ガルヴォルスFang 第20話「石化」
イブの力で、ハルとアキは彼女の大部屋に連れ込まれた。2人の前にイブが姿を現した。
「そうまでして・・そうまでしてオレたちを思い通りにしたいのか・・・!?」
「思い通りになるのはあなたたちのほう・・あなたたちは苦しさから解放されたいと、心の底では思っている・・」
敵意を向けるハルに、イブが妖しく微笑みかける。
「ここにいるみんなも、解放されて幸せな気分を感じているよ・・」
「えっ・・・!?」
イブの言葉にアキが困惑を見せる。
暗闇に包まれていた大部屋に明かりがともった。部屋の中の光景を目の当たりにして、ハルとアキが緊迫を覚える。
大部屋には全裸の女性の石像が立ち並んでいた。いずれも棒立ち、呆然とした表情の石像ばかりである。
「これって、まさか、全員・・・!?」
アキが愕然となって後ずさりする。彼女はさらにサクラの姿を目にする。
「サクラさん!?・・ホントに、サクラさん・・・!」
「あなたのお友達も苦しさから解放されて、気分をよくしている・・それが本当の幸せの形なのよ・・」
体を震わせるアキに、イブが微笑みかける。
「ガルヴォルスのあなたなら感じ取れるはずよ・・みんなが気分をよくしているのを・・」
イブの言葉に促されるように、ハルが恐る恐るサクラに近づく。彼が彼女の石の裸身に触れた。
次の瞬間、ハルが驚愕を感じてサクラから離れた。彼は彼女の心の声を聞き取っていた。
イブによって石化されたサクラ。全裸の石像となっている彼女の意識は、石化がもたらす恍惚に完全に包まれていた。
「何やっているんだ・・こんな姿にされたのに、何で喜んでいるんだ・・何で安心しているんだ!?」
ハルが感情のままに叫ぶが、サクラの体も心も彼の声に何の反応も見せない。するとイブが笑みを見せてきた。
「当然の様子よ・・その子も私が苦しさ、辛さを消したことで気分をよくしているの・・その子もここにいるみんなも、最高の幸せを永遠に過ごすことができるのよ・・」
「そんな・・そんなことって・・・!」
イブの言葉を聞いて、アキがさらに困惑していく。
「あなたたちにも是非感じていってほしいわ・・強すぎる苦しさを抱えたまま、あなたたちにこれからの時間を過ごしていってほしくない・・」
「アキちゃんを、こんなおかしな気分にさせるつもりか!?・・そんなの、オレは認めない!」
手招きをしてくるイブに激高するハル。彼の体から禍々しいオーラがあふれ出してきて、殺気と狂気を高めていた。
「あなたのその力は苦しさや辛さに反発しようとして出しているもの・・それなのに幸せを望んでいないはずがない・・」
イブが声をかけるが、ハルは聞かずに彼女に飛びかかる。彼が爪を振りかざすと、鋭いかまいたちとなって押し寄せてくる。
しかしハルのこの攻撃さえも、イブは軽やかにかわしていた。
「私に解放された人は、どんなことをされても傷つくことはないけど・・私としてはあまりいいことには思えないわ・・」
イブが肩を落としてため息をついた。ハルが彼女に、激情の赴くままに角を振りかざす。
だがイブが左手を伸ばすと、ハルの動きが突然止まった。
「なっ!?」
「えっ!?」
突然のことにハルだけでなくアキも驚きの声を上げる。ハルが力を込めるが、その場から動くことができない。
「動けない・・どうして・・・!?」
「私が今押さえているのはあなたの体ではなく力・・苦しさと辛さから来る力のほう・・」
全身に力を込めて動こうとするハルに、イブが囁くように言いかける。
「少し我慢して・・これもあなたたちから苦しさを取り除くためだから・・」
「ふざけるな!そうやって思い通りにしようとしてもムダだ!オレはお前には絶対に屈しない!」
「屈服させることは私の気持ちを壊すことと同じ・・本当にあなたたちを救ってあげたいの・・・」
抗おうとするハルにイブが呼びかけていく。
「心配しないで・・あなたたちの苦しさは、必ず私が取り除いてみせる・・・!」
イブが右手もハルに向けて、意識を傾ける。するとハルから出ていたオーラが、彼女の手に向かって引き出されていく。
「ち・・力が・・抜けていく・・・!?」
手を握りしめられなくなるハル。彼はイブにガルヴォルスの力を抜き取られていた。
「ハルくん!?」
アキが困惑する前で、ハルが徐々に脱力していく。力を奪われていくことにも憎悪を募らせるハルだが、それさえもイブに抜き取られていた。
「オレは・・・僕は・・・!」
うめくハルの姿がガルヴォルスから人に戻っていく。彼はイブによって力を消耗させられた。
「力が・・力が入れられなくなった・・・!?」
倒れたハルが自分の両手を見つめて愕然となる。
「あなたから苦しさと辛さを取り除いた・・それに結びついている力も、一緒に抜けてしまったのよ・・」
「そんな・・戦えなくなった・・・!?」
イブの言葉にハルが耳を疑う。
「そんなことない・・このまま何もできずに振り回されるのは、イヤだ!」
声と力を振り絞って、ハルが立ち上がる。彼の頬に紋様が浮かび上がるが、すぐに消えてしまう。
「もうムリしなくていいの・・もう苦しさを抱えることはないのだから・・・」
「ハルくん!」
微笑みかけるイブと、ハルに向かって叫ぶアキ。ハルは心身ともに消耗して、真っ直ぐに立っていることもできなくなっていた。
「もう少し待って・・先に彼女を幸せにするから・・」
ハルに言いかけてから、イブはアキに近づいていく。アキが恐怖を感じてイブから逃げ出していく。
「怖がることはないわ・・私は本当にあなたたちを救ってあげたいの・・」
「やめろ・・アキちゃんに近づくな・・・!」
アキに手を差し伸べるイブに、ハルが声を振り絞る。しかしイブはアキに近づいていく。
「アキに近づくなっていうのが分かんないのか!?」
怒号を放ったハルが強引に体を突き動かしてイブに突っ込む。だがイブが姿を消して、ハルが突進をかわされる。
「ハルくん!」
ふらつくハルを、アキが駆け寄って支える。
「ハルくん、大丈夫!?」
「アキちゃん・・・」
心配の声をかけるアキに、ハルが弱々しく返事をする。彼はガルヴォルスの力も体力も使い果たしてしまっていた。
「これ以上あなたたちに辛い思いをさせるのは酷だわ・・」
イブがハルとアキの前に姿を見せて、右手を掲げて意識を集中させた。2人の足元に光の円が現れる。
「この光・・ハルくん、逃げないと!」
アキが叫んでハルを連れて光から離れようとした。
「それが出てきた時点で、解放への洗礼は果たされるのよ・・」
イブが妖しく微笑んだとき、ハルとアキが円から飛び出した光に包まれた。イブの光に抱かれて、2人が奇妙な感覚と衝動に襲われていく。
「体が・・思うように・・動かせない・・・!?」
「うん・・さっきよりも・・体の自由が・・・!」
弱々しく声を上げるアキとハル。2人の体から霧のようなものがあふれてきていた。
「これで、あなたたちも苦しさから解放された・・・」
ピキッ ピキッ ピキッ
ハルとアキの体に異変が起こった。その衝動で2人が来ていた衣服が引き裂かれていく。
「体が、石に・・ホントに、僕たち・・・!」
自分たちに起こっている異変にハルが驚愕する。だが石化に蝕まれていっているため、彼らは力を出すこともできなくなっていた。
「このまま気持ちを楽にしていけばいい・・もう苦しさや辛さを抱えていくことはないの・・」
ピキッ ピキキッ
ハルとアキにかけられた石化が進行する。2人の体を石化によってもたらされる恍惚が押し寄せてきた。
「何だ、この感じ!?・・気分が、おかしくなる・・・!」
「この感じを・・サクラさんも感じていたの・・・!?」
ハルとアキが石化の恍惚に声を荒げる。
「そう、そのまま解放されていけばいいの・・それがあなたたちにとっていいことだから・・・」
イブが2人の様子を見て妖しく微笑みかける。
「ダメ・・抑えられない・・・!」
あえぎ声を上げるアキが、秘所から愛液をあふれさせる。
「何で!?・・どうして出てくるんだよ・・止まって・・止まってよ・・・!」
ハルも失禁してしまうが、彼の意思に反してどんどんあふれ出してくる。
「体はもう解放されているのね・・このまま心のほうも感じていけばいい・・」
「冗談じゃない・・こんなこと・・受け入れたくない・・・!」
囁いてくるイブに、ハルが声を荒げる。
ピキキッ パキッ
体がさらに石へと変わっていき、ハルとアキが心までも恍惚に蝕まれていく。
「イヤだ・・僕は・・こんなことに振り回されたくないのに・・・!」
「ハルくん・・・ダメ・・もう・・抑え・・きれない・・・」
必死に石化の快楽に抗おうとするハルに、快楽に耐えきれなくなったアキが寄り添ってきた。彼女からの抱擁に、ハルが一気に動揺を膨らませた。
「アキちゃん・・ダメだよ・・そんなことしてきたら・・僕も・・我慢・・できなくなる・・・」
ハルも快楽に耐えきれなくなって、無意識にアキを抱きしめる。2人は石化の恍惚に促されて、互いの体の感触を確かめ合っていく。
「これが・・アキちゃんの・・感じ・・・」
「ハルくんに触れているだけで・・すごく気持ちが・・楽になる・・・」
自分たちの抱擁に安らぎを感じるようになっていくハルとアキ。心も快楽で満たされようとしている2人は、石化のために衣服を引き剥がされて全裸になっていた。
「ダメだ・・この感じに負けたら、アキちゃんがイヤな思いをする・・・」
ハルが必死にアキの体に触れることを拒もうとするが、体が接触を求めて離れようとしない。そればかりか、アキが快楽に突き動かされて、ハルと抱擁しようとする。
「アキちゃん・・しっかりして・・・このままじゃ・・僕たち・・・!」
ハルが呼びかけるが、アキは抱擁をやめない。
「ハルくん・・・私・・私は・・・!」
アキがハルに向けて声を振り絞る。ハルも拒絶できなくなって、アキの胸に手を当てた。
「気持ちいい・・こうして触れているほうが、安心してきた・・・どうして・・・」
「それが、苦しさから解放されるということよ・・」
困惑も見せるハルに、イブが囁きかける。
「抱えていた苦しさや辛さが消えて、あなたたちの体は解放感の中で喜びを感じようとしている・・その気持ちの中で、あなたたちはお互いに触れ合おうとして、それも喜びとしているのよ・・」
「そんなこと・・・やめて・・僕の体なんだから・・・僕の言うこと・・聞いてよ・・・」
イブの言葉に揺さぶられていくハル。しかし彼の言葉と意思に反して、彼の体はアキとの接触と抱擁を求め、手は彼女の胸を撫でまわしていく。
「体は正直になっている・・・あなたはもうムリをしなくても、我慢して苦しさを抱え込むこともない・・気持ちを楽にしていけばいい・・」
「僕は・・こんなことを・・望んでいたっていうの・・・?」
イブの囁きに反論できなくなり、ハルが愕然となる。アキに触れていた右手が、脱力してだらりと下がった。
快楽の赴くまま、ハルとアキが下げていた手を絡めて、触れ合いを感じていく。
パキッ ピキッ
ハルとアキの体はほとんど石へと変わりつつあった。恍惚で思考も自制心も働かなくなり、2人は快楽を募らせて互いを見つめていく。
「アキ・・ちゃん・・・」
「ハル・・くん・・・」
弱々しく声を発して、ハルとアキが顔を近づける。2人が唇を重ねて、快楽を募らせていく。
(これが・・キスっていうの?・・・こんなに・・気分がいいものだったんだ・・・)
ハルが初めての口づけの感覚を確かめて、戸惑いも感じていく。
ピキッ パキッ
ハルとアキの体は完全に石に変わろうとしていた。動くこともできなくなって、2人は唇を離すこともできなくなった。
(アキちゃん・・・僕・・このまま・・アキちゃんと一緒にいてもいいんだよね・・・)
(ハルくん・・・私・・・)
心の中で自分たちの安らぎを感じていくハルとアキ。
フッ
涙を流している瞳から生の輝きが消えた。ハルとアキが完全に石へと変わった。
「これで、あなたたちも苦しさからも解放された・・・」
イブが喜びを募らせて、ハルとアキを見つめていく。ハルは左腕でアキを抱き寄せたまま、唇を重ねたまま完全に動きを止めていた。
「あなたが抱えていた苦しさや辛さは本当に大きかった・・でも私の力によって、その苦しさも消えた・・・」
イブが石化したハルとアキに近寄って、手を伸ばして石の頬に触れた。ハルもアキも触れられても微動だにしない。
「もうあなたたちが苦しみに襲われることはない・・これからは私が、あなたたちを守るから・・・」
イブが妖しく微笑みながら囁いて、ハルとアキの石の裸身を撫でまわしていく。
「感じる・・あなたたちが、体も心も解放されて幸せを感じているのを・・あなたたちが、心から願っていた本当の幸せを・・」
イブがハルとアキの意識を感じ取っていく。
石化のもたらす恍惚にも完全に包まれたハルとアキ。2人の意識は快楽を求めて、互いに触れ合っていた。
「それでいい・・そのままあなたたちは、この解放をずっと感じていけばいい・・・」
イブはハルとアキから手を離して、2人に背を向ける。
「あなたたちに永遠の、最高の解放と幸せを・・・」
彼女は2人に優しく告げてから、大部屋を後にした。他の女性たちと同じように、ハルとアキも石化されて大部屋で快楽に身を沈めていた。
イブに石化されたハルとアキ。失われていない2人の意識は、快楽に突き動かされて抱擁を交わしていた。
アキのぬくもりを感じて、ハルは安心を感じていた。イヤなものが何もないと思えるところだと、彼は感じ取っていた。
「アキちゃん・・・このまま・・一緒にいてもいいんだよね・・・」
「ハルくん・・・私には分からない・・もうどうしたらいいのか分からない・・・」
ハルが呟きかけると、アキも弱々しく言葉を返す。
「ただ私も・・ハルくんと一緒にいられれば、それでも構わないと思う・・・」
「ありがとう、アキちゃん・・・僕のために・・・」
気持ちを伝えてきたアキに、ハルが感謝を見せる。ハルはアキに対して安らぎを募らせていく。
「これで僕たちは、誰かの身勝手に振り回されることもない・・僕たちばかりがイヤな思いをしなくて済む・・・」
「私も・・ハルくんが幸せになれるなら・・私もそれでいい・・・」
互いにすがりつくことで、ハルとアキは自分たちの幸せをひたすら求め続けた。
2人は互いに触れ合うこと、自分たちの平穏しか考えられなくなっていた。
「アキちゃん・・・我慢できない・・我慢したくないよ・・・」
「ハルくん・・・私は・・いいよ・・・」
ハルとアキが口づけを交わす。2人はこのまま快楽に溺れていくのだった。
次回
「力を持つ前の私は、全然幸せじゃなかった・・」
「私みたいな苦しさを、他の人に受けてほしくない・・・」
「みんなに、解放と幸せを・・・」
「ハル・・・アキちゃん・・・」