ガルヴォルスExbreak

第23話「龍魔の決戦」

 

 

 シュラを追って移動するガイ。彼は廃工場に来て足を止めた。
(この近くだ・・ヤツのことだ。罠を張っている可能性は高い・・・)
 ガイはすぐに突撃することはなく、冷静に周囲の状況を把握する。
(爆発物や薬品が仕掛けられている。オレの動きを封じるために・・・)
 罠の種類についても推測し、彼は下手に足を踏み入れないようにする。
(それでオレを確実に倒せるとは、ヤツも思っていない・・これによる目的は、オレの動きを押さえている間に仲間を遠ざけ、自分も逃げ切ること・・)
 動きを封じようとしていると考え、ガイはシュラの正確な位置を捉えようとする。
(ここから80メートルか・・その間に罠が敷き詰められている・・)
 シュラとの距離と罠の数を把握するガイ。彼はその上で全身に力を入れる。
(罠も全て吹き飛ばして、ヤツの息の根を止める・・こうして攻撃することでオレが不利になるように考えられた罠だとしても・・・!)
 ガイが光を放出して、廃工場にぶつけた。その直後、廃工場から別の光が広がった。
(接触する前に吹き飛ばし、かき消す・・!)
 その光が毒といった悪影響を及ぼすものと判断して、ガイが力を強くして、自身の発する光で押し返す。
(シュラ・・・!)
 同時に彼はシュラが廃工場から離れていくことに気付いた。
(逃がしはしない・・まずはシュラの息の根を止める・・・!)
 ガイは罠の光を自身の光で奥へ押し込んでから、空高くジャンプした。彼は罠の光に接触することなく、廃工場をも大きく飛び越えた。
 次の瞬間、ガイが車で移動するシュラを発見した。
「見つけたぞ、シュラ!」
「ガイくん・・!」
 怒鳴るガイに気付いて、シュラが車のスピードを上げる。ガイは着地すると、全速力でシュラを追走する。
 シュラの車の前に回り込んで、ガイが拳を繰り出した。車が拳の衝撃で弾かれて横転する。
「くっ・・もう追いついてくるとは・・しかし、私が仕掛けた毒の光を受けて・・・」
 シュラが車から這い出て、ガイに振り返る。
「やはり毒を混ぜた光だったか・・接触せずに消滅させたぞ・・・!」
「あなたの場合、一筋縄にはいかないと思っていましたが、ここまでとは・・・」
 鋭い視線を送るガイに、シュラがかつてない脅威を感じていく。
「お前を倒せば、ヴォルスレイの機能はほぼ崩壊する・・お前も必ず息の根を止める・・・!」
「私もバサラさんも、これは因果応報というものでしょうね・・目的のために手段を選ばず、アキハさんを死なせあなたを傷つけた・・・」
 鋭く言うガイの前で、シュラが自責を感じていく。
「ヴォルスレイが犯した罪は、私が償いましょう・・だからこそ、私は死ぬわけにはいきません・・」
「ふざけるな・・お前たちヴォルスレイは、もはや生きているだけでも罪だ・・・!」
 生き延びようとするシュラに、ガイが怒りを募らせていく。
「お前は確実に息の根を止める・・そうすればヴォルスレイは壊滅に向けて一気に進む・・・!」
「ヴォルスレイのためでなく、人として私は生き延びます・・・!」
 近づくガイに言い返して、シュラが再び車に乗り込んで走り出す。
「逃がさないぞ、シュラ・・!」
 ガイが加速して、シュラの前に回り込む。衝突しても返り討ちにされると判断して、シュラがハンドルを切る。
 ガイが左手を振りかざして、車の左側を爪で切り裂いた。
「くっ・・!」
 車がバランスを崩して壁に衝突して、シュラがうめく。彼はドアを開けて外へ出る。
「終わりだ、シュラ・・バサラのいる地獄へ行き、罪を償え・・・!」
 シュラの前にガイが近づいて、両手を握りしめる。銃を構えるも、シュラは殺されると覚悟を決めていた。
「この力・・・あの2人が来たのか・・・!」
 そのとき、ガイが気配を感じて手を止めた。彼とシュラが振り向いた先に、マサキとツバサが現れた。
「マサキくん・・ツバサさん・・・!」
「シュラさん、大丈夫ですか!?」
 シュラが戸惑いを浮かべて、ツバサが心配の声を掛ける。
「お前たち・・オレの邪魔をするつもりか・・・!?」
「オレたちはヴォルスレイの味方をするつもりはないよ・・ただ、お前を止めるつもりでいる・・・」
 目つきを鋭くするガイに、マサキが自分とツバサの考えを口にする。
「それがヴォルスレイの味方をすることと同じだというのに・・・!」
 ガイがマサキたちも敵だと認識して、両手を強く握りしめる。
「ツバサはシュラさんを逃がして・・オレがガイを食い止める・・」
「うん・・気を付けて、マサキ・・・」
 マサキが指示を送り、ツバサがシュラのところへ向かう。
「行かせるか!」
 ガイがツバサを攻撃しようとすると、マサキが彼の前に立ちふさがった。
「お前たちはオレの敵だ・・どんな理由があろうと、邪魔をするならオレの敵だ!」
 怒鳴るガイが拳を振りかざす。マサキが拳をかわして、ガイとの距離を取る。
「お前が人の命を奪うようなことをしないのが、正直な気持ちだ・・それでも誰かを殺そうとするなら、オレたちはオレたちと仲間が生き延びるために、お前と戦う・・・!」
 自分の意思を口にするマサキの頬に、異様な紋様が浮かび上がる。彼はデーモンガルヴォルスとなって、ガイと対峙する。
「2人とも、無事だったんですね・・・」
「あなたのことはマサキから聞いています・・壊滅した組織の人だって・・・」
 戸惑いを浮かべるシュラに、ツバサが答える。
「今のうちに逃げてください・・ガイさんは私たちが・・・」
 ツバサがシュラに言って、ガイに目を向ける。
「分かりました・・お二人とも、どうかご無事で・・・」
 シュラは頷いて、マサキとツバサにガイを任せてこの場を走り去った。
「ヴォルスレイは完全に滅ぼす・・そうしなければオレは安らげないし、アキハも浮かばれない・・・!」
 ガイがヴォルスレイへの憎悪とアキハへの思いを口にする。ヴォルスレイへの復讐も、アキハを思えばこそだとガイは思っていた。
「それでアキハさんが喜ぶかどうか、ちゃんと考えて、ガイさん・・・!」
 ツバサが悲しい顔を浮かべて、ガイに呼びかける。
「たとえ喜ばなくても、アキハが報われないのは我慢ができない・・・!」
「ガイ・・・」
 アキハが喜ばなくても彼女の敵討ちをする意志を貫くガイに、マサキが困惑する。
「そこまでそのわがままをやろうとするなら、そのために関係ない人を巻き込むなら、オレは容赦することができない・・・!」
「どんな理由があっても、ヴォルスレイを野放しにするわけにはいかない・・邪魔をするなら、そいつも倒す!」
 互いに敵意を膨らませるマサキとガイ。
「ガイさん・・・私も、あなたを止めます・・全力で・・・!」
 覚悟を決めたツバサの頬に紋様が走る。彼女もエンジェルガルヴォルスとなって、マサキと共にガイを挟み撃ちにする。
「オレは止まるわけにはいかない・・お前たちもヴォルスレイも倒す・・!」
 ガイがマサキに飛びかかり、拳を振りかざす。マサキも応戦して拳をぶつけ合うが、ガイの力に押されて顔を歪める。
(ガイの力は間違いなくオレより上・・しかもこの前戦ったときよりも増している・・・!)
 ガイが怒りと共に力を上げていると思い、マサキが緊迫を募らせる。
(それでもガイを止めて、オレはツバサと一緒にマスターたちのところへ帰るんだ・・・!)
 被害を増やさず自分たちも生き残る。それがマサキとツバサを突き動かしていた。
「もうこんな悲劇しか生まない戦いを終わらせるんだ!」
 マサキが痛みに耐えて、反撃に出てガイに拳を振りかざす。ガイも再び拳を出してぶつけ合う。
「くっ・・・!」
 マサキの力が高まっているのを感じて、ガイは思わず彼から離れる。
「たとえオレを超える力を持っていても、オレは止まるわけにはいかない・・止まるときは、ヴォルスレイを完全に滅ぼしたときだ・・!」
 ガイは引き下がろうとせず、マサキに飛びかかる。だが次の瞬間、彼は突然動きを止められた。
「ぐっ!・・お前も遠くからオレを止めに来るか・・・!」
 ガイがツバサに視線を移し、声を振り絞る。
「あなたを必ず止める・・それができないなら、私たちは、あなたの命を奪わないといけなくなる・・・!」
 ツバサが声と力を振り絞り、念力でガイの動きを封じる。
「オレは止まらないし、死にもしない・・ヴォルスレイとヤツらに味方する連中を滅ぼすまでは・・・!」
 ガイが力を振り絞り、ツバサの出す念力を打ち破る。
「ガイさん・・前よりも強くなっている・・・!」
 ガイの高まる力を痛感して、ツバサが緊迫を募らせる。
「オレの力が増しているのが分かる・・その力にオレの体が応えようとしていることも・・たとえ体が耐えられないくらいの力だろうと、オレはそれを使いこなす・・・!」
 力の高まりでかかる負担も押さえつけて、ガイがマサキたちと対峙する。
「ガイ・・お前はどうしても、自分を押し付けようとするのか・・・!?」
 自分の意思を貫くだけのガイに対し、マサキは迷いを振り切った。
「オレは必ず止める・・お前の力がどこまで強くても!」
 マサキが全身に力を集めて、ガイへ拳を繰り出した。ガイが拳をかわすが、頬にかすり傷が付いた。
 ガイが直後に右の拳を振り上げて、マサキの体に叩き込んだ。
「ぐっ!」
 体を貫かれるような衝撃を痛感して、マサキが吐血する。
「マサキ!」
 ツバサが背中から翼をはばたかせて、羽根の矢を飛ばす。ガイが左手を振りかざし、羽根を吹き飛ばす。
 ツバサが瞬間移動のような高速でガイに近づき、至近距離から念力で動きを封じようとした。しかしこれもガイが力を発して跳ね除けた。
「オレは止まらないと言ったはずだ!オレの邪魔は絶対にできない!」
 ガイが言い放ち、両手の爪を尖らせてマサキに飛び掛かる。マサキが剣を具現化して、ガイが振りかざす爪を止める。
 ガイが手に力を込めて、マサキを押し込む。マサキの足が地面にめり込む。
「くそっ!」
 マサキが毒づき、右足を振り上げてガイを蹴り上げる。宙へ跳ね上げられるも、ガイは難なく着地した。
 マサキがガイに向かっていき、剣を振りかざす。ガイが右手を突き出して、爪を剣にぶつける。
 ガイの力に押されて、マサキの剣の刀身にひびが入った。
「くそっ・・!」
 マサキが毒づき、わざと体を後ろに倒して、同時に足を振り上げた。ガイの体勢を崩したところに蹴りを当てようとした。
 するとガイが体を上げて、蹴りをかわしながらマサキを地面に押し付けた。
「ぐっ!」
 体を強く押されて、マサキが苦痛を覚える。その衝撃でひび割れていた剣の刀身が折れた。
「マサキ・・ガイさん・・・!」
 ツバサが集中力を高めて、両手を前に出した。背中から翼を広げた彼女が出した強力な念力が、ガイの動きを押さえる。
「マサキ・・私が食い止めている間に、早く・・・!」
 一瞬でもマサキに窮地からの脱出と反撃の時間を与えようと、ツバサが力を振り絞る。
「マサキ、ツバサ・・お前たちもオレの手で倒す!」
 ガイが前進から衝撃波を発して、念力ごとマサキとツバサを吹き飛ばした。
 ガイが一気にスピードを上げて、マサキに詰め寄る。ガイが繰り出した拳が、マサキの体に叩き込まれた。
「がはっ!」
 痛烈な衝撃が体中を駆け巡り、マサキが吐血する。
「マサキ・・・ガイさん!」
 ツバサが翼を広げて、全身から光を発する。彼女の姿が複数に増えていく。
「分身・・ガイを確実に押さえるということか・・・!」
 マサキがツバサの狙いを把握して、攻める瞬間を見計らう。
「数を増やしてもまとめて吹き飛ばされるだけというのが分からないのか・・・!?」
 ガイが目つきを鋭くして、全身から衝撃を巻き起こす。ツバサも分身も身構えて、衝撃に耐える。
「ただの分身じゃないわ・・分身も本物に負けない力を持っている・・!」
 ツバサが分身とともに声を発する。本物に気付かれないように、彼女は同時に声を発していた。
「関係ない・・邪魔をするなら全員倒すまでだ!」
 ガイが全身から棘を発して、高速で飛びかかる。彼が振りかざす爪がツバサの分身を次々に切りつけていく。
 ツバサが残った分身と共に念力を発して、ガイを押さえ付けようとする。
「マサキ!」
 ツバサが声を振り絞り、マサキが反応してガイに向かっていく。
「お前を倒してでも、ここで止める!」
「止まるわけにいかないと言っている!」
 右手を握りしめるマサキと、怒号を放つガイ。マサキが繰り出した拳を体に受けるも、ガイが力を込めて耐える。
「このっ・・まだだ!」
 マサキが力を込めて、ガイを押し込もうとする。
「邪魔をするな、マサキ!」
 マサキの打撃に耐えながら、ガイもツバサの念力を跳ね除けて拳を繰り出した。ガイの拳が体にめり込み、マサキが口から血を出す。
「オレの力は、お前たちを超えているのが明確になったようだ・・」
 互いの力の差を実感し、ガイがマサキに告げる。マサキは激痛に耐えきれず、その場に膝をつく。
「お前たち2人が力を合わせても、オレの力には及ばない・・!」
 ガイが鋭く言って、全身から衝撃波を放つ。ツバサが分身と共に吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。
 分身が消える中、ツバサはガイに距離を詰められた。
「ヴォルスレイを滅ぼし、オレの邪魔をするヤツも倒す・・そうしなければ、オレたちが受けてきた苦痛を受ける人が、また現れることになる・・・!」
「そうして他の人が巻き込まれることを、アキハさんがよく思っていなくても・・・!?」
 自分の意思を呟くガイに、ツバサが問い詰める。
「オレはアキハが理不尽に殺されるのを、認めるわけにはいかない・・もはや、耐える方が弱さでしかない・・・!」
 ガイが鋭く言って、ツバサの左肩を右手でつかんで力を込める。
「う、うあぁっ!」
 ツバサが肩を握られて悲鳴を上げる。ガイがこのまま彼女を投げ飛ばして、マサキにぶつけた。
「ツバサ、大丈夫か・・!?」
「うん・・でも、私たちがバラバラに戦っても、ガイさんは止められない・・・!」
 心配するマサキに、ツバサが絶体絶命を痛感したことを伝える。
「オレにもっと、強い力を引き出すことができれば・・アイツを止めることができるはずなのに・・・!」
 ガイの力に及ばないことを痛感して、マサキが悔しさを浮かべる。
「でも、私たちの力を合わせることができれば・・・」
「いや、オレたち2人がかりでもこの有様だ・・・!」
「そうじゃなくて・・・私の力を、マサキに与えるのよ・・」
「えっ・・・!?」
 ツバサからの提案に、マサキが驚きの声を上げる。
「私の力を送って、あなたの力を引き上げる・・どっちも危険だけど、もうこれしかガイさんを止める方法がない・・・!」
「ツバサが力を使い果たし、オレも大きくなった力に体が耐えられるか分からない・・だけど、他にいい方法が思いつかない・・・!」
 ツバサの言葉に背中を押されて、マサキがためらいを振り払おうとする。
「お願い、マサキ・・私はあなたに、全てを託す・・・!」
「ツバサ・・・ありがとう・・・!」
 ツバサが想いを伝えて、マサキが感謝した。
「オレは必ず受け止める・・君がその気になったなら、遠慮なくやって構わない・・・!」
「うん・・行くよ、マサキ・・・!」
 マサキが覚悟を決めて、ツバサが彼に向けて念じる。
「うっ・・!」
 ツバサの力が体に送り込まれて、マサキがうめく。力の高まりと同時に体の痛みも押し寄せて、彼は必死に耐えていた。
「何をするつもりかは知らないが・・オレはヴォルスレイとその味方を滅ぼすだけだ・・・!」
 マサキたちにとどめを刺そうと、ガイが右手を強く握りしめて近づく。
「もっとだ・・もっと力を入れてくれ・・・!」
「マサキ・・・うん!」
 マサキが呼びかけて、ツバサが力を振り絞る。彼女の力が彼に叩き込まれた。
 ガイが殴りかかろうとしたとき、マサキの体から衝撃が巻き起こった。その強い圧力に、ガイが突撃を押さえられる。
「何っ!?」
 マサキの見せた力に、ガイが驚きを覚える。マサキがゆっくりと立ち上がり、呼吸を整える。
「マサキ・・私の力を受け入れたのね・・・!」
 ツバサがマサキを見て微笑む。力を振り絞った彼女は、人の姿に戻っていた。
「その力・・2人の力を合わせて、そこまでなったというのか・・・!?」
 ガイがマサキの力を感じ取り、脅威を覚える。
「だが、オレは引き下がるわけにはいかない・・ヴォルスレイを滅ぼさない限り、オレたちに安息はない・・・!」
 ヴォルスレイを滅ぼすことだけを考えるガイは、気圧されるのを抑えてマサキに向かっていく。
「オレはお前を止める・・最悪、お前の命を奪うことになっても・・・!」
 マサキが鋭く言って、全身に力を入れる。ツバサから力を託された彼は、ガイとの決着を果たそうとしていた。

 

 

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