ガルヴォルスFangX 第14話「揺らぐ友情」
ナオミにガルヴォルスのこと、自分がガルヴォルスであることを知られてしまったリオ。彼女はナオミを見つめたまま、困惑するばかりになっていた。
「ナオミ・・・これは・・その・・・!」
「リオ・・これって・・どういうことなの・・・!?」
困惑して口ごもるリオに、ナオミが震えながら問いかける。
「ナオミ・・・」
リオはナオミに返す言葉を見つけられずにいる。
「あ〜あ・・せっかく遊んでるんだから〜・・」
そこへリュウキが声を上げてきた。彼の存在にリオは一気に危機感を膨らませた。
(倒さないといけないけど、ナオミをこのまま危険にさらすわけにいかない・・・!)
リオはガルヴォルスに対する戦意を抑えつつ、再びソードガルヴォルスになる。
「ナオミ、逃げるよ!」
「リオ!?」
駆け寄ってきたリオにナオミが声を荒げる。リオはナオミを抱えると、スピードを上げてリュウキの前から逃げていった。
「もう、逃げるなって言っといて、自分が逃げちゃうんだから・・バッカみたい・・・」
リュウキは不満を込めたため息をついて、人の姿に戻る。
「次のゲームまでお預けだね・・」
リュウキは肩を落としながらこの場を後にした。
ナオミを連れて必死に逃げたリオ。しばらく走ったところで、彼女は人の姿に戻って足を止めた。
(見られた・・私のことも、私の戦いも・・・!)
リオがナオミに対して不安を募らせていく。
「リオ・・ホントにリオなの・・・!?」
困惑している彼女に、ナオミが声をかけてきた。
「信じられない・・リオが、あんなバケモノになるなんて・・・!?」
「ナオミ、これは・・その・・・!」
体を震わせるナオミにかける言葉が見つからず、リオは動揺を膨らませるばかりになる。
「もしかして、その姿になって、誰かを襲って・・・!」
「違う!私はそんな愚かなんかじゃない!」
ナオミが口にした言葉にリオが反射的に言い返す。かなりの語気の強さにナオミが押し黙り、リオ自身も動揺を浮かべる。
「ゴ・・ゴメン・・ナオミ・・・」
たまらず謝るリオだが、ナオミは困惑してしまっている。
「信じてもらえるとは思えないけど・・話す・・私のこと、あの怪物のこと、私が関わっていること・・・」
隠しても意味がないと思い、リオはナオミに事情を話すことにした。
ナオミを追いかけてヘブンを飛び出したレン。しかしナオミもリオも見つけることができない。
「どこに行っちゃったんだ・・もしもあの子に何かあったら・・・!」
不安を募らせて、レンはいてもたってもいられない気分に駆られていた。
「僕にはどうすることもできないのか・・誰かの頼ろうとしても、頼れる人もいない・・・」
自分を無力だと思って歯がゆさを感じていくレン。
「ヘブンのみんなにまでこれ以上迷惑をかけるわけにいかない・・1度戻ろう・・」
レンはやむなくヘブンに戻ることにした。ヘブンにリオが来ているというわずかな希望を抱いて。
「こういうことだったんだね・・リオが関わってたの・・」
リオからの話を聞いて、ナオミが困惑していく。
「話を聞かせただけでも巻き込むことになる・・だから話せなかった・・・」
「怪物になって、怪物と戦ってやっつけて・・リオはあたしの知らないところで、ずっとそれをやっていたってわけ・・・!?」
「うん・・ナオミやレンさんたちに知られないように、必死になっていたから・・・」
落ち着きを取り戻せないでいるナオミに、リオはただただ答えるばかりだった。
「ナオミを巻き込んでしまった・・巻き込みたくなかったのに・・・!」
「リオ・・・」
悲痛さを浮かべるリオを目の当たりにして、ナオミは戸惑いを感じていた。あふれてきた涙を拭ってから、リオが歩き出そうとする。
「リオ、どこへ行くの・・・!?」
「ナオミ、私、もう出ていくよ・・マンションにも戻らない・・・」
ナオミが呼び止めようとすると、リオが1度足を止めた。
「あたしはリオがいてもいいんだよ!・・ううん、リオがいないとさみしいよ!」
「でも、ナオミをこれ以上巻き込みたくない・・私のそばにいたら、ナオミが危なくなる・・命を落としてしまうかもしれない・・・」
「それはリオだって・・・!」
「もう私に関わらないで、ナオミ・・・!」
リオの呼びかけをはねつけて、リオは再び歩き出していった。
「リオ!」
ナオミが止めようとする前に、リオはソードガルヴォルスとなって去って行ってしまった。
「リオ・・・!」
リオを止めることができず、ナオミは悲しみを膨らませていった。
自分たちを追い込もうとする敵への攻撃をしていたハル。彼はある高層ビルの上部に足を踏み入れていた。
「やめてくれ・・助けてくれ・・・!」
社員の1人が恐怖を感じて逃げ腰になる。その彼をファングガルヴォルスとなっているハルが見下ろす。
「悪かった・・誰かを苦しめるつもりはなかった・・怖かったんだ・・非難を浴びるのが・・・!」
「だから自分勝手をしていいことになるのか?・・自分たちだけが安全でいられればそれでいいのか・・・!?」
怯える社員にハルが怒りの声を上げる。
「だって怖かったんだ!今まで築いてきた地位も名誉も、一気に崩れてしまうのが・・!」
「地位?名誉?そんなものは何の役にも立たない・・自分勝手なマネをした時点で・・・!」
「助けて!許して!何でもするから見逃してくれ!」
さらに憤りを募らせるハルに、社員が助けを請う。するとハルが体から刃を引き抜いた。
「そうやって助けを求めた人に、お前たちは何をした!?」
ハルは言い放って刃を突き立てた。刃は社員の体に突き刺さり、鮮血があふれ出した。
「どいつもこいつも、死なないと分からないとでも言いたいのか・・・!?」
ハルは歯がゆさを口にしながら歩き出し、高層ビルから去っていった。
高層ビルの外でアキはいた。彼女の前に人の姿に戻ったハルが戻ってきた。
「ハル・・ここも終わったんだね・・・」
「ここはね・・でもまだ敵はいる・・この国にも、世界にも・・・」
声をかけてきたアキに答えて、ハルが肩を落とす。
「リオさん、今頃どうしているのかな?・・落ち着けているのかな・・・?」
アキがリオの心配をして悲しい顔を浮かべる。
「分かんないよ・・もう僕たちが気にすることじゃない・・気にしていたら逆に辛くなる・・・」
ハルも歯がゆさを浮かべて答える。
「リオさんを放っておくのと、リオさんを助けてあげるのと、どっちが私たちのためになるのかな・・・?」
「それは、リオの出方次第だ・・・」
リオへの心配と不安を口にするアキに、ハルが頑なな意思を示す。
「行こう、アキ・・まだ安心できるところまで来ていない・・・」
「うん・・・」
ハルがアキを連れて次の場所、次の敵の居場所に向かって歩き出していった。
ナオミをこれ以上巻き込めないと思い、彼女のそばから離れたリオ。街の雑踏に紛れて歩くリオは、心の中で不安を払拭しようとしていた。
(無理やり突き放して、ナオミを傷つけてしまったかもしれない・・でもそうでもしないと、ナオミは私についてきてしまう・・・)
ナオミのことを気にするリオ。
(私と一緒にいたら、間違いなく傷ついてしまう・・こうしてでもナオミを突き放さないと思った・・・)
自分がしたことは間違っていないと、リオは自分に言い聞かせていく。
(ゴメンね、ナオミ・・・あなたを、危ない目にあわせたくない・・・!)
ナオミに謝りながら、リオは歩き続けていく。彼女はだんだんと気持ちを切り替えていく。
そしてリオはヨットハーバーに行きついていた。
「また会ったね、君・・僕も嬉しいよ・・」
その彼女の前にリュウキが現れた。
「あなた・・・私のお父さんとお母さんを殺したお前を、私は許さない・・・!」
リュウキに怒りをあらわにするリオの頬に、異様な紋様が浮かび上がる。彼女がソードガルヴォルスへと変貌する。
「いいね・・そういうやる気十分っての・・」
リュウキも喜びを感じながら、キラーガルヴォルスとなる。
リオがリュウキに飛びかかり、強く握りしめた拳を繰り出す。リュウキも拳を突き出してぶつけ合う。
「お前が、お前たちが来なければ、お父さんとお母さんも死なずに済んだ!」
「そんなの知らないよ・・僕は楽しい遊びがしたいだけなんだよ・・」
怒号を放つリオに、リュウキが淡々と言い返していく。
「そのふざけた態度で、お父さんとお母さんを!」
リオがさらに力を込めて拳を振るう。ところが彼女の打撃はリュウキに軽やかにかわされていく。
「許してはおかない!今度こそ、今度こそお前をこの手で叩き斬る!」
リオが言い放ち、右手から刃を引き出した。
「そんなことをしても、もう面白くないんだよねぇ・・」
リュウキがため息をついて、具現化した剣を手にする。リオが振りかざす刃を、リュウキは剣で受け止めていく。
「せめてあの姿になってよ・・あのすごい力を出す姿に・・・」
リュウキがリオに禍々しい姿になることを望む。彼のこの態度を挑発と捉えて、リオが怒りを強める。
「お前は・・お前だけは!」
リオが激高して、全身からオーラを放つ。彼女の姿が禍々しいものへと変貌する。
「そうそう・・そうじゃないと面白くないよね・・・」
リュウキが喜びを強めて、リオに飛びかかる。剣を振り下ろすリュウキだが、リオが振り上げた刃が剣を弾き飛ばした。
「そうやって面白くさせてよ・・最後には僕が勝つけどね!」
リュウキがいら立ちを感じながら、リオに再び飛びかかる。だが彼が繰り出した拳は、リオに素早くかわされる。
直後、リオが突き出した刃がリュウキの左肩に突き刺さった。
「ぐあっ!」
肩に激痛を覚えてリュウキが声を上げる。彼はリオの刃をつかんで、強引に肩から引き抜いた。
「僕は負けないよ・・お前も僕を楽しませる遊び相手なんだから・・・!」
「もう終わりだ・・お前が遊びと言っている自分勝手は・・」
不満を言い放つリュウキに、リオが低く告げる。彼女は刃を出している右手を振り上げて、リュウキを鋭く見据える。
狙いを定めたリオが刃を振り下ろす。彼女の一閃がリュウキのいた地面を切り裂いた。
地面には鋭く深い傷跡が刻まれた。リュウキは横に動いて、一閃をかわしていた。
「こんなんじゃ楽しくない・・僕が納得できないじゃないか!」
リュウキがいら立ちを膨らませて怒号を放つ。その彼にリオが鋭い視線を向ける。
「認めない・・僕は認めないぞ、こんなの!」
リュウキは激高して、地面に拳を叩きつける。リオは即座に刃を振りかざして、舞い上げられた土煙を吹き飛ばす。
しかしその先にリュウキの姿がなかった。
「逃がさないと言ったはずだ!」
リオが目つきを鋭くして、リュウキを追って走り出す。彼女は離れようとしているリュウキの気配を敏感に感じ取っていた。
自分たちの平穏を脅かす敵と戦い続けるハルとアキ。リオへの心配を抱えたまま、2人は旅を続けていく。
「ハルー!アキちゃーん!」
そこへ声をかけられて、ハルとアキが足を止める。2人の前にサクラがやってきた。
「サクラさん、お久しぶりです。」
「久しぶりだね、アキちゃん、ハル♪・・いろいろやってるみたいだね・・」
アキに笑顔で挨拶すると、サクラがハルを見て表情を曇らせる。
「まだ戦い続けてるんだね、ハルは・・そしてまだまだ戦ってく・・」
「うん・・身勝手な人がいなくなるまで・・・」
サクラが呟いた言葉に、ハルが深刻な面持ちを浮かべて頷く。
「その身勝手な人を気にしているから、落ち着けないんだね・・・」
「・・・そういうわけでもないんですけど・・・」
言いかけたサクラに、アキが当惑を見せながら答える。
「何かあったの?・・よかったら話してもらえないかな・・・?」
悩みを聞こうとするサクラ。ハルがアキと顔を見合わせて複雑な気分を感じるも、話を打ち明けること決めて、アキが話を始めた。
「私たちの旅の間に、リオさんという人に出会ったんですけど・・その人もガルヴォルスだったんです・・」
「アイツはガルヴォルスを憎んでいて・・僕がガルヴォルスだと知ってからは・・・」
アキに続いてハルもリオについて話す。2人の話を聞いて、ナオミが戸惑いを覚える。
「そうか・・そのリオちゃんのことを心配してるんだね・・ハルとアキちゃんらしさは、全然変わってないね・・」
2人の優しさを改めて感じ取って、サクラが笑みをこぼす。
「一緒に探そうと言い出してもダメだよ・・僕たちのやることは終わっていないし、リオが考えがあるなら自分から僕たちに会いに来るだろうから・・」
ハルはサクラにも頑なな意思を示す。するとサクラがまた笑みをこぼした。
「だったらあたしもこれから2人についてっちゃおうかな〜♪リオちゃんに会いたくあってきちゃった♪」
「サクラ・・お前・・・」
サクラが口にしたことに、ハルが不満をあらわにする。
「サクラさんもガルヴォルスですよ・・ガルヴォルスを憎んでいるリオさんが、あなたの正体も知ったら・・・」
「あたしは嫌われるのには慣れちゃってるからね・・ハルのことでずいぶん思い知らされたし・・」
アキが心配の声をかけるが、サクラは気にしていない様子を見せていた。
「ついてこないでよ・・お前がいると落ち着かないんだよ・・・」
ハルが不満を言うと、アキを連れて、サクラを置いて歩き出していく。
「これじゃ、こっそりついていくしかないね・・」
サクラは苦笑いを浮かべると、1度ハルとアキが去っていくのを見送った。それから彼女は2人をこっそり追いかけることにした。
「今の調子じゃ、サクラさん、こっそりついてくるかもしれないよ・・」
アキがハルに向けて声をかけてきた。
「そばにいられるよりはいいよ・・何かしてきたら容赦しないけど・・・」
「ハル・・ハルらしいね、本当に・・・」
問いに答えるハルに、アキが物悲しい笑みを浮かべた。
リオが離れてしまい、ナオミは彼女を探しに街を歩き回っていた。しかしナオミはリオの居場所の手がかりも見つけられないでいた。
(リオ・・どこにいるの・・リオ・・・!?)
リオへの心配を募らせるナオミ。リオの居場所の見当もついていない彼女だが、リオを探さずにいられなかった。
次の場所に移動しようと考えるナオミ。
「おわっ!」
そのとき、ナオミはぶつかってしまって悲鳴を上げた。
「イタタ・・ゴ、ゴメン・・って、あれ!?」
痛がりながら謝ろうとしたナオミだが、彼女が見たのは見覚えのある顔だった。
「あなたたち、この前の・・!」
驚きの声を上げるナオミの前にいたのは、ハルとアキだった。
「あなた、リオさんのマンションの・・」
「あなたたち・・・もしかして、リオのことを知ってたんじゃ・・・!?」
アキが声を上げると、ナオミが彼女とハルがリオのことに関わっているのだと確信した。
「お願い・・・リオを探して・・・」
ナオミがハルとアキに頼みごとをしてきた。
「リオを探して!あの子、今すっごく危ないの!」
ナオミがリオを連れ戻すため、ハルたちに助けを求めた。
次回
「僕はイヤなことに巻き込まれたくないんだよ・・・」
「ガルヴォルスを野放しにするわけにはいかない・・・!」
「あなたたち・・・!」
「動くな、ガルヴォルス!」