ガルヴォルスBlade 第20話「石化の呪縛」
石化されたたくさんの美女たちと麻子を目の当たりにして、華音が驚愕する。正視に耐えない彼女を、流星は悠然とした態度で見つめていた。
「彼女にも僕のものになってもらったよ・・双真を弄んできた女たちを、こうして僕が弄ぶことができる・・」
「全員・・元は人だったんですか!?・・・みんな、流星さんが石にして・・・!?」
華音が問い詰めると、流星がさらに笑みをこぼす。
「全ては双真のためだよ・・双真の敵である女を苦しめるための力だと、僕自身は認識している・・」
「流星さんまでそんな・・女性全員が、双真や流星さんを苦しめる人ばかりじゃ・・・!」
「そんな解釈は僕と双真には通じないよ・・そういう詭弁を信じて苦しんだことを、僕たちは何度も経験しているんだ・・」
呼びかける華音だが、流星が冷たい視線を向けるだけだった。
「裸のままで一切の自由がない。死ぬことのほうがずっと楽ではないかと思えるくらいの苦痛を感じていることだろうね。でも普通の人間の場合は、意識を保つこともできなくなるけどね・・」
「そんな・・・もしかして、この中に、私たちと同じ・・・」
「うん。僕たちの同種もいるよ・・その女たちは、直に恥ずかしさと不自由を感じながら、今もこの状況を感じ取っていることだろうね・・・」
困惑を募らせていく華音に向けて、流星が淡々と語りかけていく。
「こうされることで、彼女たちは死ぬよりもつらい生き地獄を味わっている・・僕たちへの愚かな行動を行った自分を後悔しながらね・・・」
流星は話を続けて、華音に向けて手招きをしてきた。
「君もそういう苦しみを味わい続けていくことになるだろうね・・僕がそれを味わわせてあげるよ・・」
「いくら流星さんでも、こんなことを認めるわけにはいかない・・・!」
流星からの距離を取って、華音が身構える。その彼女に対して流星が嘲笑してきた。
「言っていることは立派だね・・でも、その言葉通りの結果にはならないよ・・」
流星は目つきを鋭くして、華音に向けて右手を伸ばす。次の瞬間、華音が突然体の自由を奪われた。
「くっ!・・体が・・・!」
「殴ったり切ったりするだけの野蛮なやり方だけじゃないよ、僕は・・」
身動きの取れない華音に言葉を投げかけていく流星。
「ここで暴れるとここがムチャクチャになるからね。場所を変えさせてもらうよ・・」
流星は念力で華音を大部屋から出して、自らも外に出た。人気のない草原に2人は足を踏み入れた。
「ここは人が来ることがほとんどないから、思い切りやれる・・・」
流星が体から光のようなオーラを発する。彼から感じられる力の巨大さに、華音は緊迫を感じていた。
流星に華音を連れて行かれた双真は、途方に暮れていた。表向きに流星と知り合いだった双真だが、彼の住んでいる場所は知らなかった。
「流星・・どこに行ったんだ・・・!?」
流星を探す双真だが、手がかりがなく手探りの状態になっていた。
「アイツの勝手を認める気にはなれない・・それに華音のことも・・・!」
流星だけでなく華音のことまで気にしたことに、双真が動揺を覚える。
「どうして流星のことだけでなく、アイツのことまで・・・!?」
華音のことを気に掛ける自分に、双真が困惑を募らせていく。
「助けたいと思っているのか・・・オレはアイツを、見捨てることができないというのか・・・!?」
華音のことが頭から離れず、双真は苦悩する。迷いを振り切ろうとして、彼は流星を探すことに注意を向けていく。
「まずは流星だ・・流星が身勝手なことをして、オレを利用しようとしているなら、オレは許すわけにいかなくなる・・・!」
憤りを込めて右手を強く握りしめて、双真は流星を追い求めて走り出していった。
光のようなオーラを体から発して、華音に迫る流星。彼が放つ光の弾が、華音目がけて飛んでいく。
(1個1個の威力が高い・・それに速い・・!)
素早く動いてよけるも、華音はよけるので精一杯になっていた。
「よけないでほしいね。でないと気分が悪くなる・・」
冷淡に告げる流星がさらに光の弾を放っていく。弾は華音によけられてもすぐに軌道を変えて、何度も彼女を狙っていく。
ついに回避が間に合わないと直感した瞬間、華音の頬に紋様が走った。
「流星さん・・・!」
光の弾をぶつけられて爆発に巻き込まれた華音。だが彼女は異形の姿へと変わり、爆発から抜け出してきた。
さらに向かってきた光の弾を、華音は右手から伸ばした刃で切り裂いた。
「さすが。体力が回復したら、動きの切れもよくなったね・・」
華音の姿と力を見て、流星が笑みをこぼす。
「でも、万全の状態でいても、僕に敵うわけじゃない・・」
目つきを鋭くした流星が、右手から発した光を鞭のようにして振りかざした。鞭は華音の刃に絡みつき、切れることなく引っ張り込んでくる。
「君だけはとことん苦しめておかないと・・双真をとことん追い詰めた君を、僕は絶対に許さない・・・!」
流星が鋭く言いかけて、光の鞭を使って華音を引き付ける。華音が踏みとどまろうとするが、徐々に流星に引き付けられていく。
(すごい力・・どんどん引っ張られていく・・それにあの光、全然切れない・・・!)
流星の力に脅威を感じていく華音。
「双真の代わりに僕が君を粛清してやるよ・・僕がこうすることを、双真も望んでいることだから・・・!」
「そんなこと・・双真がそう言ったわけじゃない!」
流星に対して憤りを感じた華音の体から紅いオーラがあふれ出してきた。同時に流星に引っ張られていた彼女が、引っ張られることなく踏みとどまってきた。
「これが、君の本当に力ということか・・でもこのぐらいで僕が負けることは・・・」
流星が悠然さを保っていたとき、彼の放っていた光の鞭を華音の刃が切り裂いた。
「双真の独りよがりも許せないけど、自分の解釈で双真以上に他人を傷つけている流星さんも許せない・・僕はあなたを見過ごすことはできない!」
「許せないのは僕たちのほうだよ・・自分の罪を棚に上げて、僕たちを悪者に仕立て上げるな!」
声を振り絞る華音に対して、流星も憤りをあらわにしてきた。彼は素早く飛びかかって、華音に右手を強く突き出した。
重みのある打撃に受けて、華音が吐血する。紅いオーラをあふれさせても、彼女の力を流星は上回っていた。
「まだだよ・・僕と双真の受けた屈辱は、こんなものではないのだから・・・!」
流星が再び光を鞭のようにして、うずくまっている華音に振り下ろす。叩かれた華音が倒れて、さらに鞭で叩かれていく。
「君のような最低な生き物が、いつまでもいつまで双真に付きまとって・・本性を現せずに堪えている自分さえも許せなくなりそうだった・・」
いら立ちを募らせて、流星が光の鞭を華音の首に巻きつけて締め上げる。鞭を振り払おうと彼女が鞭に手をかける。
「でももう我慢する必要はない・・むしろ我慢することのほうが愚かしいこと・・力ずくでも、たとえ双真に嫌われることになっても、僕は双真を守り、その敵を徹底的に排除する!」
「そんな自分勝手で、双真が少しも喜ぶなんてありえない!」
激情をあらわにする流星に、華音が声と力を振り絞る。彼女は首に巻きついている光の鞭を、力ずくで外そうとする。
「それでも双真が辛いことになるくらいなら!」
流星は光の鞭を振りかざして、華音を地面に叩き付ける。さらに首を絞めつけられて、華音は吐血とともにあえぎ声を出す。
「双真のためなら僕は罪を重ねてもいい!それで他の連中の大罪をつぶせるなら!」
流星が右手を突き出して衝撃波を放つ。華音は横に飛んで衝撃波をかわす。
だが流星が素早く詰め寄ってきて、華音に直接衝撃波を叩き込んできた。激痛に襲われて、華音は急激に力を消耗していった。
「この力が、全然通じないなんて・・・!」
息を乱しながら、華音が流星の力に脅威を感じた。力を振り絞って起き上がろうとしたとき、華音が流星に首をつかまれる。
「もう十分に分かったよね?さすがの君も、僕よりは力がないということが・・」
低く告げる流星の前で、華音が顔を歪めてうめく。
「ではそろそろ屈服させるときが来たね・・僕と双真に償いをするときがね・・」
妖しく微笑む流星と、彼の手から逃れられないでいる華音。流星の左手の人差し指に黒い光が宿る。
「君にも受けてもらうよ・・終わりのない絶望を・・・」
ドクンッ
指先から放たれた黒い光に胸を撃たれて、華音が強い胸の高鳴りを覚える。その衝動で、彼女が人間の姿に戻る。
「今のが・・まさか・・・!?」
流星から手を離された華音が、自分が受けた光に動揺を覚える。
「これでもう君は、僕の手から離れることはできないよ・・・」
ピキッ パキッ パキッ
流星が呟いた直後、華音の来ていた衣服が引き裂かれた腰から上の服が全て引き裂かれて、あらわになった体が石になっていた。
「これが僕の使う石化の力だよ。さっきの光を受けた人は、身に着けているものを全て壊して、全裸のオブジェへと変える。それも石化の開始と進行を僕の思った通りにしてね・・」
「それじゃ、もう僕はこのまま・・・!?」
「今まで男として振る舞ってきた君が、女という本性をさらけ出されることになる・・もちろん、犯してきた罪の全てもね・・」
絶望を覚える華音に向けて、流星がさらに笑みをこぼしていく。
「このまま石にされるわけにいかない・・何とかしないと・・・!」
華音が異形の姿になろうと意識を集中する。
ピキキッ パキッ
その瞬間、華音にかけられた石化が進行した。ズボンが引き裂かれて、石になった下半身があらわになる。
「残念だけど、石化を受けたら怪物の力は使えなくなるよ。他の人もそうだったから・・」
「そんな・・そんな・・・!?」
流星が告げた言葉に、華音がさらなる絶望感に襲われる。彼女の表情を見て、流星が笑みを強める。
「そうだ、その顔だ・・絶望と後悔に彩られた君のその顔を見ると、僕はすがすがしい気分になれる・・」
「そんなの、自己満足だ・・自分が納得するために、双真を利用しているだけ・・・」
喜びを募らせる流星に対して、華音が声を振り絞る。しかし流星は彼女の言葉を聞き入れず、逆にあざ笑う。
「双真の苦しみが消せるなら、僕は何でもやってやるさ・・・」
パキッ ピキッ
石化がさらに進み、華音は手足の先、さらには首元や髪まで石にされていた。
「麻子ちゃん・・ゴメン・・・逃げて・・双真・・・そう・・・ま・・・」
ピキッ パキッ
声を振り絞っていた華音だが、唇さえも石になって、彼女は声を出すこともできなくなった。彼女は棒立ちのまま動けなくなり、麻子と双真を思って涙を浮かべていた。
フッ
その瞳が石に変わると同時に、華音の目から涙が流れ落ちた。彼女も流星の手にかかり、全裸の石像へと変えられてしまった。
「この期に及んで双真を陥れようと考えるなんて・・不愉快ながらも大したものだと言っておくよ・・」
変わり果てた華音を見つめて、流星がさらに笑い声をあげていく。
「でもそれを実行することはできない・・君も僕に女としての体と本性をさらけ出して、終わりのない生き地獄を味わい続けることになるのだからね・・」
流星が落ち着きを取り戻して、華音に近づいて胸に手を当てる。
(うっ・・流星さんの言うとおり、意識は残ってる・・でも、やっぱり石化してるから、体が動かない・・・!)
華音が心の中で石化された自分の不自由さを痛感していた。石になっている体は彼女の石を全く受け付けず、微動だにしなくなっていた。
「どうだい?こうされても全く抵抗できないだろう?僕と双真を虐げてきた女が、その威勢を見せることもできず、逆に虐げられている・・その恥辱を感じ取るだけで、僕の心は晴れやかになる・・」
華音の石の素肌に触れて、流星が喜びを募らせていく。華音はただ触れられるのを受け入れることしかできなかった。
「そろそろ隠し事はやめよう・・この場のことを打ち明けると同時に、双真に華音ちゃんの罰を受けた姿を見てもらうことにするよ・・」
(双真に!?・・流星さん、そんなことをしたら、双真は・・!)
呼びかけてくる流星に華音が不安を覚える。しかし彼女の心の声は流星には届いていない。
「今まで苦しめられてきた女の自由を失った姿を見たら、双真は必ず安らぎを取り戻してくれる・・・」
双真を連れてこようと、流星が華音の前から離れていく。
(待って、流星さん!双真をこれ以上追い詰めるな!)
華音の悲痛の叫びが、彼女の心の中だけに虚しく響く。彼女も流星に掌握されて、全裸の石像として立ち尽くすこととなった。
流星の行方を追った双真だが、手がかりさえもつかめず、大学の近くで立ち止まっていた。
「流星・・何を考えているんだ・・アイツを連れて行って、何をしようというんだ・・・!?」
「君を陥れようとしていた華音ちゃんなら、僕が粛清したよ・・」
歯がゆさを募らせていく双真に前に、流星が姿を現した。
「流星・・どこに行っていた・・・!?」
「ゴメン、双真・・僕の家に戻っていたんだ・・・」
問い詰めてくる双真に、流星が悠然と答えていく。その彼に双真が鋭い視線を向ける。
「そんなに睨まないでよ・・僕も君に失礼なことをしたと思っているんだから・・・」
「お前の家に連れて行け!何を考えているんだ!?」
「怒鳴らなくても、僕は君を家に招き入れようって思っているんだから・・」
詰め寄ってくる双真に、流星が手招きをしてくる。彼の言葉を聞いて、双真が息をのむ。
「お前・・本当に何を企んでいるんだ・・・!?」
「あえて企んでいることがあると言うなら、全て君のためだよ、双真・・」
緊迫を募らせていく双真に、流星が淡々と言いかけてくる。
「一緒に行こう・・君が嫌っている女たちを、僕がどうしているのか、君に見せてあげるよ・・」
「女・・・!」
流星の呼びかけを聞いて、双真がいら立ちを浮かべてきた。
「女に対して本当に不愉快になっているんだね・・でも大丈夫・・僕が大人しくさせているから、君を苦しめてくることはないよ・・」
流星が双真に向けて手を差し伸べてきた。
「僕の行為を受け入れてほしいとは思っていないけど、せめて僕のしてきたことは見てほしい・・・」
「・・何をしたのか分からないままではオレも気分が悪い・・この目で確かめてやる・・・!」
流星の誘いに乗ることを双真は告げた。
「だがオレはお前も認めていない・・ただ事実を確かめるだけだ・・・!」
「それでも僕は構わない・・・」
双真は差し出された手を取らなかったが、流星は悠然さを崩さずに歩き出す。疑念を膨らませたまま、双真は流星についていった。
次回
「こうしておけば、女たちは君に危害を加えられなくなる・・」
「天敵がいなくなって、君も安心したんじゃないか・・・」
「華音・・・オレは・・・」
「君が苦しむことのないように、僕が手を打つから・・・」