ガルヴォルスFang 第21話「本当の平穏」

 

 

 イブに石化されて、大部屋の中で抱擁したまま立ち尽くしていたハルとアキ。2人は石化の恍惚で、意識までも快楽に突き動かされていた。

 ハルもアキも快楽で思考ができなくなっていた。気持ちのままに互いを抱きしめあい、安らぎを感じようとしていた。

 ハルの手がアキの胸を撫でまわしていく。体を触れられて、アキが心地よさを感じていく。

 さらにハルはアキの体を撫でまわして、ついに秘所に手を伸ばした。感じている快感が強まって、アキがあえぎ声を上げる。

「ハルくん・・・もっと・・もっと・・・」

 アキがハルに触れられることと弄ばれることを望んでいく。激しい快楽が彼女をそうさせていた。

「気持ちいいよ・・アキちゃん・・僕・・・」

 ハルも快感を募らせて声を上げる。2人はさらに抱きしめあって、さらなる快楽を感じていった。

 

 ハルとアキも石化させて解放させたイブ。彼女は他の苦しさに囚われている人を探していた。

「まだ・・苦しさを抱えている人はたくさんいる・・みんなの苦しさを、私が消してあげないといけない・・・」

 イブが1人で自分の気持ちと人々の辛さを思い返していく。

「この力を手にすることができて、本当によかった・・苦しさや辛さを取り除いて解放させて、幸せにしてあげられる力を・・」

 イブがさらに自分の力を確かめていく。

「力を持つ前の私は、全然幸せじゃなかった・・みんなどころか、私自身さえも幸せにできなかった・・・」

 昔を思い出して、イブが表情を曇らせる。

「私は求めた・・苦しさ、辛さを消すことのできる力を求め続けてきた・・・」

 イブは力を手にする前の自分に意識を移していた。

 

 私は幸せとは絶対に言えない生活を送ってきた。

 家は裕福ではなく、両親は働きづめの毎日。しかも次第に自分以外に疑いを強めるようになっていた。

 私も暴力を振るわれて、時に八つ当たりまでされた。

 私の苦しさと辛さは増すばかり。でも怒りや憎しみ以上に悲しさが強くなっていた。

 どうしてみんなが苦しさを抱えているの?

 みんなが苦しさから解放されたら、これ以上の幸せはないし、不幸が完全になくなる。

 そのための力がほしい。

 みんなの苦しさを消してあげたい。

 みんなを辛さから解放してあげたい。

 みんなが解放されて幸せになれば、私はそれだけで安心できる。

 そのためなら私はどんなことでもする。どんな力にでも手を出して、つかんでみせる。

 その願いが、日に日に強くなっていった。私自身、そう感じるようにもなっていた。

 

 ひたすら幸せを願い続けた私に大きな変化が起きたのは、それからしばらくしてからだった。

 両親からの暴力や八つ当たりがついに極まったというところまで来た。

 私の中に隠れていた力が、私の願いと激情で呼び起こされた。

 このとき、私はこの力を制御することができなかった。

 力を暴走させて、私は両親を手にかけてしまった。

 幸せを完全に絶つようなことをしてしまった。それは私にとって最悪の罪。

 その罪の償いをする意味でも、手にした力でみんなを苦しさから解放する。

 

 私は新しく手にした力を、みんなから苦しさや辛さを消すために使う。

 そのためにどうしたらいいのか。力をどのような形にしていけばいいのか。

 考えていくうちに、私は単純に、純粋に苦しさと辛さを消していく力の形を無意識に作っていた。

 気持ちを膨らませていた私は、その気持ちのままに力を使っていった。

 そうしたら誰かを傷つけることはなくなった。

 そして、石化による解放、苦しさや辛さを消す形が現れた。

 私が力を与えた人たちは、その力の心地よさを感じるようになった。

 それから苦しさも辛さも感じないようになった。

 私がみんなを解放して、みんなを幸せにしている。

 

 私はこのままみんなを幸せにしていく。

 みんなが幸せになるのが、私の本当の幸せ。

 

 昔の自分を思い返して、イブは自分の気持ちを整理していた。彼女は自分がもたらす力が人の心を救っていると思っていた。

「苦しさや辛さを抱えている人は、まだたくさんいる・・・」

 イブが自分自身の使命感を痛感していく。

「私みたいな苦しさを、他の人に受けてほしくない・・・そのために、私自身がみんなを解放してあげないといけない・・・」

 イブが次の相手を求めて歩き出す。

「みんなに、解放と幸せを・・・」

 一途な願いを募らせて、イブは解放と幸せを与え続けようとしていた。

 

 イブに石化されて、大部屋で立ち尽くしていたハルとアキ。2人の意識も快楽の抱擁を続けていた。

 ハルもアキも今の状態を不満に感じていなかった。そればかりか、これで自分たちにイヤなものが降りかかることはないと思い込んでいた。

 石化でも快楽でも構わない。それでイヤなものから遠ざかれるならそれでいい。ハルもアキもそう思っていた。

「もういいんだ・・このまま、イヤなものと関わることがなくなれば・・アキちゃんとずっと一緒にいられるなら・・・」

 ハルがアキに触れながら本音を口にしていく。

「もう邪魔されない・・イヤなものを押し付けてこない・・僕たちは、平穏でいられる・・・」

「うん・・・私も・・ハルくんと一緒にいられるなら・・それでいい・・・」

 呟いていくハルに、アキも小さく頷いていく。

「ハルくんが安心できるなら、私も安心できる・・ハルくんは優しいから・・・」

「アキちゃん・・ありがとう・・・」

 アキから優しくされて、ハルが感謝を見せる。

「このまま・・このままずっと・・・」

 また互いの裸身を抱きしめあい、自分たちの平穏に入り浸るハルとアキ。2人はこのままこの平穏を過ごしていこうとしていた。

「ハル・・・アキちゃん・・・」

 そのとき、ハルとアキに向けて、声がかかってきた。しかしハルもアキも自分たちの抱擁を続けて、声に反応する素振りも見せない。

「ハル・・アキちゃん・・ここにいたんだね・・・」

 ハルとアキのそばに1人の人影が寄り添ってきた。それはサクラの意識だった。

「こういう形だけど・・会えてよかったよ・・・」

 サクラがハルとアキに笑顔を見せて囁きかける。イブによって同じく石化された彼女の意識が、2人の心の中に入り込んできていた。

「ハル・・アキちゃん・・・2人も・・アイツに石にされちゃったんだね・・・」

 サクラが声をかけてくるが、ハルもアキも自分たちの抱擁だけに意識が向けられていて、彼女の話を耳に入れていない。

「しかも石にされたときのおかしな気分を感じてる・・その気分の中で、2人とも安心しようとしてる・・それが2人の幸せだって信じて・・」

 ハルとアキの気持ちを察して、サクラが戸惑いを感じていく。

「でも自由がない・・ここでじっとしてないといけないんだよ・・・それでもいいの・・・?」

 サクラが心配の声をかけるが、それでもハルとアキは自分たちの快楽から意識を他に向けない。

「それでも・・ハルはハルが安心できるようにしたんだね・・今までだって、そうだったもんね・・・」

 サクラが諦めを感じて、ハルとアキに物悲しい笑みを見せた。

「ハル・・アキちゃん・・せめて・・あたしも一緒にいさせて・・・」

 サクラも押し寄せてくる恍惚に突き動かされて、ハルとアキに寄り添った。すると2人が快楽のままに彼女に触れてきた。

「ちょっとハル・・アキちゃん・・・そんな風に触んないで・・・」

 体を触れられてサクラが悲鳴を上げる。それでもハルもアキも彼女への接触をやめない。

「やめて・・あのときと同じ・・石にされていくときと同じ・・・」

 石化されていったときに感じた恍惚をハルとアキから与えられて、サクラがあえいでいく。彼女も必死に保っていた理性を再び揺さぶられていく。

「ハル・・アキちゃん・・・このままやり続けたら・・あたしも・・甘えちゃう・・・」

 ハルとアキに体を撫でられて、サクラも快楽に堕ちてしまう。2人にされるがまま、彼女は手足や胸、腰や尻を撫でられていくのだった。

「ハル・・・アキちゃん・・・」

 脱力していったサクラも、ハルとアキに意識を委ねていった。

 

 ハルとアキを石化させた後も、イブは女性を大部屋に連れ込んでは石化して、その変化から来る恍惚を与えていった。それが人々から苦しさや辛さを消すことになるのだと、イブは信じて疑わなかった。

 人々に解放と幸せをもたらしてきたイブ。しかし苦しさや辛さを抱えている人はまだまだたくさんいる。彼女は使命感を感じながら、さらに行動を続けてきた。

「もっと・・もっと解放をもたらさないと・・みんなが幸せにならない・・・」

 みんなの幸せが自分の幸せ。イブは自分に言い聞かせて、さらに女性を石化して恍惚を与えていった。

「気分がいい・・みんなの気分がよくなっていくから・・・」

 石化した女性たちを見回して、イブが喜びを募らせていく。

「もっと・・もっとみんなを・・・幸せにしたい・・・」

 欲望と願望を募らせて、イブは次の相手を求めて動いていった。

 

 ハルとアキ、そしてサクラはイブの石化の恍惚に突き動かされて抱擁を続けていた。サクラだけが快楽に完全に溺れずに自分を保っていた。

「あたしがしっかりしないと・・ハルとアキちゃんは、ずっと・・・」

 このままハルとアキが快楽を永遠に感じていくことを不安がるサクラ。彼女は2人をこの気分から立ち直らせようと、考えを巡らせていた。

「このままだと・・ずっと生きていないことになるよ・・ハルもアキちゃんも・・・」

 自分が感じている思いを伝えようとするサクラ。

「どんなことにも縛られたくない・・イヤなものは受け入れずに逆らい続けていく・・それがハルで、アキちゃんはそんなハルを好きになったんだよね・・・」

 ハルとアキの気持ちをサクラは口にしていく。

「ハルとアキちゃんが求めていたのは、本当の自由なんでしょ!?こうしてあの人に、石にされていることに縛られるのもイヤなはずでしょ!?

「自由・・・」

「縛られる・・・」

 サクラのこの言葉を耳にして、ハルとアキの心が揺れた。

「ハルとアキちゃんの求めていた、本当の平穏って何・・・?」

「本当の・・・」

「平穏・・・」

 サクラがさらに呼びかけると、ハルとアキが再び呟くように言いかける。

「そうだ・・・僕にとって、あの人にいいようにされているのは、僕のイヤなものじゃないか・・・」

「これは・・あの人の思い通りの世界・・それじゃ、ハルくんは納得しない・・」

 自分たちの本当の気持ちを思い知らされるハルとアキ。

「こうしてハルくんと一緒にいられて・・触れられて・・気分をよくできる・・・でもそれも、ハルくんに自由がない・・・」

「うん・・・僕がほしかったのは・・自由の中での・・アキちゃんとの時間・・・」

「私からも聞くよ・・ハルくんが望んでいる平穏は、ここ・・・?」

「・・・違う・・・いいようにされている幸せは、僕の幸せなんかじゃない・・・」

 アキに声をかけられることで、ハルの感情が揺さぶられていく。

「僕の考えている安心に、僕はすがる!」

 言い放ったハルの体から衝動が起こった。彼から淡い光があふれ出し、アキに伝わっていく。

「ハルくん・・・これって・・・!?

 突然のハルの異変にアキが戸惑いを覚える。暗闇に包まれていた心の中が、光で満たされていった。

「ハル!?・・もしかして・・・うわっ!」

 広がっていく光に押されて、サクラがハルとアキの心の中から追い出された。

 

 暗闇と静寂に包まれている大部屋に光があふれた。石化されていたハルとアキの石の裸身のヒビが広がり、光があふれてきていた。

 そして石の殻が剥がれるように、ハルとアキが石から元に戻った。

「私たち・・・元に・・戻った・・・」

 アキが自分の手や体を見て、自分が元に戻ったのを確かめる。彼女のそばでハルが困惑を浮かべていた。

「元に戻れた・・アイツの思い通りの世界から抜け出せた・・・」

 ハルも自分の両手を見つめて、石化から解放されたことを実感する。

「でも、元に戻れたのは私たちだけ・・サクラさんもまだ、石化されたまま・・・」

 アキが周りを見回して不安を覚える。サクラや他の人たちは石化されたまま、その恍惚を感じ続けていた。

「アキちゃん・・・ゴメン・・気分をよくされて・・アキちゃんを弄んで・・・」

 ハルがアキに悲しい顔を見せて謝ってきた。

「ううん・・いけないのは私のほうだよ、ハルくん・・私が、ハルくんをムチャクチャにして・・・」

 するとアキがハルに対して首を横に振ってきた。

「それに私、ハルくんに触れられるなら構わないよ・・ハルくんが安心できるなら・・・」

「アキちゃん・・・僕のために、そこまで・・・」

 アキが投げかけた言葉に、ハルが戸惑いを覚える。

「もしもハルくんが落ち着けるなら、私はまたあなたに抱かれてもいい・・遠慮しなくていいよ・・・」

「アキちゃん・・それでいいの?・・僕にそこまでして・・」

「私が決めたんです・・私も、ハルくんのそばにいたい・・ハルくんがいないと、私・・・」

「アキちゃん・・・僕も・・アキちゃんが辛い思いをするのはイヤだから・・・」

 寄り添ってきたアキをハルが抱き寄せる。2人とも顔を見合わせて、込み上げてくる想いに突き動かされるように、顔を近づけて唇を重ねた。

(これが、本物のキスの感じ・・今の感じのほうが、ずっと気分がよくなる・・・)

 ハルがアキとの口づけに安らぎを感じていく。2人は1度唇を離して互いを見つめ合う。

「アキちゃん・・本当にいいの?・・ムチャクチャになっちゃうんだよ・・・」

「ハルくんになら構わない・・今度は私の意思で、ハルくんの意思・・私たちがそうしようと決めてするんだから・・・」

「僕たちがそうしようと・・・うん・・僕もそうするって決めるよ・・自分で決めて、自分でやる・・・」

 アキに言われてハルが迷いを捨てていく。彼は彼女を強く抱きしめていく。

「行くよ・・アキちゃん・・・」

「うん・・ハルくん・・・」

 ハルの声にアキが微笑んで頷く。ハルはアキに再び口づけをして、さらに彼女の胸に手を当てて撫でていく。

(僕は気分を落ち着けるなら、こういうことをしてもいいと思ってた・・でもそれは自己満足・・自分だけがよければそれでいいという、僕にとってイヤなやり方だったから・・)

 アキの体にさらに触れながら、ハルは心の中で呟いていた。

(でもアキちゃんは望んでくれた・・僕を受け入れてくれた・・その願いを捨ててまで、僕は我慢をしたくはない・・)

 アキからの想いを受け止めたハルは、自分の感情に素直になっていく。ハルに胸をつかまれて揉まれて、アキがあえぎ声を上げる。

(僕はもう迷わない・・僕の納得できるように、これからもやっていく・・アキちゃんが、それを受け入れてくれたから・・・)

 ハルの手がアキの下腹部に伸びる。秘所にも触れられて、アキの快感がさらに高まる。

 このままハルとアキは抱擁と恍惚に没頭していった。心身ともに交錯させていくことだけをが、2人は考えていた。

 

 

次回

第22話「2人の牙」

 

「今度こそ切り刻んでやるよ・・・!」

「僕は僕自身の力があればそれでいいんだよ・・・!」

「オレはもう1人じゃない・・」

「オレたちはもう絶対に、離れ離れになったりしない!」

 

 

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