ガルヴォルスExbreak
第7話「両極端の刃」
ガイはヴォルスレイだけでなく、他のガルヴォルスにも付け狙われていた。かつてヴォルスレイに所属していた彼は、暗躍していたガルヴォルスを打ち倒してきた。 快く思わないガルヴォルスがガイを襲撃することは少なくなかった。しかしガイはそのガルヴォルスを返り討ちにしてきた。(ヴォルスレイは、オレが必ず滅ぼす・・オレの邪魔をするヤツにも、容赦はしない・・・!) ガイが憎悪を募らせて、右手を握りしめる。(ヴォルスレイの本部は別の場所に移された。だが必ず見つけ出す・・しらみつぶしに叩いて、ヤツらを追い詰める・・・!) バサラたちを滅ぼすことを諦めないガイ。(その前に、生き延びる戦いをしなければ・・・) 彼は自分の現状を確かめて、ある行動を起こした。 ガイとの戦いのために、大学の講義を休み、ジンボーでの仕事に近くしてしまったマサキ。このことを気に病んでいた彼は、翌日の講義にしっかり出席しようと考えていた。「昨日の講義はみんな、教科書とかで確認しとけば分かるヤツだったから助かったぞ・・」 講義が始まる直前の時間、マサキがひと息ついて机に突っ伏した。「お前がサボりとは珍しいな、マサキ。」 彼の隣の席にに、1人の男子が座って声を掛けてきた。「アツオ、もうそのことを知ったのか・・?」 マサキは突っ伏したまま、男子、葉宮はみやアツオに言い返す。「オレも昨日の講義を受けているんだ。知らないとでも思ったのか?」「はいはい。参りましたよ、アツオさん・・」 アツオに言われて、マサキがため息をついた。「真面目なマサキがサボりとは珍しいね。」 もう1人の男子が来て、マサキたちに声を掛けてきた。「リョウ・・オレにも事情ってもんがあるんだよ・・」 男子、如月きさらぎリョウに言い返して、マサキが肩を落とす。「まぁ、マサキのことだからこの穴埋めをきちんとやると、オレは思うよ。」「信頼を寄せてくれて、痛み入りますよ・・」 リョウが巻き返しを信じて、マサキが苦笑いを浮かべた。「それじゃ、勉強と仕事に力を注ぐとしますか。」「今日もジンボーでバイトか。マジで頑張るな、マサキは。」 体を起こして意気込みを見せるマサキに、アツオが感心する。「集中力が高まってきたね。オレもしっかりしないと。」 リョウも触発されて、講義に集中するのだった。 この日の講義が終わり、ジンボーでの仕事の時間となったマサキ。彼はいつもより余裕を持ってシフトに入った。「マサキくん、いつもより気合いが入っていますね。」「昨日の欠席と遅刻をすごく気にしてたからのぅ。名誉挽回がいたんじゃよ。」 ツバサがマサキの頑張りを見て感心して、ヘイゾウが彼の心境を察する。「さて、わしらも今日もあたたかくお客さんを迎えるぞ。」「はい。」 ヘイゾウが呼びかけて、ツバサが微笑んで答えた。「ところでマスター、最近マサキくんが何をしているのか、知っていますか?」「ん?何じゃ、突然?」 ツバサがマサキのことを聞いてきて、ヘイゾウが疑問符を浮かべる。「マサキくん、遅刻や欠席をするような人じゃなかったのに・・何かあったんじゃないかと思って・・・」「まぁ、アイツなりに頑張っておるようじゃから、いいんじゃないかな?」「そんなのん気な・・何かとんでもないことに巻き込まれているんじゃないかとか、心配にならないんですか?」「心配してないと言ったらウソになるが、自立しとるんじゃからそれでよしじゃ。」 マサキを心配するツバサだが、ヘイゾウは彼を信じていた。(マスターは本当にのん気だわ・・私が直接確かめたほうがいいみたいね・・マサキくんが最近、どうしているのかを・・・) ツバサはヘイゾウに呆れてから、マサキのことを1人で調べようと考えていた。 多くの車が行き交う道。その中の交差点で、1台の車がもう1台の車の前に割り込み、運転手の男が出てきた。「チンタラ走ってんじゃねぇぞ!こっちは急いでるっていうのによ!」 男が後ろにいる車に近づいて、運転席の横に近づいた。「出てこいよ!その腐った性根を叩き直してやるよ!」 男が怒鳴って、ドアを開けようとする。しかしドアに鍵がかかっていて窓もしまっていて、運転手は恐怖を押し殺して警察に連絡していた。「コイツ、なめたマネしてんじゃねぇぞ!」 運転手の態度に不満を膨らませて、男がドアを殴りつけてきた。運転手は恐怖を膨らませるが、他の車が前後にいるために動くことができない。「このヤロー・・いい加減にしやがれ!」 激高した男がドアを蹴りつけようと右足を振りかぶった。 そのとき、1つの鋭いものが伸びてきて、男の体を貫いた。「うぐっ!・・な、何だ、こりゃ・・!?」 体に刺さっているものを目の当たりにして、男が驚愕する。鋭い刃物が伸びていて、引き抜かれた男が血をあふれさせて倒れた。「な、何だ!?」 思わぬ事態に運転手も声を荒げる。周りにいた人たちも驚愕と恐怖を覚える。「あ、あの・・今、その男が突然、刃物で刺されて倒れました・・・!」 運転手が声を振り絞り、男のことを警察に話した。 通報を受けて、男の死亡した現場に警察が来た。テツオたちが男の遺体の確認や現場検証をしていく。「今度は通り魔事件か・・しかし凶器の刃物が出てきたことには、多くの目撃者がいるのに、肝心の犯人は誰も見てねぇとは・・」 テツオが事件の状況に対して苦悩していく。「他の目撃者にも聞いてきましたが、そちらも犯人を誰も見ていませんでした・・」 トモヤが彼に聞き込みの報告をする。「あの男があおり運転をして、前に出て道をふさぎ、車から出てあなたに詰め寄ってきたのですね?」 テツオが通報をしてきた運転手に事情を聴いてきた。「はい・・前にも後ろにも動けなくて、ここから警察に電話するしかなかったのです・・そうしたら突然、その人が刃物みたいなのに刺されて・・・」 運転手が男が殺されたときのことを思い出して、説明していく。「それでこの人が殺された・・しかしあなたもここにいた誰も、犯人の姿を見なかったと・・」「はい・・」 テツオが指摘したことに、運転手が小さく頷いた。「決して少なくない人の目を逃れて、1人を殺害する・・どんな手口だというんだ・・・!?」 犯人のことを考えて、テツオが毒づく。「念入りに捜査をしろ!近くに犯人がいたのは確実!その手がかりが残っているはずだ!」「はい!」 テツオが指示を出して、トモヤとカリヤが答える。2人と他の刑事たちは犯人の捜索に力を入れる。「今度こそ・・今度こそこのおかしな事件をオレたちが解決してやるぞ・・!」 警察の威信を賭けて、テツオは事件の犯人の発見と逮捕に闘志を燃やしていた。 この殺人事件に関する調査を、ヴォルスレイの部隊が進めていた。彼らは犯人がガルヴォルスである可能性が高いと推測していた。「これは人間離れした高度の殺害方法ですね。犯人の姿を見ていないので確定ではないですが、ガルヴォルスの仕業と見ていいでしょう。」 シュラが事件の状況を確認して、思考を巡らせる。「監視体制を強化して、すぐに正体を暴きます。」 アルトがシュラに進言してから、捜査を続行した。(誰にも姿を見られずに暗殺する・・ガルヴォルスの中で厄介な部類でしょうね・・) シュラが不安を感じて、警戒を強める。彼も動き出して捜査に参加した。 警察やヴォルスレイの捜査をあざ笑うかのように、その後も殺人事件が続発した。いずれも犯人の姿を見た人はいなかった。 しかし事件が繰り返されていく中、被害者の共通点が見えるようになってきた。「被害者はいずれも犯罪者、及び犯罪を犯そうとしていた者ばかり。指示役やいじめの加害者も含まれていますね・・」 シュラが被害者の素性を調べて頷いていく。「犯人は犯罪者に強い恨みを持っているということでしょうか。よほど強い正義感を持っているのか、それとも過去に辛い思いをしたのか・・」「何にせよ、これで捜索範囲を絞れますね。」 推測していくシュラに、ソウマが答える。「犯行を完璧に遂行しようとする傾向も強いです。邪魔をする我々にも牙を向けてくるかもしれません。くれぐれも命は大事に。」「我々はガルヴォルス討伐と任務に全てを捧げている身です。命を捨てる覚悟がなければ、この任務は務まりません。」 シュラが注意を促すが、ソウマは任務に毅然とした態度で臨んでいた。「死んでは任務は遂行できませんよ。それをお忘れなく。」「それはもちろんですが・・・」 シュラが続けて忠告して、ソウマが眉をひそめる。「余計な心配になってしまったようですね・・任務を続行しましょう。」「はい、シュラ隊長。」 シュラに呼びかけられて、ソウマが頷いた。彼らは殺人事件の犯人の捜索を再開した。 この日のマサキのジンボーでの仕事は、昼食の時間帯までだった。仕事を終えた彼は、昼食をとるために牛丼屋を訪れた。「ここのところ、忙しいからな・・肉でも食べて体力付けないとな・・」 自分のおなかに手を当てて、食事に備えるマサキ。彼は店に入ると、食券を買って店員に渡した。 マサキが席について少し待つと、彼の前に牛丼が運ばれてきた。(いただきます。) マサキがはしを持ってどんぶりを持って牛丼を口にしていく。おいしさに幸せを感じて、彼はさらに牛丼を食べていく。「ふぅ~・・牛丼はうまいもんだなぁ・・」 食べ終わったマサキが満足して笑みをこぼした。「ごちそうさまです。うまかったですよ・・」 マサキが席を立って店を出ようとしたときだった。彼の視界に、牛丼を食べているガイの姿が入ってきた。「アイツは・・・!」 食事を終えたガイがいたことに、マサキが驚愕を覚える。「お、おい!」 店を出ていったガイを、マサキが慌てて追いかける。しかし外の人混みで、マサキはガイを見失う。「アイツ、こんなところにいるなんて・・・!」 ガイのことを考えて、マサキが動揺を浮かべていた。 そのとき、マサキはスマートフォンに着信があったことに気付いた。彼は人目から離れてから、スマートフォンを取り出して電話を掛けた。「シュラさん、またガルヴォルスが出たのか?」“はい。まだ決定的ではありませんが、手口からガルヴォルスであると見ています。” マサキが話を聞いて、シュラが答える。“ここ最近起こっている殺人事件のことは知っていますか?鋭い刃物による視察ですが、目撃者は皆、犯人の姿を目撃していないのです・・”「あぁ、ニュースで知ってる。隠れていてもオレなら見つけられるってことだろ?”」“そういうことです。あなたの力、頼りにさせていただきます。”「オレは駅前の辺りを探ってみる。そこから大通りに向かって移動していく。」 信頼を寄せるシュラに、自分の行動について伝えるマサキ。連絡を終えて、彼は意識を集中した。(この辺りに気配を感じない・・力を抑えているみたいだ・・・) マサキが思考を巡らせながら、近くにガルヴォルスの力が感じられないと判断する。(感じられないといったら、ガイってヤツの力も、全然感じなかった・・牛丼屋に行ったときも、店を出たときも・・・) マサキはガイが近くにいたのに気付けなかったことを悔やんだ。それを気にするあまり、彼はシュラにガイのことを報告しなかった。(アイツと殺人犯と、どっちに先に出くわすか・・) マサキは感覚を研ぎ澄ませて、気配を感じ取ることにした。(この近くにいないみたいだ・・場所を変えるか・・・) ガイもガルヴォルスもいないと思い、マサキは大通りの方へ歩き出した。 大通りから少し離れた場所にある定食屋。そこで1人の男が、客である青年を怒鳴りながら殴りつけていた。「このオレにいちゃもんつけるたぁ、いい度胸してんじゃねぇかよ!」 男が倒れている青年を見下ろして、怒りをあらわにする。「ち、違う・・私は、ただ隣の席に座っただけで・・・!」「それでオレの席のスペースに割って入ったんだろうが!」 声を振り絞って言い返す青年に、男が怒鳴って足を振りかざす。連続で蹴られて踏みつけられて、青年がうめいて吐血する。「おい!警察に知らせたら、テメェら全員ブッ飛ばすぞ!」 スマートフォンで警察に通報しようとした客に気付き、男が怒鳴る。「や、やめてください!店が滅茶苦茶になってしまいます!」 店主が慌てて男に注意を投げかけてきた。「やかましい!コイツがなめたマネしたから、オレの気分のほうが無茶苦茶になってんだよ!」 男が店主の言うことを聞かずに、青年を蹴り飛ばして壁に叩きつけた。「まだだ!まだオレの気は治まらねぇぞ!」 男が青年に近づいて、また踏みつけようと足を振り上げた。殺されると思った青年が、たまらず目を閉じて手で頭を抱えた。 そのとき、1本の刃が伸びてきて、男の体を貫いた。「うぐっ!・・な、何だ、こりゃ・・!?」 口から血をあふれさせる男が、刺さっている刃物を見て驚愕する。刃が引き抜かれて、彼は倒れて動かなくなった。「う、うわあっ!」「まただ・・またあの人殺しが!」 店内にいた人々が恐怖を覚えて震える。彼らが警察に通報するまでに、時間を要することになった。 定食屋で暴行を行っていた男を殺害した刃物を、ヴォルスレイの隊員数人が目撃していた。「凶器の刃物を発見。追跡します。」 ソウマ隊の隊員たちが縮んでいく刃物の行方を追う。網の目を縫うように人混みの間を抜けていた刃物は、路地裏へと引っ込んでいく。「いました。ガルヴォルスを発見しました。メカジキのような形状をしています。」 隊員の1人がメカジキのような怪人、ソードフィッシュガルヴォルスを発見した。刃物はソードフィッシュガルヴォルスの右手から伸びていた。「これより追跡を開始。正体を突き止めます。」 彼らは報告を終えてから、ソードフィッシュガルヴォルスを監視、追跡する。 次の瞬間、ソードフィッシュガルヴォルスが左手をかざして刃を伸ばして、隊員の1人の体を貫いた。「何っ!?」 刺された隊員が倒れて、他の隊員たちが驚愕する。「まさか、我々の位置を把握している!?」「隊長、敵は我々の追跡に気付いています!防衛のために応戦します!」 隊員たちが緊迫を覚えて、ソウマに連絡を取った。だがそこへ刃が伸びてきて、彼らが次々に切りつけられていく。「隠れてもやられるだけか・・ヤツの前に出て交戦する!」 隊員たちが銃を手にして、ソードフィッシュガルヴォルスに姿を見せて発砲する。しかし射撃はソードフィッシュガルヴォルスの刃に弾かれる。「やはり通じないか・・やむを得ない!撤退だ!」 危機感を募らせた隊員たちが、ソードフィッシュガルヴォルスから遠ざかっていく。それを把握していたソードフィッシュガルヴォルスも、この場から離れていった。 追跡隊が気付かれて返り討ちにされた情報は、ソウマやシュラに伝わった。「まずいですね・・マサキくんが追撃に出れば、確実に迎撃されます・・・!」「連絡が取れればいいですが、隙を作ることにもなります・・」 焦りを噛みしめるシュラに、ソウマが苦言を呈する。「彼を信じるしかないようですね・・勝利と無事を・・」 シュラはひと息ついて、マサキへの信頼を胸に秘めた。 大通り沿いに進んでいくマサキが、ソウマの部隊を迎撃しているソードフィッシュガルヴォルスの気配を感じ取った。(いた・・ガルヴォルスか・・近いぞ・・・!) 気配のする方に向かって走り出すマサキ。路地裏に差し掛かったところで、彼は事切れている隊員たちを発見した。「お、おい!・・しっかりしろ!おい!」 マサキが隊員の1人の駆け寄るが、息がなく動かなかった。「ガルヴォルスにやられたのか・・・ちくしょう・・・!」 マサキが怒りを覚えて、感覚を研ぎ澄ませる。彼の五感が、移動するソードフィッシュガルヴォルスの居場所を捉えた。(いた!・・速い・・!) ソードフィッシュガルヴォルスの動きに、マサキが驚きを覚える。「ガルヴォルスにならないと追いつかない・・!」 思い立った彼もデーモンガルヴォルスとなって、飛行してスピードを上げた。「見つけた!」 ソードフィッシュガルヴォルスを発見して、マサキが降下して彼の前に着地した。「お前・・人殺しを繰り返して・・・!」 マサキが怒りを燃やして、ソードフィッシュガルヴォルスに対して目つきを鋭くする。「許さない・・お前を止めるぞ!」 マサキがソードフィッシュガルヴォルスに向かって駆け出す。ソードフィッシュガルヴォルスが右手を出して刃を伸ばす。 マサキが回避しようとするが、刃が頬をかすめた。「チッ・・!」 彼が毒づきながらも、ソードフィッシュガルヴォルスの懐に飛び込んだ。「くらえ!」 マサキがソードフィッシュガルヴォルスの体に拳を当てた。「ぐっ!」 だが痛みを覚えたのはマサキの方だった。彼が引いた拳から血があふれていた。 ソードフィッシュガルヴォルスの体からも刃が出ていた。その刃でマサキは負傷したのである。「コイツ、全身凶器って言いたいのかよ・・・!?」 ソードフィッシュガルヴォルスの能力に毒づくマサキ。彼が握りしめた右手の傷が塞がり始める。 ソードフィッシュガルヴォルスは周りに目を向けてから、マサキの前から離れていった。「ま、待て!」 マサキが追いかけるが、ソードフィッシュガルヴォルスは遠ざかっていった。「くそっ!・・逃げられた・・・!」 悔しさを覚えて体を震わせるマサキ。彼は呼吸を整えて、気分を落ち着かせようとする。 そこへシュラとソウマが車で来て、マサキに目を向けた。「これまた厄介なガルヴォルスが現れたものです・・」 厄介なガルヴォルスの出現に、シュラも頭を悩まされていた。 第8話へ 作品集に戻る TOPに戻る