ガルヴォルスFang 第18話「安らぎへの魔性」
アキとサクラの前に現れた白髪の女性。彼女は2人に向けて妖しい笑みを見せてきていた。
「あなたたちを、苦しみから救ってあげる・・・」
右手を前に出してくる女性に、アキもサクラも緊張の色を隠せなくなる。
(何、この人・・すっごくイヤな感じがする・・・!)
サクラが女性に対して緊迫を募らせる。
(この人に関わったらいけない・・せめてアキちゃんを逃がさないと・・・!)
「アキちゃん、逃げるよ!」
サクラがアキの腕をつかんで逃げ出そうとした。だがすぐに女性に前に回り込まれた。
「逃げることはないわ・・いいことをしてあげるんだから・・・」
女性が2人に向けてさらに微笑んできた。
(いつの間に!?・・この人、ガルヴォルスかも・・それだけの力を持ってるってことは、もう間違いない・・・!)
女性に対して危機感を募らせていくサクラ。彼女は意識を集中しながら、アキに声をかけた。
「アキちゃん・・あたしにしっかり捕まって・・・!」
アキに呼びかけてから、サクラがキャットガルヴォルスになった。アキがしがみついたと同時に、サクラは素早く動き出した。
(どんな力を持っていても、今のあたしに簡単には追いつけないはず・・!)
自分のスピードに自信を持っていたサクラは、追いつかれないと確信していた。
そのとき、サクラの動きが突然止まった。彼女は空中で止められて、そこから前に進めなくなっていた。
「サクラさん!?」
「う・・動けない・・これって・・・!?」
声を荒げるアキとサクラ。2人の前には先ほどの女性がいた。
「だから逃げることはないって・・本当に怖がることはないのよ・・・」
「これ・・アンタがやってるってこと!?・・アンタも、ガルヴォルス・・・!?」
妖しく微笑む女性に向けて、サクラが声を振り絞る。
「ガルヴォルスなのかどうかは分からないけど・・それが、苦しみを消せる力というなら、それで構わない・・」
女性が言いかけると、アキとサクラが地上に落とされた。サクラはアキを抱きしめて、体を張って守った。
「アキちゃん、大丈夫・・・!?」
「は、はい・・」
サクラの呼びかけにアキが弱々しく答える。
「アキちゃん、あたしに構わずに逃げて・・ハルにこのことを伝えて・・・!」
「それじゃ、サクラさんが・・・!」
「あたしのことはいい!ハルを支えてあげて!」
困惑を見せるアキに、サクラが必死に呼びかける。彼女に強く言われて、アキが戸惑いを覚える。
「アキちゃんにまで何かあったら、ハルをまた追い込むことになっちゃう・・それだけは絶対にダメ・・・!」
「サクラさん・・・」
「お願い・・ハルをこれからも支えてあげてね・・・」
アキに満面の笑顔を見せてから、サクラが女性に向かっていく。彼女は素早い動きで女性の注意を引き付けようとする。
サクラに周囲を素早く移動されても、女性は全く動じていない。
サクラは思い切って女性に飛びかかる。だが彼女が振りかざした爪は、女性に軽々とかわされる。
「えっ!?」
驚きを覚えて動揺するサクラ。彼女はすぐに迷いを振り切ろうとして、女性に再び攻撃を仕掛ける。
「私に怒りや憎しみをぶつけようとしてもダメよ・・私には、苦しみを消す力を持っているの・・」
女性が口にする言葉に、サクラはさらに心を揺さぶられる。
「あなたが抱えている苦しみも、私が消してあげる・・」
女性が目を見開いて、サクラに手を伸ばしてくる。サクラは危機感を募らせながら、身をひるがえして回避していく。
「アキちゃん、全速力で逃げ・・!」
サクラがアキに呼びかけた瞬間、女性の手が彼女の腕をつかんだ。
「しまった!」
「サクラさん!」
動きを止められたサクラに、アキが声を上げる。女性の手を振り払おうとするサクラだが、抜け出すことができない。
「捕まえた・・もう放さないわ・・・」
抵抗しようとするサクラを、女性が微笑んで見つめていく。
「これからあなたの苦しみを消してあげる・・もう2度と、苦しい思いをしないように・・」
女性が言いかけて、右手に意識を傾けながら掲げる。するとサクラの足元に円状の光が現れた。
円状の光が地面から上に伸びて、サクラを包み込んだ。光を受けたサクラはガルヴォルスへから人の姿に戻されてしまう。
「ち・・力が・・・!」
力を入れられなくなったサクラが、女性の光に体を蝕まれていく。やがて光が治まって、女性が脱力したサクラから手を放した。
「これで、あなたは苦しみから救われる・・・」
女性がサクラを見つめて笑みを強める。サクラは棒立ちとなったまま、その場から一歩も動けないでいる。
「ど・・どうしたの!?・・・体が・・動かない・・・!?」
サクラが弱々しく声を上げる。彼女は自分の体を、手の指さえも思うように動かせていない。
「苦しみが消えた喜びを感じるのはこれから・・・」
ピキッ ピキッ ピキッ
女性が微笑みかけた瞬間、サクラの体に異変が起きた。彼女の体を異質な衝撃と変化が起こって、着ていた服が引き裂かれる。
「あ・・あたしの体が・・・何が・・・!?」
「サクラさん!」
動揺を覚えるサクラに、アキが悲鳴を上げる。サクラの体にひび割れが浮き彫りになっていく。
「これって・・・あたしに、何を・・・!?」
「サクラさんに・・サクラさんに何をしたの!?」
困惑を隠せなくなるサクラと、女性に問い詰めるアキ。すると女性はアキにも妖しい笑みを見せてきた。
「私がかけたのは石化・・私のは質が人から石に変わっていくものなのよ・・」
「石化!?・・サクラさんの体が、石に・・・!?」
女性が口にしたサクラの異変に、アキが愕然となる。
ピキッ ピキキッ
女性がかけた石化がサクラをさらに蝕んでいく。彼女の来ている服が引き剥がされて、石へと質が変わっていく素肌があらわになる。
さらにサクラに異変が起こる。彼女が激しい恍惚に襲われる。
「何、この感じ・・我慢が・・できない・・・!」
押し寄せる強い衝動に、サクラが呼吸を乱していく。
「ちょっと・・何がどうなってるの・・・!?」
「それが苦しみから解放されるというものよ・・人から石に変わっていく変化が、あなたをいい気分にさせているのよ・・」
声を振り絞るサクラに、女性が語りかけていく。石化の衝動が恍惚となって、サクラの体だけでなく心も侵していた。
ピキキッ パキッ
石化がさらに進み、サクラが来ていた服がほとんど引き剥がされていった。
「サクラさん!」
「こ・・ない・・で・・アキ・・ちゃん・・・!」
駆け寄ろうとしたアキを、サクラが呼びかける。快感に心身を揺さぶられていても、サクラは理性を失わないように必死になっていた。
「私の幸せに逆らおうとするなんて・・ここはすごいと思ったほうがいいのかな・・・?」
アキに呼びかけるサクラに、女性が笑みをこぼす。
「でも自分から苦しみに飛び込む必要はないの・・私に全部任せればいいのよ・・」
さらに妖しく微笑む女性の前で、サクラが徐々にあえいでいく。
「アキちゃん・・あたしはいいから・・ハルのところに・・行って・・・」
「でも、それではサクラさんが・・・!」
「いいから・・行って・・・!」
困惑と心配を見せるアキに、サクラが声と力を振り絞って呼びかけた。彼女の声と思いに突き動かされるように、アキは振り返って走り出していた。
「追いかけてもいいけど、あなたをここに置いておくのはよくないから・・」
女性はアキを追いかけようとせず、石化していくサクラに視線を戻す。
「あなたがもっと気持ちよくなって、苦しみから解放されて幸せになるのを見守らせてもらうわ・・・」
女性が囁くように言いかけて、サクラの石になっていく裸身を見つめていく。
「ダメ・・もう・・耐えられない・・・!」
恍惚に耐えていたサクラだったが、恍惚の強さに耐えられなくなってしまう。彼女の目から涙が、秘所から愛液があふれ出してくる。
「そう・・それでいい・・その調子で苦しみから解放されていけばいい・・・」
「何で・・何で止まんないの・・止まって・・・」
「体が正直になっているのよ・・もう抵抗しようとしても、体は苦しみから解き放たれているんだから・・・」
耐えようとするサクラだが、彼女の意思に反して愛液がどんどんあふれてくる。
「もう苦しいことや辛いことに我慢しなくていいの・・これからは私があなたを守っていくから、あなたはこの幸せな気分を感じていけばいいのよ・・」
女性が囁きながらサクラに近づいていく。しかしサクラは女性の言葉に促されないでいる。
「アンタを止めないと・・でないと・・アキちゃんが・・・ハルが・・・」
「・・まだ私の解放に逆らおうとするなんて・・・」
声と力を振り絞るサクラに、女性は驚きを感じていた。
ピキッ パキッ パキッ
石化がさらに進行し、サクラの体は人の質を失いかけていた。
「本当ならここまで来たら、心も完全に幸せになっているところなのに・・あなたは本当に芯が強いのね・・」
女性が言いかけて、かすかに息をしていくサクラの体に手を当てる。女性に触れられただけで快楽を感じさせられて、サクラが心を揺さぶられていく。
「ハル・・・アキちゃん・・・あたし・・・」
「もう何も考えなくていいの・・この気分に任せればいいのだから・・・」
ハルとアキを思うサクラに、女性がさらに囁いていく。
パキッ ピキッ
サクラの体がほとんど石に変わり、秘所からあふれていた愛液が出なくなってくる。
「この永遠の解放で、どうか幸せに・・・」
女性がサクラから少し離れて、さらに見守っていく。
(ハル・・・アキちゃん・・・)
ピキッ パキッ
意識をも失いかけている中、サクラがハルとアキを思う。
(2人とも・・どうか・・幸せに・・・な・・・って・・・)
フッ
思いを込めていた瞳から光が消えた。サクラの体が完全に石に変わった。
「やった・・これで・・あなたも苦しみから解放された・・・」
女性が石化したサクラを見つめて妖しく微笑む。
「体が完全に石になっても、石化による解放と幸せは最高の形で永遠に続く・・そして意識も残る・・その意識の中でも、解放を感じ続けられる・・・」
女性がサクラの石の頬に優しく触れる。石化したサクラは全く反応を見せなかったが、女性は彼女は快楽を感じているのを察していた。
「苦しみを消せるのが、1番の幸せ・・私はその幸せをみんなに届ける力を持ったの・・・」
女性が自分の力と喜びを思い返していく。
「私がみんなに幸せを届ける・・この世界から、私が苦しみを消していく・・・」
呟く女性がサクラを優しく抱きしめる。女性はサクラを連れて姿を消した。
シンジを追い返したハルは、家に戻ったところで意識を失った。彼はナツとマキに支えられて、ベッドに横たわった。
(ハル・・また怪物の姿になったのか・・でもハル、自分を失ってなかった・・・)
ナツが心の中でハルのことを気にしていた。今回暴走しなかったが、また暴走しないと言えないと、ナツは思わざるを得なかった。
「ナツ・・いい加減に教えて・・ハルくんに何かあるんじゃないの・・・?」
マキがナツに真剣な顔で問い詰めてきた。しかしナツはマキに話を打ち明けるのをためらった。
(マキちゃんに話したら、マキちゃんを巻き込んじゃう・・話すわけには・・・)
マキのためにハルたちのことを話そうとしない。
「指名手配なんてされるなんて、どう考えたっておかしいじゃない・・何が起こってるのか、話してくれるまで食い下がるんだから・・・!」
「マキちゃん・・・」
問い詰めてくるマキに気圧されて、ナツは観念してため息をついた。
「これ聞いたら、ハルたちが関わってることに巻き込まれる・・危険と隣り合わせになるかもしれないよ・・・」
「それでもいいよ・・私だって、ハルくんたちのことが心配なんだから・・・!」
忠告するナツに、マキは真剣な面持ちで頷いた。ナツは覚悟を決めてマキに話そうとした。
そのとき、家の玄関のドアが勢いよく開かれる音が響いた。
「な、何だ・・!?」
ナツがマキと一緒に慌ただしく玄関に向かう。玄関にアキが転がり込んできて、息を乱していた。
「アキちゃん!?」
「どうしたんだ、アキちゃん!?・・サクラちゃんは・・!?」
マキが声を上げて、ナツがアキに問いかけて周りを見渡す。
「ハァ・・ハァ・・・サクラさんが・・・サクラさんが!」
呼吸を整えようとしながら、アキがサクラのことを話そうとする。しかしサクラに起きたことを思い出したくなくて、アキはこれ以上言葉を出すことができなかった。
「アキちゃん・・・何かが起こった場所を教えて・・オレがサクラちゃんを・・・!」
「行かないで・・ください・・・!」
外に出ようとしたナツと、アキが手をつかんで止めてきた。
「行ったら・・今度はナツさんが・・・」
「アキちゃん・・・」
震えているアキに、ナツは困惑を覚える。彼はアキの手を振り切って出ていくことができなかった。
「アキちゃん・・・少し落ち着こう・・オレ、まだ外に出てったりしないから・・・」
ナツが声をかけるが、アキは震えたまま答えない。ナツは困った顔を浮かべたまま、玄関のドアを閉めた。
「兄さん・・アキちゃん・・・」
そこへ目を覚ましたハルが玄関にやってきた。ハルは震えているアキを見て、緊張を覚える。
「アキちゃん・・何があったんだ・・・!?」
「ハルくん・・・!」
ハルに声をかけられて、アキがさらに動揺を見せる。
「アキちゃんがまた、ここまで怖がってるなんて・・何かなくちゃありえないって・・・!」
「ハル、今はアキちゃんを落ち着かせるのが先だって・・・!」
アキに近寄るハルを、マキが呼び止める。しかしハルは引き下がらない。
「教えて、アキちゃん・・教えてったら・・・!」
「ハルくん・・・サクラさんが・・・!」
ハルに問い詰められて、アキが声を振り絞って答える。サクラに何かあったと気づいたハルだが、外に出ようとしなかった。
(アキちゃんを怖がらせるなんて・・許せないよ・・・!)
ハルがアキに今日を与えた相手に憎悪を抱いていた。
石化したサクラを連れて、女性は大部屋に来た。自分が隠れ家としている場所の大部屋である。
「ここならあなたも、安心して幸せを感じていられるわね・・」
女性がサクラを置いて見つめる。サクラは棒立ちのまま、微動だにしなくなっていた。
「分かるわ・・こうしている間も、あなたは幸せを感じている・・・」
女性が改めてサクラの石の裸身に触れる。女性はサクラの心の中を読み取って、彼女が石化の恍惚にあえいでいるのを悟った。
「これからももっともっと苦しみを取り除いて、幸せを届けていく・・あの子にも、世界中のみんなにも・・」
女性は呟いて、大部屋を見回していった。彼女の周りには、サクラのように全裸で立ち尽くしている女性の石像が立ち並んでいた。
次回
「また会ったわね、あなた・・・」
「あなた、ものすごい苦しみを抱えている・・・!」
「あなたたちの抱える苦しみを消してあげるのが、私の喜びになる・・・」
「いらっしゃい・・私と一緒に・・・」