ガルヴォルスExbreak
第１６話「追撃の牙」
襲撃をしてきたシャークガルヴォルス。マサキが彼をおびき寄せて、人のいない草原まで移動してきた。
「ここなら思い切り戦える・・！」
「それで勝ったなどと思うな。お前が地獄に落ちることに変わりはない・・」
ひと息つくマサキに、シャークガルヴォルスが忠告を投げかける。
「改めて、お前の首を切り落とさせてもらうぞ・・！」
シャークガルヴォルスが右手を振りかざして、マサキ目がけて光の刃を飛ばす。マサキがとっさに刃をかわすが、直後にシャークガルヴォルスが飛び込んできた。
マサキがとっさに剣を掲げて、シャークガルヴォルスが突き出した爪を止めた。
（スピードもパワーもかなりある・・下手に近づくとやられる・・！）
脅威を覚えたマサキが、剣を振りかざしてシャークガルヴォルスを引き離す。
「逃がしはないと言ったはずだ・・！」
シャークガルヴォルスがスピードを上げて、マサキに飛びかかる。彼が連続で振りかざす爪を、マサキは剣で止めるのが精一杯で、防戦一方となっていく。
「このっ！」
マサキが剣を振り下ろすが、シャークガルヴォルスにかわされて懐に入られた。
「うぐっ！」
シャークガルヴォルスが出した右手の爪が体に食い込み、マサキが顔を歪める。彼が左肘を振り下ろし、シャークガルヴォルスの右腕に叩き込んだ。
マサキとシャークガルヴォルスが距離を取り、痛みに耐える。
「どうやらパワーはお前の方が上のようだ・・」
「やばいぞ・・今のを何度も食らうわけにいかない・・・！」
シャークガルヴォルスとマサキが互いに警戒していく。
「真っ向勝負では簡単には勝てない・・不意打ちを狙わなくては・・・！」
マサキを倒す算段を練り上げていく。
「さっさと倒させてもらうぞ・・長引くと不利になりそうだからな・・・！」
マサキが剣を構えて、シャークガルヴォルスとの短期決戦に臨む。
「マサキくん！」
リィナがマサキたちに追いついてきた。彼女を見てシャークガルヴォルスが笑みを浮かべた。
「危ない、リィナさん！そこから離れろ！」
マサキがリィナに向かって叫ぶ。シャークガルヴォルスが彼女に向かって光の刃を飛ばす。
「キャッ！」
回避して直撃を避けたリィナだが、光の刃が地面を削り、その衝撃に押されて倒れる。
「リィナさん！くそっ！」
マサキが毒づいてリィナのところへ向かっていく。その間にシャークガルヴォルスが２人の前から去っていった。
「大丈夫かい、リィナさん!?」
「え、えぇ・・ごめんなさい、足を引っ張ってしまって・・・」
心配するマサキに、リィナが謝る。
「いや・・だけどアイツ、またコソコソ隠れて攻撃してくるかもしれない・・・！」
マサキがリィナを気遣うも、シャークガルヴォルスが暗殺を狙ってくることを懸念する。
「１度シュラさんのところに戻ろう・・まずはアイツへの対策を練らないと・・・」
マサキの呼びかけにリィナが頷いた。２人は人の姿に戻ってから、シュラと合流すべく駅に戻っていった。
マサキに返り討ちにされたシャークガルヴォルスは、確実にマサキを始末することを企む。
「私を生き延びさせたことが、お前たちの命取りとなる・・・」
体の回復を感じながら、シャークガルヴォルスが笑みを浮かべた。彼はマサキたちへの復讐を遂行しようとしていた。
アルトたちと連絡を取り合っていたシュラ。彼のいる駅前に、マサキとリィナが戻ってきた。
「マサキさん、リィナさん、ご無事でしたか・・！」
「あぁ・・だけどあのサメのガルヴォルスに逃げられてしまった・・・」
シュラが心配の声を掛けて、マサキが気まずさを感じながら答える。
「アイツきっと、また不意打ちを狙ってくるぞ・・気を付けたほうがいい・・・！」
「分かりました。私たちの方でも捜索を強化しましょう。」
マサキが注意を口にして、シュラが頷く。
「オレは１度帰る。みんなが心配してるから・・」
マサキはシュラたちと別れて、ジンボーに帰っていった。
「１人でいるほうが狙われやすくなりますよ・・・」
シュラはマサキの身を案じて、アルトたちに指示を送った。
１人ジンボーに向かって歩いていくマサキ。彼はシャークガルヴォルスの不意打ちを警戒していた。
（アイツは人がいる場所にもかかわらず、オレたちを攻撃してきた。ということは他人を巻き込んでも、誰かに姿を見られても構わないということなのか・・）
暗躍でありながら周りが騒ぎになることを厭わないシャークガルヴォルスのやり方に、マサキは危機感を覚える。
（こうしている間にも、オレたちは狙われる・・・!?）
マサキが目を見開いて、感覚を研ぎ澄ました。地面が揺れたと同時に、彼はこの場から走り出す。
次の瞬間、マサキがいた場所から光の刃が飛び出してきた。
（また地面の下から攻撃してきた・・しかも前よりももっと深いところからだ・・・！）
シャークガルヴォルスが暗殺を仕掛けてきたことに、マサキが毒づく。
（これじゃ気付いてよけることができても、反撃することができない・・オレの力は遠くにいるアイツに確実に攻撃できるほどじゃない・・・！）
シャークガルヴォルスへの対処が分からず、マサキが焦りを噛みしめる。
（向こうの居場所が分からなきゃ、攻撃される一方だ・・どうしたらいいんだ・・・!?）
危機感を募らせて、マサキは落ち着かなくなる。
（シュラさん・・早くアイツの居場所を見つけてくれ～・・！）
彼はシュラに懇願するしかなく、真っ直ぐにジンボーに戻ることもできなくなった。
シャークガルヴォルスが暗躍してマサキたちを攻撃していることを聞いて、ザンキは笑みをこぼしていた。
「アイツめ、また派手に動いているようだな・・」
シャークガルヴォルスが優勢になっていると確信する。
「オレたちも加勢に行きますよ、ザンキ様！」
男たちが出撃することをザンキに志願した。
「いや、下手に近づけば巻き添えを食らうぞ。だからお前らは他のヤツの始末に向かえ。目障りな邪魔者を、お前らも仕留めてこい。」
「はい！」
ザンキが指示を出して、男たちが答えて行動を開始した。
「アイツにも連絡を入れておくか。オレが言えば、うまくやってくれるはずだ。」
シャークガルヴォルスのことを考えて、ザンキは彼への連絡を取った。
シャークガルヴォルスの奇襲は、シュラやリィナ、ヴォルスレイの部隊にも及んでいた。地中深くから攻めてくるシャークガルヴォルスに、シュラたちはなす術がなかった。
シュラはリィナを連れて、小型飛行機で空に上がった。地上にいるシャークガルヴォルスからの攻撃を、空なら回避が難しくないと判断した。
「マサキくんも乗せられたらよかったのですが・・」
「知り合いの心配をしていたから・・私と違って、家族や友達がいたのね・・」
マサキのことを気に掛けるシュラとリィナ。
「でも、マサキが集中的に狙われるんじゃないかと思うんだけど・・・」
「それは私も思います。しかしマサキくんが同行を断っては・・」
マサキが飛行機に乗らなかったことを心配するリィナとシュラ。
「アルトさん、あのサメのガルヴォルスの行方は分かりましたか？」
シュラが通信をつなげて、アルトと連絡を取る。
“センサーも使って捜索しているのですが、まだ見つかりません。かなり奥に潜っていた場合、センサーの探知外となってしまいます・・”
アルトが報告して、気まずさを感じていく。
“専門の探索部隊も動いています。彼らが位置を特定するはずです。”
「分かりました。そのときが来れば、こちらにも連絡が来ます。」
アルトの進言を聞いて、シュラは連絡を終えた。
（シュラさん・・もう少しの辛抱です・・・！）
マサキの無事を祈りながら、シュラは飛行機を移動させた。
ジンボーに戻れず、大学や人のいる場所にも行けず、マサキは街外れの草原に来ていた。
（ここなら誰も巻き込まれないはずだ・・来るなら来いよ。コソコソしてないでよ・・・！）
シャークガルヴォルスを迎え撃とうと、マサキがデーモンガルヴォルスとなって身構える。
（サメはにおいに敏感だ。血や肉のにおいを嗅ぎ分けて、獲物を狙う・・アイツもオレのにおいを捉えて、狙いを定めているってことなのか・・・）
サメの特徴を考えて、シャークガルヴォルスの能力を把握しようとするマサキ。
（遠くにいても地下深くにいても、攻撃を飛ばすことはできる・・だけど敵がどこにいるのかが分かんなくちゃ・・・！）
シャークガルヴォルスがどこにいるのかが分からなければ、攻撃のしようがない。彼の攻撃から居場所をつかもうと、マサキは考えていた。
地面が揺れて、マサキが警戒を強める。揺れと音が強くなるのを、彼は感じていた。
攻撃が飛び出す瞬間を捉えて、マサキが動く。その直後に光の刃が地面から飛び出してきた。
（出てきた角度を考えて・・そこか！）
光の刃が飛んできた方向を計算して、マサキが握りしめた右手を振り下ろした。拳から放たれた衝撃が光のように地中を進んでいく。
だがマサキは攻撃が当たった手応えを感じることができない。
（外れたか・・やっぱり正確に分かってないとダメか・・！）
シャークガルヴォルスの場所をつかもうと、マサキは感覚を研ぎ澄ませる。それでもシャークガルヴォルスの正確な位置が分からない。
（シュラさん、早くしてほしいぞ・・・！）
シュラを頼りにしながら、マサキはシャークガルヴォルスの攻撃に備える。
しかし今度はいつまで待っても、シャークガルヴォルスからの攻撃がない。
「ん？・・攻撃が全然来ない・・諦めたのか・・・？」
マサキが疑問を感じて、改めて周囲を警戒する。その間も何の異変もない。
（オレたちをしつこく狙っているはずだ・・簡単に諦めるとは思えない・・・）
シャークガルヴォルスの狙いを推測して、マサキが考えを巡らせる。
「まさか、ツバサちゃんたちを狙うつもりじゃ・・!?」
悪い予感がよぎり、マサキは背中から翼を生やしてはばたかせて、ジンボーに向かった。
ツバサもジンボーでの仕事が終わり、着替えを済ませた。彼女が帰り支度をしたところで、ララがやってきた。
「お疲れ様、ツバサちゃん♪あたし、この後も頑張るからね♪」
「うん。帰ったらゼミの課題を片付けないと。」
ララが挨拶して意気込みを見せて、ツバサがこれからのことを言った。
そのとき、ツバサが突然違和感を覚えて緊迫を募らせた。
（何、この感じ・・何か、イヤな感じが・・・！）
彼女が不安を感じて、周りを気にしていく。
「どうしたの、ツバサちゃん？」
ララがツバサを気にして声を掛ける。しかしツバサは声が耳に入っておらず、答えない。
「ツバサちゃん、聞こえてる？・・ツバサちゃん！」
ララに腕をつかまれて、ツバサが我に返った。
「ゴ、ゴメン、ララ・・すっかり考え込んじゃって・・・」
「ツバサちゃん・・もしかして疲れてるんじゃ・・？」
謝るツバサをララが心配する。
「そうかもしれないね・・今日はゆっくり休もうかな・・」
ツバサが作り笑顔を見せて、ジンボーを後にしようとした。
だがその瞬間、ツバサは再び違和感を感じた。彼女はそれが悪い予感だと直感した。
「危ない！」
たまらずツバサが叫んで、手を出してララを突き飛ばした。その直後、２人がいた地面から光の刃が飛び出してきた。
「な、なな・・何!?」
爆発のような衝撃と地面の亀裂に、ララが驚愕する。ツバサもこの光景に目を疑っていた。
「何じゃ!?何が起こったんじゃ!?」
ヘイゾウが他の店員たちとともに、ジンボーから出てきた。
「マ、マスター・・い、今、地面から何かが飛び出してきて・・・！」
ララがヘイゾウたちに言って、亀裂のあるほうを指さした。それを見てヘイゾウも店員たちもさらに驚く。
「みんな、１度店からはなれるぞ！それと警察に連絡じゃ！」
「はい！」
ヘイゾウが呼びかけて、店員たちが答える。
「ツバサちゃん、ララちゃん、２人もほら！」
「は、はい！」
彼に言われて、ツバサがララを連れて移動していく。
「ツバサ・・さっき、爆発が起こるのが分かっていたみたいだったけど・・・」
ララが指摘してきたことに、ツバサが動揺を覚える。
「どうしてなのかな？・・よく分からないけど、危ない気がした・・・」
「そうなんだね・・でもそれで助かったんだよね、あたし・・・」
ツバサが困惑しながら答えると、ララが感謝して微笑んだ。
そのとき、ツバサはまた違和感を感じて、周りに目を向ける。
（また何か来る・・また、さっきのが来る・・!?）
「みんな、早く逃げて！」
不安を覚えたツバサがたまらず叫んだ。
次の瞬間、店員たちが逃げた先で、地面から光の刃が飛び出した。
「あっ・・・！」
爆発と巻き込まれた店員たちに、ツバサたちが目を疑った。店員たちが血まみれになって倒れて、動かなくなった。
「み・・みんな！」
ヘイゾウが店員たちに向かって悲痛の叫びを上げる。ララも絶望して言葉が出なくなる。
ツバサも強い絶望感に襲われた。そのとき、彼女は両親を失ったときのことを思い出していた。
（お父さん・・お母さん・・・みんな・・・！）
過去の悲惨な光景と今目の前で起きた悲劇を重ねて、ツバサは一気に絶望を膨らませた。
「イヤアッ！みんな！みんなー！」
彼女が目を見開いて、頭を抱えて悲鳴を上げる。
「ツバサちゃん、落ち着くんじゃ！取り乱してはいかん！早くここから避難するんじゃよ！」
ヘイゾウがツバサの両肩をつかんで呼びかける。彼に怒鳴られるが、ツバサは絶叫を上げ続ける。
「い、いかん！ララちゃん、ツバサちゃんを連れていくぞ！」
「は、はい！」
ヘイゾウが呼びかけて、ララが答える。２人がツバサに肩を貸して、ジンボーから離れていく。
またも地面が揺れ動いて、ヘイゾウたちが緊張を募らせる。また爆発が起こるのかと、２人とも動揺していく。
次の瞬間、ヘイゾウたちが突然つかまれて、直後に出てきた光の刃から逃れた。
「何じゃ!?どうしたんじゃ!?」
「これって・・あたしたち、飛んでる・・・!?」
ヘイゾウとララが下を見て戸惑いを覚える。彼らをつかんでいたのは、飛行して救出しに来たマサキだった。
「うえっ!?バ、バケモノ!?」
「そ、そんな!?怪物がホントにいるなんて・・!?」
デーモンガルヴォルスとなっているマサキを見て、ヘイゾウとララが驚愕する。
「た、助けてー！食べてもおいしくないよー！」
助けを求めて暴れるララ。マサキは耐えながら、ジンボーから少し離れた道に降りた。
「えっ!?・・た、助かった・・・!?」
窮地に一生を得たと思い、ララがヘイゾウと共に戸惑いを募らせていく。
（マスター・・ララちゃん・・・ツバサちゃん・・・！）
マサキがツバサたちを見て困惑していく。声を掛けたかった彼だが、ヘイゾウたちにも正体を知られてしまうと思い、それができなかった。
（オレの知り合いにまで手を出すとは・・絶対に許さない・・・！）
マサキはツバサたちから離れると、襲撃の犯人であるシャークガルヴォルスへの怒りを膨らませた。
（アイツの居場所をつかめるだけの力を・・遠くにいるアイツを叩きのめせるだけの力を・・オレは求める！）
激情が限界を超えて、マサキが両手を握りしめる。力のあまりに爪が喰い込み血があふれる。
（オレは、あのサメヤローを叩き潰す！）
マサキが力を込めて、右の拳を地面に叩きつけた。
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