ガルヴォルスFangX 第22話「牙と刃」

 

 

 対峙したハルとリオ。リオが振りかざしてきた刃を、ハルも刃で受け止める。

「私は・・私はお前たちを許せない!私を裏切ったお前たちを!」

「裏切ったのはお前のほうだ・・オレを、アキを傷つけようとして・・・!」

 互いへの憎悪をぶつけ合うリオとハル。2人が振りかざす刃がぶつかり合って、激しく火花を散らす。

「ハル・・リオさん・・・」

 ハルとリオの戦いを、アキはただ見守ることしかできなかった。

 

 白い髪の少女に突然別の空間に引きずり込まれたサクラ。彼女たちは暗闇に包まれた部屋に来た。

「ここは・・・!?

「ここは私の部屋・・ここであなたが、私の求めていたものかを確かめる・・」

 周囲を警戒するサクラに、少女が妖しく微笑んでくる。

「アンタ、ホントに誰なの!?もしかしてガルヴォルス!?

「ガルヴォルス?・・そういわれることもあったかも・・でも私にはどうでもいいこと・・・」

 サクラが問いかけるが、少女は笑みを消さない。

「私の心を、あなたは満たしてくれるの・・・?」

 少女は問いを投げかけると、サクラに向かって飛びかかってきた。サクラがとっさにキャットガルヴォルスになって、少女の突撃をかわす。

「速いみたいだけど・・私には意味がないよ・・」

 言いかける少女の頬に異様な紋様が浮かび上がる。彼女の姿が異形の怪物へと変わる。

「やっぱりガルヴォルス・・!」

 サクラが少女の正体に確信を持った。

「うっ!」

 その瞬間、サクラは突然動けなくなる。彼女は空中で動きを止められてしまい、体の自由が利かなくなってしまう。

「こ、これって・・!?

「私の念力はとても強力・・金縛りになったみたいに、全然動けなくなってしまう・・」

 声を荒げるサクラに、少女が囁くように言いかける。

「こ、こんなもの・・!」

「ダメだよ・・かかったら簡単には解けないよ・・」

 強引に念力を破ろうとするサクラに、少女はさらに微笑みかける。念力の束縛に締め付けられて、サクラは力を消耗してキャットガルヴォルスから人の姿に戻ってしまう。

「元に戻ったね・・それじゃあなたの体、確かめさせてもらうよ・・」

 少女が妖しく微笑みながら意識を集中する。

 

    カッ

 

 彼女の体にある複数の蛇の目が一斉に開いて、眼光をきらめかせた。

 

   ドクンッ

 

 その瞬間、サクラが強い胸の高鳴りを覚えた。同時に彼女は念力から解放された。

「私の目は、あなたの全てを見通ししていく・・」

  ピキッ ピキッ ピキッ

 少女がさらに笑みをこぼした直後、サクラの衣服が突然引き裂かれた。あらわになった彼女の体が白く冷たく固まっていた。

「体が石に!?・・アンタの能力も、石化・・!?

「そう・・石にして抵抗できないようにして、同時に裸にしてスタイルを確かめる・・」

 驚愕するサクラに少女が喜びを感じていく。胸元から股下まで石にされていて、サクラは体の自由が利かなくなっていた。

「アンタ、あたしをどうしようっていうの・・!?

「言ったはずだよ・・私の求めているものかどうかを確かめるって・・」

 問いかけるサクラに少女が語りかける。

  ピキッ パキッ パキッ

 石化が進行して、サクラの腕や足にまで石に変わっていく。彼女はほとんど素肌をさらけ出されてしまった。

「思っていた通り、いい体をしている・・このまま石化を終わらせて、じっくり感触を確かめる・・」

「確かめるって・・石にしたんじゃ硬いだけじゃない・・・!」

「石にするのは体をまず目で確かめるため・・私には石化しても感触を確かめる方法があるの・・」

 緊張を募らせるサクラの石化していく体を見つめて、少女が妖しく微笑んでいく。

  パキッ ピキッ

 石化がサクラの手足の先まで及んで、彼女の頬や髪を蝕み出していた。

「リオちゃん・・・ハル・・アキちゃん・・・」

 力を入れられなくなる中、サクラがハルたちを想って声を振り絞る。

  ピキッ パキッ

 声を出していた唇も石に変わり、サクラは少女が喜びの笑みをこぼしているのをただ見守ることしかできなくなった。

(ハル・・逃げて・・この子・・やばいよ・・・)

    フッ

 心の声を上げていたところで、瞳さえも石に変わり、サクラは完全に石化に包まれた。彼女の石の裸身を見つめて、少女は喜びを募らせていく。

「これであなたは完全に私のものになった・・もう何をされても、全く抗えない・・・」

 少女が石化したサクラに近づいていく。石となっているサクラは微動だにせず、少女が近寄ってきても反応もしない。

「あなたも確かめさせてもらうよ・・私が満足できるかどうか・・・」

 少女はサクラに寄り添って意識を傾けた。

 

 それぞれの刃を激しくぶつけ合うハルとリオ。2人の力は拮抗し、体力を消耗するばかりとなっていた。

「負けられない・・負けたくない・・ハルには・・私を裏切ったこの人だけは・・・!」

「オレとアキを追い込むヤツは、誰だろうと、どんな理由を出してきても、オレは許さない・・・!」

 リオとハルが互いへの怒りの言葉を口にしていく。

「お前だけは、絶対に許せない!」

 怒号を放った瞬間、2人の体から禍々しいオーラがあふれ出してきた。2人の体も刺々しいものへと変わっていく。

「ハル・・リオさん・・2人とも、本気に・・・!?

 アキがハルとリオの殺気と狂気を痛感して息をのむ。

「もう私には何もない・・お父さんもお母さんも、ナオミもレンさんも・・・もう私には、この道しかない!」

「オレたちは、どんな理屈にも押しつぶされない!受け入れたら死んだも同然になってしまうからだ!」

 また自分の頑なな意思を口にするリオとハル。2人とも自分の意思を貫くことしか考えていなかった。

「私はあなたを倒すことで、たった1つの希望をつかむのよ!」

「オレとアキは、これから安心できる場所と時間を作るんだ!オレたちの安心を壊そうとしてくるなら、オレはそいつを叩き潰す!」

 リオとハルが同時に飛び出して、刃を激しくぶつけ合う。刃のぶつかり合いが衝撃に巻き起こし、周囲を揺るがす。

 何度も叩きつけていくうちに、2人の刃が折れていく。しかし刃はすぐに復元されて、再び衝突を繰り返していく。

 そして刃は次第に互いの体に傷をつけていく。ハルもリオも体から血をあふれさせながら、攻撃を繰り返していった。

「やめて・・・」

 ハルとリオの戦いを見ていたアキが、徐々に悲痛さを膨らませていく。

「やめて・・・!」

 声を振り絞るアキだが、ハルにもリオにも届かない。

「もうやめて!」

 アキが声を上げて、ハルとアキが争う場に飛び込んできた。

「やめて、ハル、リオさん!」

 2人の間に割って入るアキ。ハルは気づいて攻撃を止めたが、リオは攻撃の手を止めない。

「アキ!」

 ハルがとっさにアキを抱き寄せて、リオが振りかざした刃から彼女を守った。2人は転がりながらリオとの距離を取る。

「アキ、何で飛び込んできたんだ!?・・そんなことしたら、アキが・・!」

「ゴメン、ハル・・でも、どうしても・・ハルとリオさんが戦って、傷つけ合って・・辛い思いをしていくのが耐えられなかった・・・!」

 声を荒げるハルに、アキが悲痛さを込めて答える。彼女の悲しい顔と言葉に、ハルが困惑を感じていく。

「アキ・・アキがこんな思いをするぐらいなら・・でもアイツが、リオがオレを思いとどまらせてくれない・・・!」

 アキに辛さを感じていくハルだが、リオへの戦意も捨てることができなかった。

「アイツがおとなしくオレたちから離れてくれない限りは、オレも戦いをやめない・・やめることができない・・・!」

「でも・・・!」

 アキを守るためにリオと戦おうとするハル。そのためにリオが傷つくことに、アキは辛さを感じていた。

「ハルを倒す・・それしか私に残されている道はない・・・」

「いい加減にしろ・・アキをここまで困らせて、お前は平気なのか!?

 低く呟くリオに、ハルが憤りを見せる。それでもリオは考えを変えない。

「そうしないと・・私は私でいられなくなってしまう・・・!」

「そこまで・・そこまでお前は!」

 自分自身の希望にすがりつこうとするリオに、ハルが憤りを爆発させる。するとアキがリオの前に立って、両手を広げてきた。

「アキ・・・!?

「これ以上傷ついてほしくない・・ハルにもリオさんにも・・だからリオさん、もうやめて!」

 目を見開くハルの前で、アキがリオに呼びかける。しかしリオはハルへの敵意を消さない。

「邪魔をしないで・・邪魔をするものは、何だろうと容赦しない!」

 リオがアキに向けて刃を振り下ろしてきた。退こうとしないアキだが、たまらず目をつぶる。

「アキ!」

 そのとき、ハルが刃を突き出してリオの刃を弾いた。リオの刃はアキから大きくそれた。

「アキ・・もういい・・もうコイツは、オレたちの言うことを聞こうともしない・・完全にオレの敵に回ったんだ・・・!」

「ハル・・・でも・・・」

 呼びかけてくるハルに、アキが辛さを向ける。ハルはリオに何を言っても通じないことを痛感していた。

「もう離れろ、アキ・・アイツはオレたちを完全に敵に回している・・死なないと分からない、馬鹿げたヤツらと変わらなくなってしまったんだ・・・!」

「違う・・リオさんは、ハルと同じ・・同じ、勝手な人たちを憎んでいるから、こうして争い合ってしまう・・・」

「それでも・・それでもオレは・・・!」

 アキが困惑しながら呼びかけるも、ハルもリオへの対応を変えようとしなかった。

「離れているんだ、アキ!」

 ハルはアキを横に追いやると、リオに鋭い視線を向ける。

「よくもアキを・・やはり、お前は許せない・・・!」

「許せないのは私のセリフだ・・今度こそ・・今度こそお前をこの手で!」

 怒号を言い放って、ハルとリオが飛びかかって刃を振りかざす。2人は再び激しい攻防を繰り広げていく。

 2人の熾烈な戦いを、アキは離れた場所で見守っていた。

(私にはどうすることもできない・・ハルを守ることも、リオさんを止めることも・・・私はもう、見守ることしかできない・・・)

 アキが心の中で自分の無力を痛感していく。2人のために何もできない自分を、彼女は呪っていた。

(ハルもアキさんも傷ついてほしくない・・それが私の正直な気持ち・・・お願い・・無事でいて・・2人とも・・・!)

 ハルもリオも無事でいることが、アキが抱いていた最後の希望だった。

 その中でハルとリオは衝突し、刃を激しくぶつけ合っていた。

(私にはもう何もない・・あたたかい家族も、友達との時間も・・何か1つでも希望がなかったら、私は私でなくなってしまう・・・)

 リオがハルと戦いながら、心の中で自分に言い聞かせていく。

(生きながら、死んでいるのと同じになってしまう・・・!)

 残された希望にすがりつくように、リオが感情を爆発させる。感情の赴くままに刃を振りかざす彼女は、無意識に涙をあふれさせていた。

(リオさん・・ハルもリオさんも、本当は戦いなんてしたくないと思っている・・・)

 アキはリオのその涙を目の当たりにして、改めて動揺を覚える。

(こうしてすれ違わなかったら、きっと仲良くなっていたのに・・争うことなく、分かり合えたはずなのに・・・)

 改めてハルとリオが戦うことに辛さを感じていた。

「お願い、ハル・・・リオさんを・・リオさんを止めて!」

 アキがハルに向けて願いの言葉を言い放った。目を見開いたハルが、リオに向かって飛びかかる。

 リオとハルが同時に刃を突き出す。2人の刃は互いの左肩に同時に突き刺さった。

「うっ!」

「ぐっ!」

 肩を刺されてリオとハルが顔を歪める。2人の刃が折れて、彼らは肩に刃が刺されたまま距離を取る。

「ハル!リオさん!」

 悲鳴を上げるアキの見つめる先で、ハルとリオが呼吸を乱しながら、肩に刺さった刃を引き抜く。2人の肩から鮮血があふれ出す。

「私は・・私はまだ・・・!」

「オレは・・まだ倒れない・・アキと一緒に・・心から安心できるようになるまでは・・・!」

 声を振り絞るリオとハル。しかし肩の痛みと体力の消耗で、2人とも立ち上がるのも難しくなっていた。

 

 少女の力によって石化され、全裸の石像にされてしまったサクラ。しかし彼女の意識は残っていた。

「あたし・・・えっ!?!?

 心の中のサクラの意識。彼女は自分が裸であることに驚いた。だがすぐに彼女は、自分の身に起きたことを思い返す。

「そうか・・あたし、あの子にやられて、石にされて・・・」

 自分が石化されたことを思い出して、サクラは辛さを感じて自分の体を抱きしめる。

「ハル・・アキちゃん・・リオちゃん・・・大丈夫かな・・・?」

 サクラがハルたちが少女に狙われることを不安に感じていく。しかし石化されている自分にはどうすることもできないと、サクラは思い知らされていた。

「本当にいい体をしているね・・・」

 そのとき、サクラの前に石化をかけてきた少女が姿を現した。サクラと同じ、一糸まとわぬ姿で。

「アンタ・・・!?

 迫ってくる少女に身構えるサクラ。しかしサクラは少女に対して抵抗ができない。

「あれ!?・・体が、動かない・・・!?

 驚愕を覚えるサクラに、少女が寄り添って妖しく微笑みかけてきた。

「それじゃ、じっくり確かめさせてもらうね・・・」

 少女は囁きかけると、サクラの胸に手を当てた。少女はその感触を確かめて、笑みを強めていく。

「う・・動けない!?・・触られたくないのに・・抵抗できない・・・!?

「当然だよ・・だって今のあなたはオブジェ・・本当は指一本だって動かせない・・私に何をされても抵抗できないのは当然・・・」

 自分の意思で動くことができないサクラに、少女が語りかける。彼女の手に撫でまわされて、サクラが動揺を膨らませていく。

「いい胸・・いいお尻・・いい腕・・いい足・・・」

「やめてって・・あたしの体、そんなに気安く触んないでよ・・・!」

 体の感触を確かめて喜ぶ少女と、触れられてあえいでいくサクラ。サクラは抵抗を封じられて、一方的に少女に体を弄ばれていた。

「今度は少し刺激があるよ・・」

 少女が言いかけて、サクラの股下に手を伸ばした。

「ちょっと!どこを触って・・うわあっ!」

 少女に秘所を触れられて、サクラが声を上げる。彼女の体を強い恍惚が押し寄せてくる。

 全く抵抗できずに体を弄ばれて、サクラはあえぎ声をあげていく。

「この感じ・・本当に気持ちがよくなってくる・・あなたも気分がよくなっているの、分かるよ・・」

「あぁぁぁ・・・ハル・・アキちゃん・・・リオ・・ちゃん・・・」

 少女が囁きかける中、サクラが自我と自制心を揺さぶられていく。膨らんでいく恍惚に耐えきれなくなって、彼女は完全に脱力した。

「あなたは心も体も満足したみたいね・・触れられることを喜ぶようになった・・・」

 サクラの顔と裸身を見つめて、少女が微笑みかける。しかし少女はその笑顔を曇らせてきた。

「でも私は違う・・あなたは私を完璧に満足させる感じじゃなかった・・」

 サクラに触れたことが自分の求めていたものと違ったことに、少女は満足できない気分を感じていた。

「他の子を・・他の子の感触なのかもしれない・・私が求めているのは・・・」

 少女はため息をついてから、サクラから離れた。サクラは呆然としたまま、心も動かなくなってしまった。

「そしてリオ・・今度こそ私が、あなたを守らないと・・・」

 リオへの想いと心配を抱えて、少女は現実に意識を戻す。彼女はすぐに部屋を後にした。

 石化されて立ち尽くしているサクラ。この部屋には彼女の他、たくさんの美女が全裸の石像にされて立ち並んでいた。

 

 

次回

第23話「石化」

 

「リオをこれ以上傷つけさせない・・・」

「お前もオレとアキを追い込もうとするのか・・・!」

「ハル!」

「あなたの体も確かめたい・・・」

「これで、あなたたちの安心につなげられるなら・・・」

 

 

作品集

 

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