ガルヴォルスDesire 第6話「ホントの気持ち」
英野町での学校生活とバイトの仕事に慣れてきた頃のことだった。この日もいつものように元気に店の接客を元気にこなしている舞華に、冬矢が声をかけてきた。
「何ですか、店長?」
「舞華くん、実は知り合いからこれを譲り受けてね。」
冬矢は言いかけて、舞華に3枚のチケットを手渡した。
「これは・・遊園地の、ですか?」
「あぁ。英野町の端にある遊園地でね。その1日招待券をもらったんだけど、その指定の日は、店のほうを空けられなくて・・」
「それで、これを私にですか・・・」
冬矢の説明を聞いて、舞華がチケットを眺める。
「1枚は私、1枚は秋菜ちゃんとして・・あと1人・・・」
誘う相手を誰にするか、舞華は考えを巡らせていた。すると冬矢が店内を視線を巡らせる。
「ジョーくんを誘ってみたらどうかな?彼は舞華くんと秋菜のクラスメイトだし、よく一緒にいるみたいだけど。」
「ジョーを、ですか!?」
冬矢の言葉に舞華が突然声を荒げる。
「ダ、ダメですよ!あんなヤツ誘ったら、せっかくの遊園地での楽しい時間が台無しです!一緒にいるっていうのも、アイツのほうからからかいに来てるだけですから・・!」
「でも、秋菜と君の共通の知り合いは、彼ぐらいと思うんだが・・」
冬矢に言いくるめられて、舞華は押し黙ってしまう。彼女はチケットをじっと見つめながら、何とかしようと考えていた。
「遊園地?オレも一緒にか?」
舞華が切り出した誘いにジョーは疑問符を浮かべる。その前で舞華は腑に落ちない心境を抱えていた。
結局誘う相手が見つからず、舞華は仕方なくジョーを誘うことにした。彼女自身、納得ができないものの、ジョーに渋々誘うことにしたのである。
「珍しいこともあるもんだな。お前がオレを誘うなんて。当日は雨かな?」
「言っておくけど、他に誘う相手がいないから仕方なくアンタを誘うんだからね。アンタとなら、秋菜ちゃんは納得してくれると思ったから。」
からかってくるジョーに、舞華が付け加える。
「なるほど。分かったよ。オレも行ってやる。せっかくのお前の誘いを断ったらバチが当たるってもんだ。」
「あれ?アンタが私に感謝するなんて。当日は雪かも。」
互いにからかい合う様子を、夏は遠くから見て微笑んでいた。
賑わいのある白昼の街中。人ごみが多く、その群集が途切れることはなかった。
その中で蠢く不気味な影。だがその姿はなく、人々は誰一人気づいていない。その透明な眼から、影は光を放つ。
その光を浴びた長髪の女性が動きを止める。自分でもなぜ止まったのが疑問に感じながら、女性はおもむろに自分の足元を見つめる。
すると女性は信じられないものを目の当たりにして、驚愕を覚える。自分の両足がガラスに変化し始めていた。その変化は上半身に向けて進行していた。
「な、何なの、コレ!?・・・やめて・・やめてよ・・・!」
悲鳴染みた声を上げる女性だが、押し寄せる変化に抗うことができないまま、彼女は完全なガラスの像と化した。
「イ、イヤアッ!」
その光景を目の当たりにした周囲の人々も悲鳴を上げ、街は混乱に見舞われた。その中で、影は周囲に気づかれることなく、街を後にした。
数日後、舞華は秋菜とジョーとともに遊園地に向かった。天候は晴天。楽しむには申し分ない空模様だった。
「へぇ。けっこういいとこじゃないの。こりゃ存分に楽しまないと損ね。」
秋菜が空を仰ぎ見て、感嘆を口にする。
「よくよく考えたら、この顔合わせは少しまずかったかも。オレがまるで二又かけてるみたいだ・・」
そこへジョーが皮肉を口にする。すると舞華が彼に笑みを見せる。
「そのことは心配しなくていいよ。どう見ても美女と野獣だから。」
「や、野獣って・・」
舞華の発言にジョーが顔をしかめる。
「おーい!おふたりさーん!早くしないと置いてくよー!」
そこへ秋菜が2人に声をかけてきた、秋菜は既に入り口の前に行っていた。
「あっ!待って、秋菜ちゃん!」
舞華とジョーは慌てて秋菜を追いかけていった。こうして3人の遊園地でのひと時が始まった。
ジェットコースター、フリーフォールでの絶叫。ゴーカートでの大興奮。コーヒーカップやメリーゴーランドでの童心への帰還。クレープやソフトクリームなどの軽食。
遊園地での時間は瞬く間に過ぎていった。
「ねぇ。次はあそこへ行ってみよー!」
秋菜が明るくある場所を指差す。そこはホラーハウス、お化け屋敷である。
「ふむふむ、お化け屋敷かぁ・・・」
舞華がホラーハウスをまじまじと見つめる。
「舞華、もしかして怖いのか?」
「何言ってんのよ。お化け屋敷も遊園地の定番のひとつよ。むしろ楽しみなくらいなんだから♪」
からかってくるジョーに、舞華が活気のある返事をする。
(とは言ったものの、実は肝試し系、全然ダメなんだよね〜・・)
しかし舞華は胸中で不安を抱えていた。しかしジョーに弱さを見せるわけにはいかないと思い、虚勢を張っていた。
「さて、そろそろ入ってみよう。いくらなんでもはぐれると面倒だから一緒に行くか。」
「えっ?う、うん・・」
ジョーの言葉を受けて、舞華は小さく頷いた。3人はそろってホラーハウスへと入っていった。
ホラーハウスの中は古びた西洋風を彩っていた。その中での薄暗さが、訪れる人に怖さを与えていた。
(ふえ〜・・どうしよ〜・・何か出てきそうだよ〜・・・)
舞華が不安の面持ちを浮かべて周囲を警戒する。この薄暗さのため、彼女の顔はジョーや秋菜には見られていなかった。
そしてしばらく廊下を進んだところで、壁際に立っていた鎧の兜が突如胴体と離れた。
「イ、イヤァァァーーー!!!」
舞華がたまらず悲鳴を上げて、その場から駆け出した。
「お、おい、舞華・・!」
ジョーが離れていく舞華に声をかけるが、舞華は完全に彼らから離れていってしまった。
「秋菜、悪いが先に出口まで行っててくれ!オレが舞華を連れてくる!」
「それなら私も・・!」
ジョーの呼びかけに秋菜が声をかけるが、ジョーは首を横に振る。
「お前は係員の人に呼びかけてくれ。もしかしたら、外に飛び出しちまったかもしれない。」
「ジョー・・分かった。舞華をお願いね。」
秋菜はジョーに舞華を任せて、外へと向かう。ジョーは彼女を見送ってから、舞華を追って駆け出した。
(舞華のヤツ、ただの仕掛けだってのにビックリしやがって・・!)
舞華に対して胸中で毒づきながら、ジョーは必死に彼女を探した。そしてついに、ジョーは廊下の片隅で震えている舞華を発見する。
「おい、舞華、どうしたんだ・・!?」
ジョーに声をかけられて、舞華がようやく顔を上げる。その眼からは大粒の涙があふれてきていた。
「もしかして、ホントは怖かったなんていうんじゃないだろうなぁ・・?」
ジョーが呆れ顔で言いかけると、舞華は涙ながらも小さく頷いていた。事態の深刻さを実感して、ジョーは深刻になる。
「だったらムリをせずに、出口で待ってればよかったじゃないか。無理矢理誘ったわけじゃないんだから。」
「だ、だって・・アンタに情けないとこを見せたくなかったの・・・」
必死に強がってみせようとする舞華だが、ジョーには全て見え見えだった。
「ったく。しょうがないな。とりあえず外に出るぞ。こんなところにいつまでもいたんじゃ、秋菜にも心配させちまうし、お前も居心地悪いだろ。」
「う、うん・・・」
舞華はジョーの手を取って立ち上がり、気持ちを落ち着ける。頬の涙を拭って、何とか笑みを作る。
「それじゃ、放すんじゃないぞ。また逃げられたんじゃたまんないからな。」
「わ、分かってるよ・・・」
ジョーの言葉に、舞華はぶっきらぼうに答えた。
一方、秋菜は舞華が外に飛び出していないかどうか確かめるため、先に出口に出ていた。だが近くに係員の姿が見当たらず、彼女は周囲を見回していた。
「あれ?おかしいわね・・1人ぐらいいてもいいはずなんだけど・・・」
秋菜が眼を凝らすも、周囲には係員が1人も見当たらず、舞華の姿もない。
「全く、舞華ったら・・見つけたら文句のひとつも言ってやらないと!」
秋菜が不満の面持ちで腕組みをして、さらに舞華を探す。そのとき、近くで悲鳴が上がったのを耳して、明菜は緊迫を覚える。
「今の悲鳴・・もしかして・・・!?」
秋菜が思い立って振り返ったときだった。その先には1人の女性がいた。女性は眼前のガラスの像を見つめて、妖しく微笑んでいた。
「あらあら。ずい分きれいになったじゃない。やっぱり私がやったほうがよかったわね。」
女性はガラスの少女の像を見つめて、喜びを感じていた。
(あの人、もしかしてガルヴォルスじゃ・・・!?)
秋菜が再び思い立ったときだった。彼女がいたことに気づいて、女性がゆっくりと振り向いてきた。
「あら?あなたもなかなかよさげね。私がもっときれいにしてあげる。」
笑みを見せる女性の頬に紋様が浮かぶ。そしてその姿がカメレオンを思わせる怪物へと変化する。
「ガルヴォルス・・!?」
秋菜は危機を覚えて、たまらずカメレオンガルヴォルスから逃げ出した。怪物は体を透明にして、彼女を追って動き出した。
舞華とジョーがホラーハウスから出たときには、既に秋菜の姿はなかった。ジョーが辺りを見回すが、秋菜の姿は見当たらない。
「秋菜のヤツ、どこまで探しにいったんだ?」
ジョーが肩を落とすと、舞華は思わず笑みをこぼす。ジョーがそれに不満を覚えるが、すぐに笑みを見せる。
そのとき、2人は近くに観覧車があることに気づく。
「あれで上から探してみるか。」
「そうね。それしかなさそうね。」
ジョーも舞華も苦笑いを浮かべつつも同意し、観覧車に向かうこととなった。
ばらばらになるのも釈然としなかったため、2人はそろって観覧車に乗った。向かい合って座った2人は、妙な緊張感を覚えて言葉が出なくなってしまう。
しばらく沈黙が続いた後、話を切り出したのは舞華だった。
「けっこうロマンチックね、このシチュエーション。相手がアンタじゃなかったら、もっとよかったんだけど。」
「それはこっちのセリフだ。お前のようなじゃじゃ馬、仕方なく一緒に乗ってやってんだからな。」
お互い文句を言ってのける舞華とジョー。互いと自分の馬鹿馬鹿しい態度に、2人は思わず笑みをこぼしていた。
「そういえばお前のこと、あんまり聞いてなかったな。前に住んでたとこはどんなとこなんだ?」
「人のことを聞くときは、まず自分のことを話してからだよ。」
舞華に言いとがめられて、ジョーが憮然とした面持ちを浮かべる。
「オレのことっていっても、高校入学の際に一人暮らしを始めたぐらいだぞ。」
「もう。もう少し話題を膨らませてよね。」
ジョーの答えに舞華が呆れる。そして気持ちを切り替えて、舞華は自分について話し始めた。
「私のお父さんとお母さんは、私が12歳のときに事故で亡くなったの。それで私はしばらく親戚の家に引き取られた。でもあまり世話になりっぱなしになるのも迷惑と思って、農家のお手伝いをしばらくやってから家を出たの。自分だけの力で頑張っていこうってことで。。」
「なるほど・・お前も辛かったんだな・・・だけど、1人だけでやってのけるっていってもな、できることは限られてんだぞ。あんまりムリせず、甘えるときには甘えたほうがいいさ。さっきのようにな。」
「もう、またからかうんだから・・」
ジョーの言葉に舞華はまたまた肩を落とす。
「ジョー、ホントは私のこと、どう思ってるの?」
「えっ?」
「アンタは私にいつもからかってくる。私のことをバカにして、怒らせようとする。それなのに、困ったときには手を差し伸べてくれる。ホントはアンタは何を考えてるの・・・?」
真剣に問いかけてくる舞華に、ジョーも真剣に答えようとする。だがうまく考えがまとまらず、言葉が浮かばない。
「何ていうんだろ・・性分ってヤツか・・困ってる人がいると、ほっとけなくなっちまうんだ。オレの中の何かが、助けろって訴えるんだ・・」
何とか答えようとするジョーの言葉に、舞華は納得した。
「案外、アンタっていい人なんだね・・見直しちゃったかも・・」
舞華の賞賛の言葉を受けて、ジョーが頬を赤らめる。その反応を見て、彼女は素直に喜んだ。
そして2人は観覧車から降りた。そこで2人はようやく、秋菜を探すという当初の目的を思い出したのだった。
「オレたち、何のために乗ったんだ・・・」
「もう、こうなったら携帯で呼び出すしか・・って、最初からそうしてればよかったのよね・・」
舞華は自分の携帯電話を取り出して、秋菜への連絡を取る。やっとのことで秋菜の電話につながった。
「秋菜ちゃん、ゴメン!今どこに・・」
「舞華、すぐに来て!ガルヴォルスが・・!」
舞華が謝罪したところへ、秋菜の切羽詰った声が返ってくる。その事態に舞華も緊迫を覚える。
「秋菜ちゃん、今どこなの!?すぐに駆けつけるから!」
舞華が秋菜に呼びかけていたときだった。ジョーが必死に駆けてくる秋菜を発見する。
「秋菜!」
「えっ・・!?」
ジョーの声に舞華が驚きの声を上げる。
「秋菜ちゃん、大丈夫!?いったい、何が・・!?」
「舞華、ジョー、すぐに逃げて!追ってきてるのは・・!」
問いかけてくる舞華に必死に呼びかける秋菜。
「危ない!」
そこへジョーがたまらず2人を突き飛ばす。2人と彼の間を、見えない何かが飛び込んできた。
「な、何だ・・!?」
驚きを覚えるジョーが眼を見開き、周囲をうかがう。舞華も秋菜も見回すが、姿なき襲撃者の位置を特定することができない。
「秋菜ちゃん、どういうことなの・・!?」
「姿を消せるガルヴォルスが出たの。この近くで私たちを狙ってるはず・・」
舞華の問いかけに秋菜が深刻な面持ちで答える。
「ガルヴォルス・・!?」
その言葉にジョーが眉をひそめる。
「おい、お前ら、何か知ってるのか・・・!?」
彼の問いかけに、舞華と秋菜が当惑を覚える。
そのとき、一条の閃光が秋菜に向かって飛び込んできた。舞華が秋菜の腕を引っ張り、光から守る。
そこへ見えない衝撃が舞華を突き飛ばす。彼女は近くの草むらへ投げ出された。
「舞華!」
「ウフフフ。あまりにしつこいお嬢ちゃんだったから、ちょっと退場させてあげたの。」
叫ぶ秋菜の前に、カメレオンガルヴォルスが姿を現した。
「怪物!?・・ウ、ウソだろ・・!?」
さらなる驚愕を覚えるジョー。彼の様子を気にせず、カメレオンガルヴォルスは秋菜を見つめていた。
「さて、そろそろあなたにはきれいなガラスに変えてあげるから・・」
怪物が妖しく微笑みながら、秋菜とジョーに迫る。
そのとき、草むらから別の怪物が飛びかかり、カメレオンガルヴォルスを突き飛ばす。秋菜とジョーと怪物の間に乱入してきたのは、ブレイドガルヴォルスに変身した舞華だった。
「ま、またバケモノが・・・!」
ジョーが声を荒げる前で、舞華がカメレオンガルヴォルスを見据えて、右手を刃に変えた。
「へぇ。私の楽しみの邪魔をするんだ・・」
カメレオンガルヴォルスが立ち上がり、妖しく微笑む。
「ジョー、今のうちに逃げよう・・」
「あ、あぁ・・何が何だかだけど、あの2人がやり合ってるうちに・・!」
秋菜に促されて、ジョーはその場を立ち去った。
(舞華、絶対に無事で戻ってきて・・)
秋菜は胸中で舞華の無事を祈り、ジョーを追っていった。
「せっかくの楽しみだったのに・・まぁいいわ。まずはあなたからガラスに変えてあげる。」
カメレオンガルヴォルスが告げると、眼から閃光を放つ。舞華は横に跳躍して閃光をかわし、刃を振りかざしてカメレオンガルヴォルスに飛びかかる。
だがカメレオンガルヴォルスは周囲に溶け込んで姿を消し、舞華の一閃を難なく回避する。舞華は立ち止まり、怪物の行方を探る。
「さて、私がどこにいるのか、あなたに分かるかな?」
カメレオンガルヴォルスが舞華に向けて言いかける。だが視線を巡らせる舞華は、怪物の姿を捉えられないでいる。
そんな中で舞華は突如肩の力を抜いた。その動きにカメレオンガルヴォルスが不審さを覚える。
(そんなに力を抜いて・・降参ってことかしら?)
一抹の疑問を感じながら、カメレオンガルヴォルスはゆっくりと舞華に接近していく。
(間近まで近づいて、一気にガラスに変えてあげる。)
怪物が気づかれないように無音で舞華に近づく。そしてついに、舞華の間近に迫ろうとしていた。
(もらった。)
カメレオンガルヴォルスが眼から光を放とうとしたときだった。舞華は振り向きざまに刃を振りかざし、怪物の胴体を両断する。
「なっ・・!?」
驚愕を覚えるカメレオンガルヴォルスの肉体が砂のように崩壊し、砂煙となって消滅した。
「たとえ姿が見えなくて、足音が聞こえなくても、かすかな風が大体の位置を教えてくれてるんだよ・・」
舞華は滅びた怪物に向けて、囁くように言いかける。人間の姿に戻った彼女は、秋菜とジョーを追って駆け出した。
ガルヴォルスの混戦から何とか逃げ延びた秋菜とジョー。立ち止まったところで、2人は舞華のことをようやく思い出した。
「や、やばい・・舞華のこと・・・」
ジョーが不安の面持ちを秋菜に見せる。舞華が無事でいることを秋菜は確信していたが。
「オレ、探しに行ってくる!秋菜はここに・・!」
「私ならここだよ。」
秋菜に呼びかけていたジョーに声をかけてきたのは、戻ってきた舞華だった。何事もなかったかのような様子の彼女に、ジョーはたまらず詰め寄った。
「舞華、大丈夫なのか・・あのバケモノたちは・・!?」
「あの2人、1人が1人をやっつけて、そのままどっかに行っちゃったよ。」
問い詰めるジョーに、舞華が笑顔で答える。その様子にジョーはようやく安堵を覚える。
「全く、心配させて・・いろんな意味で冷や冷やもんだぜ・・」
「ゴメン、ゴメン。心配かけたことは謝るよ・・」
頭をかくジョーに、舞華が苦笑いを浮かべる。あれほど反発の意思を見せていた舞華に、秋菜は高揚感を覚えていた。
(何だか分かんないけど、何とか和解できたみたいかも・・)
言葉を交わす舞華とジョーを見て、秋菜は喜びを感じた。だが同時に不安も感じていた。
秋菜は心密かにジョーへの感情を抱いていた。その感情が何なのか、彼女自身、違和感とまでしか分からなかった。
次回予告
「ジ、ジョーの婚約者!?」
「私は藤堂忍(とうどうしのぶ)。ジョーとは古い付き合いになる。」
「その女、見つけ次第連れてくるのだ。」
「忍、さん・・・!?」
「これが、私がジョーを頼った理由なんだ・・・」