ガルヴォルスFangX 第15話「人の剣」
ハルとアキと再会したナオミ。リオが戦いを続けていることを知ったナオミは、ハルたちに彼女を探してほしいと頼んできた。
「お願い・・リオを探して・・このまま放っておいたら、リオ、どうなっちゃうか分かんなくなる・・・!」
「・・僕はリオを探すつもりはないよ・・アイツは僕たちを憎んでるみたいだから・・・」
ナオミの頼みを、ハルは不満を浮かべて拒否してきた。
「僕はイヤなものに自分から首を突っ込むようなことはしたくない・・イヤなんだよ、そんなの・・・」
「何言ってんのよ・・リオがピンチだっていうのに!」
「僕はイヤなことに巻き込まれたくないんだよ・・・無理やり話を進めると怒るよ・・・!」
ナオミが不満の声を上げると、ハルが鋭い視線を向けてきた。
「アンタ、こんな薄情な・・!」
「ハルに無理やりは厳禁ですよ・・最悪命を落としかねません・・」
ハルにつかみかかろうとしたところで、ナオミがアキから忠告を投げかけられる。
「ハルは無理やりや身勝手、不条理が許せないんです・・そのために戦い続けているんです・・・」
「でも、だからって・・リオを放っておいていいことには・・!」
「関係ないです・・ハルは、安心しないと納得しないんです・・周りが、今の世界がそうさせているんです・・・」
ナオミが不満を見せても、アキも姿勢を変えない。彼女はハルの気持ちを理解していた。
「リオが僕を狙ってくるなら、向こうから僕たちのところに来るよ・・・」
ハルはナオミに言いかけて、おもむろに歩き出していく。アキも彼を追うように歩き出した。
「どうして・・そんな理由、助けない理由にならないじゃない・・・!」
腑に落ちない気持ちを膨らませながら、ナオミは2人から離れていく。
その彼女の様子を遠くから見聞きしていたサクラ。彼女はハルとアキではなく、ナオミを追いかけることにした。
度重なるハルの攻撃から、政府はガルヴォルスの危険性を痛感していた。
「おのれ・・このままヤツらのいいようにさせてたまるか・・・!」
「ガルヴォルスは根絶やしにしなければならない・・でなければ我々は、ガルヴォルスによって滅ぼされてしまう・・・!」
議員たちがガルヴォルスの危険性を次々に指摘していく。
「しかし、ガルヴォルスは人間の進化だそうじゃないか・・!」
「もしもガルヴォルスが人間なら、これは人殺しに相当することに・・!」
議員たちの中にガルヴォルスの人間性を指摘する声も出た。
「そんなこと、認めるわけにいかん!」
「そうだ!あんな怪物と我々人間が同じと考えるだけでも、実に不愉快だ!」
ガルヴォルスの擁護を否定する議員の怒号。
「ガルヴォルスはバケモノだ!人間の皮をかぶった怪物だ!」
「ヤツらは必ず駆逐されなければならない!」
次第にガルヴォルスの絶滅の意見が強まっていく議員たち。彼らはついにガルヴォルスの討伐を本格化させた。
リュウキを追って街の周りを走り回っていくリオ。しかしリュウキの姿を見つけられず、気配も感じ取れなくなっていた。
「どこに行ったの・・アイツ・・・!?」
人の姿に戻ったリオが、血眼になってリュウキを探していた。しかし彼女の視界に入るのは、街を行き交う雑踏ばかりだった。
(必ずこの手でアイツを斬る・・お父さんとお母さんを殺したアイツを、私は許さない・・・!)
両親の仇であるリュウキへの憎悪を募らせるリオ。彼女はリュウキを追い求めて、さらに歩き回っていった。
リオを追いかけて街に出たナオミ。走り回った彼女は、すっかり息を乱していた。
(あたしじゃもう、リオを見つけられないっていうの・・・!?)
リオを連れ帰るどころか見つけることにも絶望を感じ出していた。
「ちょ・・ちょっと・・」
そこで声をかけられて、ナオミが振り向いた。彼女の前にサクラが現れた。
「あなたは・・・?」
「あたしは牧野サクラ。リオっていう子を探してるんだよね・・・?」
声をかけてきたナオミに、サクラが自己紹介をする。
「何でリオのことを・・・もしかして、あの2人の知り合いなんじゃ・・・!?」
「2人?・・何のことだか分かんないんだけど・・・」
懸念を見せるナオミに、サクラが疑問符を浮かべる。彼女は指摘されているのがハルとアキだと分かっていなかった。
「ゴ、ゴメン・・いきなりそんなこと言われても分かんないよね・・」
ナオミが苦笑いを見せて謝る。するとサクラも笑顔を見せてきた。
「いいよ、いいよ・・とにかくリオちゃんを探すの、あたしも手伝うよ。話を聞いた限りだけど、大変なことになってるみたいだね・・」
「うん・・このままだとリオが危ないの・・あたしにできることがないかもしれないけど・・どうしてもほっとけない・・・」
「それならなおさら手伝ったほうがいいみたいだね。1人より2人のほうが探しやすいし。」
「でも・・あたしたちのことで、見ず知らずのあなたに迷惑をかけるわけには・・」
「いいって、いいって♪困ってるときはお互い様だよ♪」
「それじゃ、お願いしようかな・・」
サクラの親切と呼びかけにナオミは応えることにした。彼女に聞き入れてもらえて、サクラはまた笑顔を見せた。
「でも、いそうなところを徹底的に探したんだけど・・どこにもいなくて・・・」
「・・この辺りをもう1回探してから、またそのいそうなところに行ってみよう。入れ違いになってるかもしれないし・・」
ナオミから事情を聞いて、サクラが呼びかける。2人は頷き合って、改めてリオを探しに動き出した。
ヘブンに戻り、店の仕事を続けていたレン。しかしその間もレンは、リオの心配を抱えていた。
(リオちゃん・・本当にどこに行ってしまったんだ・・・!?)
リオのことが気がかりになっていて、レンは集中力を欠いていた。
「店長、お客様が来ています。店長に用だって・・」
「僕に?・・分かった。行くよ・・」
店員に声をかけられて、レンが裏口のほうに行く。そこでは1人の男がいた。
「いらっしゃいませ。私に何がご用でしょうか・・?」
「えぇ。あまり他言できないことですので・・ここの休憩室で話をいたしましょう。」
レンが声をかけると、男は無表情で言いかけてきた。2人はヘブンの休憩室に足を運んだ。
「話というのは何でしょうか・・・?」
「先ほど、政府の決定で部隊も総動員されることとなりました。それに伴い、あなたにも来ていただきたいのです。」
男が投げかけた言葉に、レンは緊張を覚える。
「それは、部隊にいた私の力も必要になったと・・ですが私には、部隊にいた頃の力はありません。負傷によって任務を全うできなくなってしまったから、私は部隊を脱退したのです。」
「だとしても、あなたには部隊長としての指揮能力と戦術立案は健在のはずです。その力がこれからの任務に必要になってくるのです。」
「それでも私は、あなたたちに協力するつもりはありません。私は争いを捨てたのです。」
「あなたに拒否する権限はありません。すぐに任務に当たってもらいます。」
「それでも私は部隊に戻るつもりはありません。」
男の要請をレンは頑なに拒否する。しかし男も表情も意思も変えない。
「あなたの返答次第では、この店の安泰も保証しかねますよ。」
「この店のみんなは関係ない・・・!」
男が口にした忠告に、レンが感情をあらわにした。
「でしたら、あなたの取るべき行動は決まってきますね。あなたの賢明な判断を望みます。」
男はレンに告げると席を立ち、休憩室を後にした。
(リオちゃんのことだけでも大変になっているのに・・・!)
非情な現実の連続に、レンがたまらず頭を抱えた。どうしたらいいのか即断できず、彼は苦悩を深めていった。
レンに出頭の要請をした男が部隊に帰還。そこにいた政治家の1人に報告をした。
「我々に従わないとは愚かなことだ。あのような者も時期に排除されるべき存在だ。」
「使えれば使い切るだけです。その後に始末すればいいですから。」
肩を落とす政治家に男が無表情で答える。
「天童レンが来次第、ガルヴォルス討伐の任務に当たらせろ。部隊から離れていても力があることを我々は知っている。」
「分かりました。既にそのように部隊には内密に伝達済みです。」
「ガルヴォルスも愚か者も、まとめてこの国から一掃するぞ・・」
男の言葉を聞いて、政治家が彼に背を向ける。
「このままヤツらを・・ガルヴォルスを野放しにするわけにはいかない・・・!」
ガルヴォルスを含めた自分たちの敵の撲滅を図る政治家たちと部隊。彼らは自分の災厄になるものを徹底的に排除して聞こうとしなかった。
リュウキを追い続けるリオ。彼女がリュウキを見つけられないまま、夕暮れを迎えていた。
(本当にどこに行ったの・・どこに・・・!?)
リュウキを見つけられないことに苛立ちを募らせていくリオ。
「リオ!」
そこへナオミがやってきて、リオに声をかけてきた。
「ナオミ!?・・こんなときに・・・!」
緊張を膨らませたリオが、思わずナオミから後ずさりする。
「もう・・いい加減にして、リオ!いつまでもみんなに心配かけないでよね!」
ナオミがリオに詰め寄って両肩をつかむ。ナオミはリオを放すまいというほどに、手に力を込めていた。
「ナオミ・・放して・・でないとあなたが・・・!」
「こんなに心配させるほうが大変なことじゃないかな?」
ナオミに困惑していくリオに声をかけてきたのはサクラだった。
「あなたは?・・あなたがナオミを連れてきたの・・・?」
「連れてきたっていうか、一緒に探そうってことになったっていうか・・」
リオから疑問を投げかけられて、サクラが苦笑いを見せる。
「彼女のこと、どうしてもほっとけなかったから・・」
「ナオミのこと、巻き込みたくなかったのに・・・」
サクラのいいわけを聞いて、リオが滅入って肩を落とす。それでもナオミはリオの肩から手を放さない。
「どんだけ危ないかなんて知らない!死ぬかもしれないって言われてももう引き下がらない!リオ、アンタはあたしの友達なんだから!」
「ナオミ・・私も、ナオミと友達だと思っている・・だからこそ、私はナオミのそばにいられない・・巻き込まれて傷つくのを見たくない・・・」
「それはあたしも同じ!あたしもリオが傷ついてほしくない!」
首を横に振るリオだが、ナオミは食い下がって彼女に気持ちを呼びかける。ついにリオはナオミに返す言葉が見つからなくなってしまう。
「リオ、あたしは全然かまわないから・・何とも思わないから・・帰ろうよ、リオ・・・」
「ナオミ・・・でも・・・」
「あたしは気にしない・・どんな危険だって、リオと一緒だったらへっちゃらだよ!」
困惑するリオにナオミが呼びかけていく。しかしリオはナオミの言葉を素直に受け入れることができない。
「私と一緒にいたら死ぬかもしれないよ・・それに私も怪物・・今まで通りにはもう・・・」
「なるって・・だって今まで一緒に暮らしてきたじゃない・・ただあたしがリオのことを知らなかっただけ・・・」
震えているリオに呼びかけて、ナオミが笑顔を見せた。彼女の笑顔を目の当たりにして、リオが心を揺さぶられる。
「とりあえず帰ろう、リオ・・詳しい話はそのときに決めよう・・・」
「ナオミ・・・」
ナオミに声をかけられたことで、リオが無意識に目から涙を流していた。2人の様子を見ていたサクラも笑みをこぼしていた。
「それじゃあたしは帰るね。このことを、あたしの友達に知らせたいし・・」
サクラがリオとナオミに別れを告げて立ち去ろうとした。
「楽しそうだね、みんな・・」
そこへ声がかかってリオたちが振り向く。聞き覚えのある声だったため、リオとサクラは緊迫を覚える。
彼女たちの前に現れたのはリュウキだった。
「あなた・・・!」
「また楽しい遊びをしようよ・・最後は僕が勝つけどね・・・」
リオが声を上げる前で、リュウキの頬に異様な紋様が浮かび上がる。彼がキラーガルヴォルスへの変貌を果たす。
「あのときのガルヴォルス・・・!」
同じく危機感を覚えるサクラだが、リオとサクラの前でガルヴォルスになれないでいる。
「ナオミ・・・ナオミには近づけさせない・・・!」
リュウキを見据えたリオの頬にも紋様が走る。彼女はソードガルヴォルスとなって、リュウキに向かっていく。
「えっ!?あの子、ガルヴォルスだったの!?」
サクラがリオもガルヴォルスであると知って驚く。リオが繰り出す拳を、リュウキは両手で弾いていく。
(もしかして、あの子がハルとアキちゃんが言ってた、ガルヴォルスを憎むガルヴォルスじゃ・・・!)
ハルたちの言葉を思い出して、サクラはリオが彼らの言っていた人物であると確信した。
(だったらなおさら、あたしがガルヴォルスになるわけにいかない・・リオちゃんは、あたしにも怒りをぶつけてくる・・・!)
危機感を覚えるサクラは、どうしたらいいのか分からなくなっていた。
「ナオミ、早く逃げて!危険よ!」
そのとき、リオがリュウキを交戦しながらナオミに呼びかけてきた。
「でもリオ・・!」
「ナオミちゃん!」
困惑を見せるナオミを、サクラが連れてこの場を離れる。
「ちょっと待って!このままリオを置いてくなんて!」
「あたしが連れ戻すよ!ナオミちゃんは1度安全なところまで逃げて!」
リオを助けようとするナオミにサクラが逃げるように促す。ナオミが少し離れてから、サクラはリオとリュウキのいる場所に戻っていく。
リオやサクラに困惑を感じていくナオミ。彼女はいてもたってもいられなくなり、サクラを追いかけていった。
力を高めて拳をぶつけ合うリオとリュウキ。リオは徐々にリュウキへの怒りを募らせていく。
「その調子だよ・・その調子でもっと僕を楽しませてよね・・」
「どこまでもふざけて・・その態度が、私の感情を逆撫でする!」
笑みをこぼすリュウキにいら立ちを見せるリオ。彼女が右手から刃を引き出して、リュウキに向けて振りかざす。
「だからこの程度の力じゃ楽しめないって・・」
リュウキがため息をついてから、剣を手にしてリオの刃を受け止める。彼は剣を振りかざして、リオを軽々と押し返す。
「お前は・・お前たちは・・絶対にこの手で・・!」
「そこまでだ!」
そのとき、数人の兵士たちが現れて、リオとリュウキを取り囲んできた。彼らは2人に向けて銃を構えてきた。
「これは・・・あなたたち・・・!」
「動くな、ガルヴォルス!お前たちは包囲されている!」
声を荒げるリオに兵士が呼びかける。兵士たちはすぐに発砲できるように備えていた。
「ガルヴォルスは1匹残らず始末する!この世界に存在させてはならん!」
兵士たちがリオとリュウキに向けて銃を撃ってきた。
次回
「僕の邪魔をするからいけないんだよ・・」
「私もガルヴォルスだから、あの人たちは私も・・・!」
「そんなに・・そんなにオレを苦しめたいのか!?」
「ガルヴォルスは世界の異端者。世界のために、ヤツらは滅びなければならない。」