサに対してつかみかかることができない。彼はミサに抵抗することを完全に拒絶されていた。

「ほんとうにきれいな体・・彼が愛すのも納得できる・・」

「ダメ・・やめて・・放して・・・!」

 胸を、さらに体の他の部分もミサに触られて、アキがあえぎ声を上げる。

「やめろ・・僕たちをこれ以上、追い詰めるな・・・!」

 ハルが激情に任せて強引に体を動かそうとする。それでも動けない彼に、ミサは辛さを覚える。

「彼女の感触を確かめると、あなたの心を壊すことになってしまう・・だから・・」

 ミサはアキから1度離れると、今度はハルに寄り添ってきた。

「何を・・・!?

「あなたの手で、彼女に触れてあげて・・・」

 声を荒げるハルの手を使って、ミサがアキの胸に触れさせる。

「あっ・・ハ・・ハル・・・!」

「アキ・・違う・・これは・・・!」

 動揺を見せるアキにハルが言い返そうとする。

「わ・・分かってる・・私も、あの人にどうしても逆らうことができなかった・・ハルもそれで一方的に・・・」

 アキがハルに弁解して、ミサに視線を向ける。

「逆らえないのは当然・・今のあなたたちは、私に石化されたオブジェなのだから・・・」

「石にされてるから、お前に絶対に逆らえない・・・そんなの・・・!」

 ミサから投げかけられた言葉を受け入れられず、ハルがまた感情を揺さぶられていく。

「さぁ、このままお互いを愛し続けていけばいい・・それがあなたたちが安心できることなら・・・」

 ミサがハルの背中を押して、アキを抱きしめさせる。恍惚に駆られていたハルとアキが、そのまま互いを抱きしめ合った。

「もっと・・もっと気分をよくして・・イヤなものを忘れられるくらいに・・・」

 ミサがまたハルに寄り添って、彼の性器をつまんできた。

「やっぱり・・心から感じているみたいだね・・」

「やめろ・・何をするんだよ・・・!?

 ミサに恍惚を感じていることを悟られて、ハルが不安を膨らませる。

「あなたたちは1つとなることで、お互いを1番感じ取ることができる・・それが、あなたたちが安心して、納得して、満足できる形・・」

 ミサがハルの性器をアキの秘所に入れてきた。

「うわああぁぁ・・ぁぁぁ・・・!」

 一気に恍惚が高まって、アキがあえいでいく。ハルも恍惚にさいなまれて、顔を歪めていく。

「そう・・その調子でもっと・・もっとお互いを近づけていって・・・」

「やめろ・・アキに・・アキにこんなこと・・・!」

 呼びかけるミサにハルが憤りを向けてくる。しかしどんなに意思を強めても、ハルもアキもミサに逆らうことができない。

「ハル・・・ダメ・・私・・・!」

「ゴメン、アキ・・・でも、僕・・・!」

 高まっていく恍惚にアキとハルが絶叫を上げる。2人のこの様子を見つめて、ミサが妖しく微笑んでいく。

「もうあなたたちは私のものになっている・・せめてあなたたちが幸せでいられるなら・・・」

「やめろ・・僕たちをこれ以上、追い詰めるな・・・!」

 喜びを感じていくミサに、ハルがさらに憤る。それでもミサに逆らうことができず、ハルとアキは抱擁するばかりになっていた。

「私はあなたたちのぬくもりを確かめることができたし、あなたたちも安心を手にすることができた・・」

 恍惚に身を委ねていくハルとアキ、そして2人の感触を確かめた自分を喜ぶミサ。

「でも・・あなたたちも、私が求めていたぬくもりじゃなかった・・お母さんのぬくもりじゃ・・・」

 ところがミサが満足できなかったことに悲しさを感じて、笑みを消す。

「また探さないと・・お母さんのぬくもりを持っている人を・・・」

 抱きしめ合い寄り添い合っているハルとアキから、ミサが離れていく。

「あなたたちは満足していく・・私も満足しないと・・・」

 ハルとアキを見守りながら、ミサは意識を現実に戻していった。

 

 ハルとアキの心から現実に意識を戻したミサ。愕然となっているリオに、彼女は振り向く。

「この2人は、自分たちの安心に浸っているよ・・」

「お姉ちゃん・・・」

 ミサが言いかけると、リオが困惑を募らせる。

「でも私は違う・・納得できる感じじゃなかった、あの2人は・・・」

「ダメだよ、お姉ちゃん・・こんなこと、やっていいことじゃない・・・」

 自分の気持ちを口にしていくミサに、リオが言い返してくる。

「身勝手に人に手をかけて、それが間違いでないことにして満足しているガルヴォルスや人間と変わらない・・お姉ちゃんがそんなのになるなんて・・・!」

「それでも私は感じたい・・私がお母さんのぬくもりを感じて、安心したい・・・!」

 呼びかけるリオにミサが感情をあらわにする。

「私はもっともっと求めていく・・どんなことをしてでも、私はあの感じをもう1度味わいたい・・・!」

「お姉ちゃん・・・!」

「あのぬくもりを確かめるためなら、どんなことだって・・・」

 自分の欲情に忠実でいるミサ。彼女に妹であるリオの言葉さえも聞き入れてもらえなかった。

「リオ、私の住んでいるところで休んでいて・・あなたがこれ以上辛い思いをすることはないんだから・・」

「待って、お姉ちゃん・・やめて!」

 再びハルとアキに近寄って、2人を自分の住んでいる部屋に連れて行こうとしたミサを、リオがたまらず追いかけた。彼女がミサを後ろから抱きしめた。

 その瞬間、ミサは不思議な感覚を覚えて戸惑いを膨らませる。

(この感じ・・もしかして・・・!)

 抱きしめて止めようとしているリオに、ミサがゆっくりと振り向く。

(もしかして、私が求めていたものを持っていたのは、リオが・・・!?

 リオに対して心を揺さぶられていくミサ。彼女はリオにも欲情を傾けようとしていた。

「リオ・・もしかしたら、あなたが・・・!?

「お姉ちゃん・・・!?

 ミサに声をかけられて、リオがたまらず彼女から離れる。

「リオ・・あなたの感触、確かめさせて・・・」

「お姉ちゃん・・何を言って・・・!?

 手を伸ばしてくるミサに、リオが声を荒げる。

「もしかしたら、あなたにお母さんのぬくもりがあるのかもしれない・・」

「いい加減にして、お姉ちゃん・・そうやって自分たちのために力を使う・・他の人がどうなろうと関係ない・・自分たちが満足すればそれでいい・・・」

 手招きしてくるミサに、リオが憤りを感じていく。

「お姉ちゃんも・・そんな身勝手なヤツになってしまったの・・・!?

 リオがソードガルヴォルスになって、ミサに飛びかかる。ミサは軽々とリオが繰り出す拳をかわしていく。

「やめて、リオ・・リオと傷つけあいたくない・・・」

「だったらもうやめて・・こんな自分勝手・・・!」

「ダメよ・・これを抑えたら、私は私を見失ってしまう・・・!」

 声を振り絞るリオに、ミサも感情をあらわにしていく。

「いくらリオ、妹のあなたでも邪魔はされたくない!」

 ミサが右手を出して念力を放って、リオの動きを止めて宙に持ち上げる。

「お願い、リオ!私の気持ちを分かって!」

「分かんないよ・・分かりたくもない・・・!」

 呼びかけるミサだが、リオは聞き入れようとしない。

「私は認めない・・認めたらそれこそ、私は私でなくなる!」

 リオが全身から禍々しいオーラを放出する。同時に彼女はミサの念力を打ち破った。

「私の力が打ち破られた・・リオ、そこまでの力を・・・!」

 ミサがリオの力に一瞬驚く。

「違う・・私があの子を抑えたのは、あの子が体力を消耗していたから・・今、リオはある程度体力を回復して、私も本気で抑えていなかった・・・」

 念力が破られた理由を模索するミサ。心の整理をした彼女は、落ち着きを取り戻してリオを見据えた。

「いくらお姉ちゃんでも・・私を思い通りにすることはできない・・・!」

 リオが目つきを鋭くして、両手から刃を引き出す。彼女は不条理に対する怒りに突き動かされていた。

「リオを助けるためにも、私が何とかするしかないみたいだね・・・」

 リオを止めようとミサが意識を集中する。リオがミサに飛びかかり、両手の刃を振り下ろす。

 だがミサに当たろうとした直前で、リオの2本の刃が止まった。リオが強引の刃を振り下ろそうとするが、刃を前に押し進めることができない。

「リオを助けるには、私も全力を出さないと・・・!」

「動けない・・・動け・・動け!」

 真剣な面持ちを浮かべるミサと力任せに突っ込もうとするリオ。ミサが両手を前に出して、念力を仕掛けてリオの動きをさらに押さえ込む。

「私が本気を出さないと止められないほど、リオの力が上がっていたなんて・・・」

 ミサがリオの力を実感して息をのむ。リオはミサの念力で動きを封じられて、宙に持ち上げられる。

「私は・・こんな勝手に押しつぶされるわけにいかない・・・!」

 リオがさらに力を振り絞り、オーラを放出する。それでもミサの放つ念力を打ち破ることができない。

「私も本気になっているの・・だからたとえリオでも、私の本気から抜け出ることはできない!」

 ミサが言い放ち、リオの力を抑え込む。動きだけでなく力も封じ込まれて、リオが脱力していく。

「お願い、リオ・・あなたのぬくもり、確かめさせて・・・!」

「来ないで・・そんな気持ちを、私に押し付けないで・・お姉ちゃん・・・!」

 手を伸ばして近づいてくるミサに、リオが声と力を振り絞る。しかしリオは念力から抜け出せないまま、ソードガルヴォルスから人の姿に戻ってしまう。

「どうして・・どうしてこんなものから・・・!?

「簡単に言うと、あなたの願いよりも私の思いのほうが力が強かった・・ということね・・・」

 愕然となるリオにミサが微笑みかける。ミサの右手がリオの左腕をつかんだ。

「お願い、リオ・・私に、あなたのぬくもりを確かめさせて・・・」

「イヤ・・放して・・お姉ちゃん・・・!」

 ミサが懇願してくるが、リオは体の自由を奪われても彼女の願いを聞き入れることを頑なに拒む。

「・・・とりあえず、私の部屋に連れていくね・・落ち着くかもしれないし・・」

 ミサは肩を落としながら言うと、石化して立ち尽くしているハルとアキに目を向けてから指を鳴らす。すると彼らのいる場所の空間が歪み出した。

「まさか、私を連れ込んで・・・!?

 さらに絶望感を痛感するリオ。彼女はハル、アキと一緒に暗闇に包まれたミサの部屋に連れ込まれた。

「私はお母さんのぬくもりを求め続けてきた・・そのためにたくさんの人のぬくもりを確かめてきた・・」

 ミサがリオに向けて微笑みかけてくる。

「直接やろうとしても抵抗されるし、そのために傷つけてしまうのはよくない・・だから私はオブジェにして、その心の中でぬくもりを確かめていったの・・」

 ミサが言いかけたところでリオが部屋の中を目の当たりにする。ミサに石化された女性たちが多く立ち並んでいた。

「これ、お姉ちゃんがみんな・・・!?

 目を見開くリオが驚愕して体を震わせる。

「これもみんな、お母さんのぬくもりを確かめるため・・でも誰も、お母さんのぬくもりとは違った・・」

「そのために・・自分の満足のために、みんなを・・・!」

「やっと・・やっとお母さんのぬくもりにたどり着ける・・リオ、あなたに宿っていたんだね・・・」

「絶対に・・絶対に私は、こんな勝手なことに屈したりしない!」

 妖しく微笑むミサに憤り、リオが強引に彼女の腕や念力を振り払おうとする。

「ムダだよ・・もう動きだけじゃなく、ガルヴォルスの力も封じ込めている・・絶対に抜け出ることはできない・・・」

「イヤ!私は屈しない!私は絶対に、身勝手の思い通りにはならない!」

 ミサが囁きかけるが、リオは聞き入れずに抗い続けていく。

「ここまで強引にやるのは本当に気が引けるけど・・・」

 ミサが身動きの取れないリオを抱き寄せた。姉妹の抱擁をされて、リオが戸惑いを覚える。

「私が心から満足するためなら、たとえリオでも・・・!」

「お姉ちゃん!」

 感情をむき出しにするミサに、リオが絶叫を上げる。彼女の叫びが部屋中に響き渡った。

 

 ミサによって石化されて、抱擁と恍惚に堕ちたハルとアキ。2人は本能と感情のままに抱擁を続けていた。

 この形で本当の安息なのか。それとも自分を見失って絶望した果てなのか。今のハルもアキも判断することもできなかった。

 互いの体に触れ合いながら、ハルとアキの目からは涙があふれていた。

 

 

次回

第25話「姉妹」

 

「リオ・・このまま・・このまま私を・・・!」

「一方的に振り回されるだけなんて耐えられない・・」

「助けて・・・」

「私は、こんなイヤなものの中にいたくない!」

 

 

作品集

 

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