ガルヴォルスExbreak
第21話「淘汰の雷光」

 

 

 バサラの前に姿を現したガイ。バサラに対する憎悪を、ガイはさらに強めていた。
「もう逃がしはしない・・ここでお前を討つ・・・!」
「どうやら、オレの命を賭けることになるそうだ・・・!」
 鋭く告げるガイを前にして、バサラが覚悟を決める。
「貴様を野放しにすれば、世界がガルヴォルスに蹂躙される・・それを許すわけにはいかない・・・!」
「蹂躙しているのはお前たちの方だ・・全てが自分の思い通りだと思い上がり、アキハまで・・・!」
 処罰する意思を貫くバサラに、ガイが怒りを募らせていく。
「ガルヴォルスを野放しにすれば、被害は大きくなっていた・・そうさせないための措置だった・・」
「ふざけるな!ガルヴォルスを倒すために、アキハの命を・・・!」
 自分たちの判断は間違っていないと言うバサラに、ガイが怒号を放つ。
「もはやお前と言葉を交わしても意味はない・・ここで息の根を止める・・・!」
「それは私のセリフだ・・ガルヴォルスという邪悪をここで絶つ・・・!」
 ガイと敵意を向け合い、バサラが銃を取り出す。
「そんなものでオレを止められないことが、分からないとでもいうのか・・・!?」
「これはただの銃と弾丸ではない・・ガルヴォルスの体質を分析して開発された、対ガルヴォルス用の特殊弾だ・・・!」
 両手を握りしめるガイに、バサラが低い声で語る。
「それでやられるオレではない・・オレたちの怒りを思い知れ!」
 ガイがバサラに飛びかかり、爪を突き出した。バサラが同時に発砲し、弾丸をガイの体に当てた。
「ぐっ!」
 ガイが激痛に襲われて、体勢を崩して倒れた。
「か・・体が、言うことを聞かない・・・!」
「ガルヴォルスの身体機能を狂わせるものだ。並のガルヴォルスなら即死させることが可能だ。お前のように力の高い者でも、全身麻痺は免れない。」
 目を見開いてうめくガイに、バサラが冷淡に告げる。
「普通なら銃撃を直撃されることもないお前の体と力だが、今はそれも望めない・・」
 バサラが続けて発砲して、ガイの腕と足を撃った。
「ぐあっ!」
 全身に激痛が駆け巡り、ガイが絶叫を上げる。ガルヴォルスになっている間は弾丸を直撃されても痛くもかゆくもないが、彼は激痛を感じて耐えられなくなっていた。
「普通の人間が銃で撃たれた時と同等の痛みと苦しみに襲われる。特殊弾を受けたお前は、普通の人間にも劣る状態になっている・・」
「くっ・・バサラ・・お前・・・!」
 説明を続けるバサラを、ガイが鋭く睨みつける。
「それでもお前を殺し切るには至らない。この本部を爆破させる以外に・・」
「貴様・・また本部を爆発させるつもりか・・・!?」
 バサラが口にした言葉に、ガイが驚愕する。
「ガルヴォルスは根絶やしにしなければならない・・人類に牙を向くガルヴォルスならば尚更野放しにはしない・・」
「お前は、絶対に許してはおかない・・お前がバケモノと忌み嫌うガルヴォルス以上の、バケモノと化している・・・!」
 敵意を向けるバサラへの怒りがさらに増して、ガイが強引に体を動かす。彼に対し、バサラがさらに銃を発砲する。
「ぐあっ!」
 ガイが肩を撃たれて絶叫を上げる。
「忌まわしき存在であることを棚に上げて、人間である私をバケモノと罵る・・滑稽・・愚の骨頂だ・・・!」
 バサラがガイに鋭い視線を向ける。バサラはガルヴォルスに対する強い憎悪をあらわにしていた。
「とどめには至らないが、激痛を与えるには十分だ・・・!」
「貴様・・・オレは死なない・・絶対に貴様を許さないぞ!」
 立ち去ろうとしたバサラに言い返し、ガイが強引に体を動かす。立ち上がろうとした彼に、バサラはまたも発砲した。
 また撃たれたガイだが、痛みに耐えて踏みとどまる。
「何というヤツだ・・特殊弾を受けて、常人以下の状態になっているはずなのに・・・!?」
 身体能力が激減した状態で銃撃されたにもかかわらず立ち上がるガイに、バサラの冷静さが打ち破られた。
「だが、その状態では、走る私に追いつくことはできない・・この本部諸共果てることだ・・」
「待て!逃げるな、バサラ!」
 走り出すバサラに、ガイが怒号を放つ。
「ガルヴォルスは駆逐する・・特に貴様のような危険な存在は・・・!」
 バサラがガイに鋭い視線を向ける。
「バサラ!」
 怒号を放つガイを狙い、バサラが発砲した。ガイの胸に向かって飛んでいく弾丸だが、彼に当たる直前で吹き飛んだ。
「特殊弾の効果は長時間続くはず・・動けるだけでなく、力まで発揮するなどあり得ない・・・!」
 想像以上のガイの底力に、バサラは目を見開いていた。
「お前は必ずオレがとどめを刺す・・そしてオレは、生きてここから外へ出る・・・!」
 ガイが強い意思を口にして、両手を強く握りしめる。彼は強引に体を動かして、前へ移動していく。
「おのれ、ガルヴォルス・・おのれ、竜間ガイ!」
 バサラが激高して、新たな弾丸を装填した銃を発砲した。ガイが素早く弾をよけて、バサラの体に右手の爪を突き立てた。
「がはっ!」
 体を貫かれ、バサラが吐血する。血をあふれさせる彼が床に膝をつく。
「終わりだ、バサラ・・お前の思い上がりは・・・」
 ガイがバサラに低い声で告げる。
「ガルヴォルスに殺される・・この上ない屈辱だ・・・!」
 バサラが怒りを浮かべて、ガイに鋭い視線を向ける。
「その形でお前を倒せるなら、オレは十分だ・・・!」
 ガイは静かな怒りを宿したまま告げる。彼は思うように動かない体を強引に動かして、廊下を進んでいく。
「間もなく本部が爆発する・・今の貴様では脱出に間に合わない・・・!」
「オレは死なない・・お前たちには絶対に殺されない・・・!」
 忠告するバサラだが、ガイは態度も考えも変えずに、改めて歩き出した。
(私はガルヴォルスの存在を許さない・・怪物が人類の進化など・・!)
 遠ざかっていくガイに対して憎悪を膨らませるバサラ。彼は敗北を認めず、血まみれの体を強引に動かす。
 次の瞬間、自爆の時間となり、本部が爆発を起こした。思うように動けないバサラが、広がる爆発に巻き込まれた。

 シュラとともにヴォルスレイの本部の近くに来ていたマサキとツバサ。マサキたちが周りを見回して、ガイを捜す。
「シュラさん、本部の入り口はどこですか!?もしかしたら、ガイはもう中に入って・・!」
「そんな・・本部は前の本部よりも厳重になっています・・見つかるはずは・・・!」
 1つの不安を覚えるマサキに、シュラが言い返す。その直後、彼らの近くの地面から爆発が起こった。
「な、何だ!?」
 マサキが驚きの声を上げて、ツバサ、シュラと共に身構える。
「あれは、本部のある場所・・!」
 シュラが緊張を膨らませて、通信機に呼びかけた。
「バサラさん、何かありましたか!?みなさん、応答してください!」
 連絡を試みるシュラだが、バサラや隊員たちからの返事がない。
 そのとき、マサキとツバサが強い気配を感じて目を見開いた。
「ガイだ・・ガイが出てくる・・・!」
「えっ・・!?」
 マサキが口にした言葉を聞いて、シュラが驚いて炎の方に目を向ける。2人の兵士をつかんで、ガイが炎から出てきた。
「ガイ・・・!」
 炎をものともせずに歩き続けるガイに、マサキが息を呑む。ガイがつかんでいた兵士を手から放す。
「シュラ・・まだ生き残りがいたか・・・!」
「ガイ・・・ヴォルスレイを滅ぼしたっていうのか・・・!?」
 シュラに目を向けるガイに、マサキが問いかける。
「いや、まだだ・・まだ生き残りがいる・・・!」
 ガイが言葉を返して、シュラ対する敵意を強めていく。
「2人とも離れてください!彼の狙いは私です!」
 シュラがガイを見据えたまま、マサキたちに呼びかける。
「シュラさんを見捨てるようなことはできませんよ!」
 ツバサは聞けずに、マサキと共にガイの前に立つ。
「お前たちも邪魔をするなら敵だ・・ヴォルスレイに味方することがどれほど愚かなことか、分かっているのか・・・!?」
 ガイがマサキたちにも鋭い視線を向ける。
「ヴォルスレイのしたことに、オレも疑問を感じてる・・けどだからって、関係ない人を巻き込んでいいことにはならない・・・!」
「何っ・・!?」
 マサキの訴えを受けて、ガイが目つきを鋭くする。
「もうこんな戦いはやめるんだ・・これ以上こんな見境のない戦いをしても、きっと納得できない・・・!」
「ふざけるな!ヴォルスレイを滅ぼさなければ、オレもアキハも救われない・・・!」
 マサキが説得するが、ガイは敵意を募らせるばかりである。
「そんなことをしても、きっとアキハさんは喜ばないよ・・・!」
「勝手なことを言うな!・・アキハの何が分かるというんだ!」
 ツバサも呼びかけるが、ガイが怒りを募らせて体を震わせる。
「ヴォルスレイを滅ぼさなければ、アキハの死はムダになってしまう・・そんなこと、絶対に認めるわけにいかない!」
「ガイ・・お前が大事にしている人は、お前にこんな復讐をしてほしいと、本気で願っているっていうのか!?」
 感情をむき出しにするガイに、マサキが憤りを感じていく。
「それで関係ない人まで巻き込んで平気でいるなら、お前は体だけじゃなく、心まで怪物になったことになる・・・!」
「オレは人の心は捨てていない!心があるからこそ、心のないヴォルスレイを滅ぼすべきだと考える!」
 軽蔑するマサキに、ガイが感情を込めて言い返す。
「もしもヴォルスレイに味方するなら、そいつらもオレの敵だ!」
 ガイがマサキたちに飛びかかり、手を上げて爪を振りかざす。マサキがデーモンガルヴォルスとなって、ガイの爪を左腕で防いだ。
「許せないと思った相手を倒して、他の人が巻き込まれても何とも思わないのか・・!?」
 マサキが問い詰めて、ガイを押し返す。
「だったらオレは情けはかけない・・お前に敵だと思われても、オレはお前を力ずくで止める!」
「お前も、オレの敵でしかなかったか・・・!」
 言い放つマサキに対し、ガイが憎悪を募らせる。
 ガイが再び拳を繰り出し、マサキが紙一重でかわした。その直後にガイがマサキの首をつかんできた。
「ぐふっ!」
 ガイに地面に押し付けられて、マサキがうめく。
「マサキ!」
 ツバサがエンジェルガルヴォルスとなって、ガイを止めようと念力を放った。ガイが彼女に向かって左手を突き出し、念力を衝撃波で押し返した。
「そんな!?」
「オレは止まるわけにはいかない・・ヴォルスレイは根絶やしにし、邪魔をするヤツも倒す!」
 ツバサが驚愕して、ガイが怒号を放つ。彼から出た衝撃波が、ツバサに強く伝わった。
「私の力が押し返されている・・ガイさんの力と怒りが、そこまで・・・!」
 ツバサがガイの高まる力に対する脅威を募らせていく。
「シュラさん、あなたはここから離れて、外にいる部隊に連絡を取ってくれ・・オレたちがガイを止める・・!」
 マサキがシュラのそばに来て、逃げるように促す。
「しかしそれでは、マサキさんたちが危険です・・!」
「オレたちなら耐えられます!シュラさんは外にいるヴォルスレイのメンバーをまとめてください!」
 心配するシュラに、マサキが呼びかける。
「マサキさん、ツバサさん・・・どうか、生き延びてください・・・!」
 シュラがマサキたちの無事を祈って、この場を離れた。
「待て!」
 ガイがシュラを追うが、マサキが行く手を阻んだ。
「少しだけでも大人しくしてもらうぞ!」
「ヴォルスレイの味方をするなら、全てオレの敵だ!」
 互いに怒りをぶつけ合うマサキとガイ。2人が同時に拳を振りかざしぶつけ合う。
「うっ!」
 爆発のような衝撃が巻き起こり、ツバサが押されて緊迫を募らせる。マサキとガイが互いの打撃の威力を痛感して、顔を歪める。
(2人とも力を強くしている・・その強い力をぶつけ合ったから、その反動もすごい・・・!)
 マサキたちの様子を見て、ツバサが息を呑む。
「行かせないぞ、ガイ・・ここから先の街にはな・・!」
「ヴォルスレイを逃がすつもりはない・・!」
 マサキとガイが立ち上がり、痛みに耐えて再び攻撃を仕掛ける。2人が連続で拳をぶつけ合い、徐々に互いの顔や体に当てていく。
(私も助けたいけど・・援護する隙が・・・!)
 ガイに力を掛ける瞬間を見出せず、ツバサが焦りを募らせていく。
「オレは死なない・・ヴォルスレイとその味方を倒すまでは・・・!」
 ガイが憎悪を募らせることで、痛みを押しのける。
「ガイ・・完全に怒りで我を忘れているが、それで力を上げているみたいだ・・・!」
 マサキがガイの力の高まりに焦りを感じていく。
「早くケリを付けないと、オレたちが確実にやられる・・!」
 危機感を膨らませるマサキが、右手を握りしめて力を集中させる。
「これで終わりにさせてもらうぞ!」
 マサキが言い放って、ガイに向かっていく。
「邪魔をするお前たちも、ここで倒す!そして残りのヴォルスレイも!」
 ガイが迎え撃ち、マサキと共に拳を繰り出してぶつけ合った。その瞬間、爆発のような衝撃が巻き起こり、周囲の建物を吹き飛ばした。
「うっ・・・マサキ・・!」
 ツバサが衝撃に耐えながら、マサキたちに視線を戻す。マサキとガイが拳をぶつけ合ったまま、動きを止めていた。
「マサキ・・・ガイさん・・・」
 ツバサがマサキたちをじっと見つめる。
 その直後、マサキがふらついてその場に倒れた。
「マサキ!?」
 横たわるマサキの姿に、ツバサが目を見開く。
「ぐっ!」
 ガイがマサキと攻撃し合った右手に激痛を覚えてうずくまる。ガイの右手は負傷していたが、マサキの手はそれ以上に傷ついていた。
「ここまでの力があるとは・・・それでも・・オレは止まるわけにはいかない・・・!」
 マサキの力に脅威を感じながらも、ガイはシュラを追って歩き出す。
「待って、ガイさん!これ以上、人殺しをしないで!」
 ツバサが呼び止めて、ガイが足を止めて彼女に鋭い視線を向ける。
「オレは人殺しをするつもりはない・・だがヴォルスレイは、人間の皮を被った敵・・人の姿かたちを保っていながら、ガルヴォルス以上の怪物となっている・・・!」
「違う・・今のあなたは体だけじゃなく、心まで怪物になっている・・怒りに身を任せて、敵だけじゃなく、関係ない人まで巻き込んでいる・・・!」
 ガイの話に反論するツバサ。
「あなたがどれだけ違うと否定しても、関係ない人が巻き込まれているのは確かだよ・・!」
「そうやってヴォルスレイを見逃そうとしているなら、オレは聞きはしない!」
 必死に説得を試みるツバサの言葉を、ガイが拒絶する。
「これ以上邪魔をするなら、お前も倒す・・・!」
 ガイから鋭い視線を向けられて、ツバサが言葉を詰まらせる。ガイからの刺すような殺気に、ツバサは言い返すことができなくなる。
 ガイはツバサの様子を確かめてから、彼女とマサキの前から去っていった。
「ガイさん・・・」
 ガイを追うことができず、ツバサがただ体を震わせる。
「マサキ・・!」
 彼女が倒れているマサキに駆け寄る。
「マサキ、しっかりして!マサキ!」
 ツバサが呼びかけるが、マサキは目を覚まさない。
「マサキ・・・!」
 ツバキが悲しみを膨らませて、マサキを抱きしめた。彼女の体から淡い光があふれ出す。
(マサキは助けないと・・ジンボーのみんなみたいに、大切な人をこれ以上失いたくない・・・!)
 ジンボーの人たちのことを思い出して、ツバサが悲しみを覚える。その悲劇を繰り返したくないと、彼女は持てる力を注ぎ込んでいく。
「マサキ、目を覚まして!お願い!」
 叫ぶツバサがエンジェルガルヴォルスとなって、まばゆい光を放った。彼女はマサキを抱きかかえたまま、この場から飛び去っていった。

 

 

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