ガルヴォルスBLOOD 第12話「去」
壮絶な戦いを繰り広げてきた小夜と白夜。だがその2人を丈二と兵士たちが取り囲んできた。
「クロスファング・・こんなときに・・・!」
「とうとう見つけたぞ、お前たち・・2人とも消耗しているのが好都合だった・・」
危機感を覚える小夜に、丈二が不敵な笑みを見せる。
「ターゲットB、そして日向白夜、お前たちをここで拘束する!」
「貴様・・またオレの邪魔をするつもりか・・・!?」
言い放った丈二に、白夜が怒号を放つ。
「邪魔?オレたちの任務を散々邪魔をしてきたのはお前だ。」
「ふざけるな!ヤツを倒すのはオレだ!」
冷徹に告げる丈二に、白夜がさらに怒りの叫びを上げる。
「コイツの首は誰にも渡さない・・邪魔をするならお前たちも敵だ!」
「・・やはり最初に会ったときに、敵として排除しておくべきだった・・」
敵意をむき出しにする白夜に呆れる丈二に、異様な紋様が浮かび上がる。彼はシャークガルヴォルスとなって、肘の角を構える。
「他の者はターゲットBの拘束を。オレが反逆者を処分を行う。」
丈二が呼びかけると、兵士たちが小夜に狙いを絞った。
「ヤツを倒すのはオレだと言ったはずだ!」
白夜が兵士たちに牙を向けようとした。だが丈二が振りかざした角に切られて、白夜が怯む。
「もうこれ以上、お前の身勝手な行動が許されることはない・・」
「何だと・・・!?」
低く告げる丈二に白夜が苛立ちを見せる。彼が力任せに爪を振りかざすが、丈二は後ろに下がってかわす。
「オレが直接お前を裁く。お前の強力な力というメリットよりも、任務を阻害というリスクのほうが高まっているからな・・」
言いかける丈二に白夜が鋭い視線を向ける。彼の体から稲妻のような光が放出される。
「今のお前は力を消耗し、傷も癒えてはいない。それに力を高められるのは、お前とターゲットBだけではない。」
丈二は白夜に言葉を投げかけると、全身に力を込める。彼の体の筋肉が引き締まり、パワーが一気に上がった。
「今のお前相手に、ここまでやる必要はないのだが・・」
丈二が白夜に飛びかかり、体に両手を叩き込む。痛みと衝撃に襲われて、白夜が顔を歪める。
(力が上がっただけじゃない・・スピードも、格段に上がっている・・・!)
高まった丈二の能力に毒づく白夜。彼はいきり立って丈二に爪を突き立てた。
「ムダだ。」
白夜の爪をかいくぐって、丈二が爪を振りかざす。白夜が全身を切り付けられて、鮮血をまき散らした。
兵士たちが発砲した弾丸を、小夜が素早くかいくぐっていく。だが体にある傷と体力の消耗で、小夜の動きは鈍っていた。
(普通なら簡単にかわせるはずなのに・・体力の回復が間に合わない・・・!)
小夜が弾丸をかわすことにも困難を感じていた。
(弱気になっていてはダメ・・私は・・まだここで倒れるわけにはいかないのよ・・・!)
自分に言い聞かせて、小夜は戦いに集中する。彼女は刀で弾丸を弾きながら、兵士を斬りつけていく。
だが小夜はさらに体力を消耗していった。さらに彼女は血の飢えに襲われ始める。
(戦うための力も足りなくなってきた・・早く血を・・・!)
呼吸を荒くする小夜が、加勢してくる兵士たちから血を奪おうとする。だがそのとき、彼女の右足に弾丸が命中した。
「うっ!」
足に痛みを感じて小夜が怯む。この痛みにも耐えようとするが、次の瞬間、彼女は自分の体の感覚の鈍りを覚えた。
(か、体が言うことを聞かない・・急に意識が・・・!?)
突然意識が揺さぶられて、小夜がふらつく。兵士たちが彼女を見て笑みを見せてきた。
「これはただの弾ではない。ガルヴォルスの機能を狂わせる効果の弾に、強力な麻酔を掛け合わせたものだ。」
「いくらターゲットBでも、受けて平気でいられるはずがない。」
「ましてここまで体力が落ちていれば、当てるのは難しくはない。」
兵士たちがうずくまる小夜に銃口を向けてきた。小夜は感覚を研ぎ澄ませて刀で銃を払って、兵士たちから離れていく。
しかし体力と血の消耗と負傷で、小夜は兵士たちを振り切ることができず、崖の上まで追い詰められた。
「これ以上の逃走は不可能だ。大人しく我々と一緒に来い。」
兵士の1人が小夜に忠告を送るが、小夜は戦意と敵意を消さない。
「あくまで抵抗しようというのか・・だがもはや抵抗することも許されない。」
兵士が冷徹に告げたところで、白夜が丈二に突き飛ばされてきた。
「くっ・・体力が・・・!」
思うように力が入れられなくなり、白夜がうめく。彼と小夜の前に丈二が出てきた。
「まとめてお前たちに処罰を下す。覚悟してもらおう。」
丈二が冷淡に告げて、右手に力を込めて白夜を見据える。
「日向白夜、まずはお前を処罰してから、ターゲットBを連行する。お前の代わりにオレたちが引導を渡すことになる。せめてもの慈悲だろう。」
「ふざけるな・・コイツはオレの手で倒す・・他のヤツの邪魔はさせない・・・!」
敵意をむき出しにして立ち上がる白夜に、丈二がため息をついた。
「こうも滑稽な言動を見せられると、もはや何の情も湧かないな・・」
丈二が告げると、兵士たちが小夜に向けて発砲してきた。だが白夜が振りかざした爪が弾丸を弾いた。
「邪魔をするなと言っているのが分からないのか!?」
「理解したくもない。お前のエゴなど。」
怒鳴る白夜だが、丈二に冷徹に一蹴される。次の瞬間、白夜の体に兵士が放った弾丸が命中した。
「ぐっ・・!」
撃たれた痛みで顔を歪める白夜。弾丸の麻酔の効果で、彼の意識も揺さぶられていく。
「抵抗は無意味だ。どんなガルヴォルスだろうと、この弾丸の効果をはねのけることはできない。」
「勝手に決めるな・・オレはヤツを倒す・・それ以外に、オレの進む道はない・・・!」
丈二が投げかけた言葉も聞かずに、白夜が強引に立ち上がる。あくまで自分を貫こうとする彼に、丈二が冷静な態度を一変させて感情をあらわにする。
「どこまでエゴを押し付けようとすれば気が済む!?貴様のその勝手な行動が状況を悪化させていることが理解できないとでもいうのか!?」
「それこそ理解したくもない・・そうやってオレを思い通りにしようとして、オレの生きる理由を奪うための言い訳など・・・!」
白夜が丈二に対して怒号を返す。彼の態度に丈二がさらに憤る。
「もういい!まずはお前から罪を償え!」
丈二が白夜にとどめを刺そうとしたときだった。小夜が力を振り絞って、丈二に詰め寄って刀を振りかざしてきた。
「くっ!」
丈二がとっさに後ろに下がって、小夜の刀を右の肘の角で防ぐ。体を斬りつけられるのは免れたが、丈二は肘の角を折られた。
「おのれ、ターゲットB!」
丈二がとっさに右足を突き出して、小夜を蹴り飛ばす。突き飛ばされた彼女は白夜とぶつかり、そのまま崖から下に落下してしまう。
「しまった!」
2人を落とすことになり、丈二が声を荒げる。彼と兵士たちが崖下をのぞき込むが、小夜と白夜の姿は見つからず、海が広がるだけだった。
「まだ近くにいるはずだ。すぐに捜索するのだ。」
丈二が兵士たちに呼びかけてから、小夜と白夜を探しに回り込んで崖下に降りていった。
崖下の海に落下した小夜と白夜。思うように体を動かせなくなっていた小夜だが、意識を失った白夜を連れて海から出た。
2人が出た海岸の先には洞窟があった崖の上からは死角になっていて、入り口が見えない。
(・・・とりあえず、ここに隠れるしかない・・クロスファングがこのまま見逃すとは思えない・・きっと探している・・・!)
小夜は白夜を引き上げて、洞窟の中に入っていった。
洞窟の中は1本道だが、暗く明かりが差し込んできていなかった。
(この中を進むのは危険だけど、クロスファングに追撃されるぐらいなら・・・)
小夜は迷わずに洞窟の中を進むことを心に決める。時間がたつにつれて、彼女は夜目が効くようになり、ある程度の洞窟の地形が分かるようになってきた。
そして小夜たちは洞窟の中にある広場にたどり着いた。中心の天井に穴が開いており、外の明かりが差し込むようになっていた。
「ここならしばらくは落ち着けるかもしれない・・・」
安心を感じたときだった。小夜は体から力が抜けて、意識を保てなくなった。
(よほど疲れたということかな・・あなたのために頑張りすぎたかな、咲夜・・・)
小夜が心の中で咲夜を思う。咲夜のために戦ったことに、小夜は戸惑いを感じていた。
(復讐をすることを、咲夜はよく思わないかもしれないわね・・・それでも・・それでも私は・・・)
小夜の閉じた目から涙が流れていた。咲夜のために戦ったにもかかわらず、納得できない気持ちが彼女の心の中に広がっていた。
(ゴメン・・咲夜・・・あなたを守れなくて・・・)
小夜が再び咲夜を失った悲しみに襲われる。彼女はついに生きる希望さえも見失いかけていた。
気持ちを落ち着けることができないまま、小夜は眠りについた。
しばらくして白夜が目を覚ました。体力を回復させた彼は、自分が暗闇の中にいたことに一瞬驚いた。
(何だ、ここは?・・クロスファングの施設ではない・・・)
感覚を研ぎ澄ませようとする白夜だが、麻酔の効果が完全に抜けてはおらず、周囲を探ることができなかった。
(広い洞窟のようだ・・クロスファングはいないようだが・・)
白夜は周りに誰かいないか探りを入れた。そして彼はそばに小夜がいることに気付いた。
「コイツ・・オレのそばにいたのか・・・!?」
小夜に敵意をむき出しにする白夜だが、体が思うように動かせずにふらつく。
(気絶しているのか・・まさかここで、とどめを刺せるチャンスが巡ってくるとは・・・!)
白夜が感情を高めてウルフガルヴォルスになろうとする。が、力を入れることもできず、変化できない。
(まだ力が戻らないのか・・だが、ガルヴォルスになれなくても、今なら・・・!)
白夜は怒りと憎しみの赴くままに、眠り続けている小夜の首をつかんだ。彼は彼女を絞め殺そうとした。
だが白夜は小夜の首を締め付ける前に、彼女から手を放した。
(なぜだ・・なぜためらう・・・!?)
小夜への復讐にためらいを抱く自分に、白夜が自問する。すると小夜が意識を取り戻してきた。
「あなた・・目が覚めたのね・・・」
「お前が・・オレをここに連れてきたのか・・・!?」
弱々しく声をかけてきた小夜に、白夜が鋭く言葉を返す。
「えぇ・・この洞窟を見つけたのは偶然だったけど・・クロスファングから逃れるために中に入った・・あなたを連れてきた理由は私にも分からない・・なぜか放っておけなかった・・・」
「またふざけたマネを・・どこまでオレたちを愚弄すれば気が済むんだ!?」
事情説明した小夜に、白夜が憤りをあらわにする。彼が再び彼女の首をつかんできた。
「お前だけは・・お前だけは絶対に許さない!」
「そこまで・・私を憎んでいるというのか・・私を殺すことでしか、あなたの心は晴れないと・・・」
怒鳴る白夜に小夜が言葉を投げかける。
「そうだ!お前が生きている限り、オレたちは救われることはない!」
「そうか・・・ならこのまま私を殺せ・・私を咲夜のところへ送ってくれ・・・」
小夜が口にした言葉を聞いて、白夜が眉をひそめる。
「咲夜がいなくなり、私は生きている意味をなくした・・あなたが私を殺すことで満足できるなら、私もそれでいい・・・」
「お前・・オレたちのために死のうというのか・・・!?」
自分の気持ちを告げる小夜に、白夜が疑念を募らせる。
「あなたの望みを叶えさせる代わりに、私の願いを叶えて・・私を、咲夜のところに連れて行って・・・」
涙ながらに言いかける小夜。彼女に憎悪を向けながらも、白夜はまたも躊躇を抱いていた。
(やれ・・やるんだ・・千載一遇のチャンスと思うべきなのに・・これを逃したら・・・!)
自分に呼びかける白夜の脳裏に、家族との思い出がよみがえってくる。
「たとえコイツを殺しても、父さんも母さんも生き返るわけじゃない・・それでも・・それでもコイツをやらないと、みんなは・・・!」
迷いを振り切って白夜が小夜を地面に押し付ける。叩きつけられても小夜は抵抗せず、死を受け入れようとしていた。
だが小夜を締め付ける前に、白夜は彼女から手を放した。突然の解放に小夜が戸惑いを覚える。
「殺して・・私を殺せば、あなたは満足するのでしょう・・・?」
「あぁ・・確かにそうだ・・お前を殺すことが、オレの安息への道だ・・だがそれは今は、お前の望みを叶えることにもつながる・・それではオレたちが報われることにならない・・・」
疑問を投げかける小夜に向けて、白夜が声を振り絞る。
「だからオレはお前を生きたまま束縛する・・生かしたまま、苦痛を味わわせてやる・・・!」
白夜が3度小夜を押し付けた。彼は今度は彼女の首ではなく、両腕を押さえてきた。
「な・・何を・・・!?」
「お前の思い通りに死なせない・・お前が納得できない形にしてやる・・・!」
動揺を見せる小夜に、白夜が突然口づけを交わしてきた。小夜の動揺が一気に膨らみ、抵抗することもままならなくなっていた。
「お前にオレを注ぐ・・どうやっても、オレから逃げられないようにしてやる・・・!」
「ち、ちょっと・・いきなりそんな・・・!」
白夜のこの言葉を聞いて、小夜が初めて慌てふためく。しかし抵抗することができず、小夜は白夜に服を脱がされる。
暗闇の洞窟の中、小夜が白夜に体を弄ばれる。彼の手が彼女の胸を撫でまわしていく。
(何、この感じ・・気分がおかしくなってくる・・逆らえない・・逆らおうとする気持ちまで揺さぶられる・・・)
込み上げてくる感覚に、小夜が困惑を募らせていく。白夜が彼女の胸に顔をうずめてきた。
(やめて・・これ以上やられたら・・・!)
「これ以上やられたら・・おかしくなってしまう・・・!」
小夜があえぎ声を上げて、白夜の腕を振り払おうとする。しかし彼に両腕を強く押さえつけられている。
「オレはお前のせいで人生を狂わされた・・おかしくなるという泣き言を聞く気はない・・!」
白夜はそういうと、性器を小夜の秘所に入れてきた。恍惚が一気に高まって、小夜は目を見開いて声にならない悲鳴を上げていた。
小夜と白夜に敗れて苦汁をなめることになった知矢。彼は2人を上回る力を手にするため、彼は次々に女性を襲って血を吸い取っていた。
(まだだ・・こんなものでは、あの2人を超えるのに時間がかかりすぎる・・・!)
なかなか力が上がらないことに、知矢は苛立ちを感じていた。
(こうなったら人目も関係ない・・手当たり次第、人がたくさんいる場所を襲って、一気に力をつけてやる・・!)
知矢が笑みを浮かべて、次の獲物を求めて歩き出していった。
次回
「私を弄んだヤツらを許せなかった・・・」
「クロスファングは根絶やしにしないといけないと思った・・」
「生きろ・・生きて罪を償え・・・!」
「望むように死ねると、絶対に思うな・・・!」