ガルヴォルスExbreak
第17話「覚醒の天使」

 

 

 シャークガルヴォルスへの強い怒りを込めて、マサキが右の拳を振り下ろした。拳の一撃が光となって、地中を駆け抜けていく。
 マサキとツバサたちの周りの地面から光があふれ出す。その光の1つから、シャークガルヴォルスが飛び出してきた。
「バ、バカな!?私の居場所を捉えて、そこまで攻撃してきたというのか!?」
 マサキに目を向けたシャークガルヴォルスが、驚愕をあらわにする。
「お前が狙っているのはオレだろうが・・他の人を巻き込んでんじゃないぞ!」
 マサキが怒りを募らせて、シャークガルヴォルスに近づいていく。
(まさか、怒り任せに私に攻撃を届かせたというのか・・!?)
 マサキの力が感情的なものであることにも、シャークガルヴォルスが驚きを感じていく。
(だがヤツは自らの意思で私の居場所をつかんだわけではない。攻撃が大規模で、それに私が巻き込まれたに過ぎない・・)
 シャークガルヴォルスが冷静さを取り戻し、再び地面に潜った。
「待て!」
 マサキが追いかけるが、シャークガルヴォルスを捕まえられなかった。
(また逃げられた・・また攻撃されたら・・・!)
 奇襲が再開されると思い、マサキが緊迫を募らせていく。
「みんな、早く逃げるんだ!ここにいたら危ない!」
 彼がヘイゾウたちに振り返って呼びかけた。
「そ、そうしたいんじゃが・・ツバサちゃんが・・・!」
 ヘイゾウが困惑しながら言って、ツバサに目を向ける。ツバサは絶望に囚われていて、目の焦点が合っていない。
「ツバサちゃん、しっかりして!ツバサ!」
 ララが涙ながらに呼びかけるが、ツバサは恐怖を浮かべて震えたままである。
(ツバサちゃん・・ものすごく怖がっているけど・・どうしたっていうんだ・・・!?)
 ツバサの異変にマサキも動揺を隠せなくなる。
(また当ててアイツを追い出すしかない・・そうしないとみんなやられる・・!)
 ツバサたちを守る一心で、マサキが感覚を研ぎ澄ませて、シャークガルヴォルスの行方を探る。
(くそっ!またガムシャラに攻撃するしかないのか・・・!?)
 マサキは焦りを噛みしめて、右手を握りしめて力をためる。
(この感じ・・今度はオレを狙ってきた・・!?)
 そのとき、マサキが近づいてくる気配を感じて、警戒を強めた。次の瞬間、足元から爆発が起こり、彼が飛び出してきた光の刃に体を切り付けられた。
「あっ・・!」
 倒れていくマサキを見て、ララが声を上げる。体から血をあふれさせて、マサキが顔をゆがめる。
(アイツ、やりにくいやり方ばかりして・・・!)
 シャークガルヴォルスへの苛立ちを膨らませていくマサキ。
「マ・・マサキくん・・・!」
 傷ついたマサキを目の当たりにして、ツバサが声を振り絞る。
「ツバサちゃん、何を言ってるの!?マサキくんはここには・・!」
 ララがツバサに対して疑問を浮かべる。ララとヘイゾウはマサキがデーモンガルヴォルスとなっていることを知らない。
「あなたの足元、真下にいるよ!」
「えっ!?」
 ツバサがシャークガルヴォルスの居場所を口にして、マサキが驚きを覚える。彼はすぐに動揺を抑えて、真下に向けて拳を振り下ろし、衝撃波を飛ばした。
 衝撃波がシャークガルヴォルスに正確に命中した。彼がたまらず地面から飛び出した。
「ま、また私の居場所を見抜いただと!?・・アイツは本当に、地中奥深くを正確に捉えているというのか・・!?」
 マサキが気配を読んだと思い、シャークガルヴォルスが緊迫を募らせる。
「ここまで慎重にやってきたつもりだったが、まだまだ考えが甘かったようだ・・・!」
 窮地に追い込まれたと痛感したシャークガルヴォルスが、マサキたちの前から逃げ出した。
「待て!逃げるな!」
 マサキが追いかけようとするが、体の負傷の痛みで体勢を崩した。
「また逃げられた・・今度こそ、アイツは何をしてくるか分からないぞ・・・!」
 悔しさと危機感を膨らませて、マサキはシャークガルヴォルスを警戒する。
(ここで元に戻れば、マスターたちにまで正体を知られることになる・・・!)
 ヘイゾウとララのことを気にして、マサキは1人この場を去った。
「あたしたち・・あの怪物に助けられたみたい・・・」
 ララがデーモンガルヴォルスとなっていた彼に戸惑いを覚える。ツバサが緊張の糸が切れて、意識を失った。
「ツバサちゃん!」
 ララが呼びかけるが、ツバサは目を覚まさない。
「とにかく、救急車と警察じゃ・・信じてもらえそうにないと思うが・・・!」
 ヘイゾウが言いかけて、ララが頷いた。彼女は震えながら、スマートフォンで救急車を呼んだ。
「マスター!」
 そこへ人の姿に戻ったマサキがジンボーに戻ってきて、ヘイゾウたちに声を掛けてきた。
「マサキ!・・信じられんことじゃが・・店のみんなが・・・!」
 ヘイゾウが声を振り絞って言いかけて、マサキが目を見開いて振り返った。事切れた店員たちに、彼は目を疑った。
「み、みんな!?・・みんなが・・・!?」
 マサキが驚愕して、思わず後ずさりする。
(オレが来る前に、みんなが、あのサメのガルヴォルスに・・!?)
 ジンボーの仲間を殺されて、マサキは強い怒りと悲しみを感じていく。
「マサキ、ツバサちゃんを見ていてくれんか・・?」
「マスター・・分かった・・・」
 ヘイゾウに言われて、マサキが小さく頷いた。ヘイゾウとララは救急車と警察を案内するために、大通りのほうへ向かった。
「ツバサちゃん、ゴメン・・オレが狙われたせいで、みんなを巻き込んでしまった・・・!」
 マサキがツバサに声を掛けて、責任を感じて落ち込んだ。
「ううん・・私のほうが何もできなかった・・助けるどころか、みんなの足を引っ張ってしまった・・・」
 ツバサが顔を横に振り、マサキに弁解する。
「あのサメのガルヴォルス・・オレだけじゃなく、オレの周りの人も狙ってきている・・早く倒さないと、また人が襲われる・・・!」
 シャークガルヴォルスに対する怒りを噛みしめるマサキ。
「それにしても・・地面の下にいたアイツの居場所が、どうして分かったんだ・・?」
「えっ?・・それは・・・」
 マサキが疑問を投げかけて、ツバサが口ごもる。
「オレでも正確な場所は分からなかった・・それを君は・・・」
「分からない・・なぜか、あのガルヴォルスがどこにいるかが分かった気がした・・・」
 マサキに問われて、ツバサが震えて言い返す。
「ガルヴォルスのあなたに分からなくて、人間のはずの私が分かるなんて・・・」
 自分の中に不思議な力があると思うようになるツバサ。マサキは彼女に対して戸惑いを感じていく。
「でも、昔のことが、だんだんハッキリと思い出せるようになってきた・・」
「何だって!?」
 ツバサが打ち明けたことに、マサキが驚きの声を上げる。
「そのときに何があったのか・・何か、とんでもないことがあったんじゃないかって・・・」
「ツバサちゃん・・・今はムリに思い出さなくていいよ・・」
 不安を膨らませていくツバサを、マサキが気遣う。
「もう少しで救急車が来るはずだ・・それに乗って病院で休むんだ・・・!」
「うん・・ありがとう、マサキくん・・・」
 マサキに支えられて、ツバサが微笑んで感謝した。
(今のうちにシュラさんたちに連絡を・・・!)
 マサキが救急車を待ちながら、スマートフォンを取り出した。だがそこへ丁度、救急車が到着した。
「丁度来たか・・後で連絡するか・・・」
 彼はスマートフォンをしまって、ツバサに肩を貸す。
「ケガ人はいますか!?」
「はい!お願いします!」
 救急車から出た医者が呼びかけて、マサキが答える。マサキと医者たちはツバサを連れて、救急車に乗った。
 だが救急車が走り出した後、別の救急車がたどり着いた。
「ケガ人はどこですか!?」
「はい!そこに・・あれ!?」
 医者と共に戻ってきたヘイゾウだが、マサキたちがいないことに驚く。
「ツバサちゃん!?マサキ!?2人ともどこにいるんじゃ!?」
「ホントなんです!2人がここにいたんです!」
 ヘイゾウが周りを見回して、ララが必死に言う。
「マサキー!ツバサちゃーん!出てきてくれー!」
 ヘイゾウが叫ぶが、マサキたちからの返事はなかった。

 ツバサを連れて救急車に乗ったマサキ。ところが救急車が病院に向かっていないことに気づき、彼は違和感を覚えた。
「あの・・この先に病院はないはずですが・・・」
 マサキが声を掛けるが、医者は誰も答えない。
「違う・・・この人たち・・悪い感じが・・・」
 ツバサがマサキに向けて声を振り絞った。
(まさか、この人たちは・・!?)
「止めろ!お前たち、ホントは誰なんだ!?」
 緊迫を覚えたマサキが、医者たちに呼びかける。
「今ならオレにも分かるぞ・・お前たちは普通の人間じゃないな・・!」
「まさか、こうもすぐに気付かれるとは・・・」
 マサキが問い詰めると、医者の1人が肩を落とした。マサキがツバサを抱き寄せると、デーモンガルヴォルスになって後ろを破って救急車を飛び出した。
「こうなったらここで始末してやるよ・・貴様もその小娘も・・!」
「アイツにやられて追い詰められてるはずだ・・オレたちだって始末はできるはずだ・・!」
「手柄を立てれば、ボスも褒めてくれる・・・!」
 医者に成りすましていた男たちが、白衣を脱ぎ捨てて正体を現した。
「ガルヴォルスのようだが、その上、阿久津会のメンバーじゃ・・!?」
「オレたちのことまで知ってるのかよ・・だったら尚更生かしちゃおけねぇな!」
 問い詰めてくるマサキに、男たちが苛立ちを浮かべる。彼らもクモ、ハチ、ムカデの姿かたちをしたガルヴォルスとなった。
「お前たちの相手をしている場合じゃない・・オレはツバサちゃんを助けて、あのサメヤローを追わなくちゃならないんだよ!」
 マサキが怒号を放って、ツバサを下ろして寝かせた。
「アイツの命はオレがもらう!」
「それはオレだ!」
「そいつはオレの獲物だ!」
 スパイダーガルヴォルス、ビーガルヴォルス、センチビートガルヴォルスが一斉にマサキたちに飛びかかる。マサキが拳を振りかざして、その衝撃でスパイダーガルヴォルスたちを押し返した。
「何だと!?攻撃を食らっちゃいねぇのに、吹っ飛ばされただと!?」
「同じガルヴォルスなのに、オレたちよりもかなり強い・・!」
 スパイダーガルヴォルスとセンチビートガルヴォルスがマサキの強さに脅威を覚える。
「そんなことでビビるオレじゃないぜ!」
 ビートガルヴォルスが空に飛び上がり、マサキたちに向かって針を連射してきた。
「アイツ!」
 マサキが剣を具現化して、振りかざして針を吹き飛ばした。
「ツバサちゃんには手は出させないぞ!」
 マサキが剣を構えて、ビーガルヴォルスに鋭い視線を向ける。彼に睨まれて、ガルヴォルスたちは緊迫を募らせていた。

 ヘイゾウからの通報を受けて、テツオたちがジンボーとその周辺を調べていた。
「突然地面から爆発が起こって、避難しようとした店員たちがそれに巻き込まれたと・・」
「はい・・何がどうなっているのかさっぱりで・・今でも信じられんくらいなんです・・・」
 テツオが状況を確認して、ヘイゾウが困惑しながら答える。
「爆発が治まって、わしらが警察と救急車を呼んでいる間に、2人いなくなってしまったんじゃ・・・」
「それは私の部下が調べているところです。ここは我々にお任せを。」
 マサキとツバサを心配するヘイゾウを、テツオが落ち着かせる。
「警部、私が2人に付き添います。」
 カリヤがテツオにヘイゾウとララの警護を進言してきた。
「いや、お前もヘイゾウさんの知り合いと犯人の捜索だ。2人にはオレが付き添う。」
「・・分かりました・・・」
 テツオが指示を出し、カリヤが渋々聞き入れた。
「ヘイゾウさん、ララさん、あなた方も病院へ行きましょう。2人を発見次第、連絡が来ますので。」
「分かりました・・よろしくお願いします・・」
 テツオに支えられて、ヘイゾウが頷いた。ララも2人についていって、救急車に乗った。
「カリヤ、オレたちも行くぞ。」
「あ、あぁ・・」
 トモヤが声を掛けて、カリヤが小さく頷いた。
「お前は駅前のほうへ行ってくれ。オレは反対のほうを調べてみる。」
「分かった!」
 カリヤが指示を出して、トモヤが頷いた。2人は別れて、調査と捜索を開始した。

 マサキを陥れて始末しようと企んだスパイダーガルヴォルスたち。しかしマサキに迎撃され、彼の力に3人は気圧されていた。
「お前のボスとサメのガルヴォルスはどこにいる!?素直に教えるなら、命は奪わない!」
 マサキが剣の切っ先をスパイダーガルヴォルスたちに向けて問い詰める。
「冗談じゃねぇ・・素直に教えても、オレたちが殺されることになる・・!」
「どうせ死ぬしかないっていうなら、テメェに殴り込みをして死んだほうがマシだ!」
 スパイダーガルヴォルスとセンチビートガルヴォルスがいきり立ち、マサキと対峙する。
「話してくれたら話が早く済むのに・・・!」
 マサキが憤りを感じながら、スパイダーガルヴォルスたちを迎え撃つため剣を構えた。
「マサキくん、後ろの地面から!」
 そのとき、ツバサがマサキに向かって呼びかけてきた。次の瞬間、マサキの右肩に光の刃が直撃した。
「ぐあぁっ!」
 肩から鮮血をまき散らして、マサキが絶叫を上げる。彼が前のめりに倒れて、剣を落としてしまう。
「マサキくん!」
 ツバサが叫んでマサキに駆け寄る。マサキは肩の激痛に襲われて、立ち上がることもできなくなる。
「私に全て任せるということになっていたはずだぞ・・」
 スパイダーガルヴォルスたちに声を掛けてきたのは、シャークガルヴォルスだった。彼が背後の地面の下から、マサキを狙ったのである。
「コイツはオレたちのことをことごとく邪魔するヤツだ・・さっさと始末したほうがいいんだ・・!」
「アンタだけに任せきりで、オレたちだけ何もせずにじっとしてるなんてできねぇよ!」
 スパイダーガルヴォルスとセンチビートガルヴォルスが、シャークガルヴォルスに言い返す。するとシャークガルヴォルスがため息をついた。
「足を引っ張るヤツは、何もしないヤツよりも罪深い・・」
 シャークガルヴォルスが左手を振りかざして、光の刃を飛ばす。光の刃は地面を削りながら、スパイダーガルヴォルスたちの横を駆け抜けた。
「ここからは私がやる・・手を出すならば、お前たちも命はないぞ・・・!」
 シャークガルヴォルスから忠告されて、スパイダーガルヴォルスたちが息をのんで後ずさりした。
「ということだ。お前たちは2人とも、私がここで始末させてもらう。」
 シャークガルヴォルスがマサキたちに視線を移して、敵意を向ける。
「ツバサちゃん・・逃げろ・・オレは、まだ思うように動けない・・・!」
 マサキがツバサに目を向けて呼びかける。徐々に体の治癒が進んでいるが、まだ自力で立ち上がるので精一杯の状態だった。
「ダメよ!マサキくんを置いていくなんて・・!」
「このままじゃ2人ともやられる・・オレだけなら、逃げることだけに集中すれば何とか逃げ切れるはずだ・・・!」
 心配するツバサに、マサキが必死に呼びかける。
「オレは・・これ以上、誰も死んでほしくないんだ!」
「マサキくん・・・!」
 マサキの正直な思いを聞いて、ツバサが戸惑いを覚える。ジンボーのみんなが殺されたことを思い出し、強い悲しみに囚われている。それは彼も同じだと、ツバサは思った。
「寂しくならないように、お前たちの知り合いも後を追わせてやる。」
 シャークガルヴォルスがマサキたちの前に立ちはだかり、右手を構えた。
「待て!」
 そこへ声がかかり、シャークガルヴォルスが後ろに視線を向けた。彼を呼び止めたのは、駆け付けて銃を構えたトモヤだった。
「こんなところで何をやっているんだ・・カリヤ・・・!?」
 トモヤが問い詰めて、カリヤの名を呼んだ。
「まさか、お前に見られていたとは・・私としたことが・・・」
 シャークガルヴォルスがトモヤに振り返り、正体を現した。シャークガルヴォルスはカリヤだった。
「お前が怪物だなんて・・何の冗談だよ、いったい・・・!?」
「冗談でもウソでもない。これが本当の私だ、トモヤ・・」
 問い詰めるトモヤに、カリヤが落ち着きを払って答える。
「私はガルヴォルスという異形の存在の1人。そして阿久津会に所属する狩人だ。」
「何だと・・・!?」
 カリヤが口にした言葉に、トモヤが耳を疑う。
「刑事のフリをして、警察の動向も阿久津会に報告していた。これまでの事件も、ガルヴォルスのことが知られるような証拠は全て消去してきた。」
「ここ最近、刑事や関係者が行方不明になる出来事が続発していた・・それも全てお前の仕業なのか!?」
 語りかけるカリヤに、トモヤが感情をあらわにして問い詰める。
「暴かれても都合が悪くなるだけだ。ムダに深入りすると地獄を見るだけだと、ヤツらも思い知ったことだろう・・」
「カリヤ、お前は体だけじゃなく、心までバケモノになってしまったのか!?」
 不敵な笑みを浮かべるカリヤに、トモヤが怒号を放ち、銃を構える。
「ムダだ。お前は銃を撃つには優しすぎる。それに撃ったところで、私には通じない。」
 あざ笑うカリヤの顔に、異様な文様が浮かび上がる。彼は再びシャークガルヴォルスとなった。
「まずい・・刑事さん、早く逃げてくれ!殺されてしまうぞ!」
 マサキが緊迫を募らせて、トモヤに向かって呼びかける。
「おとなしくしろ!自首するんだ、カリヤ!」
 トモヤが警告するが、カリヤは聞かずにマサキに視線を戻す。
「カリヤ!」
 激高したトモヤが銃を撃った。しかしカリヤの掲げた爪に弾丸が弾かれた。
「どうやらお前から死にたいようだな・・・」
 カリヤがため息をついてから、右手を振りかざして光の刃を飛ばした。刃はトモヤの右肩を切り付けた。
 トモヤが先決をまき散らして、力なく倒れた。
「お前・・仕事仲間じゃないのか!?それを!」
 マサキが怒りを膨らませて、強引に立ち上がる。
「私たちの邪魔をするなら、表向きの同僚や上司だろうと、容赦なく始末する・・それが私ですよ・・」
 カリヤがトモヤを見下ろしたまま、マサキをあざ笑う。
「許さないぞ・・お前はもう、心までも人じゃない!」
「調子に乗ってもどうにもならないぞ。まだまともに動けるほどの体力ではないはずだ。」
 怒りを爆発させるマサキだが、カリヤは余裕を崩さない。
「私もあまり時間がない。すぐに終わらせてもらうぞ・・」
 カリヤがマサキにとどめを刺そうと、右手を構えて爪を鳴らした。
「マサキくん、あなたも逃げて!このまま戦っても死んでしまうだけだわ!」
 ツバサが呼び止めるがマサキはカリヤと対峙しようとする。
(イヤ・・これ以上、みんなに死んでほしくない・・・!)
 彼女の心の中でも強い激情が込み上げてくる。
(助けたい・・私がマサキくんを助けたい・・・!)
「マサキ!」
 叫び声を上げたとき、ツバサの頬に異様な紋様が浮かび上がった。
「ツ、ツバサちゃん・・!?」
 彼女の異変にマサキが目を疑う。
 ツバサの姿が白を基調とした体の怪人に変わり、背中から白い翼が広がった。
「ツバサちゃん・・まさか、君も・・・!?」
 驚愕してその場に膝をつくマサキ。ツバサは突然、天使の姿をしたエンジェルガルヴォルスとなった。
 
 
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