ガルヴォルスFangX 第18話「孤立」
リオとナオミを逃がすため、サクラはリュウキを食い止めていた。しかしサクラはリュウキに追い詰められつつあった。
「やっぱりあの子じゃないと面白くないなぁ・・」
リュウキが物足りなさを感じて肩を落とす。
(もうリオちゃんとナオミちゃん、逃げ切れてるかな・・あたしも逃げないと・・・!)
リュウキが気落ちしている間に、サクラがスピードを上げてこの場から逃げ出した。
「いいよ、別に・・もう君に興味ないから・・」
リュウキはサクラを追おうとせず、人の姿に戻る。
「さーて、あの子のところへ行くか・・・」
リュウキはリオを追いかけて歩き出していった。
リュウキから逃げてきたサクラは、リオとナオミを探す。彼女がたどり着いた道で、彼女は銃の火薬のにおいをかぎ取った。
(もしかしてリオちゃんとナオミちゃん、兵士たちに・・・!?)
リオとナオミへの心配を膨らませていくサクラ。
「リオちゃん、サクラちゃん、どこ!?」
サクラが声を上げるが、彼女への返事はどこからも出てこない。
(落ち着け・・落ち着いてリオちゃんたちの感じを見つければ・・・リオちゃんはガルヴォルス・・気配を感じ取ることは難しくない・・・!)
サクラは気を落ち着けて、リオのガルヴォルスとしての気配を感じていく。そして彼女は、ゆっくりと移動していくリオを捉えた。
「リオちゃん、待ってて・・無事でいて・・・!」
不安と一途の願いを胸に秘めて、サクラは走り出していった。
ナオミの亡骸を抱えて、リオはマンションに戻ってきた。兵士たちはマンションから離れていた。
マンションの自分の部屋に戻り、リオはナオミをベッドに横たわらせた。
「ナオミ・・ごめんなさい・・・もうあなたが苦しむことはないわ・・・」
リオがナオミに向けて言いかける。彼女の目からは涙があふれていた。
「本当にごめん、ナオミ・・もう私、何も信じることができない・・少しでも信じたら、また苦しむことになってしまう・・・」
今の自分の気持ちを正直に口にするリオ。
「だから・・私に牙を向けてくるものは、もう容赦しない・・すぐに確実に倒す・・・」
目つきを鋭くして決意を口にするリオ。彼女は全てを敵に回そうとしていた。
「もうここには帰ってこれない・・ナオミが安心して休めないから・・・」
ナオミに声をかけてから、リオはマンションを出た。彼女は目からあふれていた涙を拭って走り出した。
リオとナオミを探してマンションのほうに向かっていたサクラ。その途中、彼女はハルとアキが通りがかるのを見つけた。
「ハルー!アキちゃーん!おーい!」
サクラが声をかけると、アキが足を止めて振り向き、ハルが嫌そうな顔を浮かべる。
「サクラさん・・何かあったんですか・・・?」
「アキちゃん・・・実は・・リオちゃんが・・リオちゃんに何かあったみたいで・・・」
アキが声をかけると、サクラがリオのことを話してきた。
「リオに会ったの?・・でも、僕はリオに会うつもりは・・」
「最後まで話を聞いて・・人間の兵士が、ガルヴォルスを滅ぼそうと乗り出してきて・・リオちゃんも攻撃されて・・・!」
「兵士・・僕たちも襲われたよ・・しつこいから倒した・・・」
サクラの説明を聞いて、ハルが不満げに言葉を返していく。
「その調子じゃ、リオちゃんには・・会ってないみたいだね・・・」
「サクラさん・・リオさんに何か・・・?」
「リオちゃんがその兵士たちに襲われて・・ナオミちゃん・・リオちゃんのお友達も一緒なの・・・!」
サクラからの話を聞いて、リオが緊張を不安を覚える。
「一緒に来て、とは言わない・・とりあえずそのことを話しとくだけでもって思っただけ・・どうするかはハル自身で決めて・・・」
サクラは言いかけると、ハルが嫌そうな表情を浮かべたままだった。
「あたしはリオちゃんたちを探しに行くよ。大体の居場所は分かってるから。」
サクラはハルとアキに言いかけてから、リオとナオミを探しに再び動き出していった。
「あの方向・・リオさんの自宅のマンションのあるほう・・・」
「本当はイヤなんだけど・・どうしても気になってしまう・・・」
呟きかけるアキと、困惑を浮かべるハル。
「どうするの、ハル・・・?」
「行くだけ行ってみる・・ちょっとでも危ないと思ったら、すぐに離れるよ・・・」
アキの問いかけに、ハルが自分の考えを口にする。
「うん・・それでもいいよ・・・行こう・・」
頷いたアキを連れて、ハルもリオのマンションに向かっていった。
リオのマンションにたどり着いたサクラ。しかしリオの気配がマンションからしないことに気付いて、サクラが周りを見回す。
(リオちゃん・・1回帰った後にまた外に出たんじゃ・・・!?)
リオの居場所を改めて探るサクラ。彼女はリオのかすかな気配を捉えて歩き出す。
(リオちゃん・・早まったことはしないで・・あたしがすぐに行くから、待ってて、リオちゃん、ナオミちゃん・・・!)
リオとナオミを追い求めて、サクラは走り出した。
そのサクラと入れ違いになる形で、ハルとアキもマンションにやってきた。
「とりあえず部屋に行ってみよう・・帰っているかもしれないし・・・」
「うん・・ちょっと不安だけど・・行ってみよう・・・」
アキの声にハルが頷く。2人はマンションに足を運んで、リオの部屋にたどり着いた。
「えっ・・・!?」
部屋の中の光景にハルとリオは目を疑った。ベッドの上にナオミが横たわっていた。
「ナオミさん・・・!?」
アキが恐る恐るナオミに近づいていく。彼女がナオミに触れる前から、ハルはナオミが命を落としていたことに気付いていた。
「コイツ・・もう、生きてない・・・」
「ナオミさんが・・息をしていない・・・!?」
ハルが口にした言葉を耳にして、アキが悲しみを感じていく。
「ナオミさんが・・そんな・・・こんなことって・・・!」
「これは撃たれた傷だ・・やったのはリオじゃなく、あの兵士たちだ・・・」
悲しさを募らせるアキと、兵士たちへの敵意を感じていくハル。
「もしかしてリオさん、ガルヴォルスだけじゃなく、人間も敵だと思ってるんじゃ・・・!?」
「それは・・僕も近いところにいる・・・」
不安を口にしたアキに、ハルが物悲しい笑みを浮かべて言いかける。
「人間もガルヴォルスも関係ない・・僕は僕のイヤなものを叩き潰して、心から落ち着きたいだけなんだ・・・」
「ハル・・・うん・・そのためにハルは、ずっと戦ってきたんだよね・・・」
自分の考えを口にするハルに、アキが小さく頷く。
「もうここを出る・・いつまでもいたら、僕たちが殺したと思われてしまうから・・・」
「もう、私たちにできることは何もない・・辛いことだけど・・・」
ナオミを残したまま部屋を出るハルとアキ。2人はリオやサクラを追おうとはせず、あくまで自分たちの安息のために行動しようとしていた。
ナオミを失ったリオは、夢遊病者のように歩いていた。彼女は信じられるものを見失い、絶望にさいなまれていた。
「私にはもう何もない・・私から何もかも奪った敵への憎しみだけ・・・」
リオは力なく1人呟いていく。彼女の目には生の輝きが失われていた。
「もう私は・・降りかかる火の粉を払うように・・私を狙ってくる敵を倒していくしかない・・・」
込み上げてくる悲しみと絶望を怒りと憎しみに塗り替えて、リオは戦意を募らせていった。
「みーつけたー・・」
歩いている途中で声をかけられて、リオが足を止める。彼女の横の木の上にリュウキがいた。
「やっぱり君じゃないと楽しめないよ・・だから遊んでよ・・」
「お前がいたから・・私はイヤな思いをした・・・お前たちがいなければ・・私は救われていた・・・!」
笑みを見せてくるリュウキに、リオが鋭い視線を向ける。
「お前たちは全員・・私が滅ぼす・・・!」
敵意をむき出しにしたリオの頬に紋様が走る。彼女の姿がソードガルヴォルスに変わる。
「いいね・・気合入ってて・・・こうでなくちゃ・・・」
リュウキもキラーガルヴォルスとなって、リオを迎え撃つ。リオが右手から刃を出して、リュウキも剣を具現化する。
リュウキがリオに向かっていって剣を振りかざす。リオも刃を振りかざして、リュウキを迎え撃つ。
剣と刃がぶつかり合った瞬間、リュウキは緊張を覚えた。彼はリオの力が上がっていることに気付く。
「なかなかやるようになったじゃない・・こんな君を倒せば、最高に面白くなる・・・!」
リュウキが目を見開いて、さらにリオに剣を振りかざしていく。リオは素早く動いて剣をかわしていく。
「お前の考えに賛同するつもりは・・かけらもない!」
言い放つリオから禍々しいオーラがあふれ出してきた。彼女の体が刺々しいものへと変わった。
「いいよ、その姿・・その姿のお前をやっつけることが、僕の最高の喜びになるんだから・・・!」
リュウキが笑い声をあげて、全身に力を込める。彼の体からも禍々しいオーラがあふれ出してきた。
「本当に、楽しみだよ・・・」
喜びと期待を募らせていくリュウキだが、リオは表情を変えずに彼を見据えていた。
リオのマンションを出たハルとアキ。2人はリオを追いかけることなく、自分たちの旅を続けようとしていた。
「今度、リオさんが現れたら、私たちに対してどうするんだろう?・・・襲い掛かってくるのかな・・・?」
「分からない・・その可能性のほうが高いと思うけど・・・」
アキが投げかけた疑問に、ハルが困惑を抱えたまま答える。
「もしも僕に、アキに襲い掛かってくるなら・・何を考えてるのかなんて知らない・・僕は容赦しない・・・」
「ハル・・・」
自分の意思を貫こうとするハルに、アキは戸惑いを感じていた。
「僕は僕たちが落ち着きたいだけなんだ・・それを邪魔するだけで、僕が叩き潰す理由になる・・・」
「そうされるのが、リオさんのためになるのかな?・・それとも、私たちを倒すことになるのが、リオさんのために・・・」
「関係ないって・・僕はあくまで僕たちのためにやるだけだよ・・・」
心配の声をかけるアキだが、ハルは自分の意思を変えようとしない。
「そんなにリオが気になるなら、うまく鉢合わせするのを祈ることだね・・」
ハルが投げかけた言葉にアキが小さく頷く。
そのとき、ハルは異様な気配を感じ取って緊張を覚えた。彼はこの気配の1つがリオのものだと悟った。
「ハル・・・もしかして、リオさん・・・!?」
「うん・・もしかしたら、戦っているのかもしれない・・」
不安を口にするアキにハルが言いかける。
「もしもこっちに近づいてきたら、僕も戦うことになる・・アキを守るために・・・」
「ハル・・ありがとう・・でも私、どうしても胸を痛めることになるかもしれない・・ハルが傷ついても、リオさんが傷ついても・・」
互いに自分の考えを正直に口にしていくハルとアキ。ハルはアキのこの言葉を不快に感じず、素直に受け入れた。
「まずは歩き出そう・・じっとしててもいいことない・・・」
ハルがアキと一緒にマンションから歩き出していった。しかしハルはなかなか離れない気配を気にせずにいられなくなっていた。
(こっちに近づいている気がする・・ホントに僕たちを狙って・・・!?)
リオが自分たちのところへ向かっていることに、ハルは不安と緊張を感じていった。
体からオーラを発してきたリュウキ。彼の戦闘力はリオに勝るとも劣らないほどにまで飛躍していた。
リオの刃とリュウキの剣が速く振り抜かれてぶつかり合っていく。その衝撃が周囲の地面や壁を破損させていく。
「終わらせてやる・・お前はここで、私が殺す・・・!」
「終わらせるのはもったいないよ・・そんなに終わらせたいなら、僕にやられればいいんだよ・・」
鋭く言いかけるリオに、リュウキは悠然さを崩さない。
「お前が死ぬ・・それ以外の結末はない!」
リオが怒号を放って、刃を振りかざしていく。しかしリュウキの剣に防がれていって、ついには刀身が折れてしまう。
「そろそろおしまいかなぁ・・いろいろ楽しませてもらったよ・・」
「終わりよ・・お前の死でな!」
リュウキに言い返して、リオが左手からも刃を出して突き出す。しかしリュウキに軽々とかわされた。
次の瞬間、リオの右手の刃がリュウキの左肩に突き刺さった。折れたはずの右手の刃は瞬く間に再生されていた。
「何度も言わせるな・・お前は私が殺すと・・・!」
鋭く言いかけるリオ。肩を刺されたリュウキが、刃から、リオから離れる。
「また・・また僕に、こんな・・・!」
リュウキが左肩を押さえて、痛みに耐えて苛立ちを見せる。彼に向けてリオが右手の刃の切っ先を向ける。
「このまま、お前にとどめを刺す・・・!」
リオがリュウキに対して追撃を仕掛けようとした。
「撃て!」
そこへ銃弾の雨が降り注いできて、リオが足を止めた。武装した兵士たちがリオとリュウキの前に現れた。
「ガルヴォルス2体発見!直ちに射殺!」
兵士たちがリオとリュウキを狙って銃を構える。
「もう・・私の周りの全てが敵・・・」
リオはナオミの命を奪った兵士たちに対しても敵意を向けていた。
「私は・・お前たちの存在を許さない・・・!」
リオは目つきを鋭くして、刃を振りかざす。放たれたかまいたちが、兵士たちの体を切り裂いた。
「お、おのれ、ガルヴォルスが!」
兵士たちがいきり立って、リオに向けて発砲する。リオは素早く動いて刃を振りかざして、兵士たちを次々に切り裂いていった。
「まだ邪魔してくるんだ・・でも僕たちの邪魔はできないよ・・・!」
リュウキは笑みを浮かべて、兵士たちを撃退したリオに向かっていく。
「今度こそ勝敗を付けてやるよ!」
リュウキが振り下ろしてきた剣を、リオが刃で受け止める。2人は移動をしながら剣と刃をぶつけ合っていった。
次の自分たちの敵の打倒に向けて、ハルとアキは歩いていた。その中でハルはリオとリュウキの気配を感じ続けていた。
「ハル・・・もしかして、リオさんがこっちに・・・」
「うん・・近づいてきているよ・・・」
アキが声をかけると、ハルが不安を込めて答えてきた。
「どうしても戦わないといけなくなりそうだ・・・」
「ハル・・・」
「僕から離れないで、アキ・・絶対に君を傷つけさせない・・・!」
戸惑いを見せるアキを、ハルが抱き寄せる。アキがさらなる戸惑いと不安を感じているそばで、ハルが周囲を警戒して視線を巡らせる。
次の瞬間、ハルとアキの前にリオとリュウキが姿を現した。
「リオさん!」
「アイツ!」
アキとハルが声を荒げる。2人の前でもリオとリュウキの激闘が繰り広げていた。
次回
「僕に親なんていらない・・」
「僕の邪魔をする親なんて、いなくなったほうがいいんだよ・・」
「やはりお前は、私が殺さないといけないようだ・・」
「お前との遊びも、ここまでかな・・・」