ガルヴォルスExbreak
第15話「罪人の集団」

 

 

 逃亡するキャットガルヴォルスを追うライオンガルヴォルスと、彼を追うマサキ。3人は廃工場まで移動してきた。
「そうやってコソコソしていられると思ったら、大間違いだぞ・・!」
 工場内の物陰に隠れているキャットガルヴォルスを捜して回るライオンガルヴォルス。
「オレから逃げられることが間違いなんじゃないのか!」
 マサキがライオンガルヴォルスに追いついて言い放つ。
「しつこいヤツめ・・だったら2人まとめて!」
 いきり立ったライオンガルヴォルスが、爪を振りかざしてかまいたちを飛ばした。壁や柱が破壊されて、廃工場が揺れ出す。
「ヤバい!ここが崩れる!」
 マサキが慌てて廃工場から出る。キャットガルヴォルスも壁を破って外へ飛び出す。
「あのヤロー・・ムチャクチャなことをしやがって・・・!」
 ライオンガルヴォルスの暴動に、マサキが毒づく。キャットガルヴォルスも崩れていく廃工場を見つめていく。
「2人とも逃げ延びやがって・・・!」
 立ち込める砂煙の中から出てきて、ライオンガルヴォルスがいら立ちを膨らませていく。
「いつまでも暴れさせたら、関係ない人も危険に巻き込まれることになる・・ここで大人しくさせるしかない!」
 マサキが危機感を覚えて、ライオンガルヴォルスを止める決意を強めた。
「いつまでもテメェの相手をしてる暇はねぇんだよ!」
 ライオンガルヴォルスが爪を振りかざして、地面を削って土煙を舞い上げる。視界を遮られるマサキだが、感覚を研ぎ澄ませてライオンガルヴォルスの行方を探る。
(逃がすかよ!目くらましは何度も通じるもんじゃない!)
 キャットガルヴォルスを追うライオンガルヴォルスの位置を捉えて、マサキが走り出して土煙を突っ切る。
「止まれ!」
 マサキが前に飛び出してきて、ライオンガルヴォルスが驚いて立ち止まる。
「いい加減にしゃべってもらうぞ!お前が何を企んでいるのかを!」
「テメェに言うことは何もねぇよ!」
 問い詰めるマサキに、ライオンガルヴォルスがいきり立って飛びかかる。マサキが右手を握りしめて、拳をライオンガルヴォルスの体に叩き込んだ。
「ぐはっ!・・お、おのれ!」
 ライオンガルヴォルスが激痛で顔を歪める。彼がマサキに爪を振り下ろすが、マサキは紙一重でかわした。
 マサキがライオンガルヴォルスの左肩にも拳を打ち込み、さらに左腕をつかんで彼を引き倒した。
「うぐぅ!・・・く、くそっ!・・放せ!放しやがれ!チクショー!」
 ダメージを増して絶叫を上げるライオンガルヴォルスが、声を張り上げる。
「もう1度聞くぞ・・お前は何を企んでいる!?仲間とかはいないのか!?」
「フン・・おめぇもこっちのことを調べてるようだな・・・!」
 改めて問い詰めるマサキに、ライオンガルヴォルスが不敵な笑みを見せる。
「だがオレは仲間を売るマネはしねぇ・・そうするくらいなら、死んだ方がマシだ!」
 ライオンガルヴォルスがマサキに向けて右手を伸ばす。
「くそっ!」
 マサキがとっさに剣を手にして、ライオンガルヴォルスの右腕を切り落とした。
「ギャアッ!」
 ライオンガルヴォルスが鮮血をまき散らして悶絶する。
「オレの・・オレの腕がぁー!」
 ライオンガルヴォルスが激痛にあえぎ、強引にマサキを押しのけた。
「このままには・・このままにはしておかんぞ!」
 ライオンガルヴォルスが捨て台詞を吐いて、マサキから逃げ出した。
「おい、待てって!・・逃げ足は速いヤツだ・・・!」
 ライオンガルヴォルスを見失い、マサキが毒づく。キャットガルヴォルスが安心を覚えて、人の姿に戻る。
「待って!」
 マサキに声を掛けられて、女性が足を止めた。マサキも人の姿に戻り、彼女に近づく。
「話を聞かせてほしいんだ。何があったのかを・・・」
「あなたは誰?私たちと同じガルヴォルスなんでしょう・・?」
 話を聞こうとするマサキに、女性が疑問を投げかける。
「オレは、悪いことをするガルヴォルスと戦ってるんだ・・そいつらのせいで傷つく人を出しちゃいけないって思って・・」
「ガルヴォルスの中に、そんな正義の味方がいるなんて・・・」
 自分のことを話すマサキに、女性が戸惑いを覚える。
「何があったのか、話してくれないか?・・あのガルヴォルス、もしかしたら仲間がいるかもしれない・・・」
 マサキが女性から話を聞く。
「オレの名はマサキ。あなたは?」
「私はリィナ・・あのガルヴォルスは、阿久津会の1人なの・・」
 マサキと女性、リィナが互いに自己紹介をする。
「阿久津会?」
「阿久津会は裏社会の暴力団。そのメンバーの多くがガルヴォルスなのよ・・」
 疑問符を浮かべるマサキに、リィナが阿久津会のことを語る。
「ガルヴォルスの暴力団か・・厄介なのがいたもんだ・・・」
「私は阿久津会に協力していたけど、役に立たないと見限られて・・」
「それで終われていたところに、オレが来たってわけか・・となると、あのガルヴォルスも阿久津会っていうヤツの1人・・」
「重傷を負ったけど、まだ生きている・・きっと仲間に知らせているはずよ・・・!」
 ライオンガルヴォルスが仲間を引きつれて戻ってくることを、マサキもリィナも懸念していた。
「阿久津会ですか・・事情は大方把握しました。」
 そこへシュラが車で来て、マサキたちに声を掛けてきた。
「だ、誰、あなたは・・・?」
「私たちは悪いガルヴォルスを討伐しています。あなたからの情報が、ガルヴォルスの巣窟と思われる阿久津会を叩くことにつながります。」
 リィナが問いかけて、シュラが語りかけていく。
「協力していただけませんか?あなたの力が、ガルヴォルスの暴挙を止める切り札となるのです。」
「・・分かりました・・私も阿久津会に追われる毎日を送りたくはないです・・・」
 シュラからの誘いをリィナが聞き入れて頷いた。
「阿久津会のメンバーについては、半数は所在を突き止めています。会のトップも含めて。」
「あの阿久津ザンキのことも分かっているの・・・!?」
 シュラが阿久津会のことを説明して、リィナが息を呑んだ。
「ここから先は車に乗ってからにしましょう。私たちの部隊が監視体制を敷いていますが、その合間を縫って私たちのことを調べようとする敵もいますので・・」
「オレもいつでも戦えるように、今のうちに休んでおかないと・・」
 シュラがリィナを自分の車に案内して、マサキもひと息つく。
「分かったわ・・でも何かあったとき、すぐに動けるようにするから・・・」
 リィナが真剣な面持ちを浮かべて、自分の考えを伝えた。

 マサキによって負傷したライオンガルヴォルス。マサキにやられた屈辱を膨らませて、彼は復讐を狙っていた。
「いてぇ・・すげぇいてぇよ!・・このままじゃ済まさねぇ・・絶対にヤツらを仕留めてやる・・・!」
 切り落とされた右腕を押さえて、ライオンガルヴォルスが憎悪を強めていく。
「その様ではもう戦うことはできない。」
 そこへ声が掛かり、ライオンガルヴォルスが振り返る。彼の前に1人の怪人が現れた。
「お前は・・!?」
「足手まといは、まさに邪魔になるだけだ・・」
 目を見開くライオンガルヴォルスに、怪人が刃を振り下ろした。ライオンガルヴォルスが体を切りつけられて、鮮血をまき散らして倒れた。
「コイツを邪魔したガルヴォルスの始末は、他のメンバーがすることになる。」
 怪人は呟いてから移動した。彼によってライオンガルヴォルスは粛清されることになった。

 リィナを追っていたライオンガルヴォルスがマサキの妨害を受けたこと、負傷したライオンガルヴォルスが粛清されたことは、ザンキの耳に届いた。
「オレたちに逆らう愚か者が出てきて、調子に乗ってきているな・・」
 ザンキが邪魔者に対していら立ちを感じていく。
「その上ヴォルスレイという人間の集団も嗅ぎ回ってます・・早く手を打たないと、ここを見つけられるのも時間の問題です・・!」
 男の1人が危機感を覚えて、ザンキに進言する。
「ヴォルスレイもそろそろ目障りになってきた・・付きまとうヤツがいるなら始末しろ。」
「はい!」
 ザンキが命令を下して、男たちが答えて外へ飛び出した。
「敵の勢力次第では、オレが自ら出向くことになるな・・久しぶりに表舞台に出ることになるか・・」
 自分も戦うことになると予感して、ザンキが期待を感じて笑みをこぼした。

 リィナはマサキとシュラに、阿久津会のことを知る限り話した。マサキたちはザンキを始め、数人のメンバーについて聞かされた。
「阿久津会のトップ、阿久津ザンキ・・他にも私たちの知らないメンバーもいましたか・・」
 シュラが阿久津会に関する情報を整理していく。
「ありがとうございます、リィナさん。有力な情報ですよ。」
「よかった・・私の話が役に立つなんて・・・」
 感謝するシュラに、リィナが戸惑いを見せる。
「それで、阿久津会の本部がどこにあるか分かりますか?」
「それは・・本部と思われる場所は知らないです・・仕事を言い渡されるときは外の、人目の付かないところで、場所は特に決まっていなかったし・・」
 シュラが質問を続けて、リィナが記憶を巡らせながら答える。
「その手がかりをしらみつぶしに調べるしかないようですね・・」
「そこはソウマさんたちの出番ということか・・」
 シュラとマサキが肩を落として、ザンキたちを追う算段を練る。
「マサキくん、すぐに戦うことはないと思います。1度帰って休んでください。何かあれば連絡しますので・・」
「いいのか、シュラさん?これから忙しくなるっていうのに・・」
「だからこその、その前の気分転換ですよ。」
「分かった・・お言葉に甘えさせてもらうよ・・」
 シュラからの提案を聞き入れて、マサキが苦笑いを見せた。彼はシュラたちと別れて、ジンボーに戻ることにした。

 ジンボーに戻って束の間の休息を取ることにしたマサキ。自分の部屋に戻った彼は、そのままベッドの上に大の字になった。
(ガルヴォルスの戦いは激しくなっていく・・ツバサちゃんに心配かけちゃうな・・・)
 ツバサのことを気に掛けて、マサキがひと息つく。
(もちろんオレは死ぬつもりはない・・それでも傷つくことはある・・そうなる度に、みんなに辛い思いをさせてしまう・・・みんなに、ホントにすまないと思う・・・)
 申し訳ない気持ちを抱えながら、マサキは体を休めていった。

 翌日になり、マサキはジンボーでの仕事をしていた。シュラたちと別れてから、彼からの連絡は来ていない。
(シュラさんたちも調査に手こずっているってところか・・)
 マサキは作業をしながら、シュラたちの動向を気にする。
(まさか、阿久津会のヤツらにやられた、なんてことはないよな・・)
 よからぬことを考えて、彼は苦笑いを浮かべた。
「どうしたのじゃ、マサキ?」
 そこへヘイゾウが来て、マサキに声を掛けてきた。
「マスター・・いや、何でもないですよ。ちょっと考え事をしてただけです・・」
「そうかい・・あんまり根詰めんようにな。」
 マサキが答えると、ヘイゾウが頷いて仕事に戻っていった。
(今は仕事に集中しなくちゃな・・)
 マサキは気持ちを切り替えて、仕事を続けた。
「マサキくん、今日はここで頑張っているね。」
 ヘイゾウと入れ替わりに、ツバサがマサキのそばにやってきた。
「ツバサちゃん・・また心配かけちゃってるかな・・」
「心配していないわけじゃないけど、そんなにつらくは感じていないよ・・」
 マサキが不安を浮かべると、ツバサが笑顔を見せて答える。
「今回はちょっと長丁場になるけど、必ずケリを付けて、生きて戻ってくるからな。」
「うん。待っているよ。」
 決心を伝えるマサキに、ツバサが信頼を寄せた。
 そのとき、ツバサは脳裏に過去の記憶がよぎり、意識が朦朧となった。
「ツバサちゃん!?」
 倒れかかった彼女を、マサキがとっさに支えた。
「ツバサちゃん、どうしたんだ!?しっかりして!」
「マ・・マサキくん・・・!」
 マサキに呼びかけられて、ツバサが意識をハッキリさせていく。
「ゴメンなさい!・・私、また倒れそうになっちゃったのね・・・!」
 ツバサがマサキに謝り、倒れる自分に動揺する。
「ここ最近、昔のことを思い出すの・・イヤな出来事が・・・」
「ツバサちゃん・・・」
 ツバサが自分のことを打ち明けて、マサキが当惑を覚える。
「私、子供の頃に親が死んでしまったの・・事件に巻き込まれて、私の目の前で・・・」
「そんなことがあったなんて・・・そのことは、マスターとか他の人には・・・?」
「ううん・・親戚とお医者さんと警察以外は知らないわ・・マスターにもララちゃんにも話してない・・」
「そうか・・・だけど、何でオレにそれを・・・?」
 過去の自分を打ち明けていくツバサに、マサキが疑問を投げかけていく。
「・・・思い出したくないことだったから・・・」
「あ・・ゴメン・・・余計なことを聞いてしまった・・・」
 声を振り絞るツバサに、マサキが困惑して謝る。
「さぁ、仕事に集中しないと、またマスターに心配されちゃう・・・!」
 マサキが気持ちを切り替えて、仕事に戻る。
(このときの詳しいことは、私は覚えていない・・事件のことは警察や医者から聞かされたけど・・・)
 両親の死について思い出せないことに、ツバサは複雑な気分を感じていく。
(このことを話しても、マサキくんは知っているわけがないし・・・)
 マサキに打ち明けて悩ませるのもよくないと思い、ツバサはそのことを胸にしまうことにした。

 この日のジンボーでの仕事が終わり、マサキが着替えを終えてスマートフォンを確認した。
(シュラさんから連絡が入っている・・でも着信は少し前だ・・)
 着信を確かめて、マサキはシュラに電話を掛けた。
「シュラさん、何か分かったのか?」
“それが・・ガルヴォルスの集団が私たちの隊員たちを襲っているのです・・”
 マサキが呼びかけて、シュラが緊張を込めて説明する。
「何だって!?・・まさか、阿久津会のヤツらがオレたちに気付いて・・!?」
“その可能性はありますね・・追い込もうとしているのは、向こうも同じということですね・・”
 危機感を感じていくマサキに、シュラが焦りを抑えようとしながら答える。
「すぐにそっちに行くぞ!リィナさんも一緒なんだろ!?」
“はい。駅前で合流しましょう。”
 マサキはシュラと約束を交わして、連絡を終えた。彼はジンボーを出て、急いで駅に来た。
「マサキくん!」
 シュラの呼び声を耳にして、マサキが振り返って彼の車に乗った。
「シュラさん、リィナさん、部隊が襲われているって・・・!」
「はい。追跡も慎重に慎重を重ねて、迂闊に動けない状態です・・」
 マサキが声を掛けて、シュラが現状を口にする。
「おそらく、私たちがこうして動いているのも、敵は監視の目を光らせていることでしょう・・」
「だけど、こんな人がいる場所で攻撃してくることは・・・」
 シュラが話を続けて、マサキが苦笑いを浮かべた。
 そのとき、マサキとリィナが気配を感じて顔をこわばらせた。
「どうしました、2人とも・・?」
「ガルヴォルスが近くにいるわ・・こっちに近づいてくる・・・!」
 シュラが聞くと、リィナが感覚を研ぎ澄ませながら答える。
「しかも周りや空じゃない・・これは・・地面の下・・!?」
 マサキも気配のする方向を突き止めて、目を見開いた。
「車から出ろ!」
 マサキが怒鳴って、シュラ、リィナとともに車から飛び出した。次の瞬間、地面から光の刃が飛び出して、車が切り裂かれて爆発した。
「また地面から襲ってくる敵が出てくるとは・・・!」
「しかも今度は、刃物を飛ばしてくる能力かよ・・・!」
 炎上する車を見つめて、シュラとマサキが敵の正体を把握しようとする。
「出てこい!コソコソ隠れてないで姿を見せろ!」
 マサキが呼びかけて、デーモンガルヴォルスとなった。
「姿を見せずに隠れ続けるなら、ここから地面の下を攻撃するぞ!」
「聞いていたのと違って、ずいぶんと荒っぽい性格のようだ・・」
 警告するマサキに言い返して、地面の中から1人の怪人が現れた。サメの姿をしたシャークガルヴォルスである。
「ガルヴォルス・・お前も阿久津会のメンバーか!?」
「フン。とりあえず、邪魔者を始末する者、とだけ言っておく・・」
 問い詰めるマサキに、シャークガルヴォルスが淡々と答える。
「お前たちはここで私が始末する。1人たりとも逃がしはしない・・」
 シャークガルヴォルスが目つきを鋭くして、右手の爪を振りかざす。光の刃が放たれて、リィナもとっさにキャットガルヴォルスとなって、マサキと共に回避する。
「すごい威力と切れ味だ・・!」
「あれを直撃されたら、いくらガルヴォルスでもひとたまりもない・・!」
 マサキとリィナがシャークガルヴォルスの力に脅威を覚える。
「シュラさん、もう少し離れたほうがいい・・オレのそばにいると、確実に巻き添えを食らっちまうぞ・・・!」
 マサキがシュラに呼びかけて、剣を具現化して握った。
「分かりました・・他のみなさんにも伝えておきます・・!」
「できるだけ人のいないところに行くからよ・・・!」
 シュラが頷いて、マサキがシャークガルヴォルスに向かっていく。
「こっちだ、ガルヴォルス!」
「1人で私を相手にしようというのか・・いいだろう。」
 跳び越えたマサキの呼びかけに応えるように、シャークガルヴォルスが追いかけていく。
「私も行くよ・・あれほどの相手を、マサキさん1人でするのはさすがに危険よ・・!」
 リィナがマサキを心配して、続けて走り出した。
「リィナさん!・・・みなさん、2人と敵のガルヴォルスの監視を続けてください。ただし、みなさんに危険が及ばないよう、十分気を付けてください・・!」
 彼女の身を案じながら、シュラがアルトたちに指示を送った。
“わかりました!”
“了解。”
 アルトとソウマが答えて、マサキたちを追跡した。
 
 
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